採用基準の作成と運用方法は? 注意点や例も紹介

更新:2022/08/08

作成:2022/04/05

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

採用基準の作成と運用方法は?-注意点や例も紹介

 企業の採用活動を安定して成功させるためには、『採用基準』を適切に設けて運用することがポイントです。合否判定を標準化できる採用基準の概要成方法、運用の仕方を解説します。作成時の注意点や事例を紹介します。

<目次>

採用基準とは

採用基準とは
 『採用基準』は企業が候補者を採用するか不採用とするか、合否決定を標準化するために欠かせないものです。まずは採用基準がどのような目的のために設定されているのかを把握しておきます。

候補者を評価するための基準

 採用基準は、候補者が『自社にとって必要な人材』かどうか判断するための基準です。履歴書の内容や面接の受け答え、本人のスキルなどを客観的に判断できるようにします。

 『なんとなく好ましい人物である』などの曖昧な判定を避けるため、採用基準は重要です。面接官を社長ひとりでやっているうちは基準がなくてもさほど問題ありませんが、採用人数が多くなり、面接官が複数になってきたとき、一定の基準を定めることによって面接官による判断のばらつきを防ぐことができます。

 言い換えれば、どの担当者が評価したとしても『候補者が自社のニーズを満たす人物なのか』を判断しやすくするために、採用基準を設けているともいえます。

適切な採用基準の重要性

 適切な採用基準が設定されていない場合、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。トラブルを未然に回避するためにも、適切な採用基準を考える必要があるでしょう。

 採用段階では、人事・現場・役員が考えていることが違う場合に問題が起こります。立場によって見るポイントや時間軸等が異なることは生じがちです。

 しかし、ズレが大きくなると、書類選考を通過した応募者が面接で立て続けに落ちてしまう、また、人事や現場が時間をかけて選考して通過させた応募者が役員面接を通らないなどが生じてしまいます。

 また、採用基準の不一致から、本来自社にとって適切ではない人材が採用される可能性もあります。その場合、早期離職や現場の求める人材とのミスマッチが発生してしまうケースも想定されます。

採用基準の決め方

採用基準の決め方
 採用基準を決めるには、「すり合わせ」が必要です。現場や上層部がどのような人材を求めているのか把握するして、人物像の明確化を行いましょう。人材像を明確化する際には、ヒアリングだけではなく、社内で活躍している人材の特性を調査することも大切です。

上層部から現場までヒアリング

 採用基準を決めるには、現場と人事、上層部で意見を一致させることが重要です。

 実際に現場で業務に従事する従業員は、どのような人材が必要であるか明確な判断基準を持っているはずです。

 一方で、現場の要望は短期的になりがちであったり、採用市場の状況を把握していなかったりする場合もあります。従って、現場の声だけでなく会社的にどのような人材を育成したいのか、会社の方針と一致しているかの確認も欠かせません。

 採用を担当する人事は、現場の声と上層部の意見をすり合わせて採用基準を言語化することが大切です。

活躍する社員の特性を把握

 採用後に配属する部門や職種、階層によって、必要とされる人物は異なります。まずは現場で求められている人物像を把握し、設定しましょう。

 活躍する人物は、資格や経験だけで判断できるものではありません。従って、採用基準を考えるうえではコンピテンシーと呼ばれる『行動特性』や、行動特性のさらに裏側にある価値観や動機などを示す『特性』が大切です。また、仕事内容によっては『地頭』も大事です。

 自社で活躍する社員がどのような特性などを持ち、どのような行動をしているのかを把握して、適切な採用基準の作成につなげると良いでしょう。

 具体的には、インタビューやアンケートを通して活躍している社員に共通する特性を把握し、モデル化します。候補者が同じような性質を持っている場合、活躍の可能性は高くなるでしょう。

 社員調査をする際には、価値観やコンピテンシーの分析ができる『適性検査』を用いるのも非常に有効です。適性検査を使うと価値観や思考パターン、動機などを定量化できます。

 活躍している社員(ハイパフォーマー)と活躍していない社員(ローパフォーマー)の検査結果を比較することで、より有効な採用基準を作ることができるでしょう。

求める能力やスキル、ペルソナの設定

 新卒採用は採用後に育成できない特性やコンピテンシー、地頭を重視することが大切です。一方で、中途やキャリア採用においては、培ってきた能力やスキル面による判断も生じてきます。

 まず、求める能力やスキル面を明確にするには、必須(MUST)と希望(WANT)の2軸で設定することが大事です。必須の能力やスキルをMUST、できればあったほうがいい能力やスキルをWANTとして、今回の募集で優先したい要素を決めます。

 社内ですり合わせを行ったうえで、応募者向けの募集要項にも明示しておくと、ミスマッチが生じにくいでしょう。

 また、求める特性や能力・スキルが決まったら、そこからさらに「ペルソナ」を設定し作ると良いでしょう。ペルソナは、特性やコンピテンシー、求める能力やスキルを併せて、具体的にはこういう人物、というものを具体化したものです。

