パーパス経営とは?導入のメリットや取り組み方を事例も交え紹介

更新:2023/08/30

作成:2023/08/30

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

パーパス経営とは?導入のメリットや取り組み方を事例も交え紹介

パーパス経営とは、企業の存在理由であるパーパスを軸に経営する手法を指します。

 

外部環境の変化が激しいからこそ、自社の存在意義を明確にして、しっかりとした判断や行動の軸を持つことが、企業が生き残っていくうえで大切になっています。

 

本記事では、パーパス経営の概要や意義を確認するとともに、導入のメリットや取り組み方を、事例も交えながら紹介します。

<目次>

パーパス経営とは?

まずはパーパス経営とは具体的にどんなものか、混同されがちなものとの違いや位置づけを押さえておきましょう。

パーパス経営とは?

パーパス(purpose)とは、英語で「目的」や「意図」を意味する単語です。

 

パーパス経営という場合には、企業が自社の存在意義や社会的使命を明確にし、それに基づいて経営戦略や組織文化を構築することを指します。

 

パーパス経営において重要になるのが、売上や利益ばかりを追求するのではなく、より高いレベルの目標や価値観を掲げ、自分たちが何のために存在し、何を提供したいのかを明確に示すことです。

パーパスとミッション・ビジョンの違い

パーパスと似た言葉として、「ミッション」や「ビジョン」があります。

 

パーパスとは、社会のなかで企業が何のために存在しているのか、社会に何を提供できるのかという存在意義に対する答えであり、Whyにあたるものです。

 

「ミッション」も、パーパスと同じように「自社が何のために存在するのか?」「企業として何を成し遂げるのか?」という存在意義、目的を示すものとして使われることが一般的であり、基本的には同じものと考えて良いでしょう。

 

ただし、パーパスやビジョンを最上位の存在目的として扱い、ミッションを、それらを実現させるための中期方針(任務)と捉える考え方もあり、その場合、ミッションは10年程度の時間軸で何をするのかというWhatにあたるものとなります。

 

また、「ビジョン」は、パーパスやミッション実現を目指す中で、進むべき方向性とゴールを示すものです。

 

パーパスやミッションは抽象的に表現されることが多いのに対し、ビジョンは「具体的に目に浮かぶように」表現されるものです。

 

ビジョンは、「どのような未来を実現するのか」「どこを目指すべきなのか」というWhereに当たるという捉え方もできます。

なぜ今パーパス経営が必要とされるのか?

自社の存在意義を明確にするということについて、なぜそれが大切なのか、ピンとこないという方もいるでしょう。

 

本章では、なぜ今の時代において、パーパスがとりわけ重要になるかを解説していきます。

軸があることで環境の激しい変化に耐えられる

現代は、VUCA時代とも呼ばれる変化の激しい時代です。

 

競争相手も同業他社だけとは限らず、業界の枠を超えて異業種の企業が競争相手になるということも起こりえます。

 

売上を伸ばすことばかり考えて様々なビジネスに手を伸ばしてしまうと、「何でも屋」の状態にもなりかねません。

 

そうなると顧客にとっての魅力も薄れていってしまい、やがて何のために事業をやっているのかわからなくなってきてしまいます。

 

また、経営の軸が無いと事業に一貫性が無くなってしまい、従業員の結束を保つのも困難な状態になりかねません。

 

そうならないためにも、「何のために自分たちは存在しているのか?」ということを明確にすることが大事になってきます。

働く意味を明確にする

個人、従業員の立場から見た時、仕事は生活の糧を得る手段であることは間違いありません。

 

では、なぜ今の会社は働き続けるのか?

 

その理由が「待遇がいいから」というだけだとしたら、従業員は定着しないでしょう。

 

物質的な欲求がある程度充足してきた今の時代には、働く意味が昔以上に大切になっています。

 

また、働く場所に困らない優秀層ほど、「なぜここで働くのか?」という意味ややりがいにこだわるものです。

 

その中で、パーパスは、自分の仕事が社会にとって何の意味を持つのか、どんな貢献をするのかを明確にしてくれるものになります。

企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの対応

近年、地球環境問題や人権問題への意識の高まりから、ひたすら利潤を追求ばかりするような企業に対しては厳しい目が向けられるようになってきています。

 

社会において企業が大きな存在感を持つようになった中で、企業の社会的責任(CSR)が求められるようになり、社会貢献を意識した活動に取り組む企業が増えました。

 

とりわけ事業規模が大きく社会的な影響も大きい企業は、「ノブレス・オブリージュ」と呼ばれる、地位が高ければそれに相応しい徳の高さも必要であるとの考え方も求められるようになってきています。

 

また、国連が定めた「持続可能な開発目標」であるSDGsへの対応も、避けて通るわけにはいきません。

 

企業としての責任を果たすためにも、何のために事業を行うのかを明確にすることが重要になってきています。

ミレニアル世代のエシカル消費や企業選びに対応する

いまの若手層は、生まれたころから地球環境問題や人権問題が身近であり、学校教育でこれらの問題が取り上げられてきており、環境や人権問題に対する意識も他の世代に比べて高くなっています。

