多くの企業が採用試験に適性検査を導入しています。新規で適性検査を導入する際には、「なぜ適性検査を実施する必要があるのか?」を把握したうえで、自社に合った種類や形式の検査を選ぶことが大切です。
記事では、採用試験における適性検査の実施目的や検査の種類、新たな適性検査を取り入れる場合のポイントを解説します。
<目次>
採用試験で適性検査を実施する目的
闇雲に適性検査を導入しても、高い効果は期待できません。適性検査を導入する場合は、効果や目的を把握したうえで、自社の採用課題の解決につながるものを選びましょう。
自社で活躍できる人材を見極める
自社で活躍できる人材の見極めは、採用試験で適性検査を実施する最も基本的な目的です。
日本では適性検査が足切りとして使われることが多い傾向にありますが、適性検査には、面接では見えづらい求職者の本質や価値観、特性を探ることに有効です。
また、求職者の価値観が社風に合っているかなど、カルチャー面のミスマッチを防ぐうえでも適性検査は効果的です。
地頭や基礎能力を可視化して採用の判断材料にする
適性検査のなかで能力検査、地頭検査と呼ばれるタイプの検査には、以下の要素を数値化できる特徴があります。
- 地頭や集中力などの変わりづらい能力要素
- 言語や数理、論理性などの基礎能力
仕事内容によっては、特定の基礎能力が一定レベル以上なければ、求めるパフォーマンスを発揮できない場合もあるでしょう。
こうした仕事や職種で採用活動をする場合に、適性検査は非常に有効になります。面接と合わせて合否の判断材料として活用しましょう。
面接の生産性や精度を高める
面接前に適性検査を実施して、結果を踏まえて面接を行なうことで、面接の生産性や精度を高めることが可能です。
エピソードのヒアリングなどにおいて、強みになりそうな要素が実際に発揮されているか、弱みや懸念になりそうな箇所にどう対応しているかなどを効率よく深掘りできるでしょう。
集客に利用する
少し例外的な使われ方ですが、新卒採用ではインターンシップや企業説明会のタイミングで適性検査を行なうこともおススメです。
検査結果をプレゼントしたり結果解説の時間を設けたりすることで参加率を高めるという、集客ツールとしての位置付けです。
採用試験で利用される適性検査の種類
採用試験で使われる適性検査には、大きく分けて性格検査(特性検査)と能力検査(地頭検査)の2種類があります。採用で使われる大半の適性検査は、同じブランド内で性格と能力、両方の検査が提供されています。
性格検査(特性検査)
性格検査とは、価値観や性格特性などを測るものです。具体的には、以下のような項目を見る検査になります。
- 動機
- 価値観
- コンピテンシー
- コミュニケーションスタイル など
検査結果は、波形で表すような特性論と、わかりやすくパターン分類(〇〇タイプ)する類型論の2パターンで表示されます。
類型論の検査結果はとてもわかりやすいですが、多様な人の性格を無理やり何パターンかに分類するので、個々人の細かな傾向の把握は難しいことを知っておく必要があります。
逆に、パターン分けなどをせずに、波形をそのまま表す特性論は個人の結果をしっかりと読み込むには向いているという特徴があります。
能力検査
地頭などの変わりづらい基礎能力や、以下のような項目を測る検査を総称して、能力検査と呼びます。
- 言語処理
- 数理処理
- 論理的思考力
- 情報処理力
- 一般常識 など
検査の種類によって、全般的な学力レベル、知識に関係ない地頭、エンジニア適性を見るなどの違いがあるため、自社の仕事で必要な能力に応じて選ぶことが大切です。
採用試験に適性検査を取り入れる際のポイント
採用試験で適性検査を取り入れるときには、以下のポイントを大切にしましょう。
適性検査の利用目的を明確にする
適性検査を利用するうえでは、「自社の採用基準=活躍するためにどのような要素が必要になるか?」を明確化することが大前提です。活躍するために必要な要素の判定を、
- 書類選考で何を見るか?
- 適性検査で何を見るか?
- 面接で何を見るか?
