入社2年目社員がリーダーシップを発揮する意味とそのために必要なこと

更新:2023/07/28

作成:2022/01/05

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

入社2年目社員がリーダーシップを発揮する意味とそのために必要なこと

「リーダーシップ」という言葉は、人や組織を牽引するリーダーとしての資質であり、管理職やマネジメント層には必要不可欠な能力です。しかし、最近は成長企業を中心に、若手や新入社員のうちから「リーダーシップ教育」を実施している企業も増えています。
とはいえ、新入社員のうちは「組織に慣れて仕事を覚える」ことで精いっぱいな側面もありますので、若手社員にもリーダーシップ教育を実施したいという場合には「2年目社員」というのは一つ適したタイミングです。
記事では、2年目社員が置かれた状況も確認したうえで、2年目社員がリーダーシップを発揮すべき必要性や2年目社員に求められるリーダーシップについて解説します。

<目次>

入社2年目社員の状況とは?

そもそも入社2年目の社員はどんな状況や心理状態にあるのでしょうか。まずはリーダーシップということは置いておいて、調査等も踏まえて、2年目社員の状況を紹介します。

入社2年目の本音「すでに辞めたい」

ソニー生命が行なった「社会人1年目と2年目の意識調査」によると、「就職した企業でどのくらいの間、働いていたいと思うか」という問いに対して、1年目社員は「定年まで働きたい」が最も多く31.6%となっている反面、2年目社員は「すでに辞めたい」が最も多い23.4%という結果になっています。
希望勤続年数期間の調査結果
出典)

ソニー生命保険株式会社「社会人1年目と2年目の意識調査」より引用

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000187.000003638.html
表を見ると、転職が一般化したとはいえ、入社したときは「定年までこの会社で働こう」と思っていた層が、実際に1年働いてみると「すでに辞めたい」「1~2、3年で辞めよう」と、その会社で働き続ける意欲を失ってしまっていることがわかります。
入社1年目は研修等も多く、すべてが学びの機会となるので適度な緊張感もあり、周囲からのフォローも手厚いので充実感を得やすい状況です。しかし、2年目になると、周囲の期待が「もう2年目だしな」とぐっと高まることで「仕事で指摘される」「フォローされなくなる」「2年目だから出来て当たり前」といった状況や反応が増えてきます

 

入社2年目は成長への分岐点

社会人2年目というのは、後輩ができて身が引き締まったり、モチベーションが上がったりする層もいれば、上記のような理由で悩む層もいるという時期です。まずこの時点で、「同期」のなかでも意識の差、成長の差が付き始めます。
また、入社2年目は、会社のこと、仕事のこと、周囲との人間関係など、1年目は考える余裕もなかったことが徐々に見えてきたり考えたりする余裕も出てきます。考えると「自分の仕事の能力は足りているのか」「他社の2年目と比べて自分はどうなのか」「今後のキャリアはどうなるのか」とさまざまな悩みも出てきます。
前述した「入社前の想像とのギャップ」や「2年目になってケアされなくなった」「周囲からの期待値が高まった」等による悩みやモチベーションダウンも同様です。これらの悩みをうまく解消して成長に迎える層と、その場で立ち止まってしまい悩み続ける層でも、成長に大きな差がついてきます。
日本のビジネス社会では、「入社3年で一人前になる」という風潮が強いですが、3年で一人前になれるかどうかは、じつは2年目にかかっているのです。伸びている層をさらに伸ばす、悩みを抱えている層をフォローして成長軌道に乗せる、両面において、2年目社員に対する企業側のフォローが重要です。

 

2年目社員がなぜリーダーシップを発揮する必要があるのか?

