フリーランス・起業家・新卒や中途などあらゆる人材に向け、HRを主軸とした事業サービスを展開しているHajimari。2025年Great Place to Work® Institute Japan「働きがいのある会社」ランキング中規模部門で、第24位に選出されています。
ビジョンである「自立した人材」を増やすため、どのような取り組みを行っているかを、執行役員CHRO 有賀 誠様に伺いました。
会社名:株式会社Hajimari
設立:2015年2月26日
従業員:225名(2025年11月時点)
「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める。」というビジョンのもと、人材領域で様々な事業を展開する。「自立した人材」で溢れる社会を目指すべく、フリーランス・業務委託と企業のマッチングサービスを中心に、雇用形態にとらわれない、自身のありたい姿で働けるための新しいサービスを次々とリリースしている。自社メディア『ITプロマガジン』を軸に様々なユーザー獲得を実施した結果、毎月多くの新規ユーザーを獲得し、サービスの累計登録者は11万人以上にまで成長した。
<目次>
- Q.会社創業に至る経緯についてお聞かせください
- Q.そのために、どのように事業展開したのでしょうか?
- Q.2020年に現在の社名へ変更されたのはなぜでしょうか?
- Q.ビジョン「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める。」とBHAG(ビーハグ)について教えてください
- Q.そうした中で、社内の組織風土はどのように醸成されていったのでしょうか?
- Q.社員育成のための研修制度はどのように行っていますか?
- Q.ワークショップのほかにバリュー浸透のため行っていることは?
- Q.今後、組織拡大に伴う課題や解決策についてお聞かせください
Q.会社創業に至る経緯についてお聞かせください
有賀様:当社代表の木村が、新卒で大企業へ入社したところ、そこで働く社員の様子にやりがいや楽しさが見られなかった、そしてそれを何とかしたいという思いが、創業に繋がるそもそものきっかけです。
これは木村個人だけが感じたことではなく、世界の労働者幸福度ランキングからも、働く日本人のモチベーションが下位に停滞していることが分かります。
多くの人が、1日の時間の大半を仕事に費やしている一方で、仕事を楽しんでいる人が少ない。結果として、人生全体が辛いもの、試練に耐えるものになってしまっており、木村はこうした状況を変えたいと会社設立を決意しました。これがHajimariのビジョン「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める。」につながっています。
このビジョンの根底には、働く方々がハッピーになるためには、仕事をする部分と、それ以外の部分が相反する存在ではなくてもいいはずという考え方があります。
労働者には「9時から5時半まで働きなさい」とか、「この場所で働きなさい」というような、会社や雇用に付随する要件があまりにも多くあります。そのため、仕事がまず優先され、その合間に余暇や趣味を楽しんだり、育児や介護ともどうにか折り合いをつけているような状況があります。
これでは仕事が中心にあるだけの人生になってしまい、それを逆転させたいというのが我々の思いです。まずは自分のやりたいことがあり、その一部としての仕事や働き方がある。理想の人生・キャリアを訴求するため、一人ひとりに合ったビジネスの選択肢を増やさなければならないと考えました。
Q.そのために、どのように事業展開したのでしょうか?
有賀様:スタート時は「ITプロパートナーズ」というIT分野から事業を始めました。ITエンジニアを中心とするフリーランスの人材と、企業側のビジネスニーズをマッチングするサービスです。自分が生きたい人生を、会社という組織に制約されずに、プロとして自立し、幸せになれる世の中を、事業を通じて作っていこうとしたのです。
例えば、週に4日はITエンジニアとして働くが、残りの3日はプロサーファーとしてサーフィンをする。あるいは介護をしながら沖縄で働き、社会保険労務士の資格を持ってリモートでサービスを提供するという働き方も考えられます。こうした働き方をより一般的にして、世の中のインフラを整えていくことを目指しました。
当初の「ITプロパートナーズ」は、ITエンジニア専門のマッチングサービスでしたが、そこからマーケティングや人事、営業、ファイナンスなど、専門性を広げていきました。現在は、全体をプロパートナーズ事業と呼んでいます。直近で話題になった「上司代行」という社外メンターの紹介も行っています。
今後、ニーズがあればさらに職種の範囲は拡大していくでしょう。
現在の登録プロ人材は11万人に上っており、早い場合には3日で人材を紹介できます。クライアント企業は数千社いらっしゃり、両者の間で最適かつ最速のマッチングを提供させていただいています。
一般的な人材紹介や派遣会社と異なる点は、登録者や企業との付き合いがとても長く、濃く、深いことにあります。
例えばある登録者から「このコンピュータ言語が得意です」という話があったとき、「その言語は3年後にAIに代替される可能性があるので、別分野の勉強もしていきましょう」などとスキルアップの提案をしたり、フリーランスで活躍した後に事業会社の正社員への転換をしたいという方には、人材紹介という形で就職の支援もしています。
つまり、Hajimariでは登録者一人ひとりのキャリアに寄り添ってアドバイスができるエージェント業務を実現しています。一方で企業には、ただ無作為に人を紹介するのではなく、コンサル的に入り、プロジェクトの提案もします。そこで「この課題を解決するためにはこのようなプロ人材が必要ですね」というようなマッチングをしていきます。
Hajimariは、登録者・企業ともに「長く、濃く、深い」お付き合いをさせていただいています。それが人材業界の中でも当社の特徴で、事業が成長した大きな理由にもなっています。
メイン事業以外にも、これまで「自立」にベクトルを合わせた新規事業を開発してきました。
例えば、地方創生もHajimariの大きなミッションです。地方に住みながら、リモートワークで都市部にある大企業のプロジェクトに参加したり、東京にいる人が地方の復興プロジェクトにリモートで参画できるようにするというようなサービスを、TUKURUS(ツクラス)という事業部で行っています。
他にも、新卒大学生の就活支援のお手伝いをはじめ、AIを使った自立サポート、研修プラットフォームなど、「自立」を基軸に多方面でビジネスを展開しています。
Q.2020年に現在の社名へ変更されたのはなぜでしょうか?
