DXやAIによる働き方の変化は、組織のマネジメントにも大きな影響を及ぼしつつあります。
これからの時代の組織は、トップダウンの指示・命令で人を動かす従来の管理統制型のマネジメントから、変化に柔軟に対処してイノベーションを生み出していけるように、ボトムアップの価値共創型マネジメントに変わっていく必要性があります。
そのような中、管理職に必要になってくるのが「対話力」のリスキリングです。
記事では、管理職養成を得意とする研修会社の知見を踏まえて、何故これからの時代の管理職は対話力が必要になってくるのかをご紹介すると共に、対話力をリスキリングする上でのポイントについて解説します。
<目次>
- 管理職に必要な「対話力」のリスキリング
- いま組織に生じている問題点
- 管理職と組織の対話力をリスキリングするポイント
- これからの時代の管理職に求められる役割
- ジェイックが提供する管理職のリスキリングに役立つサービス
- 令和のピープルマネジメントに求められる管理職のリスキリング
管理職に必要な「対話力」のリスキリング
これからの時代に、管理職にとって特に必要になってくるのが「対話力」です。どうして対話力を磨く必要があるかについて、まずは背景を見ていきましょう。
指導方法の変化
人材育成に時間をかけることのできた昭和の時代には、「仕事は見て覚えろ」というやり方が中心でした。
しかし、今の時代の若者は、「コスパ」や「タイパ」という言葉もあるように、効率を重視し、無駄なことはやりたがらない傾向があります。
そのため、たくさんの仕事をこなす中で徐々に感覚をつかんでいくのではなく、最初から具体的なやり方を教わることを望むことが多くなります。
同時に、ITが発達する中で人に求められる仕事は高度化し、たとえば、会議の資料をコピーする、電話対応する、議事録を取るといった仕事はなくなりつつあり、新人であろうといきなり高度な業務をこなすことが求められるようになっています。
また、「我慢してやれば、将来で待遇や役職で返してもらえるから我慢する」という価値観は薄れ、仕事に対する意味付けが重視される中で、上司は適宜、新人や若手を勇気づけ、強みを見抜くような指導が求められるようになっています。
ボトムアップ型・価値共創型組織への移り変わり
明確な正解のあった時代には、その正解に効率よくたどり着けるようにマネジメントすることが重要でした。
そのようなマネジメントを実現するために、組織はピラミッド型の管理と統制が中心のものとなり、上司は上からの指示を一方的に伝え、実行を管理することが役目でした。
しかし、正解のない時代になり、変化に柔軟に対応する、現場の声を素早く吸い上げてイノベーションにつなげていくことが求められる中で、組織は上意下達のピラミッド型からフラットなサークル型の組織になりつつあります。
分かりやすいように組織とマネジメントの変化を表にまとめると、以下のような形です。
表で示したように、これからの組織パターンは、いくつものサークルが集まったものとなり、管理職などは各サークル内をリーダーとしてけん引することが求められるようになっています。
従来のような上下関係での指示・命令ではなく、対話によって部下の感情をポジティブなものに変え、自発的に考える姿勢を引き出し、イノベーションを創出していくことが求められます。
このように、組織形態が大きく変化するなかで、管理職層も変化に応じてマネジメントの能力をリスキリングする必要性が出てきます。
人的資本経営時代の到来
従来の経営においては、人材を「資源」と捉え、いかに効率よく人材を活用して成果に結びつけるのかが重視されていました。
しかし、現在は人材を「資本」と捉えて投資の対象とし、その価値を最大限に引き出そうとする方向にシフトしています。
正解がある時代とない時代では、人材に対する捉え方も大きく異なり、人材をマネジメントする上司の側も、新しいマネジメントの方法を身につける必要が出てきます。
人材の価値を引き出せるようにするためには、対話によって潜在的な能力やアイデアを引き出せるように、上司の対話力が重要になってきます。
いま組織に生じている問題点
価値観の多様化や技術革新の影響は非常に大きく、組織形態も大きく変わることが求められるようになってきています。ここでは、大きな変化を前に、従来型の組織がどのような問題を抱えているのかについて解説します。
管理職が変化に対応できない
