現在は、市場環境が急激に変化することも多く、また競合が発生しやすい中で、一人ひとりの顧客に最適化したサービス提供も求められています。スピーディな変化対応やサービスの個別化が求められる中では、従来以上にすべての社員がリーダーシップ行動をとる重要性が増しています。
記事では、リーダーシップ行動の定義や具体例を紹介したうえで、メンバーのリーダーシップ行動を促進するポイントを解説します。
<目次>
すべての社員に求められるリーダーシップ行動とは?
リーダーシップは、管理職やマネジメント層だけに求められるものではありません。また、人を引っ張っていく、カリスマ性を発揮する、といったものだけがリーダーシップではありません。
いまの時代、組織の全メンバーに“自らの責任で行動を選択して、自分自身や周囲に良い影響を与える”セルフリーダーシップが求められています。
組織内にセルフリーダーシップを発揮するメンバーが増えれば、組織のパフォーマンスが向上することはもちろん、組織全体で自己成長や目標の自己決定など、自ら主体性を発揮することが文化として根付いていきます。
くり返しになりますが、すべての社員に求められるリーダーシップ行動とは、“自らの責任で行動を選択して、自分自身や周囲に良い影響を与える”セルフリーダーシップの発揮です。
リーダーシップ行動の具体例
以下のようなリーダーシップ行動をする社員が増えると、実行力が高く、変化対応にも強い組織が出来上がっていきます。
主体的に行動する
リーダーシップ行動で最も大切な要素は、主体性の発揮です。例えば、企業の経営が厳しいときに主体性が低い社員は、経営陣の戦略を批判したり、自らは何もせずに様子を窺ったりと、責任回避的・反応的な行動をとりやすくなります。
一方で、リーダーシップ行動をとる社員は、自らが先頭に立って企業の苦境をどうにかするでしょう。
上記のような大それた話だけでなく、
- 上司が提示した方針や計画に対してしっかりと自分の意見を述べる
- 自分の仕事でなくても懸念やリスクを指摘したり周囲と協働して対処したりする
- 自分の仕事に関して指示待ちではなく、自分なりの提案を上司にあげる
といったこともリーダーシップ行動です。
リーダーシップと主体性に関しては、以下の記事で詳しく解説中です。主体性開発が促される組織風土等も紹介していますので、気になる方はぜひご覧ください。
周囲に惑わされず「影響の輪」に集中する
リーダーシップ行動をとる人は「影響の輪」に集中します。「影響の輪」とは、スティーブン・R.コヴィー博士の著書『7つの習慣』で紹介されている概念です。私たちの周囲には「影響の輪」と「関心の輪」の2つがあります。
- 関心の輪:自分が関心を持っているもの全般
→今日の天気、上司や同僚の機嫌、顧客の意思決定など
- 影響の輪:関心の輪のなかで、自分がコントロールできるもの
→自分の行動、毎日の習慣、商談の事前準備
関心はあっても、自分が影響できない「関心の輪」にエネルギーを向けていると、物事は上手くいきません。主体性を発揮してリーダーシップ行動を発揮する人は「自分ができること」「自分が影響できるもの」に集中して、エネルギーを有効に使っています。
「関心の輪」と「影響の輪」は、以下の資料内で詳しく解説しています。自分自身をより良く導く習慣に興味がある方は、以下のボタンから資料をダウンロードしてみてください。
人を変えようとするよりも自分が変わる
組織において多くの問題は人と人、チームとチームの「間」で生じます。だからこそ、人間関係や部門間の関係が問題となるわけです。関わる相手に対して適切なフィードバックを行うことはリーダーシップ行動であり、「影響の輪」に集中することです。
しかし、私たちはフィードバックすることは出来ても、相手を変えることは出来ません。リーダーシップ行動を発揮する人は、フィードバックはした上で、自分の変化を通じて相手を変えていくことを意識します。
自身を高め続ける
リーダーシップ行動は、「自ら成長したい」という自己成長の概念とも関係が深いです。リーダーシップ行動を発揮する人は、より良い成果や貢献に向けて、常に自分を高めようとします。
自己成長の意識は、研修への受講姿勢や仕事から学ぼうとする姿勢に現れます。また、下記のような自身を高め、維持するような習慣形成にもつながります。
- 読書
- ジョギングや健康を維持するルーティン
- 仕事の振り返り
新しいことや難しい目標にチャレンジする
どんなに素晴らしい目標やアイデアも、実行されなければ「絵に描いた餅」になってしまいます。組織のミッションやビジョン、目標を達成していくためには、実際の行動やチャレンジが必要です。
新しいことや難しい目標にチャレンジするリーダーシップ行動の原動力は、自己肯定感や自己効力感です。自分が立てた目標をやり切ったり、自分との約束を守ったりする、また、「影響の輪」に集中して確実な成果を積み上げたりすることが、自己肯定感や自己効力感の向上に繋がります。
