採用面接は、求職者が自社に合う人材かどうかを見極める大事なものです。
また、優秀な人材の辞退を防ぎ、入社につなげるには、面接のなかで自社の魅力を伝えたり、求職者の志望度を上げたりする必要もあります。
記事では、中途採用の面接ですぐ使える質問の基本例を紹介します。採用面接をするうえで見極めや魅了付けの方法に悩む人は、ぜひ参考にしてください。
<目次>
- アイスブレイクに使える質問例
- ストレス耐性を確認する質問例
- 人生観や目標を確認する質問例
- 論理的思考力を確認する質問例
- マネジメント力を確認する質問例
- 仕事への価値観を確認する質問例
- 素直さや責任感を確認する質問例
- 志望度UPにつなげるための質問例
- まとめ
アイスブレイクに使える質問例
アイスブレイクとは、お互いの緊張をほぐすための雑談的なものです。
面接冒頭でアイスブレイクすることで、緊張をほぐし、求職者の「魅力」や「素」を引き出しやすくします。
アイスブレイクなしでいきなり面接をはじめると、求職者の魅力や素が見えづらくなりますし、求職者からも事務的、堅苦しいといった印象を持たれがちです。
自社の魅了付けをするうえでは、面接官、そして、自社に好印象を持ってもらうことが大切です。
アイスブレイクの質問は、相手があまり考えずに答えられる質問、また、相手との共通項を見出すような質問が望ましいでしょう。
- 「Aさんは、珍しい苗字ですね。私は初めて聞いたのですが、どのような由来があるんですか?」
- 「実は私も〇〇大学の出身です!○○学部だと、○○キャンパスですか?」
- 「今朝の地震、大きかったですね。電車は遅れませんでしたか?」
- 「Zoomは問題なく接続できましたか?」(オンライン面接の場合) など
なお、人間関係がないなかで、いきなり家族の話に深く踏み入ったりすることは失礼です。
また、プライベートに関する事柄は就職差別につながりかねない質問になってしまうリスクもあるため、注意が必要です。
ストレス耐性を確認する質問例
ストレス耐性とは、仕事で生じるストレスに対する適応力や抵抗力を測る指標のことです。広義のストレス耐性は、以下の2つに分けられます。
- 先天的な部分:性格特性や気質
- 後天的な部分:レジリエンス
面接は、後天的な部分の見極めに有効であり、先天的なストレス耐性の確認には適性検査を併用することがおすすめです。
なお、ストレス耐性の質問をするうえで注意したいのが、「ストレス耐性は高ければ良い」という単純な話ではないことです。
たとえば、トラブルに対応したり、ハードルを乗り越えて高い目標を達成したりするうえで、たしかに一定のストレス耐性、ストレス対処能力は必要かもしれません。
ただし、先天的なストレス耐性の高さは、心の動きや感受性の鈍さという側面もあります。
したがって、先天的なストレス耐性が高すぎると、顧客ニーズやお客様の気持ちに寄り添うホスピタリティ系の業務に不向きなこともあるでしょう。
また、目標達成などに関しては、“達成動機”が低い人がストレス耐性だけ高くても、パフォーマンスが上がるものではありません。
したがって、ストレス耐性の質問をする際には、どのような職種や役割の求人かということも踏まえて答えを判断することが大切になります。
- 「これまでの社会人生活で、一番チャレンジングだった経験は何ですか?」
- 「どのようなハードルがありましたか?」
- 「当時、どのようなことにストレスを感じましたか?」
- 「どのような風に乗り越えましたか?」
大変なことを乗り越えた実感がある人は、自己効力感があり、次の逆境を乗り越えられる確率も高いでしょう。
- 「これまでに、人間関係で困ったことはありますか?」
- 「それは、どういうことですか?」
- 「その人間関係トラブルは、最終的にどうなりましたか?」
組織における最大のストレスは、人間関係といわれます。人間関係トラブルへの対処の仕方を聞くことも有効です。
- 「自分のパフォーマンスを維持するためにしているルーティンはありますか?」
生活管理や健康管理は、ストレス耐性やレジリエンスに大きく関係します。
自分なりのパフォーマンス維持のルーティンを持っている人は、ストレス耐性も高いものです。
人生観や目標を確認する質問例
カルチャーフィットや仕事・自己成長へのモチベーションに関係する質問です。また、転職理由などを確認するところにもつながります。
- 「どのような職場で働きたいと思っていますか?」
