株式会社テックタッチ|スタートアップならではの、挑戦を主体にしたスピード感ある組織づくり

更新:2025/05/31

作成:2025/05/22

いい会社づくりのヒント Vol.39 サムネ

デジタルアダプションプラットフォーム「テックタッチ」の開発・提供を主事業とするテックタッチ。2025年版Great Place to Work® Institute Japan「働きがいのある会社」ランキング中規模部門10位にランクインしています。

 

優秀な人材を集める採用方法や、入社後の従業員満足度をいかに高く継続させているのか、その施策や推進方法を代表取締役 井無田 仲様に伺いました。

 

会社情報

会社名:テックタッチ株式会社
設立:2018年3月1日
従業員:156名(2025年4月時点)※正社員のみ

Webシステムの操作・入力をアシストし、直感的に操作できるシンプルで効果的なDAP「テックタッチ」を開発、2019年にサービスを開始した。大企業の社内システムや官公庁・自治体のウェブサイトへの導入が進む中、2025年4月時点で国内外ユーザー数は約800万人にも及ぶ。

 

さらにデータ分析・戦略活用に特化したAIエージェント「AI Central Voice」を今年の4月にローンチするなど、社会のデジタルトランスフォーメーションを加速させることを目指している。

 

<目次>

Q.貴社の沿革と事業内容について教えてください。

井無田様:弊社は2018年3月に設立し、2019年2月からサービス提供を開始しました。主力事業は、企業向けのデジタルアダプションプラットフォーム「テックタッチ」の開発・提供です。

 

「テックタッチ」は既存の業務システムにナビゲーション機能を重ねることで、ユーザーが迷わず操作できるようにするソリューションシステムです。「次に何をすべきか」が画面上にガイドされる仕組みは、カーナビのようなイメージですね。

 

サービス開始からわずか1年で、トヨタ自動車、三菱UFJ銀行、あいおいニッセイ同和損保、損保ジャパンといった日本を代表する大手企業への導入が進みました。直近では、自治体や省庁にも導入いただき、国内外ユーザー数は間もなく800万人に達する見込みです。

 

私自身は金融業界からキャリアをスタート。6~7年ほど勤めた後、スマートフォン向けのアプリの開発会社へ転職し、事業の立ち上げ方や経営の基盤を学びました。その会社で、スマートフォンが急速に普及し、私たちの生活や価値観を大きく変えていく様を目の当たりにしました。

 

一方で、当時の日本企業では印鑑文化が主流だったり、操作しづらいシステムを使ったりしながら仕事を進めていました。私自身、金融時代に使っていた業務システムには使いづらさを感じていました。

 

「優れたテクノロジーが存在するのに、現場で活かされていないのはもったいない。であれば、自分たちで“使いこなせるテクノロジー”を届けよう」。そう考えたことが、起業の原点となりました。

 

Q.貴社のバリューが生まれた経緯について教えてください。

井無田様:会社設立前にも、たくさんの会社のバリューを見てきました。しかし、いくら素晴らしい言葉でも、バリューが「こうあるべき」という押しつけになっていると、社員が心から共感するのは難しいと感じていました。

 

そこで、社員自身が「自分たちはこうありたい」と思えることをベースにバリューを策定する方が、自然で納得感のあるものになると考えました。

 

初めてバリューを決めたときの社員は15名ほどでしたが、全員参加でのディスカッションを重ね、「これまで会社のどんなところが良かったか」「これからどんな会社にしていきたいか」といったテーマで意見を出し合いました。私はファシリテーターとして、自分の意見はあまり出さず、皆の声を聞いて、まとめる役に徹しました。

 

こうして生まれたバリューは2024年2月にアップデートされ、現在は3つを掲げています。

 

まず最初は「挑み続けろ援護があるから」というものです。日ごろから社員が仕事が楽しいと思えるような職場にしたいと考えていますが、それには「挑戦」できる環境づくりが必須です。

 

挑戦には失敗がつきものですが、だからこそ、誰かが挑戦したときは周りがしっかりサポートする文化をつくりたい。そうすれば、安心して一歩を踏み出せる環境になるはずだと考えています。

 

続いて2つ目は、「Co-Developers」というバリューです。私たちはBtoB向けのソフトウェアを開発していますが、この領域はプロダクトアウトではなく、マーケットインの視点が重要です。お客様の声を聞きながら、あるべき姿や機能を一緒に考え、共にプロダクトを創っていく。そんな姿勢が必要不可欠です。

 

お客様も開発者の一員であると捉え、「共に創る仲間」として歩んでいきたいという思いから、生まれたバリューです。私自身もとても気に入っていて、お客様へのノベルティにも印刷するほど大切にしています(笑)。

 

そして3つ目は、「いつでもごきげん」です。当社のようなスタートアップは動きが早く、次々に課題が現れ、その課題をどれだけ早く解決できるかが成長スピードを左右します。そんな環境で、誰かの機嫌をうかがわなければ発言できないような雰囲気では、課題解決のスピードが鈍ってしまいます。

 

私たちは、上下関係に縛られずフラットに課題と向き合える「ピュアな課題解決集団」を目指していますが、そのためには心理的安全性が大切です。それには相手への優しさや温かさがあるべきであり、この言葉はまさにぴったりなフレーズだと感じています。

 

Q.「働きがいのある会社ランキング」への初選出、おめでとうございます。評価のポイントはどこにあったのでしょうか?

