コンプライアンスを守る意味とは?|遵守の重要性とポイントを解説

更新:2022/08/25

作成:2022/08/25

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

コンプライアンスを守る意味とは?|遵守の重要性とポイントを解説

 企業にとってコンプライアンスを守ることは、業績の向上などと並んで社会的に求められていることです。企業の社会的責任が強く求められ、社会的な規範も変わっている中で、コンプライアンス違反が生じることによりリスクが非常に大きなものとなっています。

 記事ではコンプライアンス遵守が強く求められている背景を確認するとともに、組織内でコンプライアンスを守るためのポイント、過去の違反事例、具体的な対策方法などを紹介します。

<目次>

コンプライアンスとは?

 国や関係省庁の法令、また企業内の規則、さらに社会倫理などをコンプライアンスと呼び、これらを守ることをコンプライアンス遵守と呼びます。コンプライアンスは企業として遵守すべき規則で、違反すれば法令に基づく刑事罰や行政罰、または社会的な糾弾が行なわれることになります。

コンプライアンスが注目されている背景

コンプライアンスが注目されている背景
 コンプライアンスが注目されている背景として挙げられるのは以下の4つです。

  • 企業の社会的責任の重視
  • 企業の不祥事発覚
  • 法律改正による影響
  • SNSによる発信や拡散

企業の社会的責任に対する重視

 近年、グローバル化によって国家を超えるほどに発展した企業は、我々の生活に対して大きな影響を与えています。企業の持つ力が強くなったからこそ、より大きな社会的責任を求めるべきという風潮が強くなっています。

企業の不祥事

 国内では2002年の牛肉偽装事件や2006年のライブドア事件など、1990年代から2000年代にかけて企業の不祥事発覚が増加し、粉飾決算による倒産も相次ぎました。企業の不祥事は内部告発による発覚も多く、社会規範が変わるなかでコンプライアンスを重視する流れを加速させました。

法律改正による影響

 コンプライアンス体制の確立を促す法改正が進み、企業内部の不正を告発しやすい環境が作られました。行政からも企業に対して、よりコンプライアンスを重視した経営を求めるようになっています。

SNSによる発信や拡散

 コンプライアンス違反は、今まではマスメディアを通じて世間の明るみに出ていました。最近はSNSの発達により、顕在化されてこなかったコンプライアンス違反が世間に出るようになりました。社会規範を裏切るようなコンプライアンス違反はSNSで糾弾されることが多く、炎上してブランドや会社への信頼を傷つけることになります。

コンプライアンスの重要性

 コンプライアンスを守る重要性は大きく以下の5つに分類できます。

  • 社会的信頼の向上
  • 企業価値の向上
  • メンバーの定着
  • 刑事罰の回避
  • 行政処分の回避

社会的信頼の維持・向上

 企業がコンプライアンスに違反すると、”社会的責任を守らない企業”として消費者や取引先からの信頼を失ってしまうことになりかねません。とくにマスコミによる糾弾やSNS上での炎上などは企業イメージを大きく損ねることになるため、コンプライアンスに違反しないことは社会的信頼の維持・向上にとって非常に重要です。

企業価値の維持・向上

 コンプライアンスを遵守することによって、健全で継続的な企業経営が実現し、企業価値の向上を目指せます。コンプライアンスが重視されるようになった現代では、コンプライアンスの体制を構築しない企業は”リスクが高い企業”と評価され、投資家や取引先から敬遠されかねません。

 コンプライアンス違反による社会的信頼の棄損・炎上等は、株価や時価総額にも大きなダメージを与え、計り知れない影響をおよぼす危険性もあります。

メンバーの定着

 コンプライアンスの遵守はメンバーが健全に働くためにも重要です。仮に、世間に発覚していない状態だとしても、コンプライアンス違反の状態はメンバーの心身に悪影響をおよぼしかねません。コンプライアンスを遵守して働きやすい環境を整えることは、離職率を下げてメンバーを自社に定着させる効果も期待できます。

刑事罰の回避

 企業内部で起こる違法行為は、犯罪として刑事罰の対象になるケースが多くなっています。なかでも脱税や粉飾決算等は、重い刑事罰が科せられることになりかねません。コンプライアンスを遵守することは企業の信頼が失われるリスクを回避できるだけでなく、刑事罰等を受けないためにも当然必要な行為です。

行政処分の回避

 コンプライアンスに違反してしまった場合、労働基準監督署より行政処分や改善指導が行なわれる危険性もあります。行政処分はマスコミで広く報道されることも多く、企業ブランドを大きく傷つけます。刑事罰の回避と同様に、コンプライアンスを遵守することで行政処分等を受けることなく、イメージダウンを避けることは経営上の重要行為です。

