社内副業とは?定義と制度導入のメリット・デメリット、事例を解説

更新:2022/06/15

作成:2022/06/10

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

社内副業とは?定義と制度導入のメリット・デメリット、事例を解説

近年、雇用の流動化(転職)に加えて、副業やフリーランスなど多様な雇用形態が広がっています。企業にとっては苦労して優秀な人材を採用しても、社内でのキャリア展望や成長機会を提供できないと、退職・転職や社外での副業実施などに社員が流出してしまう時代ともいえるでしょう。

 

流動化のなかで、一部の企業で導入が進んでいるのが「社内副業制度」です。記事では、社内副業の概要とメリット・デメリット、賃金や契約面の見直しの必要性、社内副業の導入事例を解説します。
 

<目次>

社内副業とは?

社内副業とは?定義と制度導入のメリット・デメリット、事例を解説

社内副業とは、自分の事業部・部署・チームなどに在籍したまま、別部署の業務に携わることです。

 

一般の副業(社外副業)の場合、自分の本業の仕事がない休日や夜などに、社外の企業と本人という2者間の合意に基づき、副業の仕事を行ないます。一方で、社内副業は、社内において本人・本業の上司・社内副業の上司の3者間で合意や調整のうえ、本業と副業の仕事を並行する形です。

社内副業のメリット

近年では、以下のメリットによって、社内副業に注目する企業が多くなりました。

 

能力開発の促進

社内副業を行なう最大のメリットは、別の事業部やチームの業務に関わることで、普段の仕事とは違ったジャンルのスキルや知識が身に付けられることです。

 

たとえば、開発職のメンバーが営業部門で副業をすれば、営業スキルや知見のほかに、新製品の開発に役立てられる気付きを得ることもあるでしょう。

 

たとえば、以下のようなものです。

  • 営業パーソンは、自分が開発した製品をどのように顧客提案しているのか?
  • お客様は、自分の開発した製品にどのような感想や印象を持っているのか?

 

マンネリ化の防止

新卒入社したメンバーが一通りの仕事を覚えて数年が経過したり、新鮮さや独創性のない仕事を何年もやり続けていたりすると、マンネリ化によってモチベーションが低下しやすくなります。

 

こうした場合に、社内副業で他部署の業務に携わると、モチベーション向上につながる刺激が得られやすくなるでしょう。また、社内副業を通じて新たな気付きを得ることで、元の仕事に対しても創意工夫の余地を見出すこともできるかもしれません。

離職防止

社内副業は、以下のような離職理由の解消にも役立つことがあります。

 

  • 自分の将来に不満や不安がある
  • 先輩社員に魅力を感じない
  • 成長実感が得られない
  • 達成感が得られなど

など

 

社内副業を導入すれば、確実に離職者が減るわけではありません。しかし、退職(転職)という選択肢になる前に、社内副業を通じて、異動によるキャリア開発といった可能性を示せれば一定の効果があるでしょう。

 

仕事の属人化防止

仕事の属人化とは「人に仕事がついている」状況のことです。たとえば、「この仕事は、Aさんしかできない」といった状態です。

 

社内副業を導入することで、副業先となる受け入れ部署と本業部署の両方で属人化の改善が進むきっかけが生まれます。まったく違うジャンルの部署から社内副業メンバーを受け入れるとなれば、マニュアル整備が進み、チーム内での助け合いなどもしやすくなるでしょう。

社内副業のデメリットやリスク

社内副業の制度設計や進め方によっては、社内副業の導入で以下の問題が生じることがありますので注意が必要です。

マネジメントの複雑化

社内副業を導入すると、社内副業を行なう本人と、本業部署・副業部署という両方の上司のマネジメントが複雑化します。また、上司からすると、本人が別な部署の仕事をしていると、スケジュールや仕事ぶりなどの把握や評価も難しくなるでしょう。

社内副業を導入するなら、部署の垣根をこえてスケジュールなどを管理できるツール人事評価制度の見直しや工夫も必要になります。

業務負荷の調整

たとえば、あるメンバーが、社内副業先のB部門で資料作成の仕事を任せられたと仮定します。資料作成する状況で、本業のA部門で想定外のトラブルなどが起きれば、B部門の資料作成をする時間がなくなり、結果として残業や過剰労働となってしまう可能性も出てくるでしょう。

こうした業務負荷の問題は、社内副業で起こりがちです。社内副業をする本人の業務負荷や残業の問題を解消するには、両方の上司との調整・相談や、他のチームメンバーがフォローできる体制づくりなどが必要になります。

賃金や契約に関する見直しは必要か?


