ペップトーク(peptalk)とは、自分自身や他者に対するモチベーションアップや、激励のために使われる短いメッセージのことをいいます。「pep」には元気、活力といった意味があり、ペップトークは自分や相手のやる気、集中力を引き出すためのコミュニケーションスキルとして活用できるものです。
本記事ではペップトークの概要をはじめ、ペップトークを設定するときに大切な5つのルール、ペップトークの具体例を解説します。
<目次>
ペップトークとは?

You Can Do it Encouragement Motivation Progress
ペップトークとは激励のための短いメッセージのことで、もともとはスポーツシーンなどで使われていたものです。試合前に、監督が選手を励ますかけ声、また、選手が自身を鼓舞したり集中力を高めたりするためのもので、ポジティブな内容を短くわかりやすい言葉で伝えます。
プロスポーツというシビアに結果を追求する世界で磨かれたコーチングやメンタルトレーニングなどのさまざまなノウハウやテクニックはビジネス場面に持ち込まれることも多く、ペップトークもその一つといえます。
ペップトークの活用は、ビジネスにおけるセルフリーダーシップやセルフマネジメント、組織のモチベーションUPといった効果が期待できます。
ビジネスにおいても、
- 大切なプレゼンテーションや商談の前
- 営業会議やキックオフ
- 一日の始まり
- 気が重い打ち合わせや面談の前
など、集中力やモチベーションを高めたい場面は多々あります。そんなときに有効なのが短時間で効果を発揮するペップトークです。
ペップトークを設定するときに大切な5つのルール
ペップトークは単に勢いがある、短いトークというわけではありません。ペップトークを作る際には以下5つのルールを意識すると効果的なペップトークになります。
1. ポジティブな言葉を使う
「~しないように」といった否定形の表現ではなく、「~しよう」というようなポジティブな肯定形の言葉を選んで伝えるようにしましょう。
人の脳は否定形を理解できないといわれており、「~しないように」というメッセージを伝えるとネガティブなイメージのまま伝わってしまいます。一方、肯定形の言葉は伝わりやすいとともに、相手を前向きな気持ちにさせることができます。
つまり、プレゼンテーションの前に「緊張しない!緊張しない!緊張しない!」というペップトークを使うと、逆に「緊張」を意識してしまうことになります。それよりも「楽しむ!届ける!ゆっくりと!」といったポジティブな言葉を使うことがおススメです。
2. 短い言葉を使う
ペップトークは一瞬のコミュニケーションで、感情に影響を与えることが目的です。したがって、長々とした説明ではなく、短い言葉で伝えることが大切です。緊張や不安を抱えている相手に長い言葉を伝えても内容が伝わりづらく、伝え方によっては余計に不安を煽ってしまう可能性があります。
上述したような「楽しむ!届ける!ゆっくりと!」といった短い動詞や副詞、単語などがおススメですし、語感や言葉のリズムが良いものがよいでしょう。
3. わかりやすい言葉を使う
ペップトークは、相手に伝わることで初めて効果が発揮されます。したがって、誰もがすぐ理解できるわかりやすい言葉を伝えるようにしましょう。短い言葉で多くを伝えようとすると難しくなるので、普段使っているような言葉でシンプルに使えるのがコツです。
なお、組織内や自分に対してであれば、組織内の独自言語や自分にとってイメージしやすい造語などを使うことも効果的です。特に組織内における独自言語や共通言語は、仲間意識を高める効果もあります。
4. 一番言ってほしい言葉を使う
自分が言いたいことではなく、相手が言ってほしい言葉を伝えましょう。やる気のスイッチや求める言葉は人によって違います。
例えば、プレゼンテーションや大事な商談において、少しプレッシャーを感じることでパフォーマンスが上がるタイプもいますし、逆にリラックスすることで良いパフォーマンスが出せるタイプもいます。
前者であれば「ここ一番!集中!」「It’s Showtime!頼んだ!」といった言葉でモチベーションや集中力が高まるかもしれませんが、後者であれば「楽しむ!届ける!ゆっくりと!」といったペップトークがいいかもしれません。
したがって、自分自身、また相手の性格やタイプを知って、言葉を選ぶ必要がありますし、言葉をかける前に自分や相手の状況や感情をしっかりと理解することも大切です。同じ言葉でも言い方によって伝わり方が変わってしまうので、きちんと相手に寄り添うことも大事です。
5. 心に火をつける本気の関わり
ペップトークは「相手に本気で成功して欲しい」「絶対に一緒に成功するんだ」といった気持ちがあることが前提です。自分の気持ちがないのに言葉だけのテクニックで相手を鼓舞することはできません。
また、ペップトークの効果は信頼関係が土台になります。対自分でもメンバーなどにでも、日頃から信頼関係を構築してこそ、ペップトークは効果的なものとなります。普段からしっかりと信頼関係を築いておくことが重要です。
ビジネスにおけるペップトークの例
ペップトークは、ビジネスのさまざまなシーンで活用することができます。本項では、ペップトークの具体的な例をシチュエーションごとにご紹介します。
セルフリーダーシップ
セルフリーダーシップを実践するうえでは、モチベーションがとても重要になります。以下は、自分のモチベーションを維持するために有効なペップトークの一例です。
- 大丈夫!自分はできる!
