ワーカホリックとは、“仕事中毒”を意味し、「仕事をしないといけない」という強迫観念に駆られ、過度に働いている状態です。
日本は、世界的に見てもワーカホリックになる人が多いといわれ、日本労働組合総連合会の調査結果では、「自分がワーカホリックだと思うか?」の問いに“そう思う”と答えた人が、13.1%います。
本記事では、ワーカホリックの概要と特徴、リスクを確認します。後半では、ワーカホリック状態を改善する方法と、チームにワーカホリック状態の社員がいる場合の対処方法を紹介します。
<目次>
ワーカホリック(仕事中毒)とは?
ワーカホリックとは、強迫観念に駆られて仕事をやり続ける“仕事中毒”のことです。ワーカホリックになると、何よりも仕事が最優先であり、時間的にも残業が増え、長時間労働になっている状況が増えていきます。
専門家のなかには、ワーカホリックを“長時間労働への依存症”と定義している人もいます。
なお、ワーカホリックは、仕事をあらわす「work」と中毒をあらわす「-holic」から生まれた言葉です。似た成り立ちの言葉としては“alcoholic=アルコール中毒”があります。
ワーカホリックとワークエンゲージメントの違いとは?
ワーカホリックの特徴は、仕事に対する姿勢・状態を示す言葉であるワークエンゲージメントと比べると、さらにイメージしやすくなります。
ワークエンゲージメントとは、仕事を誇りに感じ、仕事に熱中し、仕事から活力を得ている状態になります。勤怠管理の問題はさておき、たとえば、勤怠制限のない経営者などであれば、ワークエンゲージメントが高ければ長時間労働になるでしょう。長時間労働という状態自体はワーカホリックと同じです。
ただし、ワークエンゲージメントの場合、「仕事をやりたい」というポジティブな状態で作業しています。一方で、ワーカホリックは、「仕事をやらなければいけない」というネガティブな状態です。
ワーカホリックの場合、仕事自体に対してネガティブな認識をしていて、そのうえで「やらなければいけない」と感じている状態です。
ワーカホリックのリスク
ワーカホリック状態で仕事を続けると、以下のような問題が起こりやすくなります。
バーンアウト(燃え尽き症候群)
バーンアウトとは、精神心理学者である、ハーバート・フロイデンバーガーが提唱した症状です。バーンアウトは、それまで一つの物事に没頭していた人の心身に極度の疲労が生じ、“燃え尽きた”かのように意欲が低下し、社会適応できなくなる状態になります。
バーンアウトは、絶え間ない過度のストレスから発生します。そのため、ワーカホリックのように、仕事に対してネガティブな認識を持って長時間労働をしていれば、バーンアウトもしやすくなります。
バーンアウト状態になると以下のような症状が見られることから、うつ病の一種とも考えられています。
- 朝起きられない
- 会社に行きたくない
- 同僚の顔を見るとイライラする
- 仕事がつまらなくなった
- 身も心も疲れ果てたと感じる
- 達成感や有能感が消えて、自己否定の気持ちが出てくる
- アルコールの量が増える など
健康状態の悪化
専門家の調査・研究では、ワーカホリックに限らず、労働者が働く時間が長くなればなるほど、心身の健康に悪影響をおよぼすことがわかっています。
たとえば、連日の残業で十分な休息・睡眠がとれなければ、疲労から体調不良に陥ったり、抵抗力が落ちれば、風邪などにもかかりやすくなったりするでしょう。健康状態が悪化すれば、精神的な余裕もなくなり、バーンアウトにもつながっていきます。
人間関係の悪化
仕事最優先で働いていると、友人や家族などからの誘いや約束を断ることも多くなり、プライベートでの人間関係が希薄になったりします。
また、バーンアウトに近づき、イライラしている状態などが増えれば、職場などにおける人間関係も悪化する可能性が高いでしょう。
ワーカホリック状態の特徴
ワーカホリックに陥った人には、以下のような思考や行動の特徴がでてきます。
