企業の経営理念やコンセプト設計を構築し、実現するためのブランディング・コンサルティングを行うトゥモローゲート。
Great Place to Work® Institute Japan「働きがいのある会社」ランキング小規模部門でベストカンパニーに選出されています。
中核となるブランディング事業で「オモシロイ会社づくり」を進める中、社員のライフスタイルとキャリアビジョンに合わせて、いかに働く環境を整えているか、代表取締役 最高経営責任者 西崎 康平様に伺いました。
会社名:トゥモローゲート株式会社様
設立:2010年4月1日
従業員:43名(2025年10月時点)
企業ブランディングを主たる事業とし、企業課題の抽出をはじめ、理念の構築から浸透、発信までを社内担当者が全て担うことで徹底的に顧客に寄り沿い、「オモシロイ会社づくり」を支援する。クリエイティブ面でも、見た目だけでなく中身・ストーリーにこだわり、WEBサイト制作や会社案内、パンフレット作成、PR動画制作などを自社でデザイン。さらにメディアやSNSを介して「オモシロイ」を体現した取り組みを社会へ発信し、会社の認知拡散、濃いファンづくりに繋げている。SNSをフル活用し、企業総フォロワー数は72万人以上に及ぶ。
<目次>
- Q.貴社の事業内容について教えてください
- Q.どのように会社起業へと至ったのかお聞かせください
- Q.なぜブランドづくりに特化した会社にしたのでしょうか?
- Q.「世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事を創る。」とはユニークなビジョンですね?
- Q.自社を「ブラックな企業」と表現したのも強烈な印象でした
- Q.個性ある社員が集まるとき、組織づくりでの課題はありましたか?
- Q.貴社の採用基準について教えてください
- Q.リーダ育成ではスピード感のある昇格システムがあるようですが、メリット・デメリットについて教えてください
- Q.今後の組織づくりの展望についてお聞かせください
Q.貴社の事業内容について教えてください
西崎様:当社は企業におけるブランディング支援を主軸の事業としています。ブランディングといえばクリエイティブな側面にスポットが当たりがちですが、当社では会社の経営理念から作りあげていくので、そこが一般的な制作会社と大きく違う点になります。
そのため、表層的なイメージを作り上げることを目的としたwebや動画、パンフレット制作などの依頼は受けておりません。まずはブランドづくりのために会社が目指すミッションやビジョンをはじめ、体現するためのバリューを固めていきます。
さらに顧客や社員へどんな会社づくりをしていかなければならないか、それを伝える手段としてデザインで訴求していきます。
Q.どのように会社起業へと至ったのかお聞かせください
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西崎様:起業のきっかけは、私が就職活動をしたときにありました。ただそれまで経営の経験はなく、最初から起業しようと思っていたわけではありません。就職については将来したいことも見当たらず、周りが就活していたので始めたような形でした。
そこで多くの企業を見て回りましたが、「ここで働きたい」と思える会社が見つかりませんでした。さらに当時の社会人へのイメージがネガティブなものばかりで、先輩の話を聞いても仕事を楽しんでいる様子がなく、「会社に行きたくない」「辞めたい」「上司とそりが合わない」ようなことばかり聞かされていました。
しかし人生の中で、最も多くの時間を割くのは仕事になるかと思います。それがワクワクしないというのは、非常にもったいないなと感じました。
そこで就活をしているうちに、いつかそんなイメージとは反対の会社を作ろうと思うようになりました。それが原点になるかと思いますが、最初から起業する力はなかったので、その志を背景に、まずは人材コンサル会社に就職しました。
しかし志はあっても仕事はうまくいかず、入社当初、同期1年目の25名のうち営業成績は最下位でした。2年目から少しずつ成果が出てきて、2年目の終わりに大阪支社長になりました。ただ支社長といえば聞こえはいいですが、大阪支社は立ち上げたばかりで人数は3人ばかり。能力を買われてというより、ほかに適任者がいない中で着任したような状況でした(笑)
こうして、2005年に新卒で会社に入り、支社長を経て2010年にようやく起業に至りました。支社長という役職もいただきましたが、離職にあたって会社にそのまま残る選択肢はありませんでした。前職の仕事は面白く、社長も素晴らしい方でしたが、それよりも「自分自身でオモシロイ会社を作りたい」という意思が根強く残っていました。
Q.なぜブランドづくりに特化した会社にしたのでしょうか?
