聞き手にまわる|デール・カーネギー『人を動かす』

聞き手にまわる|デール・カーネギー『人を動かす』

ビジネスやコミュニケーションにおいて、「人の話を聞く」スキルが重要であるということに頷く人は多いでしょう。

人と仲良くなったり、相手から信頼を得たりするためには、相手の話をきちんと聞けるかどうかが大きく影響します。

「私たちの顔に、口が1つあるのに対し耳が2つあるというのは、コミュニケーションにおいて上手に話す以上に上手に聴くことが重要だと示している」といった話をどこかで聞いたことがある方もいるかもしれません。

実際に、商談や部下指導をする場合でも、話し方よりも聴き方を身に付けたほうが上手く行くというケースは枚挙にいとまがありません。

HRドクターを運営する研修会社ジェイックが実施したリーダーシップとコミュニケーションに関する調査でも「管理職に強化してもらいたいコミュニケーション能力」第1位は傾聴力、という結果が出ています。人を動かすためには、じつは喋るよりも聞くことの方が大切なのです。

コミュニケーションの指南書『人を動かす』の著者デール・カーネギーも、「話し上手になりたければ聞き上手になることだ。

興味を持たせるためにはまず、こちらが興味を持たねばならない」と相手の話を聞くことの重要性を強調しています。

本記事では、『人を動かす』に書かれている「人に好かれる六原則」の1つ、「聞き手にまわる」について解説します。

なお、本原則は書籍では「聞き手にまわる」ですが、デール・カーネギー研修の受講者に配られるゴールデンブックでは、「よい聞き手になる。相手に自分のことを話させる」とよりイメージしやすい表記になっています。記事内では書籍の表現に合わせて解説していきます。

<目次>

デール・カーネギー『人を動かす』の概要

記事では最初に、デール・カーネギー本人および彼の著書『人を動かす』について簡単に解説します。

デール・カーネギーとは?

名著『人を動かす』の著者であるデール・カーネギーは、1888年にミズーリ州の農家に生まれました。カーネギーは高校時代に弁論部でスピーチのコツを学び、その後大学に進学します。

大学を卒業後は、営業職や役者など様々な仕事に就いたものの、どの仕事も長続きはしませんでした。

失業して路頭に迷うことになったカーネギーですが、ある時、学生時代の特技であった弁論術を活かす機会に巡り合いました。

YMCAが開講するビジネスパーソンを対象にした話し方教室の講師として登壇したところ、人気を博し、大きな反響を呼ぶことになりました。

カーネギーの人生に転機が訪れた瞬間です。その後、カーネギーは自分の研究所を設立して、スピーチや自己啓発の講座、人材育成の分野で大成功を収めることになります。

『人を動かす』について

カーネギーは話し方講座の授業を通じて、受講生には話術だけでなく、対人関係の技術も必要であることに気づきます。

しかし、当時はコミュニケーションや対人関係の適切な教材がまだほとんど存在しなかったため、カーネギーは教材も自前で用意しました。

講座で利用した教材や授業で得た様々な知見・経験を基にして、カーネギーが1936年に出版したのが著書『人を動かす』です。

著書『人を動かす』には、タイトルにもあるように、“人に影響を与え行動へと導くための様々な原則”が記されています。

本書は、カーネギー自身の苦労と経験を交えたエピソードも数多く盛り込まれており、世界で1500万部の部数を誇り、出版から80年以上が経過した現在でも売れ続け、amazonのビジネス書ベストセラーのランキングに入り続ける1冊となっています。

「人に好かれる六原則」とは?

カーネギーの著書『人を動かす』は、「人を動かす三原則」「人に好かれる六原則」「人を説得する十二原則」「人を変える九原則」の4つのパートで構成されており、全部で30の原則が紹介されています。

本記事のテーマである「聞き手にまわる」は、上記のうち「人に好かれる六原則」のひとつです。

「聞き手にまわる」の詳細に入る前に、本章では「人に好かれる六原則」についておおまかに解説していきます。

1.誠実な関心を寄せる

私たちは基本的に、自分に無関心な相手にわざわざ関心を払おうとはしません。しかし一方で、自分に関心を持ってくれる相手は大事にしたいと考えます。

カーネギーは本書の中で「われわれは、自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる」という言葉を紹介しています。