通常の労働時間の何割かを社内副業に充てる場合、賃金体系を変える必要はありません。一方で、業務時間外に社内副業を行なう場合は、賃金計算の見直しや業務委託契約の締結などの各種手続きが必要になります。

社内副業から賃金面や労働時間の不満・問題が生じるリスクを防ぐためにも、一般的には労働時間内の何割かを他部署(社内副業先)での仕事に充てる、具体的には週○時間を目安にする、という形が一般的です。

社内副業の導入事例

近年では、社内副業に注目する企業も多くなっています。本章では企業における社内副業の導入事例を紹介します。

 

Google

Googleで実施しているのは、「20%ルール」と呼ばれる制度です。

 

一般の社内副業が副業先部署の仕事を手伝う・加わるスタンスであるのに対して、Googleの20%ルールは、勤務時間の20%を以下のように使えるというものです。

 

  • 自社で募集したプロジェクトに参加する
  • 自分で立ち上げたプロジェクトで仲間を募集する

 

社内副業という概念に入らないものかもしれませんが、たとえば、世界中で使われているメールサービス「Gmail」なども20%ルールから生まれたサービスです。近年では、20%ルールのなかで、高齢者のデジタル化を進めるプロジェクトも活性化するようになっています。

 

Googleでは、社内で行なわれている柔軟な働き方に合わせて、同じプロジェクトのメンバーから評価や改善点をもらえるピアフィードバックという行動評価制度も導入しています。

 

KDDI

就業時間の約2割を目安に、担当部署以外の業務ができる制度を導入しています。KDDIの社内副業は、社員の専門性や知識の習得の加速のほかに、組織の壁を超えた人財シナジー、イノベーション創出機会の増加を目的としています。

 

KDDIグループでは「通信とライフデザインの融合」の推進を掲げるなかで、下記のような多様なサービスを提供しています。

 

  • 決済
  • 物販
  • エネルギー
  • 金融サービス

 

KDDIの社内副業は、こうした多様な分野、全86業務からの募集が行なわれています。

 

社内副業の対象者は、正社員11,000人です。テレワークを活用することで勤務地問わず応募できるシステムになっており、本人・所属部署・社内副業先の部署の3者の合意によって、最大6ヵ月間の社内副業が可能です。

 

副業先の仕事も人事評価の対象となり、異動ではない形で自分の興味あるプロジェクトに関わったり、社内でのキャリア開発を考えたりする機会になっています。

 

サイバーエージェント

サイバーエージェントでは、2019年10月より技術者向けの社内副業制度「Cycle」を導入しています。

 

Cycleは、クリエイターやエンジニアなどの技術職が、通常業務以外の仕事を就業時間外で請け負い、報酬も得られるグループ内副業制度です。いままで社外の技術者などに外注していた仕事を自社のグループ社員が請け負うことで、グループ内の業務が循環できるイメージから「Cycle」という名称になりました。

 

Cycleでは、いまの本業を続けながらスキル開発ができることのほかに、グループ内の社員が仕事を請け負うことで、成果物の質の向上が期待できる点も注目されています。社内報を見て自分で副業する案件やタイミングも選べることから、柔軟性の高い社内副業の仕組みとしても注目を集めています。

 

業務時間外に有償で社内副業をする、という点がかなりユニークな制度です。

 

社内副業以外の人材育成手法

組織視点で見た社内副業の導入目的は、収入機会の提供ではなく、能力開発やキャリア機会、エンゲージメント向上、離職防止などになります。これらの目的を実現するには、社内副業ではなく、以下のような手法で代替可能な部分もあるでしょう。

ジョブローテーションの活性化

ジョブローテーションは、社員の能力開発を目的とした人事異動や担当業務の変更です。たとえば、いままで人事異動の主目的が欠員補充や部署強化だった場合、能力開発を目的とする戦略的な異動を増やすことでジョブローテーションの活性化が可能になります。

ジョブローテーションの活性化と併せて、社員からも異動要望を出すようなキャリア制度やキャリア面談を取り入れると効果的でしょう。

社内留学

社内留学は、社内副業と混同されやすい制度です。社内副業の場合は、先述のとおり本業の部署に籍を置きながら、本業と他部署での副業をします。一方で社内留学は、他部署への「留学」として、本業を離れて、一時的に別の仕事に専念するというものです。

社内留学のメリットは、社内副業と比べてマネジメントがある程度シンプルになることです。副業をする本人や管理する上司のマネジメント負担が問題になる場合は、社内副業ではなく社内留学を導入してもよいでしょう。

1on1

仕事のマンネリ化や将来の不安で下がったモチベーションの問題、キャリア開発などの解消には、社内副業ではなく1on1ミーティングの導入も一案です。1on1は上司と部下の2人で、1回30分~60分のミーティングを毎週・隔週などの間隔で実施するものです。

定期的な1on1でメンバーの話に耳を傾け、将来への不安や不満を解消すれば、離職防止や社内でのキャリア展望などが開ける部分もあるでしょう。

まとめ

社内副業とは、自分の事業部・部署・チームに在籍したまま、社内の別部署で新しい業務に携わることです。社内副業の導入には、以下のようなメリットがあります。

 

  • 能力開発の促進
  • マンネリ化の防止
  • 離職防止
  • 仕事の属人化防止

 

ただし、社内副業には、マネジメントの複雑化や業務負荷の調整が難しい部分もあります。メンバーの能力開発のための施策を検討中なら、社内副業ではなく、ジョブローテーションの活性化・社内留学・1on1ミーティングの導入・実施をしてもよいでしょう。

 

興味があれば、記事で紹介した導入企業の事例も参考に、導入する価値があるが検討してみてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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