有賀様:もともとは「ITプロパートナーズ」という社名でした。その名の通り、IT分野におけるエンジニアをマッチングしていたのですが、そこからマーケティングやファイナンスや人事などへサービス内容が広がっていき、社名もそれを反映したものにしたいという考えに至りました。
Hajimariという社名には、「一歩踏み出す覚悟がある限り、人はいつでも何度でも、新しい人生を始めることができる」という私たちの信念を込めています。
社名の通り、さまざまな場面で人生の新しい「はじまり」を創り出していきたいと考えています。
Q.ビジョン「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める。」とBHAG(ビーハグ)について教えてください
有賀様:Hajimariには「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める」というビジョンがあり、私たちが創りたい世界と私たちの目指すべき方向性を表しています。
当社が目指しているのは「or」ではなく「and」の世界です。ここでは「仕事のせいで趣味などやりたいことができない」「家族との時間がつくれない」ということではなく、仕事も趣味も家族との時間も、すべて「and」でやってしまおうと。
そのためには社会的なインフラが必要で、それを作り上げることを目標としています。やりたいことを諦めずに実現するためには、働き方の柔軟性や選択肢を支えるサービス・事業が欠かせません。Hajimariは多様な働き方を創り出し、広げることを使命としています。
ではビジョンの実現に大きく近づいた時、私たちはどうなっているでしょうか。それを表すものが、「2035年までに真に偉大な“自立”創造企業になる」というBHAG(ビーハグ)です。BHAGとは“BigHairyAudaciousGoal”の略で、日本語では「無謀なほどの大きな夢」になります。
そして将来、このBHAGを達成したときに見える世界、「10Views」も掲げています。10年後に自分たちがどういう世界を作りたいのか、その中でHajimariがどのような役割を担っていくのか、それを言語化、ビジュアル化しました。こちらを示したことで、「自立」という抽象度の高い言葉に輪郭が生まれ、確かなイメージを持って社員、お客様、取引先様に共有できるようになりました。
ここではHajimariが新しい働き方を根付かせた会社として世界に認知され、ビジネススクールでもケーススタディとして取り上げられているなど、具体的なイメージを表現しています。「無謀」か「偉業」か、2035年にその答えは出ていることでしょう。
さらに、「自立」を単なるスローガンで終わらせないために、社内では様々なワークショップが行われています。昨年秋~冬には、「ロマンのロードマップを描こう」というテーマで実施しました。
BHAGで掲げたように、10年後にHajimariが世の中をどのように変えているか、その中で自分はどうなっているのか、そのために何をやるのか。社員が各々、自分自身の行動や目標に落とし込むことで、会社としての大きなビジョンと、日々の言動・目標をつなげようとしています。
これが指針となり、BHAGを常に意識しながらビジネス上の判断を行い、またそれを1人ひとりの行動に落とし込むことができると考えています。
Q.そうした中で、社内の組織風土はどのように醸成されていったのでしょうか?
有賀様:前職まで、私はいわゆる大企業で40数年仕事をしてきました。当社に入社したのは2024年のことですが、ベンチャーであるHajimariでこれまでの知識や経験の切り売りで貢献できるだろうと、当初は高を括っていた部分があったと思います。
しかし実際にジョインすると、「今までの経験だけでは貢献しきれない」と気付くエポックがいくつかあり、そこで大きく反省をして、とにかく多くの社員と会話をすることにしました。1on1の場を設けたり、ランチに行ったり、自宅に招くなど、ひたすら社員の声を聞くようにしたのです。
Hajimariの若い仲間たちから多くを学びました。そこでわかったことは、当社Hajimariの社員がすごいということです。
何が違うのか、一言でいえば「ジブンゴト化」する力です。例えばある課題があったとき、Hajimariのメンバーはそれを人のせいにしたり、見て見ぬ振りなどはせず、最初に見つけた人間がそれを拾い、必要な仲間を巻き込んで積極的に解決していくのです。
無関心や他責ではなく、課題を「ジブンゴト化」して前に進んでいく。全員がそのような姿勢を持っている組織を、私は見たことがありませんでした。
Q.社員育成のための研修制度はどのように行っていますか?