代表取締役 井無田 仲様

 

井無田様:有難うございます。もちろん嬉しい結果ではありますが、ランキングに入ること自体を目標にしていたわけではありません。社員一人ひとりが「仕事が面白い」と感じられる会社をつくろうとしてきた積み重ねの結果だと受け止めています。

 

当社では仕事の本質として、社員自身が挑戦し、解決したいと思っていることが社会の課題解決にもつながることが大事だと考えています。それが仕事への面白さになり、会社としては社員が挑戦すべき課題をまず明確になるようサポートしています。

 

また誰もが挑戦する姿勢を持つため、そこに共感してくれるメンバーが多いというのも当社の強みの一つでしょう。

 

「挑戦する文化」への共感は、採用の段階から強く意識しています。面接では、「この人はテックタッチで何をやりたいのか?」「その先の人生で何を実現したいのか?」といった点を丁寧にヒアリングし、会社としてその挑戦にどう寄り添えるかをすり合わせる場にしています。

 

もう一つ大切にしているのが、会社と個人とのフェアネス(公平性)です。たとえば、一般的な職場では、時折“サボったほうが得”と感じられるような仕組みが存在してしまうことがあります。その根底には、社員に「責任を回避したい」といったサラリーマン気質を発生させてしまう組織設計があるのではないかと考えています。

 

そうした環境では、社員が「仕事の面白さ」を感じることはありません。当社では、「挑戦すればするほど、自分に返ってくる」という構造をつくることで、頑張ることが報われ、結果として「仕事は面白い」と感じてもらえる工夫をしています。

 

「挑戦」をキーワードに、同じ思いをもついい仲間と仕事をし、いいカルチャーを作ることが大事であり、これを皆が意識することで会社の骨組みが強固になっていくでしょう。

 

武田信玄が詠んだとされる和歌で、「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」という一首がありますが、城を持たず人を大事にした信玄の姿勢に感銘し、これから会社を成長させていくにあたり、私の心境もまさに同じ思いです。

 

Q. 社員が挑戦するために、安心して働ける職場づくりへどんな施策があるのでしょうか?

井無田様:私たちのようなスタートアップでは、挑戦するための土台として、オープンなコミュニケーション環境を整えることが非常に重要だと考えています。その一環として、組織の状態を可視化するためにWevox(ウィボックス)を導入しており、定期的にアンケートを実施し、結果を月に一度の全社総会で共有します。

 

課題が見えた場合は、どう改善していくかを社員全員で話し合います。総会では「コメントスクリーン」という仕組みも取り入れていて、匿名でコメントが画面上にリアルタイムで流れるようにしています。ニコニコ動画のような形式なのですが、誰でも気軽にコメントできるので、会議中のコミュニケーションが活発になります。

 

また、部門を越えて集まるワーキングチームを設けて、“もっと社内のコミュニケーションを良くするにはどうしたらいいか”をテーマに、定期的にアイデアを出し合っています。

 

弊社がこうしたコミュニケーションを重要視しているのは、毎月6~7名の新しいメンバーが参画していることが背景にあります。

 

弊社では、リモートワークとオフラインを含めたハイブリッドな働き方をしているため、意識しないとコミュニケーションが希薄になってしまいます。そうなると、新しいメンバーの業務理解やスピード感、社内の人間関係の構築にも悪影響が出てしまいます。

 

そこで、入社後すぐに社内に溶け込めるよう、メンターが業務に関わりそうな人を15名ほど指名し、1on1ミーティングを設定し、接点を持ってもらうようにフォローを行っています。仕事の進め方や不安の解消だけでなく、ちょっとした声がけを通じて心理的な安心感を醸成していくことが、結果として“挑戦できる職場”につながっているのだと思います。

 

Q.組織づくりの課題をいかに乗り越え、急成長されてきたのでしょうか?

