「自ら考え行動する」社員の育成方法とは?上司の取るべき行動を解説

「自ら考え行動する」社員の育成方法とは?上司の取るべき行動を解説

「自ら考え行動できるメンバーを育成してほしい」という企業の要望は年々増えています。同時に“メンバーを育てられるリーダー育成”の要望も増えています。マネジメントと人材育成を両立できる管理職が足りないなかで、指示待ちや受け身のメンバーが増えており、頭を悩ませる企業が多いのです。

 

記事では、自ら考え行動できる社員の育成について、社員の育成方法、組織作りのポイント、上司が取るべき行動という3つの観点で解説します。

<目次>

自ら考え行動する社員を育成する方法

HRドクターを運営する株式会社ジェイックは、企業向けに社員研修を提供しています。すると、多くの経営層から「社員に自ら考えて行動してほしい」「うちの社員は受け身で……」というご相談をよく頂きます。そもそも、自ら考えて行動する社員とはどのような社員でしょうか。そして、どうやって育てられるでしょうか。本章では、自ら考え行動する若手社員を育成するための基本を確認します。

 

「自ら考え行動する」社員とは?

「自ら考え行動する」社員とはどういう人を指すのでしょうか。まずイメージされるのは「自発的に発言したり、主体的に行動したりできる人」です。このような積極性は、経営層が望む「自ら考え行動する」の要素の一つです。

 

しかし、組織が求める「自ら考え行動する」とは、空気を読まずに発言したり、自分勝手に行動したりすることとは異なります。つまり、積極性と同時に「組織全体を見て考えて行動できる」視座の高さや協調も重要な要素です。

 

「自ら考え行動する」社員を育てる方法

「自ら考え行動する」社員を育てるにはどうすればよいでしょうか。最も重要なことは、「考えさせる」クセをつけることです。特に、インターネットで検索するのが当たり前の環境で育ったデジタルネイティブ世代は自らの頭で考える経験が少なく、すぐに答えを求める傾向があります。

 

しかし、ビジネスにおける意思決定や施策はインターネットで検索しても答えはなく、そもそも正解がないことも多いです。したがって、常日頃から「考えさせる」ことで、“自らの頭で考える習慣”を身につけさせることが大事なポイントです。

 

最近の若手は無駄なことをせずに効率的にしたいと考える傾向も強くあります。効率を求めるという思考も否定されるものではありません。しかし、一歩間違えると、効率的なやり方ばかりを求めて行動しないという傾向にもつながります。

 

考える習慣を若手社員が身に付けたら、次はどう行動するかを考えさせるようにしましょう。彼らは効率的にゴールにたどり着きたいという気持ちは強いですが、決して自分が考えて行動したことが形になることがイヤなわけではありません。

 

「自ら考え行動する」社員を育成するためには、まずは「考える」→「行動する」というパターンを習慣化させることが最も基本となるポイントです。

自ら考え行動する社員がいる組織の特徴

次に、組織づくりの観点から、「自ら考え行動する」社員について考えていきます。本章では自ら考え行動する社員が多い組織の特徴、そして、自ら考え行動する社員を増やす組織づくりのポイントをお伝えします。

 

特徴1 心理的安全性が高い

心理的安全性とは、「年齢、性別、役職などに関係なく自分の思っていることを言いやすい状態」「ありのままの自分をさらけ出せる状態」「自分の失敗を開示したり、初歩的な質問などを躊躇なくできたりする状態」を指します。

 

心理的安全性という言葉が有名になったのは、Googleの調査がきっかけです。Google社内で生産性の高い組織の特徴を調査した結果、生産性に最も影響を与える要素は、他のどの要素よりもチームの心理的安全性であるという発表です。

 

心理的安全性がなぜ「自ら考え行動する」社員の育成につながるのでしょうか。心理的安全性が高い状態は、社内での経験や職位が低い若手も気兼ねなく提案や発言ができる状態です。また、的外れな意見やアイデアを出しても批判されることはない、また、価値ある失敗に対しては寛容に受け入れてくれると信じられる状態です。当然、このような心理的安全性が高い状態は「自ら考え行動する」ことにつながります。

 

一方で、日本企業の多くは心理的安全性の高い組織が少ないといわれています。昔から「余計なことはするな」「上がやることを見て覚えろ」といった形で、自分で考えることを抑制されていました。そういう組織で「自ら考え行動する」社員が増えることはありません。

 

特徴2 チャレンジを歓迎する環境がある

チャレンジを歓迎するという点も重要です。そもそも挑戦できる環境がなければ、自ら考えて行動する機会を活用することは難しいでしょう。最近こそ挑戦を奨励する日本企業も増えていますが、現場レベルで見るとまだまだ少ないのが現状です。

 

チャレンジといっても新規事業のような大きな話である必要はありません。トヨタ自動車の「カイゼン」のような日々の業務をルーティン化させず、生産性向上に向けて変化に取り組むといったことも立派なチャレンジです。

 

しかし、チャレンジして失敗した際、「だから勝手なことをするなと言ったんだ」と怒る上司がいたら、現場の若手や新人は“挑戦を歓迎されている”とは思わないでしょう。チャレンジを歓迎する環境作りは容易ではありませんが、実現すれば若手のモチベーション向上につながり、「自ら考え行動する」社員を育成することにつながります。

 

特徴3 フィードバックする文化がある

フィードバックする文化も「自ら考え行動する」社員の育成につながります。部下が自ら考え行動したとき、どういった影響をおよぼしたのか、どのような成果や貢献につながったかをフィードバックすることが次の思考や行動につながります。

 

