組織が分業体制を導入するメリットと注意点、悪影響を防ぐ方法とは?

更新:2023/01/24

作成:2022/08/15

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

組織が分業体制を導入するメリットと注意点、悪影響を防ぐ方法とは?

ビジネスにおいては、昔から製造、開発、販売(営業)……といった機能別の分業が取り入れられてきました。

 

最近では、クラウドサービスが浸透するなかで、ベストセラー「THE MODEL」が提唱するような形で販売(営業)活動を、マーケティング、インサイドセールス(IS)、フィールドセールス(FS)、カスタマーサクセス(CS)といった形で分業させる組織も増えています。

 

記事では、まず分業という概念を一般的な視点から概要やメリット・デメリットを紹介します。後半では「THE MODEL」の考え方に基づく分業体制の構築例を解説します。

<目次>

分業とは?

ビジネスにおける役割のイメージ

分業は、個別的分業と社会的分業という2種類に分けられます。記事では、個別的分業を扱います。

 

個別的分業とは、生産活動や販売活動の各工程を分割して、異なる人に工程を分担させることです。分業に関する理論の提唱者として有名なのがアダム・スミスです。

 

分業は、製造業を中心に広がってきた開発・設計、製造、物流、営業、メンテナンス、事務といった分業体制がイメージしやすいですし、定着しています。そして、最近では、SaaS企業を中心に書籍「THE MODEL」で提唱された営業活動の分業体制を導入する企業も増えています。

分業のメリット

組織に分業体制を導入することで、以下の効果やメリットが期待できます。

 

業務効率や生産性向上のための発明促進

分業体制で働く人は、自分の担当業務や専門分野を掘り下げていく一種のスペシャリストになります。

 

自分の担当範囲を熟知しているということは、たとえば「作業Aのところで特にミスが起こりやすい」などの課題にも気付きやすいことを意味します。また、担当する範囲がある程度限定されるからこそ、業務の効率化や生産性向上に向けて、より良い解決策を模索・発明することも容易になります。

 

 

スキル習熟度の早期向上

たとえば、分業ではないチームに入った新人は、業務の全体像や流れをつかんだうえで、A作業・B作業・C作業……と、さまざまな仕事を覚えなければなりません。仕事を覚える過程で、流れや各作業の理解ができないうちはミスも多発しますし、全体を覚えるまではかなりの時間がかかるでしょう。

 

しかし、分業体制の場合、新人は自分の担当作業を繰り返し行なうことで、早く仕事を覚えられます。新入社員に早く一人前になってもらううえでも、分業体制はメリットが大きい仕組みとなります。

 

 

適材適所の人員配置

分業体制を導入すれば、以下のように各メンバーの適性やスキル、行動特性に合わせた適材適所の人材配置も実施しやすくなります。

  • Aさんは手先が器用 → 組立担当
  • Bさんは目が良く集中力が高い → 検品担当
  • Cさんは説明がうまい → 営業担当

 

適材適所には、各自が自分の得意分野を活かすことで生産性が向上したり、高いモチベーションで仕事をすることで主体性やエンゲージメント向上につながったりする利点があります。

分業のデメリットと注意点

分業制度には、場合によってデメリットになる特徴、注意すべきポイントがあります。

 

 

機能間での対立や分断

分業制度の組織では、各メンバーは自分のいわゆる“持ち場”、担当業務のなかで業務効率化や生産性を向上させようとします。

 

ゆえに、たとえば、A作業の担当チームが、自分たちの作業効率化を目指し独断で手順を変えた場合、次のB作業をするチームに迷惑がかることもあるでしょう。また、C作業を効率化することが必ずしも全体の効率化につながらないことも有り得ます。

 

分業は「部分最適」を生みやすく、機能間の対立や分断が生まれやすくなる側面があります。また、部分最適以外にも「機能と機能の間」にどちらのチームも拾わないボール、“この問題は自分のチームの担当ではない”と考える課題が生じて、「全体最適」を阻害するリスクもあります。

 

 

モチベーションやエンゲージメント低下

先述のとおり、分業体制で適材適所の配置が行なえていて、各メンバーが自らの目標達成に向けて前向きに業務に取り組めているなら、特に大きな問題はありません。

 

しかし、いろいろな仕事を幅広く覚えたいメンバーの場合、分業体制は、飽きる・おもしろくないなどの理由からモチベーションやエンゲージメント低下につながる仕組みになります。