コンプライアンス違反の種類

 よくあるコンプライアンス違反は大きくわけて以下の6種類です。

  • 不正会計
  • 情報漏洩
  • 労働問題
  • 景品表示法違反
  • 衛生管理
  • 製品偽造

不正会計

 不正会計には次のようなケースがあります。

  • ●費用や資産計上などを誤魔化してP/LやB/Sをより良くみせる
  • ●納税を免れようとしたり、損失を意図的に隠して黒字であるかのように操作したりする
  • ●売上や在庫、取引を不正に計上する など

 上記は当然に法律違反です。刑事罰が科せられるだけでなく、強く社会から糾弾される可能性があります。

情報漏洩

 さまざまな情報でデータ化されている中で、顧客情報や個人情報に関する情報漏洩は問題が生じやすいポイントです。情報漏洩の要因は外部からの攻撃や内部関係者が故意または過失で流出させるなどさまざまなものがありますが、情報管理がデータベース化されたことで、漏洩が起こった際の被害件数は数万件、数十万件などになることも多く、影響は甚大です。

 ECや金融関係などの場合には、個人情報に加えてクレジットカード情報などが漏洩することもあり、大々的に報道され、企業のイメージを大きく損ないかねません。

労働問題

 法令違反の違法残業やサービス残業、勤怠管理に関する問題もコンプライアンス違反として取り上げられがちです。2000年代に社会的なテーマとなった”ブラック企業”の問題、また電通の自殺事件などによって、勤怠管理は法令違反と同時に、社会倫理の視点からも特に糾弾されやすいものになっています。

 ハラスメントなども同様であり、人にとって身近な勤怠管理、残業代、セクハラ・パワハラなどはSNSで炎上しやすいテーマです。

景品表示法違反

 景品表示法違反とは、サービスや商品の記載、宣伝内容が不正な表現で行なわれていることです。情報の誇張表現などは消費者を迷わせるものとして規制されています。プロモーションの企画側は顧客に反応してもらうために、つい大げさな表記になってしまいがちです。景品表示法、また、自社の業界に関連する広告関連の規制にはしっかりと目を配る必要があります。

衛生管理

 衛生管理は飲食や食品製造業などで生じやすい問題です。食品管理の不徹底による食中毒者が発生するケースも多くなっています。衛生管理のコンプライアンス違反は利益率や回転率を重視しすぎた結果などで生じるケースが多くなります。衛生管理の問題が生じやすい食品関係等を扱っている場合には、特に遵守する環境が必要です。

製品偽造

 製品偽造には外国産を国産と表記する食品偽装や作成権限がない業務書類の偽装など、さまざまな事例があります。特に、製造業の製品偽造や品質管理などの問題は、企業価値に大きなダメージを与えます。また、書類の偽造は公文書・私文書偽造の罪に問われる可能性もあるため注意が必要です。

実際にあったコンプライアンス違反の事例

 ここでは実際にあったコンプライアンス違反の事例を、過労、個人情報の流出、食品の産地偽装という3つのケースにわけて紹介します。

過労による自殺

 上述した電通の自殺事件です。2016年に起きた事件ですが、センセーショナルに報道されたため、記憶されている方も多いでしょう。自殺した社員の残業時間は厚生労働省が示す”過労死リスクが高まる時間”である80時間を超えており、過労による自殺ではないかと報じられました。2017年の裁判で、電通に有罪が認められ、罰金刑が科せられました。

個人情報の流出

 個人情報の流出には岩手県釜石市の住民基本台帳のデータが3万人分流出した事例などがあります。漏洩に関わった2人の市職員は、住民基本台帳法違反容疑で告訴され、懲戒免職処分となっています。個人情報の漏洩は、極端にいえば毎月のように起こっており、コンプライアンスを守るうえで最も注意すべきテーマの一つです。

食品の産地偽装

 食品の産地偽装では、熊本県のアサリが産地偽装だったと発覚した事例があります。漁協が組織ぐるみで中国産のアサリを国産と偽装して販売していたとして、アサリの出荷を停止する処置が取られました。

コンプライアンスを守るには?対策方法5選

コンプライアンスを守るには?対策方法5選
コンプライアンスを守るための対策方法は5つあります。

 □ リスクの洗い出し
 □ 社内規則の制定
 □ 定期的な研修実施
 □ 仕組みの改善
 □ 内部監査の実施

リスクを洗い出す

 リスクは企業の分野によって異なります。例えば、食品メーカーであれば衛生管理や品質管理に関するコンプライアンスが最重要になりますし、EC分野であれば景品表示法やサイト内で扱う顧客情報に関するセキュリティが重要かもしれません。

