人事異動や昇格・昇進等に伴って、リーダーが一番初めにぶつかる壁が、どうやってメンバーと信頼関係をつくり、チームビルディングするかということです。
記事では、チームビルディングの基礎知識や具体的な取り組み方、実践のポイントなどを解説します。組織のパフォーマンス向上、目標達成するうえで、ぜひ参考にしてください。
<目次>
- チームビルディングとは?
- チームビルディングの目的
- チームビルディングに取り組むメリット
- チームビルディングの5段階を示す“タックマンモデル”とは?
- チームビルディングを成功させるための実践ポイント
- チームビルディングを成功させて、企業のパフォーマンスを向上させましょう!
チームビルディングとは?
チームビルディングとは、チーム内に信頼関係をつくり、チームメンバーひとりひとりがスキルや経験を最大限に発揮したうえで相乗効果を発揮し、目標を達成できるチームを生み出すための取り組みです。
リーダーや管理職がチームビルディングの理論や実践のポイントを知り、組織力の強化に取り組むことで、チームのパフォーマンス最大化されます。
チームビルディングの目的
- チームの目標やゴールの達成
- チームの結束力強化
- チームビジョンの浸透
チームビルディングの目的は、おもに次の3つです。
チームの目標やゴールの達成
チームビルディングの最大目的は、チーム目標やゴールの達成です。チームとは、何らかの目標を共同で達成するための集まりです。
たとえば、メンバー同士の価値観や考えを把握することは、個々のパフォーマンスを最大化する最適な人材配置につながります。また、チームの目標やメンバーの役割、プロセスなどの可視化により、連携や役割分担がしやすくなります。
そして、信頼関係のうえにコミュニケーションが活性化することで、相乗効果やイノベーションも生まれやすくなるでしょう。
チームの結束力強化
2つ目の目的は、チームの結束力を強めることです。例えば、ゲームというリラックスできる場なども使いながら、相互理解を深めることは、関係構築に有効です。
お互いの人間的な側面を理解することで、チームの結束力が強くなり、業務でも活かされていきます。
チームビジョンの浸透
3つ目の目的は、チームビジョンの浸透です。組織ゴールの共有と浸透は組織の基本的な構成要件のひとつです。
組織ゴールや目標、達成計画を作成・決定するプロセスに関わってもらうことに加えて、ゴールを「達成したらどんな気持ちになるのか」「自分にとってどんなメリットがあるか」など、ゴールの達成ビジョンを具体的に描きます。
ビジョンに加えて、チームのミッションなども作成し、繰り返し共通言語として確認し合うことで、チームのミッションビジョンの浸透が定着していきます。チームの方向性が定まり一体感が高まることで、目標達成への連携も行われやすくなるでしょう。
チームビルディングに取り組むメリット
- チームの生産性向上
- メンバーのモチベーション向上
- チーム内コミュニケーションの活性化
- イノベーションが生まれやすい風土醸成
チームビルディングに取り組むことで、次のようなメリットが得られます。目的と重複する点も多いですので、簡単に確認しておきましょう。
チームの生産性向上
チームビルディングにより、お互いの違いや多様性を認め合うことで、メンバーの信頼関係や心理的安全性が確保されます。お互いに対抗したり、けん制したりするのではなく、活かし合う関係性が作られることで、チームの生産性が上がります。
メンバーのモチベーション向上
信頼関係ある仲間と共通の価値あるゴールを目指すことは、結束感やメンバーの「チームに貢献したい」というモチベーションを高めます。
メンバーのモチベーション向上は、個人とチームの生産性を高め、さらなるモチベーション向上につながるという好循環が生まれます。
チーム内コミュニケーションの活性化
信頼関係と共通ゴールの存在は、チーム内のコミュニケーションを活性化させます。
コミュニケーションの活性化は、メンバー間の相互理解を深め、職場の雰囲気をより明るく建設的なものにしますし、仕事での連携や助け合い、相乗効果の創出にも寄与します。
イノベーションが生まれやすい風土醸成
心理的安全性が確保された中で、異なる価値観を持ったメンバーがコミュニケーションをとると、相乗効果が生まれやすくなります。
異なる価値観を持ったメンバーの発言に刺激されたり、異なる視点を掛け合わせたりすることが、イノベーションにつながります。
チームビルディングの5段階を示す“タックマンモデル”とは?