有賀様:「研修」というよりは、「魂の伝授」かもしれません。私が入社するずっと以前から、Hajimariは多くのワークショップを展開しています。最初に行ったのは「成長マインドセット」。悩みや迷いの「心のブレーキ」を外すことによってこそ、人は成長ができるという内容です。
自分自身の掘り下げともいえるでしょう。その次のステップが、先にお話しした「ジブンゴト化」です。ブレーキを外したら、今度は前に進むだけですからね。
そして、さらに行ったのが「自立ワークショップ」。これはBHAGにおける「自立創造企業として唯一無二の存在」というロマンの部分に関するもので、「ロマンのロードマップ」がテーマでした。
会社がBHAGを達成する中で自分は何をやるか。あるいは自分自身がBHAGの世界観の中でどんな役割を担うのかなどを描いていきました。
そのような全社員参加のワークショップを、テーマ毎に3~4カ月かけて行っています。1回ではなく、何度も行うことで考え方や姿勢が浸透していったと考えられます。こうした取り組みを行うのに、会社の規模は関係ありません。
ベンチャーであればリーダーが決意すれば比較的直ぐに実行できるでしょうが、大企業でも、一つの事業部や部門単位で見れば同じことができるはずです。
Q.ワークショップのほかにバリュー浸透のため行っていることは?
有賀様:ワークショップだけでなく、日常のあらゆる場面でバリューを浸透させる仕組みがあります。「ジブンゴト化」「感謝から始める」「ユーザーに向き合い続ける」など、評価制度の中にもバリューに関わる項目が入っています。
いくら高い売り上げを出していても、Hajimariの価値観やDNAから外れていれば、高評価になることはありません。
皆でバリューを盛り上げるための「空気を演出」するようなことも行っています。例えばビジョンやバリューをポスターやパネルにして社内中に掲げたり、カードにして社員に配ったりもしました。
これらは忘れたときに取り出すようなものではなく、これらがあることで全員の心の中に沁み込んでいくような、そんな空気を醸成することを目的としています。
あとはリーダーシップに関わる部分も大きいですね。何かあるごとにリーダーがバリューに立ち戻るような言動をしています。例えばお客様とのやり取りで気が付いたことがあったとき、それを職場で共有し、「ユーザーともっと向き合わなければならない、そのためには……」などを会議等でも常に発信しています。
ほかにも毎日のミーティングにおけるアイスブレイクとして、「今日は“感謝から始める”をテーマに語ろう」など、マネージャーやリーダーは雑談の中でバリューを紐づかせるようにしています。
Q.今後、組織拡大に伴う課題や解決策についてお聞かせください
有賀様:一般的に50人、100人の壁などが話題になりますが、個人的には1000人くらいまでは、オンプレミスで会社の一体感や空気の共有などはできると思っています。
我々はまだ200名ですが、これからのやり方次第でしょう。たとえ何万人規模の大企業だったとしても、一つの事業部単位で見れば1000人程度になりますので、できないはずはないと考えています。あとはリーダーのやる気次第ではないでしょうか。
とはいえ人数が増えていくと、放っておけば徐々に求心力やバリューへの意識は薄まっていくことは考えられます。経営会議では、そうならないためにどうすべきかという議論を続けています。
社長や役員と現場スタッフが一緒にワークショップや合宿を開催したり、カスケードダウン方式で役員が部長に、部長がリーダーに、リーダーが現場スタッフへと伝えていくなど、テーマに応じて試行錯誤しています。
代表の木村は、「人数が増えてきたからこそ、自分が現場社員と直に接する機会を意識的に作っていきたい」と述べています。社長が実行すれば役員も追随することになりますし、それが強い組織の秘訣ではないでしょうか。
Hajimariにはまだ企業としてのブランドや高い知名度があるわけではなく、だからこそ採用では、ビジョン、バリュー、カルチャーに触れ、いかに「一緒に働きたい」と思ってもらえるかを重視しています。また、採用の基準の中でも、「この候補者と一緒に働きたいと思えるか、Hajimariの家族の一員として迎えたいか」という点が最重要かもしれません。
新卒採用で東大や京大などから優秀な学生が来てくれるというのは、Hajimariのビジョンはもちろん、木村を含むリーダーたちの人間性に魅力を感じ、一緒に仕事をしたいと思ってもらえるからでしょう。採用の根幹はビジョンへの共感だと捉えており、新卒採用の最終面接を木村自身が担当しているのも、その象徴です。
なお今年度の新卒採用は14人で、来年度は21人を予定しています。近年はとくに優秀な人材の採用ができており、2027年度からは50人にしていこうと計画しています。キャリア採用は年間50~60人のペースを維持していく予定です。
Hajimariは、熱苦しいほどの一体感がある会社なので、全ての人に合っているとは思っていません。一人でやっていきたいクールなタイプの人には向いていない可能性もあります。しかし、世の中に大きなインパクトをもたらすべく皆が一丸となって頑張る、このポジティブさと素晴らしいチームワークは、当社の自慢ですね。大好きです!
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