すなわち、人から好かれるためには、まず自分から相手に積極的に関心を持つことが最初の一歩だということです。

2.笑顔を忘れない

誰かから穏やかな笑顔を向けられれば、私達の多くは安心感を抱き、警戒心を解きます。

このように、笑顔には人の感情をポジティブに変化させる不思議な力があり、人間関係にも好ましい影響を与えます。

加えて、笑顔は相手の感情だけでなく、自分自身の気持ちにもポジティブに作用します。

とはいえ、辛いことや悲しいことがあったときなど、私たちは笑顔になれないこともあるでしょう。そんなときでも、前向きに笑顔を作ることが大切です。

行動は間接的に人の感情に影響を与えます。脳科学でも紹介されていますが、私たちは笑顔でいることで、ポジティブな感情を抱くことができます。

3.名前を覚える

-「自分の名前を覚えていて、それを呼んでくれるということは、まことに気分のいいもので、つまらぬお世辞よりもよほど効果がある。逆に、相手の名を忘れたり、間違えて書いたりすると、厄介なことが起こる。」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

私たちは人生の中で何度も名前を呼ばれ、自分の名前に特別な愛着や思い入れを持っています。

そして、上に引用したように、名前を覚えてもらって、名前を呼ばれると、自分の存在が尊重されていると感じます。

4.聞き手にまわる

「話し上手になりたければ、聞き上手になることだ。興味を持たせるためには、まず、こちらが興味を持たなければならない」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

私たちが最も強い興味関心を抱いているのは「自分自身」です。だからこそ、自分の話を熱心に聞いてくれる人に対しては好印象を抱くものです。

「聞き手にまわる」の詳細は次章で詳しく解説します。

5.関心のありかを見抜く

「初めて会った相手にも関わらず、共通の趣味や家族の話題で盛り上がった」という経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。

私たちは自分が興味のある話題ほど、饒舌になるものです。だからこそ、もし相手の関心のありかを見抜くことができれば、相手と距離を縮める会話もグッとしやすくなります。

6.心から褒める

「人は誰でも(自分は)他人より何らかの点で優れていると思っている。だから、相手の心を確実につかむ方法は、相手が相手なりの世界で重要な人物であることを率直に認め、そのことをうまく相手に悟らせることだ。」
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

相手の優れた点を見つけ、優れた点を率直に褒めることは、相手の自己重要感を満たすことにつながります。

相手の良いところをしっかりと褒め、“卓越した存在であること”を認めてあげることによって、相手の心を掴むことができます。

「聞き手にまわる」の詳細と実践のコツとは?

前章では「人に好かれる六原則」について、大まかにお伝えしました。本章では、「人に好かれる六原則」より「聞き手にまわる」について詳しく解説します。

なぜ、聞き手にまわることが重要なのか?

冒頭でも触れたように、コミュニケーションにおいては「上手に話す」以上に「上手に聞く」ことが肝心です。

なぜ聞き手にまわることが重要なのでしょうか。カーネギーは『人を動かす』の中で次のように説明しています。

“話し上手になりたければ、聞き上手になることだ。興味を持たせるためには、まずこちらが興味を持たなければならない。相手が喜んで答えるような質問をすることだ。相手自身のことや、得意にしていることを話させるように仕向けるのだ。あなたの話し相手は、あなたのことに対して持つ興味の百倍もの興味を、自分自身のことに対して持っているのである”
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