 また、組織内の各部門でも発生しやすいコンプライアンス違反や守るための対策が異なるでしょう。企業は自社の事業を踏まえて、コンプライアンス違反が起きやすい分野をしっかりと洗い出し、研修や対策に反映することが大切です。

社内規則の制定

 リスクを踏まえて社内規定やマニュアルを作成しましょう。さらに、メンバー全員に周知を徹底させることやコンプライアンスに関する法令に詳しい専門家に確認してもらうことも、コンプライアンスを守るために重要です。

定期的な研修実施

 コンプライアンス違反は目先の小さな利益を追求して行なわれることが大半です。コンプライアンス違反をして発覚した場合のリスクの大きさを知ってもらうため、定期的にコンプライアンスに関する研修、セミナーを実施することが大切です。

 また、自社の事業に関連する法令や社会倫理に関して知らなければ、無自覚にコンプライアンス違反が行なわれてしまうこともあります。事業に関連する法令やコンプライアンス違反のリスクなどはしっかりと研修で伝えることが大切です。

 また、ハラスメントや情報セキュリティなどに業種業態に関係なく生じるリスクですので、しっかりと正しい知識や予防法を浸透させ、コンプライアンス違反を未然に防ぐことが大切です。また、役職によっても必要な知識は異なるため、受けさせるセミナー内容を調整することも必要です。

仕組みの改善

 人間は目先の欲求に負けてしまいやすい弱さもあるため、不正やコンプライアンス違反が行なわれないよう、未然に防ぐ仕組みを構築することも大切です。研修等を通じて正しい知識を付け、コンプライアンスに違反しない組織風土や倫理観を醸成しましょう。組織風土や倫理観を醸成したうえで仕組みを構築すれば、より効果的にコンプライアンス違反を防止できます。

 例えば、サービス産業を防ぐためには、勤怠管理システムをきちんと運用するとともに、サービス残業が起こらないよう退勤後はシステムへのアクセスを切るなども一つのやり方です。

内部監査の実施

 リスクの洗い出しや社内規則を策定したうえで、コンプライアンス違反やリスクをチェックすることも必要です。チェックする際は現場に任せず、定期的に内部監査を入れることが重要です。

コンプライアンスに関するよくある質問

 コンプライアンスを守ることに関するよくある質問に回答します。

CSRとの違いとは?

 CSRとは、英語のCorporate Social Responsibilityの頭文字をとったものです。日本語では企業の社会的責任と翻訳されます。

 CSRは企業の事業運営に関連して法令遵守、メンバーの安全、環境への配慮など、企業が存在することで社会に悪影響が生じないようにしなければならないという考え方です。もともと法令遵守という意味でのコンプライアンスはCSRの一部と考えられていました。法人も個人と同じように、法令に従うことは最低限の社会的責任です。

 同時に、コンプライアンスの考え方が社会倫理部分での広がりを見せるなかで、CSRとコンプライアンスが重なる部分も増加しています。例えば、「人権保護がされていないような労働実態があるサプライチェーン(仕入れ先)と取引しない」というのは、法令遵守というより社会倫理としてのコンプライアンスであり、同時にCSRでもあるともいえるでしょう。

コーポレートガバナンスとの違いは?

 コーポレートガバナンスは企業統治を指すもので、基本原理の一つにコンプライアンスがあります。CSRとコンプライアンス間にある法令遵守部分の重なりと同様に、企業をマネジメントするうえで法令遵守することは最低限の事項として考えられています。

 さらに、コーポレートガバナンスに関しては、「社会規範に反するような経営やマネジメントをしない」という意味で、社会倫理としてコンプライアンスを守ることも含めて「コーポレートガバナンスである」と考えられます。

コンプライアンスをきちんと守ることの重要性

 コンプライアンスに違反すると、社会的糾弾のみならず刑事罰が科せられることになりかねません。経済的な損失だけでなく、イメージダウンや人材の流出などさまざまな悪影響を引き起こす引き金になります。したがって、企業がコンプライアンスを遵守することは非常に大切です。

 コンプライアンスを守るためには、記事で紹介した5つの対策をしっかり実践するのが大事です。コンプライアンス違反は、起きてからでは遅いのです。未然に防ぐために、コンプライアンス違反が起きないような組織風土や倫理観の醸成、仕組みの構築に努めましょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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