前述の通り私は若干27歳で3代目の代表取締役社長になったのですが、これは事業承継を円滑にするために計画的に行ったものです。
私の祖父であり初代社長だった末松富三郎が死去したのは、父が18歳のときのことでした。父は苦労しながらもなんとか会社を継続させましたが、その時のことを教訓として「事業承継は早期に計画的に」と考えていたのです。
そのため私は大学卒業後すぐにバーテックへ入社し、各部署で経験を積んで2008年に代表取締役になりました。父はその際に代表取締役会長に就き、会社は2人が代表権をもって事業を進め、その体制を10年続けて、2018年父は会長職を退任しました。
その間も、日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)でファミリービジネスの強みやそれを生かした経営などについて学び、ビジネスにとってファミリーはリスクではなく良いリソースとして捉えて生かしていく考えを持つようになりました。
私は学生のころから会社でアルバイトをして親の背中を見ていたので抵抗感などはありませんでしたが、ファミリービジネスは事業承継の際に、“やらされ感”などを持ってしまう場合も少なからずあるようです。社長が持っている“やらされ感”などの雰囲気は社員にすぐに伝わるので早期の解決が必要でしょう。
事業承継を経験してきて感じるのは自分の世代だけではない、社内の各世代の人がどう考えてきたかを知り、理解すべきだということです。世代を超えて、誰がどういう思いで会社のこれまでの流れをつくってきたのかを知ることで、自分がここに立つ意味が分かり、感謝の心が芽生えてきます。
すると自然にどう次にアクションを起こすべきか、使命感や成すべき道がみえてきます。これが事業承継の原動力になると思います。
ファミリービジネスには「ビジネス(経営)」「ファミリー(家族)」「オーナーシップ(所有)」の3要素があり、これらを広い観点からみて課題を解決しながら事業承継を行います。
私はとくにファミリーのガバナンスや、ファミリーとしての徳を高めていけるかが大切なのではないかと考えています。ファミリービジネスは、ファミリーに亀裂が入れば経営にも影響しますし、オーナーシップ側である株の配当トラブルなどにもつながる可能性があります。そのため家族には家訓を設け、直接ビジネスには関わらなくても家族全員の人間力を高められるよう心がけています。
今後も4代目、5代目と会社が安定して継続できるよう、こうしたファミリービジネスのありかたについて常に勉強し、社員の物心両面の幸せと、ファミリービジネスとしての永続的な発展を目指していきたいと考えています。