カーネギーが言うように、寡黙な人もおしゃべりな人も、基本的に人は“自分自身”に興味を持っているものです。

だからこそ、自分のことを話したいし、自分の話を聞いてくれる人に出会いたいと思っています。

しかし、誰もが“自分自身”に興味を持っているからこそ、自分の話を熱心に聞いてくれる人は、なかなかいません。

従って、自分の話に真摯に耳を傾けてくれる人がいれば時間を忘れ心地よい気分で話すことができますし、自分の話を熱心に聞いてくれる相手には好印象を抱くものです。

すなわち、聞き上手になることで、それ以上の特別なことをしなくても、簡単に相手にとって特別な存在になれるというわけです。

相手にとって特別で重要な存在であることが、人間関係や人を動かす上で良い影響を与えることは言うまでもありません。

聞き上手は話し上手である

聞くことの重要性はわかっていても、「相手と共通の話題や知識が無ければ難しいのでは?」と思うかもしれません。

カーネギーは『人を動かす』の中で、とある晩餐会の場で、有名な植物学者と何時間も語り合ったエピソードを紹介しています。

“私は、非礼をも顧みず、他の客たちを無視して、何時間もその植物学者と話したのである。夜も更けてきたので、私は皆に別れを告げた。その時、植物学者はその主人に向かって、私のことをさんざんほめちぎり、しまいには、私は〝世にも珍しい話し上手〟だということになってしまった。

話し上手とは、驚いた。あの時、私は、ほとんど何もしゃべらなかったのである。しゃべろうにも、植物学に関してはまったくの無知で、話題を変えでもしない限り、私には話す材料がなかったのだ。もっとも、しゃべる代わりに、聞くことだけは、確かに一心になって聞いた。心から面白いと思って聞いていた。それが、相手にわかったのだ。したがって、相手はうれしくなったのである。こういう聞き方は、私たちが誰にでも与えることのできる最高の賛辞なのである”
(デール・カーネギー『人を動かす』より引用)

植物学の詳しい知識を持たないカーネギーと、植物に対する深い造詣と知識を持つ植物学者の会話は、一見するとあまり盛り上がらないように思えるかもしれません。

しかし、カーネギーは何時間も相手の話を聞き続け、しまいには「世にも珍しい話し上手だ」と評されています。

このように、人は話すことで大いに満足感・充実感を得られます。したがって、自分から積極的に話さなくても、相手の話に熱心に耳を傾ける。

これだけで、相手から「非常に心地よく楽しいコミュニケーションの時間、会話の時間を提供してくれる喋り上手だ!」と思ってもらえるのです。

心の底から関心を持って聞く

先ほど引用したエピソードの中で、一つポイントがあります。

「~しゃべる代わりに、聞くことだけは、確かに一心になって聞いた。心から面白いと思って聞いていた。それが、相手にわかったのだ。したがって、相手はうれしくなったのである。」

話を聞くときには、相手に興味を持ち心から面白いと思って聞くことが大切です。

したがって、自分が大して興味を感じない話題に対してうわべだけ話に聞き入っているかのように振る舞えば、相手から簡単に見透かされ、むしろ逆効果になってしまうでしょう。

「聞く・聴く」ことに関するスキルには、コーチングや傾聴などがあります。

聞き上手になるうえで、これらのスキルは非常に有効ですが、それ以上にまず「相手自身、また相手の関心事に興味を持つ」姿勢が重要です。

カーネギーは「興味を持たせるためには、まず、こちらが興味を持たなくてはならない」と話しています。

良い聞き手となるためには、相手の行動や感情の動きなど、「日ごろから周囲の人のいろいろなことに興味を持つクセ」を習慣にするとよいでしょう。

まとめ

記事では、デール・カーネギーの「人に好かれる六原則」のひとつである、「聞き手にまわる」をテーマにお伝えしました。

「上手に話すことよりも、相手の話をしっかり聴くことが大切」というのは、身近なビジネスシーンを始め様々なコミュニケーションに共通して言えることです。

相手にしっかりと関心を傾けて、うなずく・相槌をいれるなど、相手が気持ちよく話しせる状況を作り出すことが重要です。

ただ、どうしても“自分自身”また、“自分自身の興味”に関心がいってしまい、なかなか聞き役に徹することが難しいのが人間です。

記事でお伝えしたように、普段から周囲の人の感情や癖、相手に興味などに関心を持って過ごすことが、良い聞き手となるためのトレーニングとなるでしょう。

今回の記事が良い聞き手となるための習慣形成、良い人間関係を作るために少しでもお役立ちできればうれしく思います。

なお、HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、米国デールカーネギー・アソシエイツ社と提携して、日本でデール・カーネギー研修を提供しています。

「管理職のマネジメント力を高めたい」「営業職の営業力をあげたい」とお考えであれば、ぜひ下記の資料をご覧ください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
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