新人は電話対応の仕事を任されることがよくあります。最近では、“TELハラ”などという言葉もネット上で飛び交いました。働き方改革や生産性向上の一環として電話対応を見直すことは有効ですが、一方で、新人が電話対応することで得られる成長もあります。
電話対応は“会社の代表”として社内外の人とやりとりをする仕事になりますので、新人教育の中できちんとしたやり方を身に付けさせることは大切です。記事では、新人に身に付けさせたい電話対応の受け方、かけ方など、電話対応マニュアルに載せたい基本を確認します。
<目次>
新人に覚えさせたい電話対応の基本
新人に電話対応を教える時に大事な心構えや「電話」の特徴、また4つの原則を解説します。
電話対応の心構え
電話対応をする際には、“新人かどうか?”は相手にとって関係ありません。お客様等、社外の人は、「相手が新人か?」は意識していませんし、誰が電話に出たとしても“会社の顔”としてキチンとした対応を期待しています。従って、電話対応する心構えとしては、「会社の代表」として電話を受けている認識を持ってもらうことが大事です。
そういった心構えで電話に出れば、どのような対応をすれば良いのか、言葉遣いはどのようにしたら良いのか、スムーズに取り次ぐにはどのようにしたら良いのか等、考えて電話に出ることができます。最初はたどたどしいところがあったとしても、“会社の代表として対応している”という心構えを指導しましょう。
電話の特徴「声だけのコミュニケーション」
言うまでもありませんが、電話は声だけのコミュニケーションです。コミュニケーションの研修等で必ず出てくるメラビアンの法則はご存じでしょうか。人がコミュニケーションで受け取る印象は、話の内容7%、声の抑揚・口調38%、表情・動作55%の割合になるというものです。
電話では、印象の過半数を形成する「表情・動作」は伝わりません。従って、その分「声」と「内容」で印象が形成されるようになります。とくに「声」が与える影響が大きくなりますので、声の大きさや抑揚、ペースを意識して対応することが大切です。
電話対応4つの原則
電話対応する際は、次の4つの原則を大切にすることがポイントです。
- 迅速・・・お客様を待たせないように、基本は3コール以内で対応しましょう。また取り次ぎなどでお待たせする際にも“相手を待たせる時間”に気を配りましょう
- 正確・・・電話では「伝言」することが多くなります。メモを取ったり復唱したりすることで、正確に情報を伝えることを大切にしましょう。
- 親切・・・お客様は何らかの目的があって電話してきています。挨拶や言葉遣い、対応など、相手に対する親切な対応を心がけましょう
- 配慮・・・電話対応をはじめとするコミュニケーションの基本は「配慮」です。相手の気持ちや事情を考えて、汲み取った対応をしましょう。
具体的なトークや手順を覚えさせることも大切ですが、方法に加えて何が大事か?なぜ大事か?という本質をきちんと伝えることで、新人の理解が深まり応用ができるようになります。
新人の電話対応マニュアル、電話におけるビジネスマナーの基本
本章では新人の電話対応で教えるべきマニュアル、ビジネスマナーの基本を、前章よりも具体的な形でお伝えします。
「ビジネスにおける電話の受け方・かけ方」の基本
まず、電話の受け方の基本ですが、「お電話ありがとうございます。株式会社●●の××です」とまずは感謝の気持ちを伝えると共に、対応者を明確にして電話を取ります。挨拶等の後、用件を復唱・確認しながら、相手の用件を把握します。「復唱・確認」は学生時代にはやったことがない新人が多いので、新人に電話対応をレクチャーする際には一つのポイントです。
なお、新人が電話対応する場合、本人宛に電話がかかってくることは殆どありませんので、「取り次ぐ」ことが主な仕事になります。取り次ぐ際には、正確な情報を伝えることが大切です。とくに、取り次ぐ相手が不在である場合には、相手の名前や所属・用件をメモして、それらを復唱・確認して正確な情報をパスすることが重要です。また、自分の名前を名乗って責任の所在を明確にすることもポイントです。
