部下の指導方法のポイントとは?よくある課題とNG例、成功のコツを解説

更新:2022/07/14

作成:2022/07/03

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

部下の指導方法のポイントとは?よくある課題とNG例、成功のコツを解説

 部下を持つ上司にとって、業績目標を達成することと並んで欠かせない仕事が「部下指導」です。しかし、実際に部下指導をする中で「期待したように部下が育たない」「指導方法がわからない」といった悩みを抱えている上司も多くいます。

 本記事では「部下指導」をテーマに、上司が陥りやすい課題とNGな指導例、部下指導を成功させるコツ、指導スキルを高める方法を紹介します。

<目次>

部下指導でよくある3つの課題

 まず部下指導で陥りがちな3つの課題を紹介します。当てはまるものがあれば、ぜひ続く章で解決策や指導のポイントをご確認ください。

1.部下指導に割く時間が取れない

 プレイングマネージャーの場合、部下指導に加えて自身でも多くの業務を抱えています。自身がプレイヤーとして成果を上げることも求められていると、部下育成の優先度がどうしても下がってしまいがちです。結果として、部下指導に割く時間が取れないという課題につながります。

2.期待したとおりに育たない

 「期待したとおりに部下が育たない」と悩む声も多く伺います。上司としてしっかりと部下育成に時間を割いて、必要な指導もしている。それなのに、思い通りのペースで成長してくれない、課題をなかなか克服できない、努力している様子が見えない…といったケースです。

 このような場合、上司からすると部下本人に原因があるように感じるかもしれません。しかし深掘りしていくと、上司の関わり方や指導スキル、人材育成への認識など様々な要因が絡んでいるケースも多々あります。

3.適切な指導方法が分からない

 適切な部下の指導方法がわからないということも、部下指導の課題の1つです。一般的な人材育成の指導スキルもありますし、同時に、部下の性格や気質は一人ひとり違います。褒めることで前向きになる人もいれば、高い基準を求めることで向上心を燃やす人もいます。相手にあわせた指導方法は非常に難しいものです。

 また、この課題の背景には、日本企業の職場状況の変化も深く関連しています。1990年代後半頃から、組織のフラット化や景気停滞を理由に、多くの日本企業で採用抑制が進み、新人・若手社員が少ない歪な人員構成の職場が増えました。

 その結果、中堅層にとって、後輩指導やリーダー経験を積む機会が大きく減少する事態が生じました。つまり、擬似的なマネジメント経験が無いまま、管理職へと昇格するケースが増えました。人材育成の基本的なスキルや管理職に必要なマインドが育たず、部下指導での問題として顕在化したことが伺えます。

 なお、逆にベンチャー企業やスタートアップでは、管理職の動きを十分に学べないままに抜擢されて、かつ新任管理職研修もない…といった形で適切な指導方法が分からない管理職も増えています。

陥りやすい部下指導のNG事例

 部下指導で悩む上司の方のお話を伺うと、間違った指導方法をしているケースも多くあります。本章では、管理職が陥りやすい部下指導のNG事例を紹介します。

1.一方的な「指示」ばかりになっている

 うまくいっていない部下指導の現場で多いのは、上司が自分のやり方を一方的に「指示」するだけというケースです。確かに経験の浅い部下の場合、やるべきことをこと細かく指示した方が無難に進むかもしれませんし、部下にとっても必要な知識になります。

 しかし、常に上司の指示どおりに動いているだけでは、部下はいつまで経っても自分で考え工夫する経験を積めません。結果的に、早期に部下の成長は滞ってしまうでしょう。

2.感情的な指導、価値観の押し付けをする

 指導の際、自分でも気付かないうちに感情的になってしまっている上司もいます。感情的な指導になると、部下は上司の顔色を伺うようになり、主体性も損なわれてしまいます。

 また、無意識のうちに自分の価値観を部下に押し付けてしまうケースも部下指導でありがちです。上司にしてみれば、自分の成功・失敗経験を踏まえて懇切丁寧に助言しているつもりでも、部下は一方的な価値観の押し付けと感じているかもしれません。このような指導では、部下との信頼関係を築けなくなってしまうでしょう。

3.責任ある仕事を任せない

 部下に責任ある仕事を任せない上司も多くいます。確かに責任ある仕事は失敗したときのリスクもあり、組織の責任を担っている上司からすると任せることをためらってしまうこともあるでしょう。しかし、いつまでも簡単な仕事ばかり任せていては、それ以上の部下の成長は望めません。