 

次に記載する「全体が見えない」問題も、最終成果や自分の仕事が生み出している価値を感じにくくなり、モチベーションやエンゲージメント低下につながる側面があります。

 

たとえば、分かりやすく書けば、食品メーカーで生産と販売を分業することで、「工場で生産を担っているメンバー」には、「自分たちが作ったモノを食べて喜ぶ顧客の声」が届きにくくなるという構造が生まれます。

 

 

全体像把握の難易度UP

分業体制においては、それぞれのメンバーは、自分の担当業務におけるスペシャリストを目指すことになります。

 

その結果として、自分の隣で作業するメンバーがどのような仕事をしているのか、また、自分の担当業務はプロジェクト全体のなかでどういう位置づけなのか知らないことも珍しくありません。

 

分業体制がいき過ぎると、他メンバーの仕事に関心を持たない、全体像を把握しないまま仕事をする、また、全体像を把握している人がごく少数になるといったことが生じます。

 

こうなると、組織全体の幹部、複数機能をマネジメントするジェネラリストの育成が難しくなる弊害も生じてきます。

分業体制の構築例

プロセス・フローチャートのイメージ

従来までは、前述のように、役割が明確に異なる「職種」による分業が一般的でした。一方で近年では、前述のとおり、クラウドサービスの提供企業を中心にSalesforce社の仕組みを参考にした「THE MODEL」に基づく「販売(営業)」機能の分業を取り入れる企業が増えています。

 

THE MODELによる分業の特徴は、「販売(営業)」機能を細かく分業していくことで、成果の再現性を向上させる仕組みです。本章では、THE MODELにおける営業活動の分業化を例に、それぞれの役割と各ステップのつながりなどを解説しましょう。

 

 

マーケティング

見込み顧客(リード)の獲得と啓もうを担う部門です。それぞれリードジェネレーションとリードナーチャリングとも呼びます。マーケティングの具体的な仕事は、以下のような手法を使って自社サービスを知ってもらい、顧客の興味を惹きつけていくことです。

  • 広告やメールマガジンの配信
  • オウンドメディアの構築とコンテンツマーケティング
  • SNS運用
  • イベントへの参加
  • ウェビナーやセミナーの開催 など

 

マーケティングは、販売プロセスのなかで、最も幅広く多くの人を相手にする役割です。マーケティングの効果性を高めるには、自社が求める顧客のペルソナ像を明確化したうえで、ホームページのPV数やメルマガ読者数などの具体的目標を掲げて活動する必要があります。一般的には、獲得した有効リード数を一次的な成果指標にすることが多いでしょう。

 

 

インサイドセールス(IS)

インサイドセールスは、マーケティング部門が獲得した見込み顧客と接点を持ち、フィールドセールス(営業)につなげる役割です。

 

インサイドセールスの主な対象は、新着リード、また、見込み顧客のなかでも特に熱量の高いと考えられるホットリードになります。ホットリードに対して電話やメールでコミュニケーションを図り、購買意欲を高めていきます。

 

インサイドセールスでは、創出した案件数や額を一次的な成果指標にすることが一般的です。組織が大きく成長した場合、おもに中堅・中小企業の顧客の問い合わせに対応するSDR、大手企業や特定顧客の開拓を担うBDRのように、インサイドセールス内でさらに分業していくケースも多くなります。

 

 

フィールドセールス(FS)

フィールドセールスとは、いわゆる営業部門のことです。THE MODELでは、5つのフェーズに当てはめて顧客の状態を管理していきます。

  • フェーズ1:リード以上商談未満
  • フェーズ2:ビジネス課題の認識
  • フェーズ3:評価と選定
  • フェーズ4:最終交渉と意思決定
  • フェーズ5:稟議決定プロセス

 

営業の役割・目標は、商談を通して購入するうえでの課題や不安を解除し、フェーズを次に進め、契約につなげることです。一般的な成果指標は、受注額や受注件数になります。

 

 

カスタマーサクセス(CS)

企業が成長していくには、商品をただ売って目標を達成するだけでなく、売上アップの施策が欠かせません。特にクラウドサービスの場合には、以下の施策が必要となります。

①サービスを活用してもらうことによる継続率の向上(解約率:チャーンレートの低減)、LTVの向上

②アップルセルやクロスセルの取り組み
・アップセル:上位商品などへの切り替え
・クロスセル:オプションや別商材の購入、また同じ顧客の別部門での導入

 