また、徐々に新人が電話をかける側にまわることも増えてきます。電話をかける際には、どういう用件で電話をかけるのかあらかじめ整理することが大事です。
受ける場合と同様にかけた相手がいる場合もあれば、不在の場合もあります。目当ての相手がいれば、用件を端的に伝えて対応してもらいます。一方、不在の場合には、用件の緊急度等も踏まえて、電話に出た相手に用件や依頼を伝えることになります。本人との関係性や電話した用件を端的に伝えることで相手も対応しやすくなります。
また、電話は相手の都合は考慮せず、かける側の都合(タイミング)でかけるものになります。相手の時間を無駄に奪わないという意味でも、慣れないうちは事前にきちんと要件や目的等を整理しておくことが大切です。
電話対応でよく使われる敬語
電話対応でよく使われる敬語には、以下のようなものがあります。台詞をそのまま暗記する必要はないと思いますが、よく使われる敬語や言い回しは覚えておくことが重要です。
- 電話を受けた時:「お電話ありがとうございます」「おはようございます」
- お待たせする時:「少々お待ちいただけますでしょうか」
- 了承する時:「かしこまりました」「承知しました」
- 自社:「弊社」
- 相手:「御社」
- クッション言葉:「おそれいりますが」「申し訳ございませんが」「お手数をおかけしますが」
クレーム電話への対応方法
新人が電話対応をしていると、時にはクレーム電話を受けることもあるでしょう。クレーム電話の対応にはいくつか注意する点があります。
- 慌てない
先方が感情的になっていると、電話を受けた新人は、驚いたり焦ったりしてしまいがちです。しかし、電話を対応する側が焦ってしまうと、対応が慌ただしくなったりミスをしてしまったりして、さらに相手の不快な感情を煽ってしまうことになります。
先方は、電話を受けた新人に怒っているわけではなく、会社やサービスに対して、また、何かがうまくいかなかったことに対して感情的になっています。どんなクレームがあるかを事前に理解したうえで、対応できる相手に取り次ぐことだけを意識して、慌てずに、普段よりもむしろゆっくりと対応するぐらいの意識が良いでしょう。
- 相手の話をしっかり聴く
クレームの対応では「相手の話をしっかり聴く」ことが大事です。復唱・確認をしたり、オウム返しをしたりすることで、相手に、「あなたの話をしっかり聴いています」という姿勢を示します。自分の話がきっちり理解されていることが伝われば、相手の態度が軟化することもあります。正確に情報を把握する意味でも、いつも以上に「聴く」ことを徹底しましょう。
- 素早く取り次ぐ
新人のうちはクレームに対して自分では対応できないことも多いでしょう。自分が対応できない場合には、適切なタイミングで上司や先輩に繋ぐこともクレーム対応のポイントです。状況が把握できて、自分では対応できないと分かった場合には、対応できる人に素早く変わりましょう。相手に“対応できない人だ”と思わせてしまったら、「今まで話していたのは何だったの?」と相手の感情に火に油を注ぐ結果になりかねません。早めに引き継ぐことも大事です。
新人がやってしまう電話対応NG集
最後に、新人が電話対応でやってしまいがちなNG例を紹介します。よくあるNGケースもマニュアルに記載したり、研修でレクチャーしたりすると良いでしょう。
メモを忘れて、適切な伝言ができない
新人の電話対応でありがちなミスが、取り次ぐ際に「誰からの電話?」と聞かれて、答えられないケースです。相手の話を聞くことに一生懸命になり過ぎてしまい、用件を聞いているうちに、相手の会社名や名前を忘れてしまうケースです。
また、相手に気を遣い過ぎて、“会社名や名前を正確に聞き取れなかったのに、聞き返せずにそのままにしてしまう”ケースもあります。相手に配慮することは大切ですが、正確な伝言ができないと、お互いにマイナスです。電話対応の目的を果たすためにきちんと聞き返しましょう。