 たとえば、人物像としては『事務経験者でワードやエクセルの処理を担当しており、出産・育児をきっかけに退職したが、一段落したため仕事復帰を考えている女性』のようなイメージです。こうして「人としての姿」を想像できる、人物イメージが『ペルソナ』です。

 ここに、考え方や行動特性として、『単純な事務作業も安定して継続作業が可能で、コミュニケーションもオープンで、就業意欲も高く、フルタイム勤務を希望している』などの情報が加わってくると、求める人物像がよりくっきりしてきます。

 こうして、人物像がわかるくらいにペルソナを設定することで、採用基準だけでなく、求人広告や説明会、面接などにおけるメッセージやメインターゲットの一貫性につながります。

 社内での見解の相違を防ぎやすくなりますし、受け入れる側も入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

 採用過程で面接を行うなかで、能力やスキルといった面に加えて、転職理由や会社選びの基準なども併せて聞くなかで、その人の「人物像」がどのようなものであるかを理解して、あらかじめ設定しておいた採用のペルソナと比べていきます。

 「合致」することが必ずしも採用の可否とイコールではありませんが、自社にフィットする人材かどうか、大きく規格外でズレてしまったり、ミスマッチを生じてしまったりすることを、防ぐことができるでしょう。

 なお、ペルソナを設定するときは、理想を高くしすぎないことも重要です。高い理想を掲げると、基準に見合う人物が少なくなり、採用が難航します。また、ペルソナを絶対的イメージとして固くつくりすぎてしまうと、該当する人物がいないこともあります。

採用基準の要素

採用基準の要素
 採用基準として設定する要素には、どのようなものがあるのでしょうか。改めてここまでの内容を整理しておきます。

特性(行動特性、価値観)

 応募者の特性は、入社後の活躍を左右する重要な要素です。特性と価値観は、とくに新卒採用やポテンシャル採用など、伸びしろを重視する採用では非常に大切な要素です。

 特性や価値観は、得意な行動や苦手な行動、行動様式を左右するものです。そして、ある程度幼少期に固まってきて、非常に変わりづらい傾向があります。従って、自社の仕事で活躍しにくい特性や価値観の人を採用すると、入社後の教育で伸びづらく、逆に、合った特性や価値観の人であれば伸びやすいということがいえます。

 内面的な特性は書類選考で判断しにくいものです。適性検査等でも客観的に把握しながら、面接でもどのような質問で判断していくのか等を標準化していきましょう。

地頭と思考力

 特性についで変わりづらいのが「地頭」です。「地頭」は論理的思考力や読解力、計数能力などの「学力」とも少し異なる要素です。学力と比例する部分もありますが、クリティカルシンキングやコンセプチュアルシンキングなど、物事の構造や本質を理解したり、問題解決したりするうえで重要になる要素です。

 地頭の良さや思考力を判断する基準として、学歴を一つの要素としてチェックする方法もあります。ただし、一概に『一流大学卒業であるからよい』とするのは早計です。特にこの十数年は、大学進学率が上がってきたり、大学の入学試験も多様化してきたりしています。

 そうすると、一般受験、内部進学、推薦、AO入試など、入学方法も多様になっており、それによって長所、持ち味、学力レベルなどにもバラツキがあるからです。多くの候補者から絞り込みをかける段階では、ある程度、学歴を判断基準とするケースはあります。

 ただし、上述の通り、学歴が決定的な採用基準となるわけではなく、自社に必要な地頭や学力が、どんな分野でどの程度のレベルなのかを明確にしておき、そこに達しているのかどうか、測定できるよう、方法を見つけて準備しておくことが大切です。

 適性検査の中でも「能力検査」と呼ばれるものは、地頭や学力系の素養をチェックするうえで有効です。

 能力検査も、総合的な学力を測るもの、論理性に特化したもの、集中力や作業力にフォーカスしたもの、拡散系の思考力やクリティカルシンキングなどの地頭を検査するものなど、今はさまざまなものがあります。実際に自社で活躍している人での検証も行いながら、自社に合ったものを選びましょう。

スキル(経験、資格など)

 本人の経験や資格も、採用基準の要素となります。とくに即戦力として期待される中途採用では、大きな判断基準となるでしょう。

 採用する人材にどんなレベルを求めているのかによって、採用基準は変わります。『同種の実務経験がある』『業務に必須とされる資格を保有している』など、求める人物像に合わせて設定しましょう。

 ただし、今の仕事で活躍している人は一般的に現職でも高く評価され、厚遇されていることが多く、そもそも転職市場に出てきにくいものです。

 もちろん優秀な経験者人材が採用市場に出てくることもありますが、、場合によっては「活躍していない実務経験者」よりも「ポテンシャルのある未経験者」のほうが入社後に活躍する場合も多いでしょう。実務経験だけに重きを置きすぎず、自社で活躍できる人材を探しましょう。

