活躍を期待して役職を与えた社員が、思っていたような成果を上げられないときもあるでしょう。
このような場合に降格人事を行うと、人事の公平性や納得性を保つことができる一方で、降格させた社員はもちろん、周囲の社員のモチベーション低下が懸念されます。
こうしたリスクを避けるためには、降格を適切な方法で伝えるとともに、しっかりとケアを行うことが重要です。
今回は降格人事の理由の伝え方と、降格者のモチベーション低下を防ぐケアについてご紹介します。
<目次>
降格人事とは
降格人事は「懲戒処分としての降格人事」と「人事異動としての降格人事(役職もしくは職位の降格)」の2種類に分けられます。
懲戒処分としての降格人事の場合、本人に弁解の機会を与えた上で就業規則に従って降格を行います。
一方、人事異動としての降格人事の場合、就業規則に根拠規定がなくとも、会社側の判断で社員を降格させることができます。ただし、降格前に該当社員に指導を行い、改善の機会を与えましょう。
また、降格させる明確な理由があっても、人事権の濫用は認められません。
降格を伝えるときは書面で
本人に対する降格人事の通知は、必ず文書で行いましょう。口頭やメールでは、重要性が十分に伝わらない可能性が考えられるためです。文書によって降格者本人に降格の重みを理解させるようにします。
また、「あなたは降格です」と口頭で伝えられた場合、多くの社員は動揺します。その後、降格の理由や今後の期待などを伝えても、内容についてよく理解できないかもしれません。
しかし、文書による通知であれば、一時的なショックは受けたとしても、後で冷静に見直すことができます。
降格通知には決まったフォーマットはありませんが、降格後の役職もしくは職位だけでなく、降格させる理由を明記し、なぜ降格したのかを本人が納得できるように伝えましょう。
モチベーションの低下を防ぐためのメンタルケア
降格させられた社員の多くはショックを受けます。社員に降格後もモチベーションを維持してもらうためには、メンタルケアを怠ってはいけません。メンタルケアのポイントは以下の2つです。
【ポイント1】今までの功績をしっかりと認める
書面で降格を伝えてから時間を置けば、本人も降格の事実を真正面から受け止められるでしょう。
書面による降格の通知後、しばらく時間を置いて社員との面談の機会を設け、降格の決定は社員の会社に対する貢献をすべて否定するものではないことを伝えます。
これまでに降格者が行ってきた仕事の成果や実績について、会社側はしっかりと評価していることを示しましょう。
「自分は不当な評価を受けている」と捉えられてしまうと、今後のモチベーションを大きく下げる原因になります。いつでも再チャレンジできる環境が社員のやる気を引き出すのです。
【ポイント2】会社が何を期待しているのかについて伝える
降格後、自分に自信が持てなくなる社員も少なくありません。そのような状況を防ぐためにも、会社が何を望み、どんな期待をかけているかを伝えてください。
懲戒処分による降格の場合は、何がいけなかったのかを理解させ、反省を促し、改善するよう働きかけましょう。
併せて復帰の基準などについても示すことによって、降格した社員も今後の展望を具体的にイメージできるようになります。
おわりに
昇格とは異なり、社員に降格の理由を伝えることは人事としても気が重いものですが、降格の決定を本人に納得してもらい、奮起を期待したいところです。
降格人事の通知は書面で行い、その後しっかりケアを行うなどして、本人のモチベーションが低下したり、周囲にマイナスの影響が及んだりしないように留意しましょう。