カスタマーサクセス部門によるサポートが顧客満足度を高め、そして、継続契約や客単価の向上などにつながります。カスタマーサクセス部門の成果指標は、継続率や既存顧客の売上金額などが一般的です。

分業体制による悪影響を防ぐための組織論

デメリットのところで紹介したとおり、分業化制度を導入すると、モチベーション低下や部門ごとの対立や分断、組織目標への無関心などの問題が生じやすくなります。これらの問題による悪影響を抑えるには、組織論的な考えが必要です。

 

組織論の基本にして原理原則となるのが、バーナードの組織論における組織の3要件です。3要件を詳しく解説しましょう。

 

 

共通目的(組織目的)

まず、分業体制の組織をうまく機能させるためには、組織に所属するメンバーが、共通のミッション・ビジョンを持つことが大切です。

 

たとえば、家電のメーカーで「家電を通して人々の不便や悩みを解消する」というビジョンを共有したと仮定します。

 

ビジョンを共有できている場合、製品開発・製造・営業などの各担当者は、自らの専門領域で目標達成するだけでなく、ミッションである「人々の不便や悩みを解消する」という同じゴールに向けて仕事をできるようになります。

 

もちろん、それでも役割による見解の違いは生じますが、「我々は何のために集まっているのか?」ということに対して共通の答えを持っている意味は大きいです。企業におけるミッション、ビジョン、バリューの浸透といった定性的であり、大きなゴールの共有が重要です。

 

また、もう少し短期的な組織目標の共有も大切です。たとえば、THE MODEL型の組織においては、フィールドセールスに先行して活動するマーケティング、インサイドセールスも最終ゴールであり、組織の共通目標となる「売上総額」を有効リード数や創出商談数に加えて目標設定することで、短期的なゴールを共有します。

 

 

協働意思(貢献意欲)

協働意思とは、企業で働くうえでそれぞれのメンバーが「組織やお互いの役に立ちたい」と思えるようになることです。協働意思は、分業体制における対立や分断を防ぐうえで、大事なポイントになります。

 

前述したように紀伊井田駅前工程の機能が後工程の目標にコミットするなどの目標設定をすることで、協働意思は向上しやすくなります。

 

先ほどのTHE MODEL型の組織を例にすれば、マーケティングチームは、一次目標となる有効リード数に加えて、後工程となるインサイドセールスの部門の一次目標である案件創出数や額、組織の最終目標である売上創出額を目標に持つといった形です。

 

協働意思を生み出すためには目標設定だけでなく、次のコミュニケーション、また、機能間での人事異動なども有効です。

 

 

意思疎通(コミュニケーション)

分業体制の分断や対立、仕事の全体像を把握できない問題は、機能間のコミュニケーションの少なさから生じることが多いです。

 

したがって、当たり前の話に聞こえますが、分業組織においては機能間で定期的にコミュニケーションの場を持つことが大切です。THE MODEL型の組織でいえば、たとえば、後工程の部門からフィードバックをもらう、各部門のマネジメントメンバーで定期的にすり合わせの場を持つ、などがコミュニケーションに当たります。

 

また、人的交流、仕事外でのコミュニケーション活性化の機会や組織風土の形成を行なうことも相互理解を深め、共有したミッションの達成に向けて協働できる組織づくりにつながります。

まとめ

分業(個別的分業)には、以下のメリット・デメリットがあります。

【分業のメリット】
  • 業務効率や生産性向上のための発明促進
  • スキル習熟度の早期向上
  • 適材適所の人員配置の実現
【分業のデメリット】
  • 機能間での対立や分断
  • モチベーションやエンゲージメント低下
  • 全体像把握の難易度UP

 

従来は、作業の目的や役割が大きく異なる職種による分業が一般的でした。一方で、近年では、「THE MODEL」で紹介するモデルのように、営業活動における新規契約や契約継続の獲得といった一つの共通目標に対して、以下のように仕事を分業化する方法が注目されています。

  • マーケティング
  • インサイドセールス
  • フィールドセールス
  • カスタマーサクセス

 

分業体制による組織の悪影響を防ぐには、各メンバーが共通のミッションやビジョンを持ち、紀伊井田駅「自社やお互いの役に立ちたい」と思える組織づくり、また、機能間でのコミュニケーションを活性化する仕組みづくりが大切です。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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