中途採用は、即戦力をすぐに獲得できる採用手法です。中途採用では、経験や実績があるからこそ書類での見極めをしやすい側面があります。
ただ、書面上の経験や実績があるからといって、自社での活躍が約束されるわけではありません。中途採用の面接では「過去の実績や成果を自社でも再現できるのか?」という“再現性”を確認することが非常に重要です。
また、中途人材は前職などでの経験があるからこそ、自分なりの価値観や働き方を持っており、入社後に変化しにくい側面があります。したがって、社風や価値観などのカルチャーへの柔軟性は新卒よりも低く、自社の風土や価値観と一致しない場合には早期離職したり、場合によっては組織の風土を損ねたりするリスクもあります。
したがって、自社にフィットする優秀な中途人材を獲得するには、面接の質問などをしっかりと工夫して、自社に合っているかを見極めることが大切です。
記事では、中途採用の面接で求職者を見極めるポイント、面接官が聞くべき質問のテンプレートを紹介していきます。
<目次>
中途採用の面接で求職者を見極める2つのポイント
中途採用の面接では、スキル面と価値観の両方を見極めることが重要になります。
スキルフィット
スキルフィットを見極めるには、「自社で活躍できるだけのスキルを有しているかどうか?」や「業務内容とスキルの親和性は高いか?」などを知る必要があります。過去の成果に関しては、「どういう環境・役割で出した成果か?自社での“再現性”があるか?」という点を深くヒアリングすることが重要です。
履歴書や職務経歴書に書いてある成果や実績は、以下のような場合も多々あります。
- 引き継ぎによる成果(優秀な前任者の企画だった)
- 市場環境による成果(流行と偶然重なった)
- 成果を出したプロジェクトでアシスタント的役割だった など
また、本人が出した結果であったとしても、“良い顧客に巡り合った”などのラッキーパンチ的な要素が大きい場合もあります。そのため、面接官は、環境、役割 ⇒ プロセス ⇒ 成果を出すために本人が実施していることなどをヒアリングしていき、出した成果の「再現性」を見極めることが大切です。
カルチャーフィット
カルチャーフィットの見極めでは、企業の文化や社風、価値観に合うかどうかを確認します。スキルは入社後の教育でも伸ばせますが、価値観はそう簡単には変化しません。特に中途人材は仕事への価値観や働き方がある程度固まっているため、カルチャーフィットも重要です。
「能力は高いが、社風に合わない」人を採用すると、組織自体に悪影響をおよぼすこともあります。したがって、価値観などに加えて、前職での仕事の進め方、裁量権、チームワークの在り方なども、しっかり聞いておくことが重要です。
面接官が中途採用で聞くべき質問11選
求職者が自社に合った人材かどうかを見極めるには、求める価値観やスキルによって質問内容を変えたり、面接官が質問の意図を把握したりしておく必要があります。
職務経歴に関する質問
・「これまでの職務経歴で誇れる成功体験と失敗体験を教えてください」
先述のとおり、職務経歴書の実績は、本人の能力によるものとは限りません。したがって、成功体験もしくは失敗体験のエピソードを深堀りするSTAR面接などの手法を使い、実績に再現性があるかどうかや、行動特性などを見極めていくことがポイントです。
- S(どのような状況、どのような立場だったか?)
- T(どのような課題や責任、目標があったのか?)
- A(どういう意思決定や行動をとったのか?それはなぜか?)
- R(どのような結果となったのか?何を学んだか?)
