パラダイムとは?7つの習慣とパラダイムシフトの起こし方をわかりやすく解説

『7つの習慣』のパラダイムとは?分かりやすい解説とパラダイムシフトの起こし方

パラダイムは米国人の科学者トーマス・クーンによって提唱された言葉ですが、現在のビジネス社会では、書籍『7つの習慣』で提唱された考え方を指すことが大半です。パラダイムやパラダイムシフトとは何か?日本語に直すとどんな意味や具体例で表せるかを解説しました。

 

パラダイムやパラダイムシフトという言葉をビジネス社会に根付かせた書籍、『7つの習慣』はアメリカのスティーブン・R・コヴィー博士が著したビジネス書で、全世界で4,000万部、日本国内でも240万部を売り上げる大ベストセラーです(2021年8月時点)。

 

コヴィー博士は、「『7つの習慣』は、効果的に生きるための基本的な原則を具体的なかたちにしたものである」と書籍の中で述べています。7つの習慣の内容や効果については以下の記事で要約しています。

 

コヴィー博士は「『7つの習慣』を本当に理解するためには「まず自分のパラダイムを理解し、パラダイムシフトの方法を知らなければならない」とも話します。

 

記事では「7つの習慣®」の考え方を実践するにあたり、非常に重要なキーワード「パラダイム」の解説、そして、「パラダイムシフト」とは何か、また、パラダイムシフトを起こす方法を紹介します。

 

<目次>

パラダイムとは?

『7つの習慣』では、私たちの態度や行動は、私たち自身のパラダイムから生じていると解説されています。本章では、最初にパラダイムとは何かを説明します。そして、パラダイムによって取る行動と得られる結果が変わるという“See-Do-Getサイクル”の考え方を紹介します。

 

パラダイムとは?

誰しも、自分は物事をあるがままに、客観的に見ていると思いがちである。だが実際はそうではない。私たちは、世界をあるがままに見ているのではなく、私たちのあるがままの世界を見ているのであり、自分自身が条件づけされた世界を見ているのである。
何を見たか説明するとき、私たちが説明するのは、煎じ詰めれば自分自身のこと、自分の物の見方、自分のパラダイムなのである。
(スティーブン・R・コヴィー著 「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」 より引用)

 

コヴィー博士が言うように、私たちは物事を客観的に見ているわけではなく、一人ひとり異なった“自分の”見方や捉え方をしています。パラダイムとは、一人ひとりの「物の見方や捉え方」を指す言葉です。

 

例えば、朝食に目玉焼きが出てきたとします。皆さんは目玉焼きにどんな調味料をかけて食べますか。醤油、ソース、ケチャップ、塩コショウ、何もかけずに食べるという人もいるでしょう。

 

どれが正解でも間違いでもありませんが、いずれにしても、人によって異なるいろいろな答えが返ってきます。ここでの「目玉焼きにかける調味料といえば〇〇」というのも、見方や捉え方、考え方や価値観であるパラダイムの一つです。

 

私たちは一人ひとり違ったパラダイムを持っている

先ほどはパラダイムの例として、目玉焼きにかける調味料の話をしました。では、「目玉焼きにかける調味料といえば〇〇」というパラダイムはどこで決まったのでしょうか。

 

きっと両親が使っていた、子供の頃からの習慣で慣れ親しんだ味、あるいは、たまたま試供品でもらった調味料を使ったらとても美味しくてそれ以来愛用している、など、長年の習慣や過去の経験がきっかけで「目玉焼きにかける調味料といえば〇〇」というパラダイムができたはずです。

 

“目玉焼きの調味料”に限らず、私たちは人生の経験を通じて、自分なりの物の見方や考え方=パラダイムが形成してきています。相対性理論で有名な物理学者アルベルト・アインシュタインが言ったとされる「常識とは 18 歳までに身に付けた偏見のコレクションでしかない」という言葉を知っている人も多いかもしれません。

 