 

2000年に入ってから生まれた世代は「ミレニアル世代」と呼ばれ、2023年現在、既に成人して社会人として働いくようになっています。

 

そんなミレニアル世代は、消費や企業選びにおいて環境や人権への配慮を重視する傾向があるとされています。

 

このようなミレニアル世代に対して、企業としての姿勢を明確に示すためにも、パーパス経営を実践することが重要になっています。

パーパス経営の5つのメリット

パーパス経営を実践することで、具体的にどのようなメリットがあるのかも確認しましょう。

①従業員のエンゲージメントが高まる

「何のために働くか?」が明確になれば働きがいが生まれ、従業員のエンゲージメントを高めることができます。

 

組織は大きくなってくると分業化が進み、仕事の全体像が見えづらくなってきます。

 

そうなると、目の前の仕事を機械的に処理していくだけの状態になりやすくなり、やる気も失われがちになっていきます。

 

パーパスを明確にし、そこに従業員一人ひとりがどう貢献していくのかを考えられるようになることで組織としての一体感も生まれ、生産性も高まります。

②一貫性があり迅速な意思決定ができる

状況が目まぐるしく変わる不確実な時代にあっては、経営には迅速な意思決定が必要です。

 

また、昔のように上層部だけが意思決定するのではなく、現場レベルでもどんどん変化や顧客に対応して意思決定することが求められています。

 

そんな中で、パーパスがはっきりしていれば進むべき方向が定まり、意思決定のスピードを速めることができます。

 

周囲の変化に振り回されることなく、判断に一貫性を持たせることができるようになるでしょう。

 

しっかりした判断基準を共有することで、権限移譲も進めやすくなるでしょう。

③消費者や取引先からの信頼関係につながる

パーパスを掲げることで、企業が社会に対してどのような価値を提供しようとしているのかが伝わりやすくなります。

 

企業としての大義を明確にすることで、機能的な価値や品質だけの評価ではなく、パーパスへの共感が生まれ、ブランドやファンづくりに繋がります。

④ステークホルダーから支持される

近年では、投資の判断基準として環境、社会、ガバナンスに着目する「ESG投資」に注目が集まっています。

 

投資家サイドから見た時、環境や社会に配慮し、適切な企業統治が行われているということは、長期的に見て安定した資産運用が期待できることを意味します。

 

それに加え、投資家の間でも、気候変動などの環境問題への意識が高まっています。

 

このような背景があり、パーパスを掲げて環境や社会に配慮し、企業としての統制がとれていることをアピールできれば、ステークホルダーからの支持も得られることが期待できます。

⑤イノベーションを生み出せる

パーパス経営においては、掲げたパーパスをもとに描かれたビジョンを実現させるために、イノベーションや変革を推進することが求められます。

 

パーパスに基づいて新商品の開発やサービスの改良といったことが行われることで、新しい市場や顧客の開拓につながります。

 

また、自社のパーパスと方向性が一致する企業と協力し合うことでもイノベーションが生まれ、競争力を高めることにつながるでしょう。

パーパス経営の落とし穴

様々なメリットがあるパーパス経営ですが、一方で落とし穴もあります。

 

「導入してみたものの、意味が無かった」ということにならないように、どういったことに気をつける必要があるのかを確認しておきましょう。

建前だけの状態になってしまう

実践を考えず、「注目されているから」「周囲がやっているから」と、なんとなく導入してしまうと、建前だけの状態になってしまいます。

 

一見するとパーパス経営をやっているように見えて、実際には行動が伴っていないという「パーパスウォッシュ」になってしまわないためにも注意が必要です。

 

周囲に流されて形だけになってしまわないように、本気でパーパス経営に取り組むという覚悟を持って導入することが大切です。

パーパスが形骸化してしまう

パーパスを設定できたとしても、そのパーパスに対して共感が得られなければ、従業員のエンゲージメントの向上につながりません。

 

この場合も、組織や従業員に浸透せず、結局建前だけの状態になってしまうでしょう。

 

パーパス経営と同じような考え方にミッション経営や理念経営などがありますが、いずれも組織への浸透をきちんとできず、たとえば従業員が自社のミッションや理念を言えないといった状態になってしまった企業も多数あります。

 

パーパス経営を実践するには、経営陣の覚悟と共に、パーパスをキチンと社内に浸透させる取り組みが不可欠です。

顧客や社会のニーズとミスマッチしたものを設定してしまう

パーパスを設定する際に気をつけたいのが、顧客や社会が自社に対して何を求めているのかです。

 

単に社会貢献することだけを考えてパーパス設定に走ってしまうと、顧客や社会が自社に何を求めているのかという点が抜け落ちてしまいます。

 

そうなると、ニーズとのミスマッチが生じてしまうでしょう。

 