さらに、用件を忘れてしまうケースもあります。何かの仕事をしている時に電話対応することになったり、一つの電話に対応した直後に別の電話が入ってきたりした場合にありがちです。適切に伝言するために、電話に対応しながらしっかりメモを取ることの重要性を伝えましょう。
電話の切り方を間違えて、相手を不快にさせてしまう
「終わりよければすべてよし」という言葉がありますが、電話対応でも同じです。電話を受ける場合は先方が電話を切ってから電話を切ることが基本的なビジネスマナーです。逆に、電話をかける場合にはこちらから電話を切ることが多いでしょう。
固定電話を切る際に、大きな音で「ガチャン」と切ると、それまでの対応が良くても、なんとなく悪い印象が残ってしまいます。電話を切る際にはできる限り相手に先に切ってもらう、また、こちらから切る際には受話器を置いて切るのではなく、指でフックを押して電話を切ってから受話器を置く等の配慮が必要です。
最近の新人は固定電話を使った経験がないことも多々あります。スマホの普及により固定電話がない家庭も増えていますし、固定電話があってもワイヤレスという場合も多いでしょう。会社で有線の固定電話を使っている場合には、指導する際には注意が必要なポイントです。
電話対応でよくある失敗例
その他にも新人が電話対応で失敗しやすいパターンがいくつかあります。
- 保留ボタンと間違えて、電話を切ってしまう
「保留ボタンを押すつもりで、そのまま電話を切ってしまった」というミスはたまに起こります。電話の相手は茫然としているか、「失礼な会社だ」と怒っているかもしれません。電話の操作に慣れることも大切です。
- 保留ボタンを押し忘れる
意外とよくあります。保留ボタンを押したつもりが押せておらず、社内の声が相手に丸聞こえになってしまうケースです。社内でのコミュニケーションはラフな会話も多く、相手に聞こえてしまうと恥ずかしい思いをしたりクレームに繋がったりすることもありますので注意しましょう。
- 取り次ぎミス
一般的に多い姓の人(田中さん、佐藤さん等)に電話がかかってきた場合に起こるミスです。相手がどの“田中さん”に電話をかけてきたのか分からず、保留にしてから焦るケースです。社内の電話や相手の名前を聞く際に起こりえます。
まずは、社内に複数いる名字の人宛に電話がかかってきた際には、きちんと所属等を確認して誰宛に取り次げばいいかを理解してから保留にしましょう。中堅大手企業の場合、電話を受ける際には宛先の部署を確認することが基本となるでしょう。
- 社外に社員の名前を伝える際に、敬称を付けてしまう
新人が敬語に慣れるまでは、社外に社員の名前を伝える際には「○○部長は…」「○○さんは…」といった形で敬語を付けてしまうことがよくあります。新人のうちはご愛嬌で通じるミスではありますが、社外に対しては社員の名前は“呼び捨て”です。電話対応を通じて、敬語をしっかりと身に付けていきましょう。
おわりに
一言で電話対応と言っても、いろいろなマナーや常識があります。記事では一般的なポイントをお伝えしましたが、会社の代表として電話に出る以上、押さえてもらう必要があるポイントばかりです。その他に自社独自のルールやポイントもあると思いますので、新人の電話対応を指導したり、マニュアルを作ったりする際には記事の内容に併せて盛り込んでください。
最近は電話対応をアウトソーシングしたり、ネット系の企業は電話番号を公開しないケースも出てきたりしています。ただ、電話対応は新人にとってビジネス会話を身に付けたり、顧客名を覚えたりする機会でもあります。
最近はスマホの普及により新人が電話対応する機会が減っていますし、同時に新人側も「他人宛の電話を受けたり取り次いだりする」経験、「固定電話を使う」経験が減っています。OJTの一環としてしっかり指導されることをおすすめします。