
ノーレイティングを取り入れる際には、以下の流れで準備を進めていきます。
1.ノーレイティングの導入目的を明確化
ノーレイティングをきちんと導入するためには、具体的な導入目的を設定して、目的に合った準備や計画を立てる必要があります。現在の評価制度にどのような課題があるか等をしっかりと見極めて、導入目的を見定めていきましょう。
例えば、突出したスキルや経験を持つ社員が頻繁に辞めてしまう場合、画一的だったり相対主義的だったりする評価制度に問題があるかもしれません。
また、社員のモチベーションが低い場合、企業や上司からの期待感や高評価を実感しにくい可能性もあるでしょう。社員の主体性が低い場合は、心理的安全性が低くチャレンジしにくい 環境になっていることも考えられます。
このように、現在の評価制度や人材マネジメントにおける課題感をしっかりと見極めて、ノーレイティングが最適な解決手段なのか、何を解決・実現するために導入するのかを明確にしましょう。
2.自社なりのノーレイティングの仕組み設計
ノーレイティングの導入設計では、課題から見えてきた導入目的を踏まえて、仕組みや評価、昇給・昇進の基準を設定していきます。
例えば、アドビシステムズでは、上司と部下の面談を通じて継続的かつ透明性の高い評価を行なう「チェックイン制度」を導入しています。チェックイン制度には、面接頻度や上司の質問内容を決めることなく、目標への改善点や達成点を話し合う特徴があります。
またマイクロソフトでは、画一的なランク付けを廃止し、パフォーマンスを「チーム」と「個人」の2視点で評価する制度を導入しています。2視点で評価を行なって、強み・改善点・改善のためにすべきことがフィードバックされる形になっています。
他にも、昇給・昇進等を年次ランク付けで判断せず、業績に関するデータや目標達成状況、そして日々の対話を通して総合的に判断するやり方もあります。いずれも、従来までの評価制度と比べて、よりリアルタイムできめ細かい運用をすることになります。
いずれもコミュニケーションを通じて納得感を高め、人材育成を促進する仕組みですが、一方で、きちんとした運用と透明性 を高める仕組みが必要です。
3.ノーレイティングの導入目的を周知
ノーレイティングに基づく新制度は、フィードバックや面談を行なう上司と、被評価者となるメンバー全員が以下のような項目を理解・賛同し、協力してくれることで、高い効果が生まれます。
- ノーレイティングはどのような制度なのか?
- ノーレイティングと従来の人事制度と何が違うのか?
- ノーレイティングによって自分にどのようなメリットがあるのか?
- ノーレイティングで何が具体的に変わるのか?
こうした内容を説明・周知されずに制度を導入してしまうと、従来の「格付け」習慣が抜けなかったり、ノーレイティングの利点であるリアルタイムなフィードバックを十分に実施できなかったりする可能性も出てきます。
ノーレイティングは、従来までの評価制度以上に、上司部下のコミュニケーションを通じて評価と人材育成を行ないます。したがって、導入説明等でも、内容を一方的に伝えるのではなく、協力してもらえるレベルの理解度になっているか、十分に確認しながら進行することが大切です。
4.管理職への教育・研修
前述のとおり、ノーレイティング導入の効果は、管理職のスキルや意識に依存する部分が大きくなります。なかでも、特に重要となるのは、以下の能力を内包するヒューマンスキルです。
- 信頼関係を築く力
- 聴く力
- 理解する力
- 引き出す力
- 伝える力
特にノーレイティングの肝となるのは上記のスキルを十分に使ったフィードバックです。
フィードバックの考え方ややり方が間違っていると、フィードバックは部下のモチベーションを低下させてしまいます。
正しいフィードバックができるように、フィードバックの基本的な考え方やスキルも研修等を通じて教える必要があります。
5.1on1の実施スケジュール決定
ここまでの準備ができたら、現場で実施する1on1ミーティングなどを、いつ頃から、どのように導入・実施するかの調整に入っていきます。自社で初めて1on1を導入するときには、本格導入前に移行期間を設けるかどうかも決める必要があります。
また運用の中身として「1on1面談はどのくらいの頻度で行なうか?」や「1on1の面談時間はどのくらいにするか?」も決めなければなりません。
ただし、これらの検討や調整を進めるときには、人事担当者だけですべてを決定するのではなく、部門責任者等も交えて、自社の人材マネジメントに理想とされる頻度や時間、現実的に運用できるかを現場目線で考えることも大切です。