組織メンバーのリーダーシップ行動を促進するポイント
組織内でメンバーのリーダーシップ行動を促すには、経営陣や上司が以下5つのような工夫や働きかけをすることが有効です。
まずは上層部が変わる姿勢を見せる
リーダーシップ行動は、現場で働く社員だけでなく、経営陣を含めたすべての人に求められるものです。従って、リーダーシップ行動を推進する経営陣や上司が自らのセルフリーダーシップを発揮することが何より重要です。
自分たちは変わらず、リーダーシップ行動をしていない経営陣や上司がメンバーにリーダーシップ行動を求めるのは、セルフリーダーシップの押し付けです。組織のリーダーシップ行動は促されません。
したがって、自社に主体的に仕事に取り組むリーダーシップ行動を浸透させるには、まず経営陣や上司のセルフリーダーシップが必須です。
心理的安全性の高い組織を目指す
社員が主体性を発揮し、困難な課題解決にチャレンジするには、上司などに萎縮せずに自分の力を発揮できる環境が必要です。心理学用語では、失敗などを恐れず、自然体の自分をオープンにできる環境を「心理的安全性」と呼びます。
Googleも重視する心理的安全性は、チーム内の収益性を高めたり、メンバーの離職率を下げたりするうえでも大切な考え方です。心理的安全性が高い組織を作るには、経営陣や上司がメンバーを尊重・承認すること等が大切です。
心理的安全性を高めることの具体的な効果や高める方法は、以下の記事で紹介しています。
「自己成長」の概念を植えつける
リーダーシップ行動を発揮するうえでは、経営陣や上司の指示や提案によって開発されていくわけではありません。自ら学び成長する中で、自らの「当たり前」の基準を高めるなかで発揮されるものです。
組織において「自己成長」の重要性や価値を、経営陣の発信や率先垂範を通じて浸透させることが重要です。自己成長に努力した社員が資格取得や営業成績のアップ、優れた成果などを残したときに、しっかりと表彰したり発信したりすることも組織内に自己成長の概念を浸透させる上で有効です。
自己決定権を与える
リーダーシップ行動を促すには、メンバーに自分で意思決定する権利を与えることも大切です。人間にはもともと、自分の行動や目標を決めたい意思があります。
逆に、自分で決める自由を侵されると、人は無意識に反発する傾向があり、心理学用語では「心理的リアクタンス」と呼ばれます。子供の頃、親に「勉強しなさい!」と言われると“勉強する気が急になくなる”のも心理的リアクタンスの働きです。
心理的リアクタンスの問題を防ぎ、社員のリーダーシップ行動を促すには、なるべくメンバーに権限を委譲して、目標設定からやり方まで任せていくことが必要です。ただし、メンバーに目標設定などを任せていくためには、組織内に高い基準が必要となってきます。
“鶏が先か卵が先か”ではありませんが、
- メンバーに自己成長の概念を植え付けて高い基準を持たせる
- 自己決定権を与えることでメンバーの主体性を引き出す
という両者のバランスを取りながら進めることが大切です。
習慣化のサポートをする
セルフリーダーシップを発揮するには、自己肯定感や自己効力感も大切です。“自分には価値がある”“自分はできる”という自己肯定感や自己効力感が、前向きさや主体性の発揮に繋がります。
仕事での成果はもちろん、自分で決めた行動をやり切ったり、自己成長や成果に繋がる習慣を日々実践したりすることが自己肯定感や自己効力感のアップにつながります。また、上司はポジティブフィードバック等を通じて、成功体験を認識させたり、強みを承認して伸ばしていったりする働きかけも大切です。
リーダーシップ行動が実践される背景となるセルフリーダーシップの育み方は、下記の記事でも解説しています。主体性を育てるポイントが知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
まとめ
すべての社員に求められるリーダーシップ行動とは、“自らの責任で行動を選択して、自分自身や周囲に良い影響を与える”セルフリーダーシップの発揮です。
組織内において、主体性の発揮や影響の輪への集中、自己成長の追及などのリーダーシップ行動を発揮する社員が増えれば、組織のパフォーマンス向上はもちろん、組織の社風や文化も変わっていきます。
組織メンバーのリーダーシップ行動を促進するには、主体性を発揮しやすい環境を整えたり、自己決定権を尊重するマネジメントを行ったりすることが有効です。
また、経営陣や管理職自身が、セルフリーダーシップを発揮したり、ポジティブフィードバックを通じてメンバーの自己肯定感や自己効力感を高めたりすることも大切です。
多くのメンバーがリーダーシップ行動を発揮する組織作りを目指す方は、ぜひ記事の内容を参考に人材教育や環境整備を進めてみてください。