前章では、部下指導のNG事例を紹介しました。間違った部下指導の事例を踏まえ、本章では部下指導がうまくいくためのポイントをお伝えします。
1.適切な目標設定をする
部下の成長につながる適切な目標設定をするということが重要です。目標設定では、バランスが肝心です。いきなり高すぎる目標を設定すると、挑戦する前から部下が尻込みしてしまうかもしれません。かといって、今までのやり方で容易に達成できる目標では、大きな成長は期待できません。
適切な目標を考える際は、部下の今の能力を100%として、110~120%の力を発揮して達成できるレベルに設定することがポイントです。そのためには、日頃から部下をよく観察し、いまの力量や可能性、意欲を把握することが重要です。
成長意欲が低いタイミングで成長目標を押し付けてもうまく伸びませんし、逆に、成長意欲が高いタイミングでは、多少チャレンジングな目標を与えたほうが大きく成長するものです。直近~前期の売上状況などの数字、本人の強みや弱み、モチベーションの状況などをしっかりと把握して目標設定しましょう。
2.適切に褒め、適切に叱る
仕事のミスや、危険な事故につながりかねない行動があったときは、その場できちんと叱ることが肝心です。叱ることの目的は、意識や行動を改善してもらい、相手の成長に繋げることです。
ハラスメントに関するニュース等も取りざたされる中で、叱ることに及び腰になっている上司も多いですが、目的さえ見失わなければ、叱るという行為は、本人にとっても職場にとっても大切なことです。
褒める・叱るときの重要なポイントは3つあります。
1つ目は、成長した部分やできた部分を小まめに褒めることです。小まめに褒めることは、望ましい行動を習慣形成する、信頼関係を築き、部下の自己肯定感を高める、などの大きなプラスの効果があります。褒める・叱るのバランスは、3:1ぐらいを目安にするとよいでしょう。
なお、褒めることを「良い結果等を出したことを賞賛する」ことだと捉えている方がいます。もちろん間違いではありません。ただし、人材育成という観点においては、叱ることの目的が「不適切な言動の改善」なのに対して、褒めることの大きな目的は「良い言動の強化や習慣化」です。だからこそ、成長した能力や好ましいプロセスなどは小まめに褒めることが大切なのです。
2つ目は、叱るときは十分配慮することです。特に、部下の人格や能力を否定するような叱り方は厳に慎みましょう。「だからお前はダメなんだ」「君にはがっかりだ」「この仕事に向いていないんじゃないか?」などはすべて、部下の人格を否定する言葉です。
叱るべきは行動や行為であって、人格ではありません。人格を否定することは、部下の意欲をそぐだけでなく、パワハラ問題に発展する可能性もあります。
3つ目は、叱るときの基準やルールを明確に示しておくということです。叱るときの基準が曖昧だと、不信感を生む原因にもなります。どのような行動に対して叱るのか、何が基準かを普段から明確に示しておきましょう。
3.結果だけでなくプロセスを評価する
仕事では、頑張って取り組んでも結果が伴わないことも多々あります。もし、上司が結果だけを見て判断してしまったりすると、部下のモチベーションまで落としてしまう可能性もあります。従って、結果だけではなく、プロセスにも目を向けることが部下指導では重要です。
上司がプロセスをしっかりと注目することで、褒める機会も増えて部下のモチベーションアップにもつながります。プロセスを評価するときは、ただ「良かったね」「頑張ったね」と労うだけでは効果は半減してしまいます。
目標達成に向けて取り組んだ、実際の行動やアプローチについて、「具体的な事実や数字」を挙げて評価することが重要です。併せて、必要あれば次回に向けて更に良くする、また、プロセスを結果につなげる方法を部下自身に考えてもらうとよいでしょう。
4.定期的にコミュニケーションの機会を設ける
部下と信頼関係を構築するためには、コミュニケーションの機会を定期的に設けることが大切です。部下からの相談や、報告へのフィードバックなど、コミュニケーションを通じて、お互いに対する理解が深まり、強い信頼関係の構築につながります。
また、コミュニケーションを通じて、部下の好みや価値観、得意不得意などもわかってくるので、部下によりフィットした指導を考えるヒントにもなります。そのためにも、上司から積極的にコミュニケーションを取り、部下が仕事で困ったときに「真っ先に〇〇さんに相談しよう」と思える雰囲気を作ることが大切です。
ただし、積極的にコミュニケーションを取るといっても、基本的には業務時間内でのコミュニケーションにとどめるようにしましょう。親睦を深めたいからといって、無理に飲み会に誘ったり上司の趣味に付き合わせたりすれば、多くの場合逆効果になってしまいます。
5.挑戦しがいのある仕事を任せる
今の仕事を一人でこなせるようになったら、より背伸びした仕事を任せるタイミングと考えましょう。今の実力よりもちょっと上の目標にチャレンジさせることで、達成したときの充実感が生まれ、仕事に対する自信も大きく高まります。
挑戦しがいのある仕事を任せるときは、明確な達成基準と期日のみ伝え、やり方やアプローチの仕方は極力本人に委ねることがポイントです。あくまでも業務の主体は部下であり、上司は助言をしたり、万が一のときの責任を引き受けたりする役割と考えましょう。
ただし、部下の実力や意欲を考慮せずに無闇に挑戦させることも禁物です。部下の状況をきちんと見て、「見守る」スタンスでいることが大切です。