前章では、2年目社員の置かれた状況と企業からフォロー・育成に取り組む必要性を紹介しましたが、なぜ2年目社員に「リーダーシップ」を求めるのでしょうか。本章では、2年目社員にリーダーシップが重要な理由と、求められるリーダーシップ像のイメージを解説します。

「入社2年目の状況」と「リーダーシップが求められる」ことのギャップ

新入社員の時期が過ぎた2年目社員に、「3年目には一人前となり、徐々に会社を背負って立つ存在となれるよう、リーダーシップを身に付けて欲しい」と期待する企業は多いです。
一方で、悩みを抱えている2年目社員に対して無暗に「リーダーシップを発揮せよ」と言っても、言われた当人たちは当惑するばかりで余計に悩みが深まるかもしれません。前述のように入社2年目になってフォローしてもらうことも減ったなかで、「リーダーシップを発揮するように」と言われても、逆にプレッシャーを感じてしまう層もいるでしょう。
場合によっては「会社が期待すること」と「2年目社員が実際におかれている状況」の間には、大きなギャップがあります。どうすればよいのでしょうか。

役職がなくてもリーダーシップは発揮できる

そもそもリーダーシップとは、地位や役職がある人、チームや組織を率いている人だけが発揮するものではありません。
HRドクターを運営する研修会社ジェイックには、『JAICリーダーカレッジ』という、各企業からリーダーとして期待されている人材を集めて行なう企業研修があります。ある時、JAICリーダーカレッジの参加者のなかに、役職もなく部下もいない方がいました。
初めは「自分はリーダーなのか?」と戸惑っていましたが、「自分が関わる社内のあらゆることに、良い影響を与えること」がリーダーシップであると気付いてからは、社内での言動が大きく変わりました。社長からの評価も高く、その後すぐ実際にチームを率いるポジションに任命された事例もあります。
ポジションの有無にかかわらず、「自分事としてモノゴトを捉え、どのように関わっていくのかを意思決定する」「自分や周囲に前向きな影響を与えていく」ことがリーダーシップです。リーダーシップは、いつでも誰でも発揮することが可能なのです。

2年目社員に必要なリーダーシップの考え方

「リーダーシップを発揮すること」は、まず「当事者意識を持つこと」です。自分に関わる出来事を、「他人事」として捉えているうちは、影響を与えるとか、積極的に関わるといったことはないでしょう。
右も左もわからない新入社員のうちは致し方ない部分もあるかもしれませんが、2年目社員になれば、自分が関わる出来事に対して「自分がどのように関わるとより良くなるか」「自分がどんな影響を与えられるか」と考えることもできるようになってきます。

当事者意識を持って仕事に取り組み、自分と周囲に前向きな影響を与えることを考え、実行することが大切です。逆に、自分の殻に閉じこもって周囲に関心を持たず、与えられた業務を淡々とこなしているような人はリーダーシップを発揮しているとは言えないでしょう。この「当事者意識」こそが、2年目社員がリーダーシップを発揮するうえで大切な考え方になります。

2年目社員に意識して欲しいリーダーシップ

本章では、2年目社員に意識して欲しいリーダーシップについて、より詳しく解説すると共に、求められる具体的な行動等を紹介します。

2年目社員のリーダーシップ=セルフ・リーダーシップ

2年目社員に求められるリーダーシップは、「当事者意識をもとにしたセルフ・リーダーシップ」です。かみ砕いて書くなら、「周囲の物事を自分事として捉え、成果に貢献したり、周囲に良い影響を発揮したりできるように自分自身を先導する」ことです。
「感情の赴くままに……」という言葉がありますが、一時の感情に流されて冷静な判断ができないという状態は避ける必要があります。一方で、社会人になって2年目の若手は、冷静な判断を下すためにはまだまだ知識も不足していますし、精神的に未熟なことも多いでしょう。入社1~3年程度の早期離職も「感情の赴くままに…」判断・行動してしまった結果であるケースも少なくありません。感情に流されるのではなく、冷静に判断して、自分自身を適切な方向に導いていくことがセルフ・リーダーシップにつながります

 

以下では、まだまだ不足しているものも多い2年目社員がセルフ・リーダーシップを発揮するうえで大切なポイントを3つ解説します。

セルフ・リーダーシップを発揮するためのポイント1 自分を知る

セルフ・リーダーシップを発揮するには、まず「自分」を知ることが大切です。

  • 自分の長所や短所は?
  • 感情や思考、行動の癖は?
  • 会社から求められていることは?
  • いま自分ができることは?
  • 知っている知識と知らない知識は?