先ほどもご紹介した通り、現在はボトムアップの価値共創型組織への変化が求められています。一方で、今の管理職は、管理統制型のマネジメントを受けて育ってきた方が多くを占めています。
自分たちが過去に体験し実践してきたマネジメントと異なる方法でマネジメントするように求められているわけで、その変化に戸惑っている管理職は多くなっています。
自分自身が体験してこなかったことをメンバーに実施しなければならず、変化に対応できていない方が多くなっているという課題があります。
若手の価値観変化
終身雇用と年功序列が崩壊し、雇用の流動化、つまり転職と成果主義が当たり前となった中で、働き方に関する常識もこの数十年で大きく変わりました。たとえば、若い世代は、“我慢する”ということに対して、「石の上にも三年」ではなく「石の上なら三か月」という価値観を持っている傾向があります。
背景には、タイパ(タイムパフォーマンス・効率性)を求める価値観、また、早期のキャリア構築意欲の高まりがあり、これ自体は悪いことではありません。
しかし、上記のような傾向や価値観が空回りしてしまう若手もいますし、「この会社で活躍できない」や「希望が叶わない」などと結論付けるとすぐ離職してしまう傾向も強まっています。
いまの管理職はこうした若手の価値観を理解したうえで、マネジメントしていく必要があります。
スキル不足による1on1の失敗
価値共創型組織のマネジメントへの切り替えの具体策として実施されることが多いのが1on1です。
価値共創のマネジメントにおいて、部下の強みを引き出したり、イノベーションにつながりそうなアイデアを引き出したりすることが重要であり、1on1をはじめとした対話型マネジメントはとても重要です。
しかし、多くの上司は対話型のマネジメントを受けて育ってきたわけではありません。会社から「1on1をしろ」「現場の困りごとや課題を拾い上げろ」と号令がかかる中で、どうすれば良いかも分らぬまま、1on1で「何か困っていることはないか?」と聴いてしまいがちです。
こうした質問に対して困っていることや改善要望といった声が上がってきますが、そのような声は、不平不満の裏返しでもあります。
結果的に「価値共創につながりそうな顧客の声や市場の変化」「変化に対応したりイノベーションにつながったりしそうなアイデア」は経営陣には届かず、代わりに現場の不満ばかりが集められてしまうといったことが起こっている組織もあります。
困りごとの改善は大事ですが、「分かっているけれども、すぐにはなんとかできない」というケースも多いものです。
また、上司と部下の間で共通言語や信頼関係がないままに1on1で対話頻度を増やす、業務進捗ではない価値観やキャリア・組織開発等に関するテーマで対話することで、結果的に上司と部下の間に溝が出来てしまうこともあります。
つまり、1on1で意図した成果は生まれず、結果として、上司と会社へのエンゲージメントを低下させてしまうことにもなりかねません。
こうしたことに陥らないように、上司と部下の対話を価値共創やイノベーション、パフォーマンスの向上につなげるためには、管理職が対話のやり方をしっかりと学ぶ、また、組織全体に共通言語を作る必要があります。
管理職と組織の対話力をリスキリングするポイント
対話力をリスキリングする上で、ちゃんとした対話ができるように土台となる部分を整えておくことが重要になってきます。具体的に、どういったことに気をつければいいのかを解説します。
共通言語の構築
価値共創型の組織において、イノベーションを生み出すのに重要な役割を担うのが、上司と部下の対話というコミュニケーションです。
しかし、共通言語が構築できていない状態でコミュニケーション量だけ増やしてしまうと、すれ違いが多くなってしまいます。たとえば、「上司が価値観を一方的に押し付ける」「異なる価値観を正面からぶつけ合う」「この相手には言っても無駄だと諦める」といったことです。そうなるとトラブルも増えてしまい、対話の本来の目的が果たせなくなってしまいます。
しかし、共通言語を構築して、コミュニケーションの作法や異なる価値観への対応方法を共有することで、しっかりした対話の土台を作ることができます。
心理的安全性の確保
部下が安心して現場の声を上司に上げられるようにするには、心理的安全性の確保が大前提です。