NGを踏まえた部下指導のポイント

 前章では、部下指導のNG事例を紹介しました。間違った部下指導の事例を踏まえ、本章では部下指導がうまくいくためのポイントをお伝えします。

1.適切な目標設定をする

 部下の成長につながる適切な目標設定をするということが重要です。目標設定では、バランスが肝心です。いきなり高すぎる目標を設定すると、挑戦する前から部下が尻込みしてしまうかもしれません。かといって、今までのやり方で容易に達成できる目標では、大きな成長は期待できません。

 適切な目標を考える際は、部下の今の能力を100%として、110~120%の力を発揮して達成できるレベルに設定することがポイントです。そのためには、日頃から部下をよく観察し、いまの力量や可能性、意欲を把握することが重要です。

 成長意欲が低いタイミングで成長目標を押し付けてもうまく伸びませんし、逆に、成長意欲が高いタイミングでは、多少チャレンジングな目標を与えたほうが大きく成長するものです。直近~前期の売上状況などの数字、本人の強みや弱み、モチベーションの状況などをしっかりと把握して目標設定しましょう。

2.適切に褒め、適切に叱る

 仕事のミスや、危険な事故につながりかねない行動があったときは、その場できちんと叱ることが肝心です。叱ることの目的は、意識や行動を改善してもらい、相手の成長に繋げることです。

 ハラスメントに関するニュース等も取りざたされる中で、叱ることに及び腰になっている上司も多いですが、目的さえ見失わなければ、叱るという行為は、本人にとっても職場にとっても大切なことです。

 褒める・叱るときの重要なポイントは3つあります。

 1つ目は、成長した部分やできた部分を小まめに褒めることです。小まめに褒めることは、望ましい行動を習慣形成する、信頼関係を築き、部下の自己肯定感を高め、などの大きなプラスの効果があります。褒める・叱るのバランスは、3:1ぐらいを目安にするとよいでしょう。

 なお、褒めることを「良い結果等を出したことを賞賛する」ことだと捉えている方がいます。もちろん間違いではありません。ただし、人材育成という観点においては、叱ることの目的が「不適切な言動の改善」なのに対して、褒めることの大きな目的は「良い言動の強化や習慣化」です。だからこそ、成長した能力や好ましいプロセスなどは小まめに褒めることが大切なのです。

 2つ目は、叱るときは十分配慮することです。特に、部下の人格や能力を否定するような叱り方は厳に慎みましょう。「だからお前はダメなんだ」「君にはがっかりだ」「この仕事に向いていないんじゃないか?」などはすべて、部下の人格を否定する言葉です。

 叱るべきは行動や行為であって、人格ではありません。人格を否定することは、部下の意欲をそぐだけでなく、パワハラ問題に発展する可能性もあります。

 3つ目は、叱るときの基準やルールを明確に示しておくということです。叱るときの基準が曖昧だと、不信感を生む原因にもなります。どのような行動に対して叱るのか、何が基準かを普段から明確に示しておきましょう。

3.結果だけでなくプロセスを評価する

 仕事では、頑張って取り組んでも結果が伴わないことも多々あります。もし、上司が結果だけを見て判断してしまったりすると、部下のモチベーションまで落としてしまう可能性もあります。従って、結果だけではなく、プロセスにも目を向けることが部下指導では重要です。

 上司がプロセスをしっかりと注目することで、褒める機会も増えて部下のモチベーションアップにもつながります。

 プロセスを評価するときは、ただ「良かったね」「頑張ったね」と労うだけでは効果は半減してしまいます。目標達成に向けて取り組んだ、実際の行動やアプローチについて、「具体的な事実や数字」を挙げて評価することが重要です。併せて、必要あれば次回に向けて更に良くする、また、プロセスを結果につなげる方法を部下自身に考えてもらうとよいでしょう。

4.定期的にコミュニケーションの機会を設ける

 部下と信頼関係を構築するためには、コミュニケーションの機会を定期的に設けることが大切です。部下からの相談や、報告へのフィードバックなど、コミュニケーションを通じて、お互いに対する理解が深まり、強い信頼関係の構築につながります。

 また、コミュニケーションを通じて、部下の好みや価値観、得意不得意などもわかってくるので、部下によりフィットした指導を考えるヒントにもなります。そのためにも、上司から積極的にコミュニケーションを取り、部下が仕事で困ったときに「真っ先に〇〇さんに相談しよう」と思える雰囲気を作ることが大切です。

 ただし、積極的にコミュニケーションを取るといっても、基本的には業務時間内でのコミュニケーションにとどめるようにしましょう。親睦を深めたいからといって、無理に飲み会に誘ったり上司の趣味に付き合わせたりすれば、多くの場合逆効果になってしまいます。

