いまの若者世代は、YouTubeやTikTokが普及したことで、動画によるコミュニケーションに馴染んでいます。
企業も、SNSやオウンドメディアなどで動画を発信しやすくなったことに加えて、動画を制作するハードルも下がったことで、採用活動でも動画を作って活用する事例が増えるようになりました。
採用動画は、定性的な魅力を発信しやすいため、中堅中小企業やベンチャー企業にもおすすめの魅了付け手段です。
記事では、採用動画の概略と作成・発信で得られる効果、採用動画コンテンツの内容例を確認します。
採用動画の効果を高める企画・制作のポイントや、採用動画を求職者に届ける手段と活用方法も紹介しますので、採用動画作成の参考にしてください。
<目次>
採用動画とは?
まず、採用動画がどのようなものかを確認しましょう。
採用動画の定義
採用動画は、求職者に自社の特徴やイメージを知ってもらう、自社への志望度を高めてもらうために作る動画の総称です。
かつてはハードルが高かった動画制作ですが、近年では、スマートフォンなどでも十分な品質で撮影できますし、編集ソフトも無料や安価なものがたくさん登場しています。
したがって、動画を内製することも可能ですし、大手の制作会社に依頼しなくても、フリーランスなどで動画編集を手がけている人に相談・依頼することも可能になっています。
動画の公開も専用サービスを契約しなくても、YouTubeやTikTokなどを無料で利用できます。
また、少し限定した形で使いたい際にも、Vimeoなどの無料や安価に使える動画プラットフォームもあります。
上記のようなプラットフォームを使えば、動画を公開する、また、採用ホームページやオウンドメディアに埋め込んだり、SNSで発信したりすることが容易です。
このように動画制作の敷居が下がり、制作・発信方法も多様化している背景から、近年では、採用動画の活用に注目する企業が多くなっています。
採用動画のコンテンツ内容の例
採用動画のコンテンツには、以下のようにさまざまなテーマや種類があります。
- 企業説明
- 経営者メッセージ
- 採用コンセプト
- 社員へのインタビュー
- 社員の一日
- 職種の紹介
- 仕事内容の紹介
- 自社製品の紹介
- 座談会
- 企業説明会の様子 など
採用動画における主なコンテンツは、企業が求職者にアピールしたいこと、知ってほしいことになります。
採用における動画の活用がおすすめの理由
株式会社プルークスおよびレバレジーズ株式会社が公開する「就職活動生を対象にしたアンケート調査結果」によると、約6割の就活生が動画サイトYouTubeで採用動画を視聴していることがわかっています。
さらに、約7割の学生がその企業への志望度をアップさせていることから、いまの時代の採用活動に採用動画を使わない手はないといえるでしょう。
出典:就職活動生を対象にしたアンケート調査結果(ブルークス・レバレジーズ合同調査)
採用動画の作成・発信で得られる効果
採用動画を作って発信すると、採用活動に以下のような効果やメリットが生まれます。
定性的な魅力の発信
大手企業の場合、自社の知名度に加えて、業界内でのポジションや従業員数、売上額などの定量的な情報だけでも、多くの学生を集めることが可能です。
一方で、中堅中小企業やベンチャー企業における以下のような定性的な魅力は、言葉だけを読んでもイメージしづらい傾向があるでしょう。
- 風通しが良い職場
- コミュニケーションが活発
- 若手でも活躍できる など
こうした定性的な魅力も、情報量が多い動画であれば発信しやすいものです。
このあたりの魅力発信を、SNSやオウンドメディアでの発信を併せて行なうことで相乗効果も期待できるでしょう。
ミスマッチの予防
たとえば、「営業職の一日」「エンジニアのやりがいと苦労」などのコンテンツを動画で発信すれば、入社後の「こんなはずじゃなかった!」というミスマッチやギャップを解消できるようになります。入社後の早期離職の防止にも役立ちます。
求職者の志望度の向上
採用動画を見て、自分が実際に働き、組織で活躍するイメージが明確になると、以下のような志望度も向上します。
- この先輩と一緒に働いてみたい!
- こんな営業になりたい!
- このチームの一員になりたい!
- 自分もこういう製品を開発してみたい!
待遇や報酬のような定量的な魅力に加えて、定性的な魅力をきちんと訴求することで、求職者の志望度を向上させられます。
強い動機づけができれば、働くことへのワクワクする気持ちも強まり、内定辞退も抑制できるでしょう。
求職者の疑問や不安の解消
採用動画によって内定者の以下のような不安や疑問を解消することもできるでしょう。
- エンジニアの一日は、やはりハードなのかな?
- 女性でも長く仕事を続けられるかな?ママの管理職はどのような感じで働いているのかな?
- 私でも馴染めそうな職場かな?