いつも仕事のことだけ考えている
ワーカホリック状態の場合、仕事のことで頭がいっぱいで、友人や家族と一緒にいても“心ここにあらず”になりがちです。家族の話や遊びなどにも集中できない、楽しめない状態です。
仕事から離れることが不安
ワーカホリックになると常に「仕事をしなければならない」と感じてしまうため、仕事をしていない時間や休日などに“罪悪感”を感じたり、“無駄な時間”と思ったりしがちです。
少しでもスキマ時間があれば仕事を進めようとしますし、そもそも、仕事から離れるのが不安になることが、ワーカホリックの特徴です。
「○○でなければならない」と考えがち
責任感が強く完璧主義の人は、ワーカホリックになりがちです。完璧主義からワーカホリックになると、以下のような想いにとらわれやすくなります。
- 責任は完璧に果たさなければならない
- 必ず納期を守らなければならない
- 必ず目標を達成しなければならない
納期や約束はもちろん大切です。ただ、ワーカホリックの場合、過度に「完璧に○○でなければならない」「自分はこうしないといけない」といった意識で仕事する傾向が高まります。
「こうでなければならない」という思いは、自分を動かす原動力にもなりますが、「こうでない自分はダメだ」などと自分を否定する要因になったり、「自分を犠牲にしてでもやらねばならない」といった犠牲者意識、過度のストレスにもつながったりします。
ワーカホリック状態を改善するには?
ワーカホリック状態の改善には、毎日のなかで、以下のポイントを意識することが大切になります。
趣味を見つける
ワーカホリックの人に多いのが、“仕事以外にやること・考えること”がない状態です。
ワーカホリックになってしまうと、先述のとおり仕事をしていない時間に対して“無駄・生産性が低い”と感じることから、趣味などにチャレンジすることもなくなってしまいます。問題を回避するには、楽しめる趣味やスポーツを見つけるのがおすすめです。
意識的にリフレッシュする
ワーカホリック状態を防ぐには、以下のようなルールをつくり、意識的にリフレッシュできるようにすることも大切です。
- 週末は仕事をしない
- 土日のどちらか1日は、趣味を楽しむ
- 平日の残業は20時まで など
仕事をしない休日に罪悪感を抱いてしまったり、仕事がしたくてソワソワしたりする場合、自分一人で過ごすのをやめて、家族や仲間と一緒にできる趣味やイベントなどに出かけてもよいでしょう。
家族や友人と連絡をとる
ワーカホリックになると、人間関係が希薄になる傾向があります。そうすると、さらに仕事に打ち込んでしまう悪循環が生まれてしまうでしょう。
悪循環にブレーキをかけるには、家族や友人と連絡をとり、社会的な孤立を解消することがおすすめです。趣味がなかなか見つからない場合は、“家族と買い物に出かける”“両親を食事に誘う”などの家族サービスを定例化してもよいでしょう。
職場環境を変える
たとえば、一緒に働くチームメンバーの大半がワーカホリックの場合、自分がいくらワーカホリックに違和感を持っていても、周囲に流されて残業や休日出勤することになってしまいます。
また、上司や先輩メンバーなどから「まだ終わってないのに、もう帰るの?」といわれた場合、新人や若手は従わざるを得ないでしょう。周囲の影響によるワーカホリックを改善するには、転職によって働く環境を変えるのも一つです。
スイッチのオンオフを意識する
ワーカホリックを改善するには、メリハリをつけることも大切です。具体的には、勤務時間中は集中して、仕事が終わったらスイッチをオフにする感覚になります。
オンオフ意識とともに以下のようなルールを決めると、自ずと趣味や家族・友人とのコミュニケーション時間も確保しやすくなるでしょう。
- 20時以降は、メールやチャットに返信しない
- パソコンは、自宅に持ち帰らない
- 通勤電車のなかでは、読書することで気持ちを切り替える など
ワーカホリックの社員がいる場合の対処法とは?
