社員教育の種類は何がある?対象、形式、テーマでの分類と研修設計の考え方を解説

社員教育の種類は何がある?対象、形式、テーマでの分類と研修設計の考え方を解説

社員教育には、さまざまな種類があります。また、一口に社員教育や研修といっても、対象者や実施タイミング、テーマといった様々な切り口が考えられます。

 

教育計画を立てるときには、自社が実施すべき優先順位をしっかりと考えて設計していくことが大切です。記事では、社員教育のおもな種類を紹介したうえで、効果的な研修計画を立てるためのポイントを紹介します。

<目次>

社員教育の目的とは?

社員研修の目標は、社員一人ひとりがスキルや知識を身に付けたり、メンバーのモチベーションや意欲を高めたり、組織内の連携を強化したりすることです。上記を通じて、個人と組織の生産性を高め、組織の目標達成やミッション・ビジョンの実現に向かうことが目的です。

 

テーマや対象にもよりますが、社員研修を実施して得られるメリットで代表的なのは、以下のものです。

 

  • 個人の生産性向上(能力向上、姿勢や考え方)
  • 理念や行動指針の浸透
  • 知恵の共有化
  • 組織内の連携強化やチームビルディング
  • コンプライアンスやリスクマネジメントの徹底

 

なお、以下の記事でも、社員教育の効果性を高めるためのポイントを解説していますので、ぜひ本記事と併せてご覧ください。

社員教育の種類

研修を受けているビジネスパーソン

社員教育の体系を整備したり、効果的な社員研修を計画したりするうえでは、社員研修の種類や切り口を知っておくことが必要です。社員研修は主に以下で紹介する5つの切り口で考えることが基本となります。

 

 

1.「タイミング」で行なう研修

社員教育の実施を検討する切り口のひとつが「タイミング」です。

 

入社や部署異動、昇進など、「受講者の環境」や「受講者への期待事項」に変化が起こる際、また「節目となるタイミング」での社員教育が効果的です。タイミングという切り口で企画する社員教育の事例としては、以下のようなものがあります。

 

  • 入社時の初期研修やオンボーディング
  • 配属時のOJT、またOJTのトレーナー研修
  • 入社1年後研修や入社3年後研修
  • 昇進時に行なう新任管理職研修など
  • 20代後半や40代などで行なうライフプラン研修

 

 

2.「階層」研修

階層研修は、「タイミング」による研修と重複する部分がありますが、新人、若手、新任管理職、中堅管理職、幹部……のような階層で実施する社員研修です。

 

成果をあげるために必要となるスキルは階層ごとに変わってきますので、各階層で必要なスキルを研修でインプットしてもらいます。階層ごとの教育テーマを大きく区分けすると、以下のような内容になります。

 

  • 新卒、若手 :ビジネスマナー、ITリテラシー、コミュニケーション力、実務スキル
  • 管理職 :マネジメントスキル、ロジカルシンキング、ハラスメント対策など
  • 幹部、役員 :マーケティング、コンセプチュアルスキル、財務会計など

 

研修計画を立てるときには、新入社員や管理職といった階層ごとに必要なスキルの特徴を知ることも非常に大切です。HRドクターは各階層で求められる能力や研修計画のポイントも紹介していますので、ぜひ計画時の参考にしてください。

 

 

3.「職種」研修

職種研修は、営業、マーケティング、生産、エンジニアなど、職種で必要なスキルやテーマに応じた社員教育です。例えば、営業であればコミュニケーションスキルやテレアポ、商談におけるヒアリングや提案など、各職種で必要となる能力を磨くための研修になります。

 

営業などの職種別研修についても詳しい記事を公開しています。営業職の研修について知りたい方、職種研修の考え方やポイントを知りたい方は、内容をチェックしてみてください。

 

 

4.「テーマ」による社員教育

社員教育は、個人や組織の生産性を上げることが目的です。したがって、「事業計画や組織の現状から鑑みて、強化したいテーマから社員教育を考える」という切り口もあります。

 

テーマを軸に検討した場合、結果として、特定の階層や職種を対象とすることになるケースもあります。また、組織風土やミッション・ビジョン浸透などのように、階層や職種を超えて実施するテーマになることもあるでしょう。

 

組織風土やミッション・ビジョンの浸透は、組織の結束力を高めるうえで非常に効果的です。以下の記事では、組織風土が重要視される理由なども詳しく解説していますので、ご興味あればご覧ください。

 

 

5.社員教育の方法による種類分け

社員教育の方法は、誰向けにどのようなテーマで研修するのかが決まったあとに検討します。社員教育を大別すると、OJTとOff‐JTに分けられます。

 

OJTは実務のなかで実務的なノウハウを身に付けるものであり、Off‐JTは実務から離れた場所で体系的な学びや新しいスキルを習得したり、実務での体験を振り返ったりするものです。

 

Off‐JTのなかに、座学、e‐ラーニング、ディスカッション、グループワーク、ロールプレイング、PBL(プロジェクトベースドラーニング)などのさまざまな教育手法があります。最近では、対面かオンラインかというのも研修方法における選択肢の一つになっています。

 

HRドクターでは、以下の記事でOJTとOff‐JTの具体的な特徴や実践ポイントなどを紹介しています。効果を最大化する方法などが知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

社員教育計画の考え方

笑顔で打ち合わせするビジネスパーソン

社員教育の年度計画や体系を考えるときには、以下のポイントに注意すると良いでしょう。

 