・「仕事で成果をあげるために日々取り組んでいることを具体的に教えてください」
採用時に重要となるのは、職務経歴に関する“自社での再現性”です。そのため、求職者がどのようなプロセスや意思決定で成果をあげたかを確認していきます。
論理的思考能力に関する質問
・「成果を出したプロセスを教えてください」
目の前の課題に対して論理的分析や分析に基づく行動を起こせる人材なら、成果を出したプロセス、再現性につながる理由や要因を挙げられます。質問への答えが明確ではない場合、論理的に考えるスキルが低い可能性が大でしょう。
・「前職で実施していたPDCAサイクルのポイントを教えてください」
仕事で論理的思考能力が問われるポイントの一つはPDCAサイクルです。成果をあげるためのポイントを見極めて、計画→進捗把握→課題への対応ができていたかを確認します。
・「弊社の商品で月○万円の売上を達成するにはどうしますか?」
売上達成を実現するために、現時点での知見や見識をどれだけ活用して物事を考えられるかどうかをチェックする質問です。論理的思考力の高い人の場合、自ら手立てを生み出すために、的確な逆質問をしてくる可能性も高いでしょう。
シミュレーション能力に関する質問
・「営業成績が上がらないときにはどうしますか?」
行きあたりばったりで仕事をするのではなく、結果を出すための手立て(引き出し)をどれぐらい出せるかどうかを確認する質問です。
・「退職願を出しても、企業が認めてくれない場合はどうしますか?」
想定できない事態に直面したとき、対処の仕方や展開の可能性を推測できるかどうかを確認する質問です。
コミュニケーション能力に関する質問
・「仕事の報連相で大切にして日々実施していることは何ですか?」
他者志向でわかりやすい報連相ができるのか、迅速な報連相を行なえるのか、上司が不在のときに柔軟な対応ができるか、などの確認ができる質問です。
・「初対面の人との会話で大切にしていることはありますか?」
これから一緒に働く同僚やお客様との信頼関係を構築できるタイプかどうかを確認する質問です。相手のコミュニケーションスタイルや価値観を確認する質問であり、回答に正解はありません。ただし、自社の社風やカルチャーと一致しているかどうかは大切です。
成長意欲に関する質問
・「自分の短所を教えてください」
自分の欠点や短所を受け入れられているかどうかを確認する質問です。ただし、長所や短所は、面接回答用に準備されたものの場合があります。したがって、短所を直すために何をしていますか?」や「その短所をどうとらえていますか?」などの質問で深堀りしましょう。
・「成長したり、仕事で成果をあげたりするために実施していることはありますか?」
日々のなかで学んだり、成長する習慣を持っていたりするかを確認する質問です。方法は何でも良いのですが、「インプットする習慣があるか?」や、「知識をインプットするだけではなく、それを成果につなげているか?」を確認しましょう。
モチベーションに関する質問
・「仕事にモチベーションが湧くときはどのようなときですか?」
自分の動機(モチベーション)を自己認識できているか、何が動機になるかを確認します。適性検査などの結果とも照らし合わせることが有効です。そして、「具体的に現職(前職)でいうとどのような場面や状況ですか?」という質問を使って深堀りしていきましょう。
・「自分のモチベーションを維持するためにどのようなことを実践されていますか?」
この質問にも、正解はありません。ただし、具体的な回答を返してくる人は、セルフマネジメントをできている可能性が高いです。逆に答えられない人は、自己認識やセルフマネジメントレベルが低い可能性があります。
・「自分のどのような能力を高めたいですか?その理由はなぜですか?」
向上したい能力が明確な人は、自分の欠点や成果をあげるための道筋を把握している可能性が高いでしょう。理由や背景を深堀りすると、能力向上への本気度も見えてきます。
・「負けず嫌いですか?具体的なエピソードがあれば教えてください?」
負けず嫌いな人は自分を鼓舞することが得意であり、個として高い戦力になります。ただし、言葉の端々に敵対心や競争心の高さが出てくるため、チームの和を乱す可能性があります。したがって、社風と一致するかどうかの注意は必要です。
ストレスに関する質問
・「仕事で大変だったエピソードを教えてください?乗り越えた方法は?」
逆境を乗り越えた実感がある人は、自信もあり頑張りが利きます。具体的な大変さについては、仕事時間や睡眠時間、身体的症状などから総合的に判断します。乗り越えた方法を質問することで、頑張れる度合いや、ストレスが生じたときの受け止め方なども把握できます。
・「仕事でどのようなときにストレスを感じますか?」
自己認識のレベルなどを確認します。同時に「どのように対処しているか?」の確認も大切です。明確な答えが返ってくる人は後天的なストレス耐性、レジリエンスなどの能力が高い傾向があります。
