新卒採用の時期を考えるうえで大切な2つのポイント
新卒採用の時期を考える際は、まず実態を知ることが大切です。近年、採用市場の“売り手市場化”に伴って、早期採用をおこなう企業が増えていました。その中で、経団連発表を受けて、市場の実態がどう変化してきたか把握しておきましょう。
1.“通年採用”の実態は「早期化」
日本ではこれまで、経団連が新卒採用の「採用選考に関する指針」としてスケジュールを発表し、それに合わせて新卒の採用活動をおこなうのが一般的でした。なお、多くの方がご存知の通り、グローバルな視点で見ると、新卒の採用スケジュールが決まっていることは珍しく、そもそも新卒のポテンシャル/一括(総合職)採用をおこなっている国はごく少数です。
ほとんどの国は通年採用であり、新卒・中途の区別が少ないジョブ型採用です。その中で、日本は経団連・政府・大学が協同する形で、新卒のポテンシャル一括採用を維持してきました。新卒のポテンシャル一括採用は、採用企業からしても、学生からしても、活動時期が決まっていることで、ある意味では、効率的に採用・就職活動ができる点がメリットでした。
しかし、高度経済成長期が終わり、IT化が進む中で、“平均的な優秀人材を大量に採用すれば業績を伸ばせた時代”から、“一握りの尖った人材が企業の業績に大きな影響を与える”時代がやってきました。人事制度も、年功序列から成果主義へと移り変わってきました。
外資系企業、新経済連盟の加盟企業に代表されるようなメガベンチャー、スタートアップ企業等、経団連に加盟しない企業が日本の経済活動に占める割合が増え、そして、学生の就職人気ランキングにも登場するようになりました。これらの企業は経団連が決めた指針や政府の要請に従うことなく、昔から早期に採用活動をおこなってきました。
景気が変動する中で、売り手市場になると、“青田刈り”が始まり、採用活動が早期化する。行き過ぎたと判断された段階で、絶対的な存在であった経団連が再び指針を修正して、時期を後ろ倒しにすることが、採用活動の歴史の中で繰り返されてきました。
その中で、時代と共に、経団連自体が“絶対的な存在”ではなくなり、外資やメガベンチャーとの人材獲得競争を繰り広げなければ、自社の存続が危うくなってきた状況があります。
経団連を象徴する一角である総合電機、IT企業であるソニーやNEC、NTT等が、新卒・中途を問わず、「新卒でも優秀なエンジニアであれば年収1,000万」「上位研究者であれば、年収3,000万」といった採用方針を打ち出しているのも、危機感の表れです。
こうした背景のもと、経団連が自らの手を縛る指針を作り続けることは難しいとして、2018年に、「2021年3月以降に卒業する学生の就活ルールの撤廃」、2019年には「新卒学生の通年採用拡大」を発表したわけです。
その後、政府・大学が「急激なルールの変更は学生に悪影響がある」と判断して、2021年卒は政府主導のもと経団連のルールを踏襲した就活ルールを発表しました。しかし、実質的にインターンを採用活動に直結させた早期採用をおこなう企業数は明らかに増えています。
21卒はコロナ禍により「採用活動に遅れが生じている」といわれており、5月1日時点および6月1日時点の内定率は、いまの採用スケジュールになって以来初めて前年同月対比を下回りました。
その一方で、2月中に母集団形成を終えて、4月の緊急事態宣言が出された時点では、“ほぼ21卒の採用活動を終えていた”という企業も増えています。それを反映するように3月1日時点および4月1日時点の内定率は前年を大きく上回っています。
つまり、正しくは「コロナ禍の前に採用活動を終えた企業と、コロナ禍により採用活動が遅れた企業で、2極化が進んだ」というのが正しい実態です。
2.新卒採用の開始時期は「欲しい人材」と「自社の採用力」から考える
上述の通り、政府主導の就活ルールは、“大手求人媒体の正式オープン日を決める”くらいの位置づけになりつつあります。その中で、自社の新卒採用スケジュールを決める際は、自社の「欲しい人材」と「採用力」を考慮する必要があります。
まず重要なことは、「自社のターゲット学生を採るには、いつ頃から採用活動をおこなう必要があるか」です。それには、ターゲットの就活生の動向をはじめ、採用競合のスケジュールや採用力、採用市場の動きを把握することが大切です。
例えば、ベンチャー志向の学生や、学生団体の幹部層等の情報感度が高い層をターゲットにしたいのであれば、インターン期の接触が必須です。また、プログラミング経験者層等は、大学2年生時点でIT系メガベンチャーから内定を約束されることもあります。
その他、冬季インターンから動き始める学生層、大手求人媒体オープンの3月から動く学生層、教職課程等で実習がある学生、リーグ戦等のスケジュールにも左右される体育会系の学生等、時期による学生層の違いや、逆に属性による就活スケジュールへの影響を知っておきましょう。
優秀な人材を採用するには、自社の採用力も重要なポイントです。自社で採りたいと思う優秀な人材は、他社でも内定を獲得します。どのレベルの採用競合までなら戦えるか、採用担当に誰を配置できるかも、どの時期に活動するかの意思決定に影響してくるでしょう。
早期・優秀な人材になるほど、強い採用競合と内定承諾を争い、また、長期間にわたって魅了付けをしていく必要があります。忘れてはいけないポイントです。






