パラダイムとパラダイムシフト
「パラダイム」と「パラダイムシフト」を理解することは、『7つの習慣』を実践するうえでの入り口です。
本章では最初に、パラダイムとは何か、また、パラダイムシフトとは何かを解説します。
パラダイムとは?
パラダイムとは、『7つの習慣』で私たちの物の見方や考え方、感じ方のことをさす言葉です。
私たちは、自分では物事をありのままに見ていると思いがちですが、実際には、自分のパラダイムを通じて物事を見て解釈しています。
パラダイムは私たちが無意識にかけている「メガネ」のようなものです。私たちは、自分のメガネを通じて世界を見ているのです。
パラダイムは人それぞれの人生経験に基づいて形成されるものであり、私たちは一人ひとり異なるパラダイムをもっています。
パラダイムが私たちの行動と結果を決める(See-Do-Getサイクル)
なぜパラダイムが重要なのかというと、パラダイムは私たちが取る行動を決め、手にする結果を決める力があるからです。私たちはパラダイムに従って、さまざまな選択を行なっています。
『7つの習慣』ではパラダイムの重要性を「See-Do-Getサイクル」という概念で解説しています。パラダイム=物事をどう見るか(See)が、私たちの行動(Do)を決め、行動によって私たちが得られる結果(Get)が決まります。そして、得た結果が再び私たちのパラダイムに影響に与えます。
つまり、パラダイム(See)が行動(Do)を決め、行動が結果(Get)を決めるからこそ、私たちにとって、“どのようなパラダイムを持つか?”は、自分が得る結果も決める極めて重要な存在なのです。
<See-Do-Getサイクル>
![]()
パラダイムは、いわば私たちが人生を歩むうえで拠り所にしている「地図」ともいえます。もし、地図が正しく描かれていなければどうなるでしょう。
地図が間違っていれば、どんなに頑張っても、得たい結果、望む人生に近づくことはできません。
小さい変化を目指すなら、行動を変えればよい しかし、飛躍的な変化を目指すなら、パラダイムを変えねばならない
スティーブン・R・コヴィー著 「7つの習慣」 より引用
コヴィー博士は、状況や結果を大きく変えたければ、態度や行動ではなく、パラダイムを変えなければならないと話しています。
パラダイムシフトとは?
パラダイムシフトとは、今までのパラダイムが一気に変化することをいいます。例えば2020年からのコロナ禍とコロナ禍にともなう緊急事態宣言の影響で、職場に行くのが当たり前だった働き方が、一気にテレワークに変わったという人も多いかと思います。
コロナ禍によって「働き方」という概念に起こった変化はパラダイムシフトそのものです。
パラダイムシフトはコロナ禍のように、私たちの手の届かないところで起こるだけではありません。パラダイムシフトは、一人ひとりの人生にさまざまなタイミングで訪れます。
パラダイムシフトの体験は、私たちの内面を変えるというとても大きな意味を持っています。
もう少し具体的にパラダイムシフトとは何かを理解するうえで、『7つの習慣』で紹介されているコヴィー博士自身が体験したパラダイムシフトのエピソードを紹介します。
ある日曜日の朝、ニューヨークの地下鉄で体験した小さなパラダイムシフトを、私は今も覚えている。
乗客は皆黙って座っていた。新聞を読む人、物思いにふける人、目を閉じて休んでいる人、車内は静かで平和そのものだった。
そこに突然、一人の男性が子どもたちを連れて乗り込んできた。
子供たちは大声で騒ぎだし、車内の平穏は一瞬にして破れた。男性は私の隣に座り、目を閉じていた。この状況にまったく気づいていないようだ。
子どもたちは大声で言い争い、物を投げ、あげくに乗客の新聞まで奪いとるありさまだ。迷惑この上ない子どもたちの振る舞いに、男性は何もしようとしない。
私は苛立ちを抑えようにも抑えられなかった。自分の子どもたちの傍若無人ぶりを放っておき、親として何の責任も取ろうとしない彼の態度が信じられなかった。
他の乗客たちもイライラしているようだった。
私は精一杯穏やかに、「お子さんたちが皆さんの迷惑になっていますよ。少しおとなしくさせていただけませんか」と忠告した。
男性は目を開け、子どもたちの様子に初めて気づいたかのような表情を浮かべ、そして、言った。
「ああ、そうですね。どうにかしないといけませんね… 病院の帰りなんです。一時間ほど前、あの子たちの母親が亡くなって… これからどうしたらいいのか… あの子たちも動揺しているんでしょう…」
その瞬間の私の気持ちが、想像できるだろうか。
私のパラダイムは一瞬にして転換してしまった。突然、その状況を全く違う目で見ることができた。
違って見えたから違って考え、違って感じ、そして、違って行動した。今
までのいらいらした気持ちは一瞬にして消え去った。
自分のとっていた行動や態度を無理に抑える必要はなくなった。
私の心にその男性の痛みがいっぱいに広がり、同情や哀れみの感情が自然にあふれ出たのである。
スティーブン・R・コヴィー著 「7つの習慣」 より引用
先ほどのエピソードのコヴィー博士もやはり、最初は隣の席の男性を「子供が騒いでも注意しようとしない困った父親だ」というパラダイムで見ていました。
しかし、妻を亡くしたばかりだと聞いた瞬間に、「大切な人を失った深い悲しみの中にいる男性」というように、一気にパラダイムが変わることになりました。パラダイムが変わった前と後とでは、男性にかける言葉や接する態度がまったく違ったものになることでしょう。
コヴィー博士が体験したように、パラダイムシフトは、私たちのそれまでの物の見方や、自分や周囲の人への可能性を大きく拡げてくれるのです。
人は同じ物事に出会ったとしても、持っているパラダイムの違いによって異なる捉え方をします。
例えば、上司に「面倒な仕事を振ってくる」というパラダイムを持っている人は、上司の仕事に対して「どうしていつも自分にムチャ振りばかりするんだ!手を抜いている!」と感じるかもしれません。
しかし、じつは上司は「〇〇さんは成長の可能性がある!彼にはどんどん大きな仕事を任せていこう!結果の責任は自分が取るし、失敗したときにはすぐフォローできるようにしっかり準備しておこう」と考えているかもしれません。
この例でいえば、上司が部下のパラダイムを想像したり、部下が上司のパラダイムを知ったりしたとき、2人のパラダイムは大きく変わり、関係性も変わるかもしれません。
しかし、自分と違うパラダイムの存在を想像せず、自分のパラダイムに固執していれば、物事を正しく判断したり、相手とわかり合おうとしたりすることからどんどん遠ざかってしまうでしょう。