- 「どうして転職しようと思ったのですか?」
- 「今回の転職で得たいと思っていることは何ですか?」
- 「キャリアでは、どのようなことを実現したいと思っていますか?」
上記は、仕事観を質問すると同時に、職場やキャリア選択に関する一貫性を確認する質問です。
回答が中長期的なビジョンと一貫していれば、モチベーションを維持しやすいでしょう。
また、キャリアのビジョンを教えてもらうことで、そこから自社の魅了付けをすることも可能になります。
- 「仕事を通じてどのようなことを実現したいと思っていますか?」
- 「その理由はなんですか?どうしてそう思うのですか?」
仕事に対して、どのような価値を持っているかを確認するための質問です。
「人々が〇〇に悩まない社会にしたい」などの明確な回答が出てくる人は、仕事に対する意味づけがきちんとされている人です。
意味づけはレジリエンスの向上にもつながりますし、「仕事の意味」と「自社での仕事」が紐づいていくと、志望度の向上につながります。
- 「尊敬している人はいますか?」
- 「なぜその人を尊敬しているのですか?」
自分軸のある人は、尊敬する人を持っています。
ある程度のビジネス経験がある人の場合、過去に仕事で関わった人(社長・上司・先輩・顧客)が出てくれば、それまでに良い出会いをしてきたことがわかります。
なお、カルチャーフィットを見極めるうえで、上記のような仕事への価値観や想いを確認することは大切です。
一方で、パーソナリティを確認するような質問は、就職差別につながりかねない質問になりがちな側面もあるので、いわゆるNG質問も把握しておくことが大切です。
論理的思考力を確認する質問例
筋道を立てて、物事を論理的に考えられるかどうかを問う質問です。論理的思考力は、状況の整理や課題解決、事業計画の立案などにも欠かせないスキルです。
- 「これまでで最も大きな成果は何ですか?」
- 「その成果を出せた理由も教えてください」
ポイントは、成果が出た理由を、自ら整理できているかどうかです。理由までを筋道を立てて答えることができれば、成果の再現性が高くなります。
一方で、理由が曖昧な場合、振り返りの習慣もなく、成果自体もいわゆる「まぐれ・偶然」である可能性もあるでしょう。
- 「月間の売上目標はどれくらいでしたか?」
- 「それを実現するために、どのようなことをしていましたか?」
目標達成の意識やスキルを確認する質問です。優秀な営業パーソンなら、数値目標・実績をすぐに答えられるものです。
また、達成計画を質問することで、目標達成に向けてどのようにKPI展開や施策を検討しているか、論理的思考を確認できます。
- 「明日、この商品の営業に行かなければならないとしたら、まず何をしますか?」
ゴール到達に向けて必要な要素を洗い出し、周囲に協力を仰いだり、筋道を立てて考えたりできるかを問う質問です。
とっさの判断力や柔軟性、地頭の良さも見えてくる質問になります。
マネジメント力を確認する質問例
リーダー人材には特に大切な質問です。
- 「自分のモチベーションを維持するために、どのようなことを実践していますか?」
自分のマネジメントができなければ、他人のマネジメントはできません。
具体的な方法や習慣が出てくれば、自分の問題点などへの自己認識力やセルフマネジメント力が高いと考えられます。
- 「進捗が遅く、メンバーのモチベーションや作業品質も低下しているチームがあります。あなたがこのチームのリーダーになったら、まず何から始めますか?」
- 「その仕事から着手する理由を教えてください」
- 「その仕事のほかに、やりたいことはありますか?」
どこに着目し、どのように課題解決を進めるかを確認する質問です。また、以下のどちらの傾向が高いかを知るための質問でもあります。
下記の2つはポジションや業務に応じてバランスをとるものですので、正解があるわけではありません。
ただし、求める役割や組織の状況と照らし合わせることで合否を考える材料となるでしょう。
- リーダーとメンバーやメンバー同士の関係を大切にしたい
- 品質や進捗を管理して目標達成に向けて活動することを大切にしたい
仕事への価値観を確認する質問例
カルチャーフィットに関連する質問です。経営層や自社の価値観と合うことが望ましいでしょう。
- 「どのような企業で働きたいですか?」
- 「その理由を教えてください」
企業に何を求めているかを確認する質問です。リーダー以上のポジションであれば、どのような組織を作っていきたいかを知る質問になります。