井無田様:前述の通り、急速に人員が増える中でリモートワークをどううまく機能させるかは大きな課題です。いわゆる「50人の壁」「100人の壁」なども感じてはいますが、リモートの特性上、こうした壁が少し早めに訪れている感覚はあります。社員間のコミュニケーションの密度が徐々に薄れていくのは、肌感覚としても実感しているところです。

 

そもそもスタートアップとして創業したテックタッチには、100人規模の組織をマネジメントした経験を持つ社員がいませんでした。だからこそ、リーダーの早期育成が不可欠だと考えています。「立場が人を作る」と考えて、現場のリーダーに意識的に権限を委ね、私自身も含めて、互いに学び合いながら成長していきたいと考えています。

 

それを支える一環として、経営陣とリーダーが会話するための「リーダータイム」を多く設けています。少しずつですが、リーダー陣が自分の担当する領域を俯瞰し、全体の中での自分の役割を捉えられるようになってきたと感じています。

 

組織が拡大していく過程ではセクショナリズムのような分断も起きがちですが、当社ではそういった空気が生まれにくいのも特徴です。背景として各セクションのリーダー同士の仲が非常に良く、日ごろから信頼関係が築けていることが大きいと思います。

 

リーダー同士の関係性がしっかりできていることで、メンバー間のコミュニケーション含めて、組織全体にポジティブな影響が広がっていると感じます。

 

一方で、リーダーごとに見ている範囲や価値観の違いもあるため、部門単位では上手くいっていても、全社で見るとバラつきが出てしまうこともあります。そういったときには、私が旗振り役となり、各リーダー同士の意思疎通を図っていきます。

 

Q.さらなる組織拡大を見越した、人材育成の施策を教えてください。

井無田様:当社では労働集約型のビジネスではなく、一つひとつをしっかりと考えなければならないような仕事に取り組むと決めています。その方が面白いですし、人が成長できるのではと個人的には考えています。そしてそんな職場にいい人が集まってくれている傾向があると感じています。

 

その中で現在、弊社では「マルチプロダクト化」を積極的に進めています。AI技術の進展によって、新たなプロダクトを生み出しやすい環境が整った中、時代の要請に応えるかたちで複数の事業・製品を展開し始めています。

 

新しいプロダクトを次々と開発している動きに伴い、社内にもさまざまな新しいポジションが生まれています。

 

若手であっても責任ある役割を担う機会が増えており、社員の成長スピードにも大きな変化が生まれています。「役割が人を育てる」と言われるように、責任ある立場に身を置くことで、ビジネスパーソンとして一つ上のステージに進んでいく……まさにその過程を見ていると感じます。

 

先日、弊社と同時期に創業した方と話す機会がありました。その方も、創業初期に採用した20~30代の若手が、今の組織の中心を担っているという話を伺い、「弊社も同じフェーズに差しかかっている」と実感しました。

 

これから若手社員たちが、さらに多様な経験を積み重ね、リーダーとして会社の中核を担っていくことになります。だからこそ、会社としても挑戦の機会を生み出し、本人の意思に寄り添いながら成長を後押ししていきたいと考えています。

 

Q.今後どのような人材を採用し、組織づくりをしていきたいと思いますか?

井無田様:私たちが求める人物像として、「道なき道を進める人」という言葉を掲げたことがあります。スタートアップという環境は、誰も歩いたことのない道を自ら切り拓き、前例のないことに挑戦する連続です。

 

自分たちの挑戦が、社会を少しずつ変えていくと信じて、広い視野とアンテナを持って挑戦できる方に、チームに加わっていただきたいと考えています。

 

採用では、バリューとの「カルチャーフィット」を特に重視しています。そのため、カルチャーフィットに特化した面接を実施したり、場合によっては候補者の方にリファレンスをお願いしたり、カジュアルな会食の機会を設けたりするなど、選考プロセスを多面的に設計しています。

 

こうして「一緒に働く仲間としてマッチするかどうか」を丁寧にすり合わせるようにしています。

 

私たちが大切にしているカルチャーフィットの基準はシンプルです。一つは「挑戦したい」という強い意志を持っていること。そしてもう一つは、チームプレイヤーとして協働できる姿勢があること。2つを兼ね備えた方であれば、スタートアップという環境で、大きく成長し、活躍していただけると確信しています。

 

スタートアップには、“事業を伸ばし続けなければならない”という宿命があります。ところが世の中には、人材には投資していても、組織そのものには十分な投資がされていない会社も少なくありません。

 

それは非常にもったいないことで、むしろ組織基盤への投資こそが、事業の持続的な成長を支える重要な要素だと考えています。だからこそ、私たちは「組織に投資することが当たり前である」という文化を社内に定着させ、業界へと広げていきたいと考えています。

 

また、スタートアップは「新たな産業をつくる存在」です。実現には、現在のメンバーだけでなく、他業種で培った知見や経験を持つ方々にどんどん参画いただく必要があります。

 

限られた分野の人材だけで成長を目指すのではなく、多様なバックグラウンドを持つ方々が集まることで、組織としての視野が広がり、より大きな価値を生み出せると信じています。今後はさらに多様な業界・業種からの人材が入ってこられるような組織を作っていきたいです。

 

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