第3の習慣「最優先事項を優先する」を身に付け、人生の時間を有意義に使う

第3の習慣「最優先事項を優先する」を身に付け、人生の時間を有意義に使う

「最優先事項を優先する」はスティーブン・R・コヴィー博士の著書『7つの習慣』に登場する第3の習慣であり、別名、「パーソナル・マネジメントの原則」「時間管理の原則」ともいわれます。

 

私たちの人生において、唯一平等なものは時間の流れです。時間をどう使うかによって私たちの人生で得られる成果が変わります。第3の習慣を実践して自分自身の「時間」をしっかりマネジメントすることで、自分の人生が有意義になります。

 

記事では、「最優先事項を優先する習慣」とは何か、どのように実践すれば良いのか、実践することで人生がどうなるのかを解説します。

 

ちなみに、7つの習慣の内容や効果については以下の記事で要約していますので、まだ読んでいないという方は参考にしていただければと思います。

<目次>

第3の習慣「最優先事項を優先する」とは?

第3の習慣「最優先事項を優先する」という表現を聞いて、「そんなことは誰もが当たり前にやっていることじゃないか?」と思う方もいるかもしれません。しかし、冷静に振り返ってみると、「スケジュール」や「納期」、突発的に入ってくる「他人からの依頼」や「緊急対応」に追われているという方もいるでしょう。

 

本章では、第3の習慣を実践するうえでキーになる「時間管理のマトリックス」「最優先事項」「大きな石」という3つの概念を解説します。

 

 

時間管理のマトリックス

第3の習慣を理解するうえで前提になるのが「時間管理のマトリックス」という考え方です。時間管理のマトリックスは、私たちの活動を「緊急度」と「重要度」という2つの軸で4つの領域に分けて考えられるものです。

 

<時間管理のマトリックス>

時間管理のマトリックスは、「緊急度」「重要度」という2つの軸によって、私たちの活動を

①緊急で重要      第1領域(別名「必須の領域」)

 

②重要だが緊急でない  第2領域(別名「効果性の領域」)

 

③緊急だが重要でない   第3領域(別名「錯覚の領域」)

 

④緊急でも重要でもない  第4領域(別名「浪費・過剰の領域」)

 

という4つに分類します。

 

私たちは日常生活のなかでつい「緊急性」に重きをおいて、第1領域、そして第3領域に時間を使ってしまいがちです。ただ、望む結果を得るためには「重要性」の軸をしっかりと考え、第2領域に時間を使いましょうということが、第3の法則が教えるポイントです。

 

 

「最優先事項」は何か?

第3の習慣「最優先事項を優先する」の最優先事項とは何でしょうか。最優先事項とは何か、ということは、時間管理のマトリックスにおける「重要」の基準は何か、ということとも紐づきます。

 

最優先事項や重要事項を考えるうえでヒントになるのは、じつは第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」です。自分の人生で何を大事にしたいか、また一つひとつの活動などのなかで望む結果は何かをしっかりと描いてください。その望む結果を得るために重要な活動が重要事項であり、最優先事項です。

 

 

仕事で継続的・長期的に成果を上げるための活動、ミッションやビジョンを実現するための活動、大切にしたい相手との交流、人間関係の構築、人材育成、自らのコンディションを整えるための運動やメンテナンス、自己成長に向けたインプットや学び等が重要事項に入ることが多いでしょう。

 

そして、上記の多くは「重要だが緊急ではない」活動です。もっと具体的には「納期がない活動」です。私たちは日常のなかで「納期」に追われ、つい「納期がない」活動を後回しにしがちです。しかし、重要事項、最優先事項に時間を投資しなければ、望む結果は得られません。

 

「大きな石を入れる」という考え方

「重要事項に時間を割く必要がある」という考え方は多くの人が「そのとおりだ」と頷くことでしょう。しかし、同時に「現実は忙しく、そんな暇はない……」と思われる方も多くいるのではないでしょうか。

 

第3の習慣を実践するためには、「大きな石を入れる」という考え方が有効です。手元にバケツと砂、そして、大小の石があると想像してみてください。バケツの中に砂と石を入れるにはどうしたら良いでしょうか。ポイントは大きな石を先に入れることです。

 