ここでいう“常識”こそがパラダイムです。アインシュタインの言葉は、“人生の経験を通じて、常識(パラダイム)が形成される”、そして、“パラダイムとは普遍的に正しいものではなく、自分なりの見方・捉え方なのだ”ということを見事に言い当てています。

 

パラダイムが私たちの行動と結果を決める ~See-Do-Getサイクル~

『7つの習慣』では、私たちが物事をどう見るか(See)、つまりパラダイムは私たちがどう行動するか(Do)を決め、どう行動するかで得られる結果(Get)が決まると述べています。

 

この「パラダイム(See)が行動(Do)に影響を与え、行動が得られる結果(Get)を決める」という一連のサイクルを「See-Do-Getサイクル」と呼びます。

 

ビジネスでもよく聞く逸話を引用して、See-Do-Getサイクルの具体例を解説します。

 

とある靴メーカーの営業社員がアフリカに市場調査に行きました。現地の住民たちは靴を履かずに素足で生活をしています。住民たちの様子を見た営業社員Aさんは本国の上司に連絡を入れました。「部長、ここはダメです。ここでは誰も靴を履いていません。」

 

別の靴メーカーに所属する営業社員Bさんも、同じようにアフリカに市場調査に行きました。やはり住民たちは素足で生活をしています。営業社員は本国の上司に報告しました。「部長、これはチャンスです。誰も靴を履いていません。」

 

二人の営業社員が見たのは同じ光景です。しかし、同じ光景を見たにも関わらず、二人は各々違った受け止め方をしました。二人の受け止め方こそがパラダイムです。

 

Aさん・Bさんはそれぞれのパラダイムに基づいて、Aさんは「見込みはありません」、Bさんは「チャンスです」という全く異なる報告(行動)をします。

 

さて、二人の報告(行動)はどんな結果をもたらすでしょうか。「ダメです」と報告されたAさんの会社は、アフリカ進出を諦めるかもしれません。逆に「これはチャンスです」と報告されたBさんの会社は、アフリカ進出を決めて新たな市場を開拓し、大きな利益を上げることに成功するかもしれません。もちろん失敗するかもしれません。

 

ただ、上記で分かる通り、パラダイム(物事の見方・捉え方)が、私たちの行動を決めて、私たちの行動が得られる結果を変えるのです。

 

異なるパラダイムを受け入れる大切さ

パラダイムとは、一人ひとりの「物の見方や捉え方」を指す言葉です。当然、私たちは一人ひとり違ったパラダイムを持っています。パラダイムは人それぞれの性格と価値観、人生経験の積み重ねからできているからです。

 

先ほど紹介したビジネスの事例のように、同じ光景を見ても受け止め方、反応や意見は人それぞれ異なります。だからこそ、自分とは異なる意見を「間違っている」と決めつけてしまうことがないようにすることが大切です。

 

他者が自分とは異なるパラダイムをもっていることを受け入れることで、自分とは異なる別の視点、意見を元にして新しい気づきを得たり、第三案を生み出しやすくなります。自分と異なるパラダイムの存在を受け止め、受け入れるようになることで、人間関係も良くなり、生み出せる成果も高まるでしょう。

 

第三案とはシナジー(相乗効果)を指す言葉です。異なるパラダイムを受け入れることの大切さに気付き、実践することで、1+1の合計を2ではなく、3にも10にも100にもできる可能性があります。

 

また、他者が自分とは異なるパラダイムを持っていることを理解していると、意見が対立したときも、相手のパラダイムを受けいれ、より良い解決策を理性的に探れるようになるでしょう。

 

シナジー(相乗効果)や第三案については次の記事で詳しく解説しています。

 

パラダイムシフトとは? パラダイムが変わる、パラダイムを変える

古いパラダイムが新しいパラダイムに変わることを、「パラダイムシフト」と言います。以下、コヴィー博士が体験したエピソードを例にパラダイムシフトを解説し、併せてパラダイムシフトを起こす方法をお伝えします。

 

