新卒採用されている会社の殆どが新人教育を実施されています。その中で有効なツールが「日報」です。日報を上手く活用できると、とりわけ現場配属後の成長スピードに効果を発揮します。記事では、日報の目的、成長を加速させるための書き方、テンプレートを紹介します。
<目次>
新人に日報を書かせる目的
新人に日報を書かせているが、目的が明確になっておらず、ただの業務報告になってしまっている企業も多くあります。もちろん、新人の業務内容や進捗を上長が把握できることも日報の価値ですが、業務報告のためだけに使うのはもったいないです。新人に日報を書かせる目的は3つありますので、以下、順に記します。
目的1:振り返りの習慣を身に付けさせる
「その日に実施したことを振り返る習慣」を身に付けさせることは、新人を教育するうえでとても有効です。会社に来て指示されたことを行なって帰るだけでは、日々の業務が成長に結びつきにくいです。
そうではなく、
- 「できたこと」「できなかったこと」をしっかりと振り返る
- できたことは継続・改善する
- できなかったことはどうやったら良かったかを振り返る
といった振り返りの習慣を付けさせることが、日報を書かせる目的の1つ目です。
日々の成長や成果を実感して自己肯定感や自己効力感を得たり、足りない点を振り返って成長に繋げたりすることが、成長の加速に繋がります。
目的2:仕事の正しい進め方を学ばせる
仕事の進め方が正しいかどうかを上司が日報で確認して、誤っている時には訂正を入れることが大切です。
もちろん、小まめな報連相を通じて上記を実施することも大切ですが、上司はぴったり新人の横についていられるわけではありません。日報を通じて新人の仕事の進め方を毎日確認し、誤っている部分を指摘して“ズレ”を最小限にすれば、比較的早いうちに、新人は仕事を正しい手順で進めることができるようになります。
時には上司やOJT指導者の方から、「新人が何をしているか分からない」という声も聞きますが、そういうことにも効果のある方法です。いわゆる“業務報告”としての日報の使い方です。
目的3:フィードバックを通して、成長を促す
目的2では、“誤ったやり方の修正や是正”という目的をお伝えしましたが、修正や是正だけでなく、ポジティブなフィードバックや承認、問いかけ等を通じて成長を促すことも日報の目的です。後ほどテンプレートを解説する章でお伝えしますが、新人に書いてもらう項目をしっかり設計すると、フィードバックをより効果的に活用できます。
新人の成長に繋げるための日報の書き方3つのポイント
どういう書き方をすれば、新人の成長に繋げられるのか、新人に日報を書かせる際のポイント3点をお伝えします。
行動と気付きをセットで書かせて、思考する癖を付けさせる
行動した内容や結果だけを書いてもらうのではなく、行動に対して気付いたことや感じたことを記載してもらいます。
内容や結果だけではなく気付き等を記載してもらうためには、振り返りの際にもう一段深く思考することが必要です。物事を思考する癖を習慣化させる、振り返りを深くさせるために、「行動と気付き」をセットで書くように日報の項目を設計しましょう。
成功したことを書かせ、成長実感を持たせる
上手くいったこと、成功したこと、褒められたこと等を日報に書くことで、新人は自己肯定感が高まり、成長実感を持てるようになります。
新人にとって成長実感を得ることは大切です。成長実感を得ることが、仕事へのエンゲージメントを高めることや主体性の発揮に繋がります。また、成功や成果を書かせることで上司がポジティブなフィードバックを投げかけやすくなり、新人との信頼関係を構築することにも繋がります。
ネガティブな内容も書かせ、気持ちを切り替えさせる
上手くいかなかったこと、失敗したこと等、ネガティブな内容も日報にしっかり書かせます。反省を促して同じ失敗を防ぐという意味合いもありますし、文字化して振り返ることで、心の中で失敗を完了させて気持ちを切り替えさせることも大切だからです。失敗を引きずっていては、翌日の業務にも支障が出ますし、モチベーションやエンゲージメントにも悪影響です。
なお、失敗を完了させるためには問いかけ方も大切です。単に失敗を書かせると落ち込みが加速することもあるからです。失敗の振り返らせ方は次章のテンプレート解説を参考にしてください。
新人の日報で成長を促すテンプレート
新人の日報は、以下のようなテンプレートや問いかけにすると、成長を促すことができるます。
上手くいった、成果が上がったこと ⇒ 「どう再現できるか?更に上手くやるためにはどうするか?」
オーソドックスなものではありますが、まずは上手くいったこと・成果が上がったことを書かせましょう。まずはポジティブな視点で1日を振り返らせることで、気持ちを前向きにすることができます。
ここでは「どう再現できるか?」「更に上手くやるためにはどうするか?」という問いかけを投げることで、単に「上手くいった。良かった」ではなく、成功に再現性を持たせることがポイントです。
上手くいかなかったこと、改善できること ⇒ 「もしもう一度やるならどうするか?」
次に失敗や反省点をきちんと振り返りましょう。
ただし、失敗だけを振り返ると、気持ちが完了しません。「もしもう一度やるならどうするか?」という問いかけを投げることで、「こうすれば上手くいったかもしれない」「次はこうやろう」という学びに変えて、失敗を完了させることが大切です。
気付いたこと、提案したいこと
成功・失敗以外に「気付き」や「提案」を振り返らせましょう。単なる行動ではなく、気付きや提案とすることで、一日の行動をより深く振り返ることができます。また、日報を書く際に気付きや提案・改善を習慣化することで、新人の思考レベルを高めることができます。
悩み事を書く欄を設ける
悩みは真剣に取り組んでいることの証明でもあります。悩みを書かせることで、新人がどこで引っかかっているか、どういうことに着目しているかが分かります。更に言葉にすることで、新人自身も気持ちを整理することができますし、上司が悩みを知ることで、どういう点に焦点を当てて成長させればいいのか、指導のポイントを考えることもできます。
最近の新人は「相談する」ことが苦手な傾向もあります。しかし、日報であれば比較的悩みを書きやすく、上司も新人の悩みを把握しやすくなります。
上司のコメント
上司からのフィードバックは成長を促すうえで大事な要素です。日報に対しては必ずフィードバックを返しましょう。反応がない中で継続していくことは、かなりの苦痛を伴います。とくに今の新人はSNS世代であり、「いいね」や「スタンプ」で反応があることに慣れています。簡単でも良いので必ず反応を返しましょう。
また、ネガティブなフィードバックをする際には、3倍のポジティブな内容を返すことを意識すると良いでしょう。文字によるネガティブな指摘は、感情が見えず、かつ何度も見返してしまうため、送る側が思う以上に相手にダメージを与えます。しっかりと指摘が必要な際には、文字ではなく、口頭で行なったほうが良いでしょう。
まとめ
日報は、新人教育において、成長を促すツールとして効果的に活用することができるツールです。活用するためには、日報を書く目的をきちんと押さえて新人とも共有する、また、日報の項目を新人の成長を促す形できちんと設計することが大切です。
記事では、ポジティブ、ネガティブ、気付き・提案、悩みという具体的な項目のテンプレートや思考を促す問いかけ方も紹介しましたので、ぜひ新人に日報を書かせる参考にしてください。