西崎様:創業当初はもともと営業主体の会社であり、依頼を受けた仕事はすべてお引き受けしていました。その状態が7〜8年ほど続きましたが、どんなに頑張っても会社は成長せず、社員10人くらいまでの規模に留まっていました。売り上げも1億円程度に対し営業利益は3~4%程度で、苦しい中小企業という立場から脱却ができない状況が続いていました。
お客様に選ばれる会社づくりをしていかなければ、会社として未来がありません。まずは当社にファンができるような仕組み作りをしなければならないと考え、ファンを作るには根っこにある当社の目的や理念、思想をユーザーが共有・体現できるようにすることが必須になると思いました。
そこで自分たちが何のために会社を作って、これから5~10年後、どんな会社にしたいのか明確にし、言うだけではなく実践してブランド化させていったのです。その変わっていく自社の姿をモデルケースとし、お客様が思い描くブランディングを支援していくサービスへと事業内容は変容していきました。
ちなみに当社では「考えが異なる会社との取引は断る」「値引きには応じない」など、通常にはないような方針がありますが、それらはまず自分たちが健全に事業を行うために必要だったことが背景にあります。
Q.「世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事を創る。」とはユニークなビジョンですね?
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西崎様:そうですね(笑)。会社は1人で立ち上げし、創業3年間は1人で活動していましたので、「世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事を創る。」というビジョンは私自身で考案したものになります。
2010年に会社を作ったときは「変わった会社」を掲げながらも、その事業内容は細かく決めずに創業していました。そこで最初の3年間は前職の流れから採用支援を行い、面接や社員研修、広告作りなど企業の採用に関する御用達のようなことを行っていました。
しかし、リーマンショックの後ということもあり、市場は冷え込み、思うような成果を出せませんでした。
そんな状況ですから、志をもって会社を始めたものの仕事に面白さはありませんでした。「ワクワクする会社を作りたい」として始めたのが、仕事を選ばずとりあえず食っていくためにやっているという、自分が一番やりたくなかった形となり、このままではいけないと。
転機となったのは2018年です。この時、これまで抽象的だったミッション(存在意義)、ビジョン(目指す方向性)、バリュー(行動基準)を改めて明文化し、具体的な内容とロードマップを「ビジョンマップ」として定めました。そのタイミングから会社が大きく変化し始めました。
オフィスを移転し、SNSの発信を始めたことで企業総フォロワー数は72万人に到達し、社内制度も進化し、働き方の幅も広がりました。社員からの提案で福利厚生の種類も数項目から45項目へと増加しました。一歩ずつですが、自分たちが理想とする「オモシロイ会社づくり」に近づいていると実感しています。
まだ「世界一」と胸を張れる段階ではありませんが、中期的なビジョンとして、まずは「大阪で一番オモシロイ会社」と言われる存在を目指しています。
Q.自社を「ブラックな企業」と表現したのも強烈な印象でした
西崎様:こちらは採用戦略のために生まれたコピーでした。もちろんネガティブなブラック企業という意味ではありません(笑)。創業時から当社のメインカラーはブラックであり、「世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事を創る。」というビジョンのもと、変わった会社を作るには、いろんな個性を集めなければいけません。
「何をやるかはこれから決めるが、個性が集まった“変な会社”を作る」という気持ちはあったのです。様々な色が集まれば真っ黒になる、そんな空間にしようと創業当時からテーマカラーはブラックと決まっていました。
そして設立4年目に初めて新卒採用を行い、単純にデザイン会社での募集を謳っても誰も見向きもしないだろうと。そこで、これから自分たちがやろうとしているメッセージで一番伝わりやすいのは何かと考え、この「ようこそ、ブラックな企業へ。」というキャッチコピーが生まれたのです。
このコピーは大きな話題となり、新卒採用の初年度、7000人もの学生から応募がありました。しかし今考えると、一つ間違えれば炎上しかねないコピーでした(笑)。
ただ、当時はまだ社員3人の小さな会社でしたので、「いくらでもやり直しがきく」と挑戦する気持ちが大きくありました。もちろん、きちんとコピーの背景にある当社のメッセージを伝えれば理解してもらえるという目論見もありました。
Q.個性ある社員が集まるとき、組織づくりでの課題はありましたか?
