「新人教育用のチェックシート」は、新人を育成する際にとても有効なツールです。チェックシートを活用することで、新人教育のクオリティと効率を向上させ、成長速度を加速させる効果が期待できます。
新人教育は、多くの会社が入社してすぐの基礎研修(Off-JT)と現場配属後のOJTの組み合わせになっていますが、Off-JTの効果性を高め、OJTと繋ぐために有効なのが、「チェックシート」です。
記事では、前段として新入社員教育の目的やゴール、成功させるためのポイントを確認したうえで、新入社員教育に有効な「チェックシート」の作成手順と使い方を解説します。
<目次>
- 新入社員教育を行なう目的とゴール
- 新人教育にチェックシートを活用する5つのメリット
- 新入社員を教育するうえでポイントになる「目標設定」
- 新入社員教育の効果性を高めるチェックリスト
- 新入社員教育用チェックシートの作成手順
- まとめ
新入社員教育を行なう目的とゴール
新入社員を教育するのは“当たり前”になってしまいがちです。まずは改めて、新入社員教育の目的とゴールを確認しておきます。
人材育成を成功させるためには、教育プログラムを設計する側が「何のために行なうのか」「どこがゴールか」を明確にしておく必要があります。当たり前のことですが、目的とゴールをはっきりさせることで、意思決定の判断基準ができ、適切なプログラムや手段を見出すことができます。
初めて企業に就職する新入社員には、ビジネスの経験がありません。そんな彼らを受け入れる新入社員教育の目的とゴールは、「社会人としてのマインドとスキルを身に付けさせ、いち早く現場の戦力となってもらう」ことです。
目的とゴールを達成するうえで、必要なスキルは、
・基本的なビジネスマナー
・他部署やお客様等とのやり取りで必要なコミュニケーションスキル
・業務に関わる基礎知識
・自社や商品・サービスの知識
・業種や業界に応じたコンプライアンスの概念
まで多岐にわたります。スキルだけではなく、
・プロのビジネスパーソンとしてのマインドセット、成果に対する責任感や主体性、セルフリーダーシップ
・自社のミッション・ビジョン・バリューの理解と実践
・自社の商品・サービスに対する誇り
といったマインドセットや行動規範を身に付けてもらうことも、必要になるでしょう。このように、新入社員教育は非常に広範囲のわたるマインドとスキルを教えることになります。
新人教育にチェックシートを活用する5つのメリット
ここまで、新人教育を行う目的とゴールを解説してきました。ここからは新人教育を進める上でチェックシートを活用することで得られる5つのメリットを紹介します。
フィードバックを行いやすくなる
チェックシートを利用することで、具体的に何がどのレベルか、何につまづいているのかが可視化され、上司や指導者がフィードバックやフォローを行いやすくなります。
また、他の部下も共通してつまづいている項目があれば研修の難易度調整も行いやすくなり、結果的に新人育成の質も上がりやすくなります。
新入社員の振り返り精度があがる
チェックシートを利用することで、何が出来て何が出来ていないのか新人自身も把握しやすくなり、1日の振り返りとしても活用することができます。出来ていない項目に対して、どうやったら出来るようになるか考える習慣をつけることで新人の育成スピードや精度も上がるようになるでしょう。
新人社員それぞれに沿った教育ができる
チェックシートを利用することで、新人それぞれの進捗を把握することができるため、個々の成長速度に合わせて教育を行うことができます。パーソナライズな研修を行うことによって、戦力化へのスピードも向上するでしょう。
価値観を揃える事ができる
チェックシートを利用することで、何が基準かを可視化することができるため、新人全員の理解を統一させることができます。基準や価値観が揃うことによって組織のパワーも最大化されることが期待できます。
新入社員を教育するうえでポイントになる「目標設定」
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新入社員教育を効果的に実施するためには、設計段階で「目標設定」を意識することがおすすめです。
目標設定を行なうことの重要性
新入社員教育を効果的に行なうためには「目標設定」が重要です。前章で挙げた通り、新入社員教育は非常に広範囲な内容を教えるプログラムであり。とくに、人事主導で行なう初期教育は、一種の“詰め込み教育”となりがちです。
“ゼロ”の状態で入社した新人を、短期間で“現場配属”までもっていくためにはやむを得ない部分があります。ただし、だからこそ、「何を教えるか」と同時に、「どうなれば良いか」という目標を、教える内容ごとにしっかりと設定することが大事です。
目標設定を行なう3つの分野
新入社員教育のプログラム内容、そして、目標設定は3つの分野を大別して考えると良いでしょう。
- 自社組織へ馴染む(組織社会化)
- 基礎的なビジネススキル(社会人として、また自社で仕事するうえでの基礎スキルや知識)
- 業務スキル(現場配属されてOJTに入るうえで必要な基礎スキルや知識)
まず、新入社員がプロのビジネスパーソン、また、○○社の一員としてのマインドセットを身に付け、組織に馴染むプロセスは“組織社会化”と呼ばれます。
新入社員には、プロのビジネスパーソンとして成果に対する責任感や主体性、セルフリーダーシップなどを身に付けてもらうと同時に、自身の能力を十分に発揮し、配属先で活躍するために、自社の組織文化を覚えてもらう必要があります。
組織文化には、ミッションやビジョンに代表される理念や事業内容、また、自社の沿革、組織構成、社内で使われる共通言語、意思決定の仕組み、バリュー等の価値観や行動規範が含まれます。“社員の顔と名前”なども組織文化として覚えてもらうべきことの一つです。