5.挑戦しがいのある仕事を任せる

 今の仕事を一人でこなせるようになったら、より背伸びした仕事を任せるタイミングと考えましょう。今の実力よりもちょっと上の目標にチャレンジさせることで、達成したときの充実感が生まれ、仕事に対する自信も大きく高まります。

 挑戦しがいのある仕事を任せるときは、明確な達成基準と期日のみ伝え、やり方やアプローチの仕方は極力本人に委ねることがポイントです。あくまでも業務の主体は部下であり、上司は助言をしたり、万が一のときの責任を引き受けたりする役割と考えましょう。

 ただし、部下の実力や意欲を考慮せずに無闇に挑戦させることも禁物です。部下の状況をきちんと見て、「見守る」スタンスでいることが大切です。

部下指導のスキルを高めるために大切なこと

 最後は、部下指導のスキルを高めるために大切になる、上司の心がけや習慣を紹介します。

上司自身が学ぶ姿勢を見せる

 上司が部下に仕事を教えることはもちろん大切ですが、同時に上司自身も“学ぶ姿勢”を見せることが大切です。

 マネジメントや人材育成の世界で有名な慣用句に「上司は部下を理解するのに3年かかるが、部下は上司を3日で見抜く」というものがあります。上司が部下を見ている以上に、部下は上司を見ているということです。上司の言動一つひとつが、部下の信頼や意欲に影響していることを忘れないようにしましょう。

 その意味でも上司が普段から学ぶことを習慣にすることが、部下の学習欲や向上心に良い影響を生みますし、部下から信頼を得ることにもつながります。

原理・原則を教える

 よくあるNGケースなどの中で、「事細かに指示し過ぎる」という事例を紹介しました。上司がすべてを細かく指示・指導し過ぎると部下は受け身となり、考える力が身に付きません。従って、部下に考えられる力がついてきたら、徐々に自分で考えされる、任せることが大切です。

 上記を実現するために大切なのが「原理・原則を教える」ことです。ノウハウや方法論だけを教えていくと、部下の中には「この場合はこう」「この手順はこう」という知識はインプットされても、それを他の状況で生かす応用力が付きません。

 方法論を教えるときには、「なぜそうするのか?」「裏側にはどんな考え方や原理・原則があるのか?」といったことをしっかりと教えましょう。原理・原則は繰り返し伝える必要があります。ただ、繰り返し伝えることで、徐々に部下の中で原理・原則が染み込んでいきます。

 原理・原則が染み込んでいくと、部下に自分で考えさせる、意思決定を任せるても、大きな「ズレ」が生じにくくなります。

部下の話に耳を傾けることを習慣にする

 「部下の話にしっかり耳を傾ける」ことを習慣にしましょう。部下の意見を取り入れるかどうかは、上司の裁量の他に会社の方針などもあり難しい場合もあるでしょう。しかしどんな状況でもしっかりと部下の話に耳を傾ける姿勢は崩さないことが大切です。

 部下の話にしっかり耳を傾けることを習慣にしていれば、「自分の意見を聞いてもらえているのだ」という安心感が生まれます。その安心感が、信頼関係を築く、部下の本音や状況を知る、自分で考えて提案してもらうことにつながります。

部下指導のスキルや知識を学ぶ

 部下指導の「方法」や「姿勢」はスキルであり、継続的な学びとトレーニングによって向上させることができます。書籍やセミナーで学ぶこともできるでしょう。知識やスキルを学ぶことで、指導のバリエーションは豊かになり、部下によりフィットした指導や関わり方もできるようになります。

 たとえば、4段階指導法、モチベーションや動機付けに関する理論、ソーシャルスタイルに合わせたコミュニケーション方法、強みの活かし方、無意識に生じやすいバイアスといったものを知っていて使うことが出来れば、部下指導の効果性がぐっと高まりますし、上司のストレスも軽減されるでしょう。

まとめ

 記事では、部下指導の課題とNGの指導例、および部下指導がうまくいくためのポイントをお伝えしました。適切な部下指導ができるようになれば、部下がしっかりと成長するようになります。部下に任せられる仕事が増えれば、上司のパフォーマンスも向上します。

 さらには、部下の成長はチーム・部門全体の生産性向上にも貢献しますし、自分自身が次のステップにいくうえでも必要なことです。部下育成は、上司にとっても組織にとっても欠かすことのできない取り組みです。記事の内容が、指導方法のポイントを掴んで、部下育成力を向上させる一助になれば幸いです。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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