コヴィー博士が体験したパラダイムシフト

ある日曜日の朝、ニューヨークの地下鉄で体験した小さなパラダイムシフトを、私は今も覚えている。乗客は皆黙って座っていた。新聞を読む人、物思いにふける人、目を閉じて休んでいる人、車内は静かで平和そのものだった。そこに突然、一人の男性が子供たちを連れて乗り込んできた。子供たちは大声で騒ぎだし、車内の平穏は一瞬にして破れた。男性は私の隣に座り、目を閉じていた。この状況に全く気付いていないようだ。

 

子供たちは大声で言い争い、物を投げ、あげくに乗客の新聞まで奪いとるありさまだ。迷惑この上ない子供たちの振る舞いに、男性は何もしようとしない。

 

私は苛立ちを抑えようにも抑えられなかった。自分の子供たちの傍若無人ぶりを放っておき、親として何の責任も取ろうとしない彼の態度が信じられなかった。他の乗客たちもイライラしているようだった。

 

私は精一杯穏やかに、「お子さんたちが皆さんの迷惑になっていますよ。少しおとなしくさせていただけませんか」と忠告した。

 

男性は目を開け、子供たちの様子に初めて気付いたかのような表情を浮かべ、そして、言った。

 

「ああ、そうですね。どうにかしないといけませんね… 病院の帰りなんです。一時間ほど前、あの子たちの母親が亡くなって… これからどうしたらいいのか… あの子たちも動揺しているんでしょう…」

 

その瞬間の私の気持ちが、想像できるだろうか。私のパラダイムは一瞬にして転換してしまった。突然、その状況を全く違う目で見ることができた。違って見えたから違って考え、違って感じ、そして、違って行動した。

 

今までのイライラした気持ちは一瞬にして消え去った。自分の取っていた行動や態度を無理に抑える必要はなくなった。私の心にその男性の痛みがいっぱいに広がり、同情や哀れみの感情が自然にあふれ出たのである。
(スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』より引用)

コヴィー博士は最初、隣の席の男性を「子供が騒いでも注意しない困った父親だ」というパラダイムで見ていました。しかし、妻を亡くしたばかりだと聞いた瞬間に男性に対するパラダイムが一瞬にして変わったわけです。パラダイムの変化、これがパラダイムシフトです。

 

パラダイムシフトを意図的に起こす

現状を変えたい、望む結果を得たいと思ったとき、私たちはまず行動を変えようとします。もちろん行動を変えることは大切です。しかし、See-Do-Getサイクルで見たように、私たちの行動の源はパラダイムです。

 

従って、現状を変えて望む結果を得るためには、行動を変えること以上にまずパラダイムを変えることが重要です。

 

コヴィー博士は、「比較的小さな変化を起こしたいのであれば、自分たちの態度や行動を改めればよい。しかし、大きな変化、劇的な変化を望むならば土台となるパラダイムを変えなければならない」と言っています。

 

では、パラダイムを意図的に変える、すなわちパラダイムシフトを意図的に起こすにはどうすればよいでしょうか。

 

自分のパラダイムを意識的に捉える習慣をつける

パラダイムシフトを起こす第一歩は「自分のパラダイムを意識的に捉える」習慣をつけることです。パラダイムの多くは、習慣であり、無意識的なものです。

 

自分のパラダイムを意識的に捉えて、パラダイムに気付き、癖や偏りが分かってくると、物事の違う捉え方を意識すること、今までと違って捉えることも容易になり、パラダイムシフトを起こしやすくなります。

 

目玉焼きの例でいえば、“目玉焼きには醤油”というパラダイムの人は、目玉焼きが出されたら無意識に醤油を取ってかけます。同じテーブルの上にソースやケチャップがあったとしても目に入らないぐらいの感覚で醤油を取るでしょう。

 

自分のパラダイムを意識的に捉える、とは「自分は“目玉焼きには醤油”というパラダイムなんだ」と気付くことです。

 

“目玉焼きには醤油”というパラダイムに気付くことで、“たまにはソースも使ってみようか”という新たなパラダイムを意識的に捉えることができます。そして、“ソースでも意外と美味しいな”とか、“今後は気分に応じて違う調味料を使おう”と新たなパラダイムを身に付けることができるのです。