また、うまくいかなかった際も単に結果を叱責するのではなく「何が原因だったか」「何を学べるか」「もう一回やるならどうするか」などをフィードバックすることが、成功要因や失敗要因を自ら考え、次に挑戦しようという気持ちにつながります。

 

「自ら考え行動する」社員を育てる組織作りのポイント

社員が自ら考え行動する組織作りはどうすれば実現できるでしょうか。組織作りは文化作りともいわれます。重要なことは経営陣のメッセージや上司の理解です。

 

経営陣が組織作りに関してコミットし、心理的安全性やチャレンジする風土を社員に意識させて浸透させるようにします。そして上司が経営陣のメッセージを理解して、メンバーに対してチャレンジを歓迎しフィードバックを行ないます。大事なことは、言葉と行動がともなっていることです。組織作りには時間がかかりますが、あきらめずに取り組むことが大切です。

 

心理的安全性やチャレンジ、フィードバックなどを実際に浸透するうえでは、ルールや共通言語も重要です。例えば、HRドクターを運営するジェイックでは、「7つの習慣と原田メソッド、ドラッカーのマネジメントなどが共通言語です。

 

共通言語があることで、会議のファシリテーション、部下育成の際にかける言葉、フィードバックの問いかけなどが統一されますし、幹部陣が共通して同じ言葉を使うようになります。

自ら考え行動する社員を育成するために上司がとるべき行動

前章では、組織の文化や組織作りといった少し大きな文脈で「自ら考え行動する」社員を増やすポイントを紹介しました。本章では、もう一段実務レベルで、「自ら考え行動する」社員を増やすために上司が取るべき3つの行動を紹介します。

 

答えをすぐに言わない

部下に「○○はどうすればいいですか?」と質問されたとき、すぐに答えをいう上司は多いです。上司に悪気はなく、質問してくれたことに感謝して答えを返している場合も多いでしょう。ただ、すぐに答えを返すことは、瞬間的には効率的ですが、指示待ちの部下を作って「自ら考え行動する」社員が育成されない要因にもなります。

 

答えを教えてもらうことが習慣化すると部下は考えようとしなくなります。上司に確認して上司の指示に従っていれば、上司から叱られることもありません。こうした構図ができあがると、どんどん考えがえなくなります。

 

指示待ちを生む構図を壊すために、答えをすぐに返さず、部下に考えさせる。また、部下の意見やアイデアを引き出すために質問することを重視しましょう。もちろん、端的に指示してすぐ対応しないといけない状況もあるでしょう。ただ、「君はどう思う?」「君はどうするのが良いと思う?」と質問を返すだけでも違います。部下が自ら考えざるを得ない状況を作りましょう。

 

考えるプロセスを解説する

教育の世界に「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」という言葉があります。「飢えた人に魚を与えても与えられた魚を食べてしまえば終わってしまう。しかし、魚の釣り方と道具を与えれば自ら魚を手に入れられるようになる。教育も同じである」という趣旨の言葉です。

 

部下の考える力を育てるプロセスも同じです。考える習慣がなかった部下、チームや組織全体を見る視座、正しい答えを導く力がまだない部下に、「答え」を求めても、当初は良い答えが出てこないことも多いでしょう。

 

部下が考える状況を作ったあと、上司に問われるのは「考え方」を教えることです。「答え」自体よりもどうやって答えに行きつくのか、どういう基準で判断するのか、どのような情報をもとに判断するのかという「答えに行きつくプロセス」を解説しましょう。

 

部下がやっていることに関心を持つ

3つ目の行動は、最も基本であり、重要な上司の行動です。それは、部下がやっていることに関心を持ち、部下の行動を見て、話を聞き、ときにはアドバイス・フィードバックするということです。部下に関心をの持っている、見ているということを伝えましょう。上司が関心を示さなければ、部下のモチベーションは高まりません。

 

関心を持つということは管理する・支配する、ということではありません。関心を持ったうえで、前述のように「答えをすぐに言わない」「考えるプロセスを解説する」を大切にしましょう。また、自分と違う答えや意見でも我慢する、たとえ失敗だとしても自分で考えたり挑戦したりする姿勢を承認する、次につながるフィードバックをするといったことも大切です。

 

上司が部下に関心を持てば、部下も上司の話に耳も傾けるようになります。上司の日々の接し方こそが、「自ら考え行動する」社員を育成するうえで大切です。

 

終わりに

記事では、「自ら考え行動する」社員を育てるポイントを、育成方法の基本、組織作りの視点、上司のとるべき行動という3つの観点で解説しました。

 

自ら考え行動することは、特別な能力や素質ではなく習慣です。習慣を作るためには、自ら考えたり行動したりすることが承認される心理的安全性の高さ、チャレンジの承認、次につながるフィードバックの提供などの環境が重要です。

 

これらの環境を作ることは、経営陣の仕事でもありますし、同時に日々メンバーに接する上司が、すぐ答えを与えない、考えるプロセスを解決する、日々部下に関心を持って自ら考え行動することを促進することが何より大切です。

 

「自ら考え行動する」社員が多くいることは、将来を見定めるのが難しい今の時代に大きな競争力となります。現場の一人ひとりの社員が変化に対して臨機応変に対応するためにも、自ら考え行動することが求められます。記事で紹介した施策に1つでも多く取り組み、より強い企業を作り上げてください。

著者情報

宮本 靖之

株式会社ジェイック シニアマネージャー

宮本 靖之

大手生命保険会社にて、営業スタッフの採用・教育担当、営業拠点長職に従事。ジェイック入社後、研修講師として、新入社員から管理職層に至るまで幅広い階層の研修に登壇している。また、大学での就活生の就職対策講座も担当。

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