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西崎様:先にお伝えした通り、組織づくりに必要なミッション、ビジョン、バリューは創業時からあったのですが、それをうまく社員に伝え、日々のアクションに落とし込む体制ができていないことが課題でした。
言っていることとやっていることが一致していないと組織はまとまらず、当然ブランディング作りもできません。そこでまず自分たちの明確なポリシーやルールを定め、具体的な期日までに何を成し遂げるかなどの定量のゴールを持つようにしました。それが前述の「ビジョンマップ」であり、これが課題解決への大きな打開策となりました。
当社のビジョンマップには「ささる×あがる=ひらく」という定義が示されています。ここで意味することは、人から本当に選ばれる企業になるためには会社自体の魅力がブレずに伝わり、共感されファンになってもらうことです。
そのためには、カッコよくお洒落なもので認知を促すようなデザインだけではなく、経営理念の策定から、それを浸透させるための社内研修や制度設計まで深く関わりながら、企業ブランディングを進めていく必要があります。
社員数が増えても理念浸透をより深くしていくため、年に1回、全社での合宿を開催して定点的に方向のずれがないか相互チェックの機会を設けました。
合宿では業務を一日止めて、「ミッション・ビジョン・バリューがなぜ生まれたのか」「どのように体現していくべきか」を全員で確認・共有します。こうした定点的な“軌道修正”の機会を持つことで、組織としての方向性のズレを防いでいます。
人事査定においても、ビジョンマップに沿った行動が評価されるようにしています。自分たちが大事にしているバリューをどれだけ体現しているか、さらに自分が体現することによって、メンバーも同じ方向を向かせられるかなど、これらを含めて基準が定められています。
当社において、理念共有と人事評価は密接につながっています。会社がどれだけ理想的な思想を掲げても、その思想に合わせた行動が評価されるシステムがなければ誰も追随しないでしょう。だからこそ私自身も、会社の思想が正しく社員に伝わっているか、また思想に基づいて経営判断がなされているかを常に意識しています。
また自社を説明するにあたり、お客様には「オモシロイ会社作りをお手伝いする会社です」と話しています。オモシロイ会社を作るには、オモシロイと感じるオフィスを作らなければならないし、オモシロイ働き方やサービスも作らなければなりません。
それらを社員が体現することで、「この会社は言ってることとやっていることが一致している」と判断されます。それが積み重なってブランドは作り上げられていくのです。
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さらに当社では、2030年に向けた事業計画を立てています。社員数については約120~130人、今の3倍ほどが目標です。サービスは今のブランディングサービスを主軸とすることに変わりありませんが、そこへ2025年4月から、新たにブランドサーベイの『B-SCORE』というサービスをリリースしました。
『B-SCORE』は、企業のブランド力を数値化するサーベイです。今後5年間でこの新サービスをもう一つの事業の柱へと育て、組織のさらなる拡大を実現していきたいと考えています。
Q.貴社の採用基準について教えてください
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西崎様:こうした言い方をすると叱られるかもしれませんが、自分が好きと思える人しか採用したくないというのが正直なところです(笑)。この「好き」というのは、私の主観ではなく「会社の価値観」のことを指しています。
どれだけスキルがあっても、自分たちの価値観に合わなければ採用には至らないでしょう。逆にスキルは足りないが、そこに向けた思想が当社のものとフィットし、思想に対するアクションができる人であれば大歓迎です。
自分たちの理念に共感し、最後までやり切ってくれることがポイントです。「オモシロイ会社」と掲げると、学生は皆やりたいと言ってくれるのですが、そこで泥臭く最後まで完遂できる人間は多くありません。マインドフィットもスキルフィットも大事ですが、どちらかといえば当社はマインドフィットを重視しています。