複数項目が出てきた場合、必須条件と希望条件に分けてもらいましょう。
必須条件を「なぜそう考えるか?」「大切にしたいか?」と掘り下げていくと、その人の価値観、仕事観も見えてきます。
- 「仕事で充足感を感じるときはいつですか?」
- 「その理由は何ですか?」
相手の動機が見えてくる質問です。
たとえば、貢献意欲、親和動機が高い人材なら「お客様が喜んでくださったとき」「チームの目標を達成できたとき」などの人の役に立つ話をするでしょう。
なお、「人から〇〇されたとき」という話が多い場合、上司やメンバーなどに感謝や褒め言葉などを求める依存タイプの可能性もありますので、注意が必要です。
素直さや責任感を確認する質問例
上司のフィードバックや現状などを受け入れ、課題解決や自己成長をするには、素直さも大切です。
- 「努力はいつか報われると思いますか?」
- 「そう思う理由も教えてください」
「努力する・しない」と「報われる・報われない」を切り離して考えられればよいでしょう。
- 「いまの自分の短所や欠点は何だと思いますか?」
- 「そう思う理由も教えてください」
自分の欠点を素直に受け入れられているか、認識できているかを問う質問です。ただ、短所や欠点は、面接用に用意された答えの可能性もあります。
そのため、「なぜ?」で話を掘り下げて、正直さを感じられたらOKです。具体的なエピソードなども確認できるとよいでしょう。
また、その短所や欠点が仕事の成果に影響しないようにどうしているか?を質問して、すっと答えや具体例が出てくるようであれば、自己認識や論理性が高い人でしょう。
- 「営業ノルマについて、どう考えますか?」
- 「なぜそう思うのですか?」
この質問でも、「なぜ?なぜ?」の掘り下げていくなかで、企業の存続・成長、企業の売上から自分の賃金に絡めた回答になればOKです。
こちらも面接用の回答の場合があるため、「自分がノルマを3ヵ月連続で達成できない場合、どうしますか?」や「ノルマを達成できない同僚をどう思いますか?」などのネガティブな質問で話を掘り下げることも一つです。
志望度UPにつなげるための質問例
内定辞退を防ぐには、面接で不安を解消したり、本人の志望度を高めたりすることも大切です。
- 「どのような軸で転職活動をされていますか?」
答えに応じて、相手の選択軸に絡めた自社の魅力付けをすることが大切です。
- 「弊社に入ったとして、1年後どのような状況でいたいと思いますか?」
「この企業で働く自分」をポジティブにイメージしてもらうための質問です。相手の成功イメージを後押しするような情報提供をしていくとよいでしょう。
- 「入社するうえで、不安に思っていることはありますか?」
志望度を上げるには、悩みや不安を解除してあげることも大切です。
面接でいくつかの不安や悩みを聞いておけば、内定を出したあとの内定者フォローも進めやすくなるでしょう。
- 自分の能力を発揮できるか不安です ⇒ 〇〇スキルを持つ人材がずっとほしかったので、Cさんには活躍していただきたいです
- 女性技術者は、私だけなのですよね? ⇒ 全社的には、女性社員のランチ会なども開催されています。悩みや不安があれば、女性管理職のDさんに相談すると良いですよ など
なお、上記のような志望度UPにつなげるための質問は、1問1答というわけではなく、前述したようなさまざまな質問を重ねながら相手が本当に重視している軸を見出す、懸念点を知り、それに対して情報提供していくことが大切です。
まとめ
記事では、中途人材の見極めや魅了付けに使える、以下の質問例を紹介しました。
- アイスブレイクに使える質問例
- ストレス耐性を確認する質問例
- 人生観や目標を確認する質問例
- 論理的思考力を確認する質問例
- マネジメント力を確認する質問例
- 仕事への価値観を確認する質問例
- 素直さや責任感を確認する質問例
- 志望度UPにつなげるための質問例
面接は、相手を見極めるとともに、魅力付けにつなげるための重要なステップです。
基本的な質問例などを知ったうえで、見極めと魅了付けをバランスよく実施することが大切になります。
また、質問例以外に面接官の心構えや目的を再確認したうえで、面接官のレベルアップを図ることも大切です。
面接官の心構えなどが知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。