組織社会化のプロセスは、何となく慣習で行なわれることも多く、新入社員教育で意外と見落とされがちです。しかし、ビジネスパーソンとしてのマインドセットと組織社会化に抜け漏れが生じると、持っている能力を発揮できなかったり、現場配属後のリアリティショック(想像と現実のギャップ)が大きくなったりして、モチベーション低下や早期退職にも繋がります。
2つ目の基礎的なビジネススキルには、基本的なビジネスマナーや働くうえで必要となるシステムや就業上のルール、申請の仕方などが含まれます。
新入社員教育で教える内容としては、最もイメージしやすい項目でしょう。ただ、イメージしやすいだけに、“何を教えるか”に意識が向きがちです。教える内容に関して、“現場配属後の実践”を念頭に置いて、目標やゴールを設定しておくことが大切です。
3つ目の業務スキルは、基礎的なビジネススキルと重複する部分もありますが、自社での業務に関連する、より実践的な知識やスキルです。配属先によって左右される部分もあると思いますが、入社1年程度を念頭において、その時点での業務目標を達成するために必要な実際の業務内容を細分化して、必要になるスキルを一つずつチェックしていくと良いでしょう。
なお、3つ目に関しては、全社教育ではなく、現場配属後のOJTで教えていく部分もあるでしょう。現場配属後のOJT品質を上げるためには、組織社会化の必要事項や基礎的なビジネススキルと同じように、人事部門が主導して、しっかりと各部門にリストアップ、計画設計してもらうことがおすすめです。
新入社員教育の効果性を高めるチェックリスト
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それでは、新入社員教育の効果性を高めるうえで有効な“チェックリスト”をご紹介します。
身だしなみ
新人教育の効果性を高めるためには、身だしなみからきっちり教育することは重要です。身だしなみを整えることで自然と緊張感が醸成され、新人社員教育の質が最大化されます。
とくにリモートで学生生活を送る、また、就職活動をすることが当たり前になった中で、身だしなみの正解を理解していない新人も増えています。また、昔と比べると、ビジネスカジュアルの許容範囲も増えている中で、「身だしなみの正しい型」と「自社の日常基準」といったTPOに応じた使い分けの難易度はある意味高まっています。
学生から社会人になったばかりの人がほとんどのため、チェックリストを用いて、しっかりと新入社員に教え、自社の一員として恥ずかしくない身だしなみをしてもらうようにしましょう。
挨拶やビジネスマナー
こちらも身だしなみに通じる部分ではありますが、挨拶やビジネスマナーについてもしっかりとチェックすることで、新人教育の質が上がります。
どれだけ仕事の質が高くとも挨拶やマナーができていないと場合、社外の人からの印象が悪化する可能性があります。昔から敬語などを苦手とする新人は多いですし、リモートでの活動が増えた中で「対面でのビジネスマナー」(上座や下座、名刺交換、会食での立ち居振る舞いなど)ができない新人は増えています。
社会人としてのマインド
新人教育の効果を高めるためには、能動的な姿勢や個人で定期的に振り返る姿勢など社会人としてのマインドを持ち合わせることが非常に重要です。とくに「賃金をもらって学んでいる」こと「プロとして価値創出して対価をもらう」ことへの自覚などを初期段階できちんと教えることが新人教育においては非常に重要です。
新入社員教育用チェックシートの作成手順
ここまで、新人教育用にチェックシートを準備する重要さを解説してきました。実際に、新入社員教育用チェックシートの作成手順を3つに分けて解説していきます。
社内で求めるスキルを言語化する
作成する手順としてまず、社内で求めるスキルを言語化しましょう。新人に対して求めるどの会社でも必要な共通のスキルや考え方はもちろん、社内で仕事を進める上で固有のスキルをを言語化してチェックシートに落とし込みます。スキルだけでなく、社内で大事にしている仕事の姿勢やコミュニケーションなど、マインドや姿勢面も言語化することが大切です。
なお、姿勢や価値観は「こういう時にこういう行動をしている」といった形で具体化しておくと、「できている/いない」の判断や実践がやりやすくなるでしょう。
階層別にレベル分けを行う
スキルや価値観はある程度階層別に求めるレベルを分けておくとよいでしょう。新人教育に特化させる形であれば、エース、1人前、入社1年後、OJT期間中など、いくつかゴール地点を設定して「それぞれのレベルでこの状態まで出来ていてほしい」という形で記載することがお勧めです。
振り返り項目を作る
チェックシートは定期的に「振り返り」をすることが大切です。新入社員の初期教育中は学びの振り返りも兼ねて毎日、OJT期間中は1週間に1回、OJT期間後は1カ月に1回など、徐々に頻度を落としながら、きちんと振り返って、出来ていない点を改善していく習慣をつけさせてましょう。きちんと運用しないでチェックシートを作りっぱなしで終わってしまうともったいないです。
まとめ
新入社員教育は、「社会人としてのマインドとスキルを身に付けさせ、いち早く現場の戦力となってもらう」ことを目的に実施されます。
特徴として、組織社会化、基礎的なビジネススキル、業務スキルまで、多岐にわたる内容を短期間で教える必要があり、そのために、初期教育は、“実践できるようになる”ところまでの“詰め込み教育”になりがちです。
そこで、“実践できるようになる”と“実践している”のギャップを埋めて、現場配属後のOJTをスムーズに進めるために役立つのが「チェックリスト」です。
新入社員教育のプログラム策定時から、「何をどのレベルで実践している状態にすればいいのか」をチェックリストとして言語化することは、人事部門と現場のすり合わせ、また、新入社員自身のセルフチェックによる教育効果の向上に役立ちます。
ぜひ自社なりのチェックリストを作成して、新入社員教育に役立ててください。