もちろん学生にも同様に、しっかりこちらを見て入社すべきか判断してもらいたいですね。そのため、最終面接では同じ目線で率直に話をするようにしています。私もできるだけ自分をさらけ出し、学生とのエンゲージメントを掴めた上で入社していただくようにしています。お互いに選び合っているというようなイメージですね。
Q.リーダ育成ではスピード感のある昇格システムがあるようですが、メリット・デメリットについて教えてください
西崎様:まずデメリットからお伝えすると、年に何回も査定をしなければならないことが挙げられます。昇格のチェックを逐一しなければならないことがネックです。
一方でメリットでいえば、次に向かうゴールが近く設定されるので、短期で動き、結果まで結び付けられます。当社の社員にとっては、今のシステムがモチベーションUPにつながりやすいと感じています。
昇格については、評価項目は社員全員がほぼ共通した内容であり、どの項目がどの程度あればリーダーになれるか、一定基準を示しているのでメンバーも理解しやすいようになっています。
リーダー育成は当社にとって最重要テーマとなっています。中長期計画で100名以上の社員数を挙げていますが、すでに現在の社員40名規模でも私ひとりではすべてを把握しきれないと実感しています。そのため、同じ判断基準を持ったマネージャーやリーダーを早期に育成することを推し進めています。
今まで採用、広報、人事のことなど、会社のことは全部私が決めていましたが、それらをマネージャーに任せ、迷ったら社長に相談に来るような流れにしたいと考えています。これが実現すれば、マネージャーが自らどんどん決めていくようになるので、さらにスピード感は上がっていくことになるでしょう。
さらにプロセスにも極力口出しをしないようにしています。例えば、今月の具体的な定量はここまでと設定だけは行い、それをどう実行するかは本人に極力任せるような形です。
そこで私が細かく指示を出してしまうと、うまくいってもいかなくても結局マネージャー自身の責任になりません。マネージャーに権限を渡したからには、経営側も任せた結果に責任を持ち、渡したボールは途中で取り上げない姿勢を大切にしています。
Q.今後の組織づくりの展望についてお聞かせください
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西崎様:前述した新規サービス『B-SCORE』により、会社が大きく変わると予測しています。そのため、クリエイター、ディレクター、エンジニアなどの制作チームだけではなく、うまく世の中に発信し成果を上げられる、マーケターの採用が事業発展のカギを握っています。
既存のブランディング事業に対する、クリエイターへの質の高さもますます求められていくでしょう。認知が上がるほどお客様の期待値は上がるので、そこに対してサービス提供できる人材を求めています。
いわば採用課題ということですが、これに向けて予算と時間を使いながら2030年に向けた組織計画を達成していきたいと考えています。
私としては、当社はまだ思い描いた「変わった会社」「オモシロイ会社」に到達していません。ただ、一歩ずつですが前には進んでいます。社内制度やサービス等々、もっとオモシロイ会社にするには環境や経営サイドに任せるのでなく、社員たちが自ら作っていく必要があるでしょう。
また、中期ビジョンの中には「社長がオモシロイかどうか」という項目があります。これを実現するために日々取り組んでいますが、まだまだ道半ばです。まずは“大阪で一番オモシロイ会社”の社長となり、その先で『情熱大陸』で特集されたり、大手出版社から何万部の本を出せるようになりたいと思います(笑)。
最大目標である、世界一への道筋はまだ明確に設定できておらず、まず大阪でやっていることの質を上げていき、「やっぱりトゥモローゲートだね」と言われるようになりたい。さらにそこで生まれたオモシロイことが、社会的な価値をもつようにしていきたいです。
私が目指すのは、会社の規模や利益率の高さ、社員数の多さ、世界的なサービス展開といった指標ではありません。ニッチでもいいので、他にない熱烈なファンがいるような会社づくりをする社長でありたいと思います。