 

社員教育の効果は単発では上がらない

社員教育をするうえで注意したいのは、場あたり的な単発の研修をしていても高い効果は期待できないことです。例えば、リーダーや幹部候補の人材育成には、最低1年の長い時間がかかるのが一般的です。

 

したがって、「次世代リーダーを育成したい」という目的で社員教育の計画を作る場合、単発の研修で必要なスキルやテクニックを教えても問題解決になりません。また、リーダーに欠かせない人間性や人格などは、習得までにある程度の時間がかかります。

 

テーマにもよりますが、社員教育の計画は1年~3年ぐらいの時間軸を持って、継続性のある内容で考えることが大切です。もちろんベースとなる教育計画があったうえで、状況に応じて必要となる研修を単発で実施することは必要です。

 

 

タイミングによる研修整備をしっかり行なう

昇進によって「新たな地位で求められるスキル」と「いま持っているスキル」に乖離が生じた場合、生産性の阻害や戦力化の遅れが生じます。したがって、教育体系を考える上では、ベースとして「タイミングによる研修」をきちんと整備することが大切です。

 

特に、新人受け入れ(本人と指導側の両方)、新任管理職、新任幹部といった大きな変化タイミングの研修はきちんと実施することが重要です。新たなポジションに必要な考え方やスキルを体系的に教えることで、新たなポジションで速やかに成果をあげやすくなるでしょう。

 

 

自社の現状に合ったポイントの洗い出しをする

社員教育の内容は、組織の生産性を高め、目標達成・ミッション・ビジョンの実現をするためのものです。したがって、実施する研修は、自社の事業や仕事特性、現状の課題に即したものにすることが大切です。

 

そのため、研修の実施計画を作るときには、現状を踏まえて、組織成長に向けたボトルネックやテコが働きそうなポイントを洗い出しながら考えていくことが大切です。洗い出した項目のなかで、社員教育による「人の成長」や「人の関係性」で解消しそうなテーマを見極め、優先順位をつけましょう。

 

何となく「育成しないといけない」「ここが弱い気がする」といった感覚で研修内容を決めてしまうと効果性があがりません。厳密に効果検証することは難しいですが、「事業上のどの数値を動かすために社員教育をやるのか?」ぐらいの意識を持って計画を考えるとよいでしょう。

 

 

個別の教育目的や目標を明確にする

社員教育の効果を高めるには、個別の教育目的や目標、ゴールを明確にすることが重要です。

 

教育効果を定量的に計測することは非常に難しいものがありますが、定性的にでも「どうなれば成功なのか?」「終わったときにどうなっていれば良いのか」を言語化することは、プログラム設計や振り返りをするうえで非常に有効です。

 

 

個別の教育プログラムを選定する

実施する研修プログラムの選定や実施タイミングは、研修のゴールを明確にしたうえで決めていきます。

 

研修プログラムには、社内研修、外部研修、また、対面かオンラインかなどのさまざまな選択肢があります。豊富な選択肢のなかで自社のゴールを実現できるものを選んでいきましょう。

 

研修効果を高めるうえで重要なのは、「学び⇒実践⇒振り返り」のサイクルを回していくことです。「学び⇒実践⇒振り返り」は、

 

  • 体系的に知識や考え方を学ぶ
  • 学んだだけで終わらせず、現場で実践する
  • 実践した結果を振り返って次につながる

 

というサイクルです。

 

外部研修の選定や、自社研修を設計する際には、「学び⇒実践⇒振り返り」のサイクルを回せる実践型プログラム・継続学習のプログラムにすることが効果性UPに繋がります。

 

 

効果測定の実施

社員教育は実施して終わりではありません。業務時間と費用をかけて社員教育を実施するわけですから、実施後に効果検証を行ない、PDCAを回して教育内容をブラッシュアップして改善を図っていくことが大切になります。

 

社員教育の効果は定量的に測定することは難しい部分がありますが、以下のような測定方法を活用しながら検証を進めるのがおススメです。

 

  • 満足度アンケート
  • 理解度テスト
  • 実践内容や結果の発表
  • 研修3ヵ月後のフォロー研修 など

まとめ

社員教育の体系や実施方法を検討するときには、いくつかある社員教育の切り口を把握しておきましょう。そのうえで、社員の成長や組織の課題解決につながるものを組み合わせて設計します。

 

  • 「タイミング」で行なう研修
  • 「階層」研修
  • 「職種」研修
  • 「テーマ」による社員教育

 

教育体系を整備していくうえでは、新人、新任管理職、新任幹部、また2年目研修や3年目研修など、「タイミング」で行う研修を基盤とすると良いでしょう。新しいポジション等で必要な考え方や知識を、必要なタイミングで学ばせることが、速やかに成果をあげることに繋がるからです。

 

その上で、個別の社員研修を計画するうえでは、自社の現状を踏まえて、優先順位が高い階層、職種、テーマを絞り込む必要があります。社員教育は、組織成長や業績向上を実現する手段の一つです。

 

自社の事業構造やビジネスプロセスから逆算して、ボトルネックや「てこの原理」が発揮されるポイントを見極めて手を打つことが大切です。教育で解決する選択肢以外に、制度や仕組み、ツール等で解決することも選択肢に入れたうえで、社員教育を実施する対象やテーマの優先順を考えると良いでしょう。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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