1.形成期 | チームが作られたばかりの段階 |
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2.混乱期 | メンバー同士での対立が起こりやすい段階 |
3.統一期 | 混乱期を乗り越え、統一感が高まった段階 |
4.機能期 | チームが高いパフォーマンスを出せるようになった段階 |
5.散会期 | プロジェクトを終え、チームが解散する段階 |
タックマンモデルとは、心理学者のブルース・W・タックマンが提唱した考え方です。チームビルディングのプロセスを、5段階で表したもので、チームビルディングを考える上で、代表的な理論です。
1.形成期
形成期はチームが作られたばかりの段階です。未知のメンバー同士がお互い探りあっている状態です。相互の理解も不十分で、チームとしての目標も定まっていません。
メンバー間の相互理解を深めたり、共通目標を浸透させたりしながら目標達成を妨げる要因や課題を見つけていくことが重要です。
2.混乱期
混乱期はメンバー同士で対立が起こりやすい段階です。メンバーが個性を発揮して実務を進行する一方で、コミュニケーションが活性化し異なる意見や価値観がぶつかり合うことで対立が生じます。まだビジョンや目標の設定や解釈、進行プロセスの具体論に関してぶつかり合ったりするでしょう。
混乱期を避けるのではなく、個人としての信頼関係は維持したうえで、意見のぶつかり合い、ディスカッションを歓迎して、価値観やチームとしての方向性をすり合わせることがポイントです。衝突を恐れず意見を主張し、議論を重ねることで、混乱期を乗り越えることができます。
3.統一期
統一期は、混乱期を乗り越えてチームとしての方向性が定まった状態です。メンバー一人ひとりがチームの目標や自身の役割を理解しています。メンバーのスキルや能力を活かすための役割分担や目標設定が重要です。
4.機能期
機能期は、メンバーそれぞれがスキルや能力を発揮し、チームとして高いパフォーマンスを出している段階です。継続して高いパフォーマンスが発揮できるように、リーダーによるサポートやチームの一体感を高めるための取り組みが重要です。機能期を作り上げることは、チームビルディングのゴールといえます。
5. 散会期
散会期はプロジェクトが終了し、チームとしての活動を終える段階です。チームの活動期間は様々ですが、プロジェクトの終了や組織の改編、人事異動などが発生することでチームは“解散”を迎えます。
散会期には目標達成の成果を評価し、チームビルディングの効果を検証するとよいでしょう。業務上の目標達成だけでなく、メンバーが達成感を得ていたり、チームの解散を惜しんでいたりすれば、良いチームが形成されていたといえるでしょう。
ビジネスの現場では、部課などが同じ形で継続したとしても、そこに新しい人が合流する、誰かが異動や退職で抜けるということはよくあります。じつは、人の入れ替わりが生じる時点では、チームは一度“解散”します。そこから、改めてチームビルディングに取り組むことが必要です。
チームビルディングを成功させるための実践ポイント
□ | チームのミッション、ビジョンの明確化と目標設定 |
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□ | メンバーの相互理解 |
□ | 役割や責任の明確化、個人目標の設定 |
□ | メンバーの強み活用 |
チームビルディングを成功させるための実践ポイントを解説します。
チームのミッション、ビジョンの明確化
チームとしての方向性を定めるため、まずはチームのミッション、ビジョン、そして目標を明確にして共有することが大切です。
ミッションやビジョンが明確になっていなければチームは方向性を見失います。達成すべきゴールや判断基準が不明瞭な状態では、メンバー同士の連携は難くなります。
なお、ビジネスにおけるチームは、“目標”だけは当初から設定されていることが多かったりしますが、チームビルディングを実施する際には、ミッションやビジョン、目標の意味づけをきちんとすることが大切です。
“目標”だけある状態でスタートして、チームがうまく機能していないと感じるときは、根本に戻って、ビジョンの明確化から取り組むこともおススメです。
メンバー同士の相互理解
チームとして機能するためにはコミュニケーションの活性化が必要ですが、そのためにはメンバー間の相互理解が大切です。
相互理解には、ビジネス実務における能力や役割だけでなく、プライベートを含めた人柄にかかわる側面が含まれます。
業務遂行にかかわる事柄だけでなく、仕事への価値観、プライベートの側面を知ることで、 “個人”として尊重し合える信頼関係の基盤が出来上がります。
役割や責任の明確化
役割や業務領域が曖昧な状態ではメンバーの主体性が発揮されにくくなります。
マネジメントする側は、個々のメンバーが最大限に能力を発揮でき、効率的に仕事が進められるように配置や役割を考えることも大切です。役割や責任、目標を明確にするからこそ、ここが自立して主体的に判断しやすくなります。
役割や責任を考える際には、各メンバーが能動的に取り組める個人目標の設定も大切です。一人ひとりが個人目標を持つことで、より責任感を持って主体的に行動できるようになるでしょう。
但し、役割や責任を明確化することで、小さなチームが縦割り組織のようになってしまっては本末転倒です。チームとしてのビジョン、共通目標などによる求心力と相互支援が失われないように注意しましょう。
メンバーの強み活用
チームビルディングを効果的に行うためには、メンバーの強みを生かすことが大切です。強みを生かすことで人はやりがいを感じますし、生産性も向上するでしょう。
まずチームを編成する時点で、弱みを補完し合い、強みを発揮し合えるようなメンバーを選定することが大切です。また、役割や責任を明確化する段階でもチームメンバーの強みを生かせる分担を検討しましょう。
さらに、役割や責任を越えた相互支援を生み出す上では、再度、タスク分担などを通じて、お互いの強みを生かして弱みを補い合う関係を生み出すことが大切です。
チームビルディングを成功させて、企業のパフォーマンスを向上させましょう!
チームビルディングの取り組みを実践することで、採用や教育研修に投資することなく現状の人的資源を最大活用することが可能になります。
チームビルディングにおける基本的な理論がタックマンの5段階モデルです。ポイントは混乱期に正面から向き合ってしっかりと乗り越えることです。混乱期から逃げずに取り組むことで、統一期・機能期へとスムーズに入ることができるでしょう。
チームビルディングに取り組み、チームのパフォーマンス向上が機能し始めると、生産性向上の効果は非常に大きなものになります。メンバーの成長や達成感、チームの一体感や結束の経験は組織やチームを大きく進化させ、それはチーム解散後も続きます。
本記事が、組織内のチームビルディングに取り組む参考になれば幸いです。