といった形で、選考チャネルごとに振り分けるという考え方が基本になります。
そして、「適性検査で見たい項目」を測るのに最適な検査を選んでいきます(性格検査に重きを置くべきなのか、能力検査の結果も重要なのか、能力検査で測りたいのは学力なのか地頭なのか、など)。
ただし、厳密に選考チャネルごとに見る要素を決めて振り分けるというのは難しい部分もありますし、「適性検査で見たい項目」を明確に言語化することも困難です。
そのため、実際の適性検査選びでは「予測的妥当性」という考え方がより重要になります。
自社の若手社員で試してみる
採用試験向けに適性検査を導入する場合、大切になるのが「予測的妥当性」という考え方です。
予測的妥当性は、適性検査の結果がちゃんと入社後のパフォーマンスを予測できるか、という確からしさです。
適性検査の結果が良い人がちゃんと入社後に活躍し、逆に、検査結果が悪い人はあまり活躍できていないということが成立しているようであれば、予測的妥当性がある、ということです。
予測的妥当性の確認では、内定者や若手社員に適性検査を実施して、適性検査の結果とパフォーマンスや評価が一致しているかをチェックすることがおススメです。
内定者や若手社員は自社の選考を通過した人だけになるため、厳密な検証にはなりませんが、予測的妥当性を検証するという考え方自体はとても大切です。
自社に適した形式を選ぶ
自社の採用形式や選考フローに応じて、形式面での検討も必要です。例えば、便利さを求めるのであれば、Web受験やスマートフォン対応などが重要です。
また、替え玉受験などを絶対に防ぎたいということであれば、テストセンターや自社実施が基本になるでしょう。
またグローバル企業であれば、各種言語に対応したバージョンが公開されているかなどもポイントになるでしょう。
一般企業であればさほど気にする必要はないですが、形式面で重視すべき項目があるかは確認しておきましょう。
採用試験で導入されている適性検査サービスのおすすめ15選
採用試験では、さまざまなブランドの適性検査サービスが使われています。ここでは、多くの企業で活用されている15の適性検査の特徴を紹介していきましょう。
SPI3
年間13,500社に使われている適性検査です。40年以上の実績で蓄積したデータをもとに、基礎能力検査と性格検査ができる内容になっています。
わかりやすく実践的な報告書は、専門知識がなくても求職者の「人となり」が見えると好評です。内容の見直しや問題のメンテナンスも毎年行なわれています。
CUBIC
慎重性や気分性などの性格面や、責任感や積極性といった社会性が数値でわかる適性検査です。
CUBIC適性検査を使うと、内勤型や外勤型、どのような職務に向いているかなども数値やグラフで把握できます。いわゆる学力の測定ができる能力検査などは、オプションとして利用可能です。
GAB
新卒総合職の採用で使われる総合適性検査です。
計数と言語の知的能力のほかに、パーソナリティについて詳しい測定を行なえます。
入社時に見ておくべきチームワークなどの9特性のほかに、研究/開発や営業などの8つの職務適性、将来のマネジメント適性なども予測可能です。
CAB
コンピュータ職の適性を診断できる検査です。日本語受験のほかに、英語受験や個人結果報告書の発行にも対応しています。
SEやプログラマーに求められる職務適性や、入社前にチェックすべきチームワークやバイタリティなどの9特性も予測可能な内容です。利便性と高速性の両方を実現するために、採点結果の電子化にも対応しています。
玉手箱Ⅲ
求職者を言語と計数の知的能力と、パーソナリティの両面から測定可能な総合適性診断システムです。
GABやCABと同様に、チームワークやバイタリティなどの9特性のフォーマットで報告されます。9特性の代わりに、紙ベースのIMAGES検査6尺度のフォーマットで診断結果を出すことも可能です。
3Eテスト
約35分の受験時間で、自社で活躍する人財を見極められる検査です。知能と性格・価値観を測定できます。
3Eテストを実施すると、面接ではわかりにくい「エネルギー量」や、外向性や変革性などの「性格特性」、「創造的思考性」なども測定可能です。結果の報告書は、難しい言葉を使わず、定量的でわかりやすい内容になっています。