ここでの「バケツ」は1週間の予定です。バケツの中に、さほど重要ではないがやらなくてはならない(と感じている)こと、すなわち「小さな石」や「砂」を先に入れていくとどうなるでしょうか。あっという間に、バケツの半分ぐらいが埋まってしまうかもしれません。バケツの半分が埋まってしまったあとに、いくつかの「大きな石」、すなわち長期的に重要な仕事の進捗、新しいプロジェクトの企画、家族との会話、運動や自己研鑽の時間等、あなたにとって重要な活動を入れようとしても、バケツからはみ出してしまいます。

 

では、どうすれば良いのでしょうか。前述のとおり、まず大きな石を入れてしまえば良いのです。まずは、バケツの中に大きな石を入れ、あとから小さな石を、そして砂を入れていけば、すべて入るかもしれません。大きな石の隙間に小石や砂はスルスルと入っていきます。

 

つまり、スケジュールするときは、小さな石や砂、つまり第3領域ではなく、大きな石である第1領域、次に第2領域を優先してスケジュールすることが大切なのです。「重要性」の軸を優先してスケジュールすることで、最重要事項を優先して、自分にとって望む結果を得るための活動にしっかりと時間を割くことができるのです。

 

 

第3の習慣の位置づけ

『7つの習慣』は、第1~3の習慣の実践で得られる「私的成功(自立)」と、第4~6の習慣の実践で得られる「公的成功(相互依存)」、そして、自己研鑽の成長である第7の習慣という3つに分けられます。

 

第3の習慣「最優先事項を優先する」は私的成功を実現するための最後の習慣です。第1の習慣「主体的である」で人間が持っている力を活用することで選択する習慣を身に付け、第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」では、自分の人生で大切な価値観やミッションを明確にして、また、常に物事に取り組む前にゴールを描く「第一の創造」を実践する習慣を身に付けます。

 

第1の習慣と第2の習慣からなる土台の上で、私的成功を実現するための実践が第3の習慣です。自分の時間を何に投資するかを選択する(第1の習慣)ことを身に付け、何が重要かという基準(第2の習慣)を手に入れたうえに成り立つのが第3の習慣です。

最優先事項を優先できない理由と最優先事項を実践するために必要なこと

多くの人は、納期がないけど重要なこと、中長期で重要な仕事、新規プロジェクトの企画、大切な人と過ごす時間、運動、自己研鑽といったものを後回しにしがちです。本章では、なぜ最優先事項になかなか取りかかることができないのかという理由と、最優先事項を実践するために必要なことを見ていきます。

 

 

なぜ、最優先事項は優先されないのか?

最優先事項が優先されない理由は、本来最優先で取り組むべきことの多くが、「緊急」ではないからです。例えば、家族と親睦を深めることが、頭のなかでは重要だと思っていたとします。しかし、今すぐ家族と時間を取って対話をしなくても、いきなり家族との関係が壊れてしまうというわけではありません。

 

新規プロジェクトの企画も、今すぐ取りかかる必要がなければ、企画を考えることより受信ボックスに入っているメールに目を通して返信することを優先してしまうかもしれません。

 

つまり、最優先事項が優先されない理由は、「緊急度」なのです。人は重要かどうかよりも、緊急度を起点に自ららの時間を使いがちです。もちろん、すぐ終わる仕事を先に片付けてしまおうという考え方がすべて誤っているわけではありません。

 

しかし、「緊急度 > 重要度」で物事を判断する癖がついてしまうと、緊急で降りかかってくるタスクに、常に振り回されてしまいます。そして、小さな石や砂をバケツに入れることが習慣化すると、気が付いたらバケツはいつもいっぱいで重要なことにはいつまでも着手できない事態になってしまうのです。

 

 

最優先事項を優先するにはどうしたら良いか?

どうすれば最優先事項を優先することができるのでしょうか?コヴィー博士は、次のように言っています。

 

感情を抑え、最優先事項を優先するには、目的意識と使命感が要る。第2の習慣で身につけた明確な方向感覚と価値観が要る。そして、優先する必要のない物事に「ノー」とはっきり言えるためには、あなたの中に燃えるような「イエス」がなければならない。何よりも大切にすべきことを自覚していなければならないのだ。

出典:『完訳 7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー

 

最優先事項を優先するためには、重要ではない活動(第3領域と第4領域)に、自らの意思で「No」を選択することで大切です。例えば、「1日の計画を立てる」ことが重要だとして毎朝15分かかるとします。15分を確保するためには、15分の「重要ではないが実施してしまっているタスク」に対して、Noを選択する必要があります。

 