ワーカホリック人材は、献身的に見える一方で、バーンアウト症候群による心身の不調や途中離脱、人間関係トラブルなども起こしやすいです。そのため、ワーカホリックの社員を見かけた場合、状態を放置せず、ケアや対応していくことが大切です。
ストレスチェックやパルスサーベイで分析する
まず、定期レビューを通じて、本人のストレス状態などを客観的に分析します。バルスサーベイとは、1~5分ほどで回答できる簡単な質問を、定期的に行ない、メンバーのストレスや精神的な状態などをチェックする方法です。バルスサーベイは、週1回や月1回など、比較的高頻度で実施することが特徴です
パルスサーベイは、メンバーの変化を早く把握し、課題解決に向けて大きな効果が期待できる方法として注目されています。
また、ストレスチェックは、今では50人以上の労働者がいる事業所では毎年1回の実施が義務付けられています。厚生労働省では、所要時間5分ほどでできる57問のストレスセルフチェックを無料提供しています。こうしたものを活用してみてもよいでしょう。
参考:5分でできる職場のストレスセルフチェック(厚生労働省)
業務量を管理する
人によっては、与えられた業務に対して「必ず早く終わらせなければならない」という強迫観念を抱えている可能性も考えられます。この場合、本人の進捗やストレス状態などを見ながら、上司が業務量をコントロールしてあげるのも一つです。
たとえば、ワーカホリック状態で残業や休日出勤が多い場合、時間外労働をしなくても終わる量だけ仕事をお願いする……などの業務量の調整もよいでしょう。
前述のとおり、責任感の強い人は、過度に「○○でなければならない」と強迫観念を持って、仕事が過剰品質になって工数が圧迫されたり、仕事の優先順位を付けられずに工数がパンクしたりしがちです。特に注意が必要です。
仕事への意味づけやキャリアプランを確認する
たとえば、上司が一方的に「売上1,000万円」などの目標を課した場合、ワーカホリックではない人でも“仕事をやらなければいけない・やらされている”などの強迫観念や受動的な姿勢になりがちです。
そこで、以下のように売上1,000万円を達成することによる意味付けをしてもらうと、「達成するために働きたい」というワークエンゲージメントの方向に向かいやすくなるでしょう。
- チームの目標(1億円)に貢献することで、メンバーが喜んでくれる
- 売上1,000万円の頑張りが認められれば、ボーナスがアップする
- ボーナスで妻や子どもにプレゼントを買ってあげられる など
まとめ
ワーカホリックとは、強迫観念に追われるように長時間労働する“仕事中毒”の状態を指す言葉です。ワークエンゲージメントが「仕事をやりたい」というポジティブな状態であるのに対して、ワーカホリックは「仕事は嫌いだけど、やらなければならない」というネガティブな状態になります。
ワーカホリック状態で仕事を続けると、バーンアウト(燃え尽き症候群)や健康状態の悪化、また人間関係の悪化などの問題が起こりやすくなります。
ワーカホリック状態を改善するには、以下の方法を実践するのがおすすめです。
- 趣味を見つける
- 休日は意識的にリフレッシュする
- 家族や友人と連絡をとる
- 職場環境を変える
- スイッチのオンオフを意識する
ワーカホリック状態は一種のうつ病でもあり、職場にワーカホリック気味のメンバーがいる場合、管理職は早めにケアやフォローする必要があるでしょう。ケア・フォローの方法には、以下のようなものがあります。
- ストレスチェックやパルスサーベイで分析する
- 業務量を管理する
- 仕事への意味づけやキャリアプランを確認する
ワーカホリックを防ぎ、ワークエンゲージメントを高めるうえでは、強みを生かしたマネジメントが有効です。強みを生かすことで、パフォーマンスが向上するとともに、仕事に対して前向きな感覚を得やすくなります。
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