DPI
企業で活躍する人材の採用や育成に活用できる職場適応性テストです。
企業で実績を上げるうえで欠かせない態度能力(意欲+対人関係処理能力)というパーソナリティ特性を診断します。
数多くの調査結果や人事考課との相関データも蓄積しているため、検査結果の信頼性が高いところも魅力です。
PURE
仕事を成し遂げるうえで必要な「考える力」を診断する検査です。
具体的には、知識ではなく、問題解決力や論理的思考力などの仕事そのものを成し遂げるために必要な知識能力を判定します。
高校や大学、大学院などの新卒や20代の既卒者のほかに、学歴問わず職務経験を有する30歳以上の社会人向けのテストも用意されています。
DATA
知的能力と態度能力を総合的に測定する検査です。PUREと同様に、学歴や年代、職務経験などによって3種類の検査が用意されています。
DATAの知的能力検査では、比較的難易度の高い質問を使い、仕事を成し遂げるために不可欠な知的ポテンシャルを測定します。9種類の職種とリーダー適性を3段階で判定することも可能です。
B5
「普遍的な5つの性格特性」と「成長を阻害する要因」から、組織で働くために必要なパーソナリティを科学的に見極める検査です。
B5検査は、心理学領域で有名なビッグファイブ理論に基づき開発されています。同ブランドのA8(コンピテンシー適性検査)やI9(判断推理力検査)と組み合わせることで、多角的な分析も可能です。
不適性検査スカウター
定着しない・成長しない・頑張らない人材を見極めるという「不適正」をコンセプトにした検査です。
日本語のほかに、英語や中国語、ハングル語などの8ヵ国語の受験に対応可能です。
能力検査のほかに、資質検査、精神分析、定着検査が用意されています。
アドバンテッジインサイト
休職や退職などにも関係する「ストレスの強さ」と「現在のストレス状態」を測定する検査です。
17項目からチェックすることで、ストレスの問題を見落とすリスクもなくせます。
また、ストレスにも関係するコミュニケーション能力については、自己申告ではなく、EQ(感情知能)で測定可能です。
MARCO POLO
科学的分析手法と心理統計学を使い、自社を育てる未来の人財を見極める検査です。
個人と組織の双方向分析も行なえるため、「自社基準で優秀な人材かどうか」「自社の社風や価値観に合うかどうか(カルチャーマッチ)」の判別ができます。
なかなか変容しづらい内面(深層)に着目することで、双方の適合性や未来のつまずきやすいポイントを予測できます。
HCi-AS
約10分で診断でき、ストレス耐性もしっかりと計測できる適性検査です。
求職者が抱えるストレス耐性の強弱のほかに、組織内における不適応行動を起こしやすいかどうかや、ストレスを感じやすいシチュエーションなども分析できます。
採用の合否まで踏み込んだ診断結果となっており、面接に活用しやすい結果表示になっています。
内田クレペリン
一桁の足し算を繰り返すことで、行動面の特徴や性格、能力などを測定する心理検査です。
年間70万人が受験しており、企業の採用活動のほかに、学校での教育指導や医療現場、官公庁などでも使われています。
内田クレペリンを実施することで、性格や知能といった複数の特徴を見ることが可能です。
まとめ
採用試験で適性検査を実施する目的は、大きく分けて以下の3つです。
- 自社で活躍できる人材を見極める
- 地頭や基礎能力を可視化して採用の判断材料にする
- 面接の生産性や精度を高める
適性検査には、以下2つの種類があります。
- 性格検査:価値観や性格特性、動機、カルチャーマッチなどを測るもの
- 能力検査:地頭、数理能力、言語能力、論理的思考能力、情報処理能力、一般常識などを測るもの
大半の適性検査サービスは、同じブランド/ベンダーが、能力検査と性格検査の両方を提供しています。自社の採用試験に適性検査を取り入れる場合、以下のポイントに注意しましょう。
- 適性検査の利用目的を明確にする
- 自社の若手社員で試して予測的妥当性を確認する
- 自社に適した形式を選ぶ
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