 

等を整理しましょう。可能であれば、周囲からどのように見えているか、自分を客観視することも心がけましょう。

セルフ・リーダーシップを発揮するためのポイント2 未来の自分をイメージする

今の自分を理解すると共に、ありたい「未来の自分」をイメージしましょう。

  • なぜこの仕事を選んだのか?
  • 仕事を通じて何を成し遂げたいか?
  • 理想的な未来を体現している先輩社員は誰か?
  • どんな価値観を大切にしたいか?
  • 周囲にどんな影響を与えたいか、どう見られたいか?

 

といった問いを考えることがヒントになるでしょう。「こうなりたい!」と心から思える、ワクワクしたり、使命感が湧いてきたりするような「未来の理想像」がイメージできることが理想です。

セルフ・リーダーシップを発揮するためのポイント3 やるべきことを確実に実行する

今の自分や置かれている立場を知り、理想の未来がイメージできれば、必然的に自分の「やるべきこと」が見えてくるでしょう。なかなかイメージしにくい場合は、上司や先輩、ブラザー・シスター等に相談するとよいでしょう。
やるべきことが見えてきたら、確実に実行に移していきましょう。自分がありたい姿を描き、「その姿に近づく」ことを判断基準として、自分が関われる範囲で確実に行動を重ねていくことが重要です。

セルフ・リーダーシップの別の観点

モノゴトに自ら積極的に関わっていく姿勢も「自ら行動を選択する」という意味では、セルフ・リーダーシップと言えます。2年目になれば、自分の部署やチームで後輩ができることもあるでしょう。そのときに「後輩を育てるのはOJT担当者である」と考えるのではなく、自分も年が近い先輩として、メンタル面でフォローをしたり、時には仕事を教えたりと、自ら関わりを持っていくのです。
一緒に仕事をしている先輩社員の手が回っていないようであれば自ら手伝ったり、気付いたことがあれば積極的に報連相をしたりする等、自分にできることを積極的に行なうこともセルフ・リーダーシップと言えます。

正しくリーダーシップを発揮するために

「やるべきことが分かっている」ことと、「やるべきことを実行に移す」ことは全く別次元の話です。やると決めたことを実行に移す誠実さや、規則やルールを遵守する規範性は、本来、誰もが持っているものです。しかし、「分かってはいても、なかなかできない」ということは誰にでも経験があることでしょう
ストレスがたまっている、気持ちに余裕がない、イライラしている…といった精神状態では、なかなか冷静な判断はできませんし、行動に移すためのエネルギーも湧いてきません。
逆に、心や時間に余裕がある状態ならば、ポジティブに物事を捉え、冷静に判断を下すこともできるでしょう。日々の生活習慣を見直して、規則正しい毎日を送り、心身の健康を保つことが、リーダーシップを発揮するため第一歩です。

まとめ

最近、新人や若手社員に対してリーダーシップ教育を実施する成長企業も増えています。組織に馴染み、仕事もある程度覚えてきた入社2年目はリーダーシップの発揮を覚えていってもらうには好ましいタイミングです。
入社2年目は後輩ができてモチベーションが上がる人もいれば、新人のような手厚いフォローがなくなるなかで周囲から求められるものが増えてプレッシャーを感じる人もいます。また、ある程度仕事に慣れて考える余裕ができたなかで、入社前に思い描いていた理想と現実のギャップ、将来のこと、他社や友人との比較などに悩む若手もいます。
だからこそ、しっかりとフォローして、2年目社員に求められる「当事者意識」や「セルフ・リーダーシップ」を身に付けてもらうことが大切です。自分自身を知る、ありたい姿を描く、ありたい姿を基準として行動を積み重ねる、という3つのポイントを押さえることでセルフ・リーダーシップは発揮しやすくなります。
入社2年目は成長の分岐点になります。本人の努力を促すのはもちろん、2年目社員を育成する手立てを組織としてもしっかり実施して、リーダーシップを育み、3年目以降のさらなる成長へと導いていきましょう。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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