 

原則中心のパラダイムを身に付ける

書籍『7つの習慣』では、アメリカ海軍の艦長が体験したパラダイムシフトの話が紹介されています。

 

あるときに、霧で視界が悪い中で航行していたところ、艦の進行方向に光が見えました。艦長は衝突を避けるため、相手に対して進路を変更するよう要求したところ、進路変更を拒絶されて、逆に相手から進路変更を要求されました。

 

艦長が指揮していたのは、アメリカ海軍の重要艦である戦艦です。自分以上に優先させる船舶は付近にはいないはずです。艦長は怒りを込めて、「こっちは戦艦だぞ!そちらが進路を変更しろ!」と怒りを込めて返信しました。

 

それに対する答えは、「こちらは灯台だ、貴艦が進路を変更しろ」というものです。相手が灯台であったことに気付いた艦長は、慌てて艦の向きを変えた、というエピソードです。

 

地上にある灯台に進路変更を求めて無駄であるように、世の中には動かしがたい普遍的な“原則”があります。例えば、「手に持ったリンゴを手放せば、リンゴは重力に従って地上に落ちる」というのは物理学的な“原則”です。

 

私たちは、「いや、リンゴは宙に浮く」「重力なんてものは存在しない」と言い張ったとしても、リンゴを手放せば、リンゴは重力に従って地上に落ちます。

 

原則から外れた“自分のパラダイム”を押し通そうとすることは、灯台に対して進路変更を求めるようなものであり、“リンゴは宙に浮く”と信じ込んで手を放すようなものです。

 

灯台や重力は物理的な原則ですが、世の中には望む結果を手に入れる、成功するための原則があります。自らのパラダイムを、原則中心のパラダイムに修正することが、パラダイムシフトのポイントであり、成長への近道なのです。

 

 

おわりに

記事では、書籍『7つの習慣』の考え方を理解して実践するための大前提となる「パラダイム」と「パラダイムシフト」の考え方を紹介しました。

 

パラダイムは私たちの態度や行動の源であり、私たちが得られる結果を決めてしまうこと、望む結果を得るためにはパラダイムを変える必要があることなど、ご理解いただけたでしょうか。

 

コヴィー博士の地下鉄でのエピソードを思い出してください。もし同じ状況で、父親の事情を聞いたら、どんな行動を取るでしょうか。やさしい言葉をかけるでしょうか。コヴィー博士のように同情と哀れみの感情で気持ちがいっぱいになるでしょうか。パラダイムは一人ひとり違いますから、誰もが同じ感情になり同じ行動を取ることはないでしょう。

 

コヴィー博士の反応や行動は、コヴィー博士の持っているパラダイムと人格の結果です。自分自身のパラダイムに目を向けることは、すなわち自分自身の人としてのあり方、生き方に目を向けることに他なりません。

 

自分が望む結果を手に入れるためには、どのようなあり方、そしてどのようなパラダイムが必要でしょうか

 

書籍『7つの習慣』では、望む結果を手に入れるための原則が紹介されています。パラダイムとパラダイムシフトの考え方を理解したうえで、書籍『7つの習慣』を読むと、きっとより深い気付きが得られるでしょう。

 

株式会社ジェイックでは、7つの習慣を習得する研修を実施しています。フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社と正式契約しており、認定資格を取得した講師が研修を行います。ご興味のある方はぜひ以下のページよりお問い合わせください。

著者情報

宮本 靖之

株式会社ジェイック シニアマネージャー

宮本 靖之

大手生命保険会社にて、営業スタッフの採用・教育担当、営業拠点長職に従事。ジェイック入社後、研修講師として、新入社員から管理職層に至るまで幅広い階層の研修に登壇している。また、大学での就活生の就職対策講座も担当。

関連記事

  • HRドクターについて

    HRドクターについて 採用×教育チャンネル 【採用】と【社員教育】のお役立ち情報と情報を発信します。
  • 運営企業

  • 採用と社員教育のお役立ち資料

  • ジェイックの提供サービス

pagetop