採用基準を決める際の注意点

採用基準を決める際の注意点
 採用基準を決めるときは、いくつかの点に注意が必要です。評価項目を簡易なものにして、現場で使うときに問題がないかも確認しましょう。就職差別の要素がないかのチェックも必要です。採用基準を決める上での注意点をいくつか紹介します。

評価項目を増やし過ぎない

 評価項目を設定すると判断が容易になりますが、項目を増やし過ぎると逆効果です。多すぎる評価項目は、採用基準を厳しくする可能性があります。それ以外にも、多くの人材が総合的に同じような評価となり採用の判断がつきにくくなることもあるでしょう。

 評価項目を作るときは、『必須とされるもの(MUST)』と『必須ではないがあれば嬉しいもの(WANT)』に分けて考えましょう。MUSTである必須要件が絶対的な採用基準、そして、歓迎されるスキル等のWANT要件は応募者間の比較をする時の要素となるイメージです。

就職差別やコンプライアンスに注意する

 採用基準に盛り込むと、『就職差別』や『コンプライアンス違反』とみなされる項目もあります。厚生労働省は『公正な採用選考の基本』の中で「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいて行うこと」と明示しています。

 たとえば、原則として年齢や性別は募集にあたって制限を設けることはできません。男女比のバランスを取るために、どちらかを優先することもNGです。年齢制限は、法律による定めやキャリア育成・高齢者の雇用促進などの『特別な理由』がない限り、設定できないこととなっています。

 また、身長・体重・体力などが採用に影響を与えることも、業務に不必要であれば間接的な差別と判断されます。採用基準を決定する際は、不必要な制限を設けていないか確認しましょう。

 インターネットやSNSが発達している中で、就職差別やコンプライアンス違反が表に出ると、企業自体のブランドを大きく傷つけることになります。

現場で活用できるように作り込む

 採用基準は、人によって判断が変わらないよう作り込むのが重要です。抽象的な単語で設定してしまうと、現場で使いにくい基準となってしまいます。

 たとえば、『コミュニケーション能力の高い人材が欲しい』という場合、ここでのコミュニケーション能力は何を指すのか、コミュニケーション能力が高い人がどのような行動を取るのか、どのような要素で確認していくのかを明示しましょう。

 同様に『主体性のある人材』も判断が難しいでしょう。人に寄って捉え方が違うからです。従って、自社で考える主体性とは何なのかを決めて、どうやって面接の中で確かめるかを決めて基準に落とし込むことが大切です。

 意味合いの明確化によって、採用基準の捉え方が違うことで起こるミスマッチや、面接時のコミュニケーションの齟齬を防ぐことができます。

採用基準の運用

採用基準の運用
 採用基準を実際に運用する際の手順も見ておきましょう。採用基準は選考フローごとに設定し、社内での意識共有ができているかも確認が大切です。運用開始後は、採用基準が適切に機能しているかを見ながら改善を心掛けるのが重要なポイントです。

選考フローに反映

 採用基準は、『書類選考』『一次面接』『最終面接』など選考ステップによっても多少変化します。それぞれのステップに適した採用基準を当てはめていきましょう。

 書類選考時には、履歴書の内容と照合しやすいよう基準をまとめます。明確な条件やスキルを設定し、必須条件と歓迎条件を分けて、わかりやすくしましょう。

 面接で確認する要素は、資格や判断と異なり判断が難しくなるため、点数やランクにすることも評価しやすくするコツです。

面接官に定義や見極め方法を共有

 採用基準が決定した後は、面接官全員の認識をすり合わせることがたいせつです。

 採用基準の書かれた紙を渡すだけで終了すると、個々に判断がズレていても気づく機会がありません。あらかじめ誰が見てもわかりやすい言葉や見極め方を設定することは重要ですが、紙を渡すだけでなく理解をすり合わせる場を設けたほうが良いでしょう。

 会社的にその基準がどういう意味を持つのかといった背景や定義、面接の中でどのような質問をすれば基準に見合った人物が見極められるのか、質問方法や受け答えの例を明確化する等も理解度を深める方法です。

結果を見ながら改善する

 採用基準が合っているかどうかは、実際に採用活動を実施して、検証することで確認します。

 基準の改善には『PDCA』を取り入れるのが最適です。PDCAは『Plan(計画)』『Do(実行)』『Check(確認または評価)』『Action(改善行動)』の頭文字を取った言葉で、順序立てて作業を行うことで効果的な改善につながります。

 まずは採用基準を計画し、実際に使用してみて評価を行いましょう。何かしらの問題点が発見されたときは改善していきましょう。継続してPDCAを回すことで、自社に適した、かつ実用的な採用基準となるでしょう。

まとめ

 『採用基準』は企業が求める人材を明確化し、適切な人材を採用するために必要な基準です。作成の際は、採用担当だけでなく現場や上層部の意見も取り入れましょう。

 適切な採用基準が設定されていると、効率よく選考ができるようになり、優秀な人材の見落としも防げます。求める人物の特性やスキルをはっきりと定めると共に、作成した採用基準の定義や見極め方法を面接官で共有しましょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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