「我慢する」「耐える」といった回答をする人は真面目な性格である一方で、どこかでポッキリ心が折れたり、爆発したりする可能性もあるので注意が必要です。
・「生活習慣で大切にしていることはありますか?」
ストレス耐性やセルフマネジメント力が高い人は、バランスの良い食生活や規則正しい生活を心がけています。そして、日常生活をセルフコントロールできていることが、仕事での目標達成にもつながってきます。また、優秀な人材は、自分のパフォーマンスを高い状態で安定させるためのルーティンを持っている可能性が高いでしょう。
仕事に対する姿勢への質問
・「仕事で大切にしていることは何ですか?」
仕事に対する相手の価値づけや意味がわかる質問です。正解はない質問ですが、まずは「仕事の価値や意味を考える習慣を持っているか?」や「その答えが自社の価値観や風土にあっているか?」を確認していきます。
・「仕事の目標についてどう捉えていますか?」
仕事で不可欠な目標設定と達成に関する質問です。面接でネガティブな答えを返す求職者はいないでしょう。そのため、自分自身の考えや答えを持っているか深掘りしていくことが大切になります。
「目標を3ヵ月達成できないときにどうするか?」や「3ヵ月連続で目標達成できない同僚をどう思うか?」などの深堀り質問をすることで、逆境のとらえ方や対処方法、仕事への価値観、意味づけなども見えてきます。
・「ビジネスにおいて尊敬している人はいますか?なぜその人を尊敬しているのですか?」
自分軸がある人の多くは、尊敬する人のイメージを持っています。「なぜか?」を確認していくことで、価値観や自己認識が見えてくるでしょう。
キャリアに関する質問
・「10年後、どのような仕事をしていたいですか?」
仕事への真剣度が見える質問です。真剣な人材は、10年後のイメージもある程度具体的です。また、組織志向、マネジメント志向、スペシャリスト志向、個人志向など、どこに該当するかも見えてきます。
・「当社でどのようなキャリアを積みたいと思いますか?」
キャリアという言葉に関する相手の認識が見えてくる質問です。回答のなかで、育ててもらう・学ぶことだけを考えている相手は要注意になります。成果をあげる、実績をあげることに紐づいて、自分のキャリア展望を語れる人は合格です。
・「あなたの人生において仕事はどのような意味を持ちますか?」
特に正解はありません。候補者の価値観や考え方を確認するとともに、経営者もしくは企業との価値観が合っているかをチェックする質問です。
転職理由に関する質問
・「どうして転職されたのですか?」
転職が人生の夢や目標との関連性があるかどうかを確認する質問です。なりたい姿があるかどうかや、自分の人生にセルフリーダーシップを発揮できているかどうかも確認可能な質問になります。
・「今回の転職理由を教えてください」
・「現職(前職)で、これがあれば転職しなかった、というものは何ですか?」
普通に転職理由を聞いた場合、相手も回答を準備しています。したがって、追加の質問で一段深掘りをして、本音を探ることが重要です。また、キャリア展望などと転職理由が一致しているかも確認のポイントです。
・「転職を決意するまでに、どのようなことをしましたか?」
場合によりますが、環境のせい、他責にするのではなく、自分でも改善努力をしているかを確認する質問になります。
志望動機に関する質問
・「今回の転職で重視されている点は何ですか?」
・「今回の転職で条件にしている点は何ですか?」
それぞれ転職の軸や必須条件を確認する質問です。前者の質問は定性的・前向きな答えが返ってきやすくなります。そのため、後者の質問を呼び水に待遇や働き方などに関する意向も確認していきましょう。
・「どうして当社に応募したのですか?」
自社や業界への関心、入社意欲の高さをチェックする質問です。高い関心を持っていれば、回答に具体的理由が入ってきます。企業サイトなどに目を通しているかどうかがわかる質問でもあります。
「採用面接の質問」に関してよくある質問
Q.「採用面接で何を聞くの?」
新卒採用/スキル採用などで質問の内容は変わりますが、具体的には主に下記の内容を質問します。
- 価値観に関する質問
- スキルに関する質問
- モチベーションに関する質問
- 経歴に関する質問
- ストレス耐性に関わる質問
Q.「採用面接でタブーな質問は?」
- 本籍や家族、家庭環境に関する質問
- 思想や信条に関する質問
Q.「採用面接の心得は?」
- 「応募者から選ばれている」という心得
- 「応募者の志望動機を上げる」という心得
- 「自社の採用ペルソナ」を認識したうえでの判断基準
まとめ
中途採用の面接では、スキルフィットとカルチャーフィットの両方を見極めることが大切です。面接で求職者が自社で活躍できる人材かどうかを見極めるには、自社で重要視する評価基準を設定したうえで、見極め重視の面接を行なっていく必要があります。
質問のバリエーションを増やしたい人は、ぜひ以下の資料も確認してみてください。