前章で「バケツに大きな石から入れれば良い」と解説しました。しかし、実際のところ、大きな石に着手するのは簡単なことではありません。今までの仕事の進め方やルーティン行動に対してNoを選択することには違和感を覚えるかもしれません。また、相手からの依頼や出席を要請されている会議にNoを選択することに、人間関係が壊れる不安を感じるかもしれません。

 

 

しかし、1日の時間は、すべての人に等しく24時間です。限られた時間を重要なことに使いたいならば、重要でない時間を削る必要があるのです。実践の重要性に気付き、第一歩を踏み出せた人が、自分の時間を有意義なことに使えるようになるのです。

 

 

最優先事項を優先した人の事例

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、「7つの習慣®」をテーマにした企業向けの社員研修を提供しています。「7つの習慣®」研修の実施を通じて、“最優先事項を優先する”大切さに気付き、時間の使い方を変えた人たちを数多く目にしてきました。

 

例えば、ある受講者は、「メールを見たらすぐに返信する」ことで「メールを見直す」という時間を削りました。また、別の受講生は「生産性が低い会議」にNoを選択しました。事前に資料を共有し、ドキュメントで意見やコメントをもらうようにして、会議の無駄な時間を削り、削った時間を「部下と話す時間」に変えました。

 

上記の例のように、自分の時間の使い方は自分の意思で選択できます。上記は小さな変化に見えるかもしれませんが、実は時間の使い方を変えることは大きな変化につながります。自分にとって「重要ではないこと」に使っていた時間が「重要なこと」に使われるようになる、その変化が1日15分だとしても、年間で228時間もの時間が重要なことに注がれるようになります。

 

第3の習慣に基づく小さな「時間の使い方の変化」を事例で紹介します。

 

・テレビを見すぎていた人が、テレビを見る前に10分運動するようにした・日曜日の夜、ゲームをしていただけの時間のなかで、1週間の計画を考える時間を15分とるようにした

・通勤時にYouTubeを見ていた人が、1日の計画を立てる時間に10分間使うようになった

・仕事が終わったら飲みに行くだけだった人が、毎日を振り返る時間を15分とるようになった

・帰宅後に1人で晩酌する習慣を、奥さんの話を聞く時間にするようにした

 

「小さな石」にNoを突きつけて、自分の時間を「大きな石」に振り向けることは大きな変化につながります。あとは、勇気を持って、実行に移すだけです。

 

おわりに

記事では、『7つの習慣』の第3の習慣「最優先事項を優先する」習慣を解説しました。第3の習慣を理解するためには、

①日々の活動を重要性と緊急性で4つの領域に区分けする「時間管理のマトリックス」②重要性の軸で考える「最優先事項」

③時間の使い方に関する「大きな石」の考え方

がポイントです。

 

第3の習慣は、「7つの習慣®」の前半部、精神的な自立を実現して「私的成功」に至るための実践ノウハウです。私たちは、日常のなかでつい「緊急なこと」に時間を使ってしまいます。ただ、「緊急ではないが重要なこと」に時間を使わない限り、自分の人生を充実させ、望む結果を手に入れることはできません。

 

1日24時間は誰にとっても平等です。私たちは第1の習慣「主体的である」を身に付けることで、自分の人生をどう使うかというのは、自分で決定することができます。そして、第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」を身に付けることで、何が重要かを見極めることができます。

 

そして、第3の習慣「最優先事項を優先する」を身に付けることで、重要なことに時間を投資して望む結果を得ることができるようになります。「重要なことに時間を使う」、シンプルで当たり前に聞こえますが、忙しい日常に忙殺されている方が多いことも事実です。

 

詩人ゲーテは「大事を小事の犠牲にしてはならない」と言っています。今回の記事が、時間管理の考え方にちょっとした変化を起こし、有意義な人生を送ってもらうヒントになれば幸いです。
 

株式会社ジェイックでは、7つの習慣を習得する研修を実施しています。フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社と正式契約しており、認定資格を取得した講師が研修を行います。ご興味のある方はぜひ以下のページよりお問い合わせください。

著者情報

宮本 靖之

株式会社ジェイック シニアマネージャー

宮本 靖之

大手生命保険会社にて、営業スタッフの採用・教育担当、営業拠点長職に従事。ジェイック入社後、研修講師として、新入社員から管理職層に至るまで幅広い階層の研修に登壇している。また、大学での就活生の就職対策講座も担当。

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