トップダウンの管理統制型の組織においても、「部下からの報連相が、なかなか来ない」と嘆く上司は多いものです。部下が報連相のやり方をよく分かっていないということもありますが、上司が心理的安全性を作れておらず、部下が報連相をやりづらいケースも多々あります。
変化に素早く対応し、イノベーションを生み出していくためには、下からの声をうまく拾い上げることが重要です。
上からの一方的な指示・命令のスタイルを変えるうえでも、管理職は傾聴や質問スキルを含めた心理的安全性の構築スキルを身につけることが必要になってきます。
そうしたスキルが身につくことで、ボトムアップのマネジメントを実現させることができるようになるでしょう。
感情に寄り添えるようにする
今までのマネジメントは理屈が重んじられていたのに対し、これからの時代は感情をうまくマネジメントすることも重要になってきます。
昭和の時代のように理屈や権威・権限で相手を説き伏せるやり方は、価値観が多様化する今の時代には合わなくなってきています。ワークライフバランスが叫ばれ、仕事の相対的な重みが減っている等の中で、会社内の権威や権限のパワーは相対的に弱まってきているのです。
また、物質的にある程度の充足が生まれる中で、給与アップや出世のチャンスを提示することだけでエンゲージメントを高めることは難しくなってきています。
もちろん組織としてのルールや規範は必要ですし、大切なものです。ただ、同時に、一人ひとりの価値観や感情に向き合い承認欲求を満たすことで、部下の感情をポジティブなものにして動かしていくことが今の時代には必要です。
これからの時代の管理職に求められる役割
組織の形態が変化する中で、管理職に求められる役割も変わっていきます。これからの時代に、管理職はどのような役割を果たすことが求められるのかを紹介します。
リーダーシップを発揮し求心力を発揮する
ピラミッド型の管理統制を重視する組織においては、管理職は上からの指示・命令をメンバーに伝え、それがちゃんと実行されているのかを監督することが主な役目でした。
これからの時代の管理職には、フラットなサークル型の組織を引っ張っていく存在としてリーダーシップを発揮することが求められるようになってきます。
サークル型の組織において、柔軟性を持たせつつも組織がバラバラになってしまわないようにするためには、ミッション・ビジョン・バリューを浸透させ、進むべき方向を明確に指し示し、役職や権威ではない求心力を生み出す必要があります。
前述の通り、昇進や待遇による求心力は弱まり、一方で雇用の流動化による遠心力は強まってきています。
その中で上司が、リーダーシップを発揮してメンバーを向かうべき方向へ束ねていけるようにすることが重要になってきます。
部下の強みを見つけ出し伸ばす
若手人材の離職を防ぐためには、エンゲージメントを高めて、仕事にやりがいを持たせることが重要です。
そのためには、部下の強みを見つけて伸ばし、強みを仕事で発揮してスピーディーに成果に結びつけることが必要になってきます。
変化の激しい時代に育った今の若者にとって、結果が出るまでに時間がかかってしまうと、「このままで大丈夫だろうか」「この会社にいても成長できないのではないか」と不安が高まってしまい、離職につながるリスクも高まってしまいます。
それを防ぐためにも部下の強みを見抜いて伸ばしていく、小さな成功体験を積ませていくことが重要な役目になってきます。
イノベーションを生み出すためにも、それぞれの部下の強みを把握し、それらをうまくマネジメントして強いチームを作っていくことが重要です。
仕事の専門性が高まっていくなかで、管理職が一方的に引っ張ろうとするのではなく、メンバー同士でうまく協力し合い最高のパフォーマンスを発揮していけるように調整することも、これからの時代の管理職に求められるようになってきます。
現場の声を吸い上げイノベーションにつなげていく
ITやAIの発達により変化の伝播速度が速く、異業界からいきなり競合が現れることも増えた中で、管理職や経営陣よりも顧客に身近なところで働いている従業員の方が顧客のニーズや市場の変化を把握できていることもあります。
そのため、上司は変化対応やイノベーションにつながりそうな現場の声を拾い上げることが重要になります。
イノベーションのきっかけはどこにあるのか分からず、顧客のちょっとした一言がブレイクスルーにつながるということもあり得ます。
そういったチャンスを逃してしまわないようにするためにも、統計データ等には表れにくい顧客の声を吸い上げ、それをイノベーションへとつなげていけるようにすることが必要です。