- 1年働くだけで一人前になれるのかな? など
もちろん上記のような情報はテキストでも回答可能ですが、特に伝えたい情報は動画でも伝えていくと、テキストよりも高い説得力を持つでしょう。
認知度の向上
採用動画がネット上で話題になり、「この企業の社員はおもしろい!」とTwitterなどで拡散されると、同じ業界で就職・転職活動をしながらも、自社のことを知らなかった潜在層へのアプローチも可能になります。
また、採用動画の内容が、将来的に就職・転職するかもしれない人の記憶に残ることもあるかもしれません。
転職を考えたときに、ふと社名が思い浮かぶ「第一想起」になるというのは、中途採用における大きな強みになります。
採用動画の効果を高めるには?企画・制作のポイント
採用動画は、制作・発信すれば何でも良いわけではありません。手間やコストをかけて作る以上、採用活動での効果性を高めることが大切です。
この章では、採用動画の効果性を高める企画・制作のポイントを紹介します。
目的(ゴール)を意識する
まずは、以下のように何のために採用動画を作り、その結果、どのようなゴールを求めるのかを考えましょう。
- 母集団形成につなげたい
- 一次面接後の選考辞退を減らしたい
- 一次面接の前に見て企業理解を深めてほしい
- 内定承諾率をアップさせたい
- 認知を高めて潜在層にもアプローチしたい など
目的(ゴール)を意識することで、企画のブレがなくなり、無駄な工数・コストもかかりにくくなります。
求職者のニーズを理解する
たとえば、企業の魅力を一方的に発信しても、それが求職者のニーズと合わなければ、採用活動の効果にはつながりません。
したがって、コンテンツの企画は、求職者のニーズ×自社の魅力から「両者が交わる点はどこか?」という視点で考えることが基本となります。
継続的に発信していこうと考えるのであれば、「このテーマとこのテーマをメインにして、サブでこの5テーマぐらいをたまに入れていこう」などと決めておくのもおすすめです。
リアルな事実を提供する
採用活動の効果につなげるとなれば、多くの企業は、「自社を少しでも良く見せたい」と思ってしまいがちです。
しかし、たとえば、嘘の演出をした場合、入社後に「こんなはずじゃなかった!」「イメージとまったく違った!」といったリアリティショックから、早期離職される可能性が高くなります。
動画を作るときに、ネガティブな情報を前面に出す必要はもちろんありません。
しかし、リアリスティックジョブプレビュー(選考活動できちんと自社や仕事の実情を伝える)の考え方も踏まえて、過度に飾り立てない、大変な部分なども発信しておくことは大切になります。
凝り過ぎない
大半の採用動画に共通する目的は、自社の定性的な魅力や情報などを伝えることです。
見た目の美しさやセンスの良さもある程度は大切ですが、最近では過度に編集された動画よりも、素人っぽい動画のほうがリアリティーがあると感じる人も多くなっています。
作成にこだわり過ぎて、1動画あたりの工数・コストが膨らめば、制作を続けることが難しくなります。
採用動画の作り方
採用動画の作り方には、3つの選択肢があります。この章では、それぞれの特徴とメリット・デメリットなどを解説しましょう。
制作会社への外注
制作会社への外注は、以下のような企業におすすめです。
- 自社ではあまり工数を割けない
- 短期間での完成を希望する
- 採用動画のクオリティにこだわりたい
採用動画の制作実績が豊富な企業なら、動画そのものだけでなく、目的・ゴールなどの要件定義や、企画・構成力、サポート力などにも期待できるでしょう。
ただし、制作会社によっては、1本あたり数十万円~100万円超の見積もりが出てくることもあります。
個人への外注
個人のクリエイターの場合、料金が安く、柔軟な対応ができる傾向があります。
ただし個人の場合、たとえば、クリエイターがほかの仕事で忙しくなれば、自社への迅速な対応も難しくなるかもしれません。
また、個人によってスキルに大きな開きがあるところも、個人外注の注意点です。
個人の場合、人によって得意なジャンルやテイストが異なる傾向も高いです。
制作会社を選ぶ際にもいえることですが、過去に制作した採用動画の実績を見せてもらい、他との比較検討や見極めをすることが大切になります。
社内での制作
採用動画は、自社で内製することも可能です。
プライベートでYouTube動画の制作・配信などを行なえるメンバーがいれば、実現可能な選択肢になります。内製をすれば、コストも安く抑えられます。
一方で、社員がゼロから動画制作を学び、初めて作ってみるとなれば、品質やスピードなどの点で不安要素もあるでしょう。
制作会社との相談になりますが、最初のうちは動画制作を外注する形にして、徐々に将来的な内製を目指したサポートを受けるのも一つの手です。
採用動画を求職者に届ける手段と方法
採用動画は、多くの求職者に見てもらい、自社の魅力を知ってもらってこそ、効果を発揮するものです。
動画を求職者に届ける手段としては、以下のものがあります。
YouTubeやSNSでの発信
制作した採用動画をYouTubeやSNSに投稿して、拡散による認知度向上や、フォロワーからの母集団形成、求職者との交流に使う方法です。
採用動画×SNSを組み合わせる場合、各SNSの特徴を知ったうえで、自社のターゲットや採用動画の特徴に合ったものを選ぶ必要があります。
採用サイトへの掲載
採用サイトの場合、自社の沿革やミッション・ビジョン、これまでの実績などの定量的な情報が多くなりがちです。
採用サイトに採用動画を貼り付けることで、自社の定性的な魅力も発信しやすくなります。
経営者メッセージなども、顔写真+文章(テキスト)よりも、採用動画を活用したほうが、経営者の人柄や情熱などが伝わりやすくなることもあるでしょう。
会社説明会での再生
会社説明会で採用動画を再生すると、人事担当者の負担が軽減します。
また、求職者としてもずっと人事担当者などの説明を聞くより、動画を視聴したほうが、飽きずに多くの収穫が得られることになるでしょう。
まとめ
採用動画は、経営者メッセージや社員の一日、座談会の風景などの動画を作り発信することで、採用活動に役立てるものです。
採用動画の作成・発信を行なうと、以下の効果が期待できます。
- 定性的な魅力の発信
- ミスマッチの予防
- 求職者の志望度の向上
- 求職者の疑問や不安の解消
- 認知度の向上
採用動画の効果を高めるには、以下のポイントを大切にしながら企画・制作することが大切です。
- 目的(ゴール)を意識する
- 求職者のニーズを理解する
- リアルな事実を提供する
- 凝り過ぎない
採用動画は、制作会社や個人のクリエイターへの外注のほかに、自社での内製も可能です。
完成した動画は、YouTubeやSNSからの発信でソーシャルリクルーティングに役立てたり採用サイトに掲載したり、会社説明会で再生したりする形で活用するとよいでしょう。