- とりあえずやってみよう
- 成長のチャンス!
- 達成するにはどうしたら良いだろう?
- 一本集中!
- 絶対にうまくいく
- 必ずできる!
- ありがたい!成功のチャンス!
- 楽しもう!
メンバー指導・教育のシーン
メンバー指導・教育シーンでは、相手のモチベーションを上げたり、やる気にさせたりすることが効果的です。以下は、相手をやる気にさせるペップトークの一例です。
- 成長のチャンス!
- 一緒に頑張ろう!
- 応援しているよ
- 〇〇さんならできる!
- 〇〇してくれてありがとう!
- 〇〇(相手の強み)をいかしていこう!
- 〇〇するにはどうしたら良いと思う?
チームビルディングのシーン
チームビルディングの目的は、足りないスキルを補うことで目標を達成させることです。したがって、「私」ではなく「私たち」という認識を植え付け、全員が同じ方向を向くよう導きます。以下は、連帯感を意識させるペップトークの一例です。
- 私たちは最高のチームだ
- 大丈夫、私たちならできる
- 一緒に頑張ろう!
- 〇〇さんの強みを生かすにはどうしたらいいだろう?
- 私たちの強みは何だろう?
- 私たちでやろう!
- ゴールは目の前だ!
- どうすれば私たちで達成できる?
- 私たちは前進している!
ペップトークを使うときに大事な信頼関係の土台
ペップトークは信頼関係が土台となり、「何を」言うかではなく「誰が」言うかが重要になります。効果的な言葉も、信頼していない相手から言われたら素直に受け取ることができません。
自分自身に対してペップトークを使うときも同様です。自己肯定感や自己受容がなければ、ペップトークは表面的なものだけになってしまい、効果は上がらないでしょう。
ペップトークはあくまでモチベーションアップのノウハウであり、信頼関係がある相手から言われることで初めて効果が得られるのです。
メンバーと信頼関係を築く方法はいくつかありますが、手軽に取り入れられる方法としては以下が挙げられます。
<相手の信頼を得る行為>
- 1.相手を理解する
- 2.小さなことを気遣う
- 3.約束を守る
- 4.期待を明確にする
- 5.誠実さを示す
- 6.心から謝る
上記のなかでも、相手を理解する、小さなことを気遣う、約束を守るといったことは当たり前のことですが、仕事における人間関係をつくるうえで非常に大切です。
特に約束を守ることは、自分との信頼関係をつくるうえでも有効です。どんなに小さなことでも良いので、「約束して、約束を守る」という行動を大切にしていくとよいでしょう。
また、「背中を見せる」というのも仕事における人間関係をつくるうえでは有効です。“背中を見せる”“背中で教える”というと古臭いように思えますが、例えば、成功や目標達成に本気で取り組む気概、失敗を恐れずに挑戦する姿勢、チームの成功を優先する言動などはリーダーなどが実践してこそ本気が伝わるものです。
自らが実践していないのに言葉だけで相手を鼓舞しようとしても到底伝わりませんし、たとえ不器用だとしても、普段から実践する背中を見せることで伝わるものもあるでしょう。
また、コミュニケーションにおけるテクニックではありますが、普段からのコミュニケーションで以下を意識すると、信頼関係をつくりやすくなりますし、相手の気持ちや感情をとらえて気遣うスキルも上達するかもしれません。
<ミラーリング>
相手の動作を鏡に映したように真似るという方法です。声の大きさや話すスピード、話し方、表情、姿勢、手振りなどを、相手よりも少し遅れたタイミングで真似ることで、相手に親近感を与え、信頼関係を築きやすくなります。
<バックトラッキング>
バックトラッキングは「オウム返し」とも呼ばれる方法で、相手の発言のとおり繰り返すというテクニックです。例えば、相手が「ショックだった」といった場合は「今のはショックだったね」と返します。こうすることで相手は「共感してもらえた」「わかってもらえた」と感じ、信頼関係を築きやすくなります。
<キャリブレーション>
相手の表情や仕草、声のトーンなど、言葉以外の情報で心理状態を理解する方法です。例えば、ミスをして落ち込んでいるメンバーが「次は頑張ります」と言っているとしても、声が小さかったり、表情が暗かったりすれば、まだ前向きな気持ちになれていないことが伺えます。
まとめ
ペップトークは自分や相手、チームを激励する短いメッセージです。ペップトークをうまく活用することで、自分自身を奮い立たせることはもちろん、メンバーのやる気や自己肯定感を引き出したり、チームをまとめたりすることができます。
<効果的なペップトークを作る5つのルール>
- 1.ポジティブな言葉を使う
- 2.短い言葉を使う
- 3.わかりやすい言葉を使う
- 4.一番言ってほしい言葉を使う
- 5.心に火をつける本気の関わり
ただし、ペップトークはあくまでテクニックであり、信頼関係が土台になります。ある意味では、「何を」言うかよりも「誰が」言うかが重要です。日頃から自分や相手との信頼関係構築をきちんと築くことを心がけましょう。