ジェイックが提供する管理職のリスキリングに役立つサービス
これからの時代において、管理職に対話力やリーダーシップのリスキリングが求められることは解説した通りです。
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、管理職の対話力やリーダーシップを高め、令和のピープルマネジメントを実現する研修サービスを提供しています。ご興味あれば、ぜひ以下より詳細をご覧ください。
デール・カーネギーのリーダーシップ&コミュニケーション研修
管理統制型の環境下で育った管理職は、対話型のコミュニケーションスキルが弱く、指揮命令の一方的なマネジメントになってしまいやすいものです。
そこでお勧めなのが、デール・カーネギーの「【人を動かす】リーダーシップ&コミュニケーション研修」です。
研修では、デール・カーネギーが長年教育の現場で培ってきた「人間関係30の原則」を身につけることで、良好な信頼関係を構築できるようにします。
部下からの信頼が得られるようになることで、チームをまとめてリーダーシップを発揮し、成果をあげるスキルも身につきます。
デール・カーネギー式のトレーニングを受けることで、部下と対話してポジティブな感情を生み出し、役職による“圧”に頼ることなく相手を動かせるようになるでしょう。
関連サービス資料を
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強みを活かすストレングス・ファインダー®研修
強みを活かしたマネジメントを組織内で実践できるようにするのにお勧めなのが、「ストレングス・ファインダー®研修」です。
世界2300万人が受検した強み診断ツールであるストレングス・ファインダー®を用いて強みの診断を行い、強みをどのように活用して成果につなげていくかを学ぶことができます。
強みを活かしたセルフマネジメントに加えて、管理職向けに部下の強みを活かすマネジメント手法も学べるように研修内容をカスタマイズすることも可能です。
共創型組織の中で成果を出せるようになる「7つの習慣®」研修
ボトムアップの価値共創型組織で成果を出していくためには、個々の従業員が主体性を発揮し、周囲の人とシナジーを創り出していくことが必要になってきます。また、異なる価値観を持った人達が集まっていることを前提として、コミュニケーションや人間関係の共通言語を作ることも大切です。
そのようなスキルを身につけるのにお勧めなのが、「7つの習慣®」研修です。
管理統制型の組織の中では、上からの指示や命令を受けて仕事することが多く、仕事に対する姿勢が受け身になりやすくなります。また、横同士の組織連携が少なくなり、他部門よりも自部門の利益を優先させてしまう「セクショナリズム」「サイロ化」も生じやすくなります。
成功したといわれる人に共通する原理・原則である「7つの習慣®」を身につけることで、縦割り組織で起りがちな問題を克服し、一人ひとりが主体的に動いて周囲と協力し合いながら価値を創造していく新たな組織に変わっていくことができます。
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令和のピープルマネジメントに求められる管理職のリスキリング
DXやAIによる変化がある中で、「リスキリング」というとITスキルの習得ばかりに意識が向きがちです。もちろんITやAIの活用は、今後の組織にとって必須のものです。
ただし、同時に働き方に関する価値観の変化が起こり、求められるマネジメントのやり方が大きく変わる中で、管理職には令和のピープルマネジメントを実現するための対話力、リーダーシップのリスキリングが求められています。
いまの組織が上意下達の昭和型マネジメントで、新人や若手のモチベーション低下・離職を起こしてしまっているようであれば、ぜひ組織パフォーマンスを高めるための管理職のリスキリングを検討してみてはいかがでしょう。
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、管理職の対話力やリーダーシップを高め、令和のピープルマネジメントを実現する研修サービスを提供しています。ご興味あれば、ぜひ以下より詳細をご覧ください。
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