理想像が前に進む原動力になりますが、同時に社会や顧客に求められていることと違う方向に進んでしまえば、やがて顧客が離れていってしまうということになりかねません。

パーパス経営を実践するための大事なポイント

パーパス経営を実践するうえで、具体的なパーパスの設定や運用のやり方について見ていきましょう。

自社の歴史や強みに基づいてパーパスを設定する

パーパスは、自社で取り組むことが可能なものであることが大前提です。自社の強みを生かし実践可能なものとするためには、自社の理念や歴史に基づいてパーパスを設定することが重要です。

 

そうすることで、顧客や社会のニーズからずれてしまうのを防ぐこともできるでしょう。

収益の確保との両立を考える

パーパス経営を実践していくうえで重要になってくるのが、収益の確保との両立です。企業が継続して事業を行っていくためには、利益を確保することが必須です。

 

経営学者のドラッカーは、「たとえ天使が社長になっても、利益には関心を持たざるをえない」と述べています。

 

パーパス経営においては、「理想」か「利益」かの二者択一ではなく、両立させる経営をしていく必要があります。

パーパスを社内に浸透させる

パーパスは設定するだけではうまくいきません。前章でも述べた通り、組織の隅々にまで浸透させる必要があります。

 

ワークショップや朝礼等を通じて、自分の仕事と明確に紐づくところまで浸透させることが大切です。

 

また、一度浸透させて終わりではなく、社員の入れ替わりや時間の経過に耐えられるように、浸透させ続ける仕組みをつくることが非常に大切です。

 

下記の記事などでも浸透施策について紹介していますので、ご興味あればご覧ください。


パーパス経営を実践している企業の一例

パーパス経営と一言にいっても絶対的な正解があるわけではなく、企業によって様々な取り組み方があります。本章では、パーパス経営を取り入れて成功している具体的な企業事例をいくつか紹介します。

パタゴニア

従業員のエンゲージメント向上や顧客との信頼関係構築にパーパスを活用しているのが、アウトドア用品の製造・販売を行っているパタゴニアのケースです。

 

パタゴニアのパーパスは、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」です。

 

パタゴニアはパーパス経営の先進事例として知られ、全売上の1%を地球のために寄付したり、リサイクル素材やオーガニックコットンといった環境負荷が少ない素材を使用したりといった活動を通じ、環境問題に貢献するビジネスモデルを実現させています。

 

このような取り組みによって、従業員からだけでなく求職者からも共感が得られ、組織全体がパーパスのもとに一つにまとまって進むということができています。

 

また、消費者からも共感が得られ、「パタゴニア信者」と呼ばれるほどのリピート客が生まれるなど、ファン獲得にもパーパスが大いに役立っています。

ソニー

バラバラになって方向性を見失いがちな組織を一つにまとめ、結束力を高めるためにパーパスを活用しているのがソニーのケースです。

 

電器メーカーから始まったソニーですが、いまやソニーグループの事業は、ゲーム、音楽、映画から半導体、エレクトロニクス、金融まで多岐にわたります。

 

ソニーグループでは「ソニーグループらしさとは何か?」を探求し、2019年1月に「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」をパーパスとして掲げました。

 

パーパスを明確にしたことにより、コロナ禍においてもパーパスを軸に社員が団結し、在宅での消費者のストレス解消という社会貢献のもと、予定通りにゲームの販売、映画の公開を行うことで、2020年には最高収益を達成しました。

ネスレ

パーパスを自社のビジネスにうまく結びつけているのが、食料・飲料の世界的な大手企業であるネスレのケースです。

 

日本ではコーヒーやキットカットでよく知られるネスレは、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」をパーパスとして掲げています。

 

このパーパスのもと、「個人と家族・コミュニティ・地球」の3つの分野において社会貢献することを目標に、ビジネスを展開しています。

具体的には、

  • 個人と家族のために、忙しくても自宅で手軽に素材にこだわったスムージーを飲む機会を提供
  • コミュニティのための、沖縄で初となる大規模な国産コーヒー豆栽培を目指す産学連携の「沖縄コーヒープロジェクト」の取り組み
  • 地球のために、主力製品のパッケージを紙化

といったことを行なっています。

 

形だけで空回りしてしまいやすいパーパスを自社のビジネスとうまく結びつけている事例として参考になるものです。

パーパス経営の実践をサポートする研修

パーパス経営を実践していくためには、人材育成も欠かせません。

 

企業のパーパスを浸透させるうえでは、仕事の意義について従業員ひとりひとりに考えてもらう必要がありますし、自分自身のパーパスについて考えてもらう必要もあるでしょう。

 

ひとりひとりの従業員にとって最も大切なものは自分自身の人生です。仕事というのはその中のひとつです。

 

だからこそ、自分自身が「人生をどう生きたいか?」がない中で、企業のパーパスだけを浸透させようとしても表面的なものになってしまいます。

 

従って、組織のパーパスを浸透させるうえでは、じつは従業員個人のパーパス、人生をどう生きたいかというミッションステートメントが重要になってきます。

 

また、パーパスに基づいた意思決定を現場でしていってもらう上では、従業員の当事者意識や責任感も大切です。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、そのような人材を育成する「7つの習慣®」研修を提供しています。ご興味あれば、ぜひご覧ください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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