ここからはフレデリック・ラルー氏によって提唱された「ティール組織」の内容についてご紹介します。
2018年、フレデリック・ラルー氏の著書「Reinventing Organizations」の邦訳版である「ティール組織」が出版され話題となりました。組織論・経営論の最新のトレンドである「ティール組織」は、従来の組織モデルとは何が異なるのでしょうか。また、なぜ今話題となっているのか、その背景を探ってみましょう。
従来の「達成型組織」の特徴と弊害
日本企業においてよく見られる従来の組織構造に、「達成型組織」があります。達成型組織は、ヒエラルキー型のピラミッド構造をベースとしつつオンラインでつながるグループや、複数の部門にまたがるチームなどを持つ構造です。
メンバーは、成果を上げることによって評価されるため、変化する環境や激しい競争の中から、革新的なアイデアや提案を生み出していきます。しかし、競争をし続け、成果を上げ続けることが求められる性質上、過重労働になりやすく、メンバーの疲弊につながりやすいというリスクもあります。
このような従来の組織のあり方は、働き方改革・働き方の多様性の時代にはフィットしません。この点も「ティール型組織」が注目される背景となっています。
生存本能に訴えかけて人を動かす
達成型組織には、「自分たちが懸命にやらないと組織が存続できない」という恐怖心を煽り、構成員を突き動かしているという特徴があります。
この生存本能に訴えかけるマネジメントは、油断したら死んでしまうという緊張感をもたらします。また、組織の仲間が競争相手となり、追い落とすべき敵になってしまうという弊害があります。
肩書や上下関係
達成型組織のもう1つの大きな特徴は、ピラミッド型の組織図に代表されるような役職や上下関係です。上下関係が明確な達成型組織では、指揮命令がしやすい、責任の管理がしやすいなどの利点が挙げられます。また、上司に情報が集約されるため、意思決定が迅速になるという利点もあります。
しかし、上下関係にはデメリットもあります。
例えば、転職者の退職理由には、「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」「先輩・後輩とうまくいかなかった」といった職場の上下関係に関する回答が多く挙げられています。上下関係がメンバーのストレス要因となることには注意が必要です。
また、部下が組織のためではなく、上司のために仕事をするようになるリスクもあります。これは、「上司に頑張っている姿を見せること」が求められていると錯覚してしまうためです。
その結果、不要な残業や頑張る姿の演出など、成果に結びつかない頑張りも増え、本来の目的から遠のいてしまいます。
本来の自分と組織での自分の分断
達成型組織の弊害として、本来の自分と組織での自分との乖離・分断が起きやすいという点があります。なぜなら、社員は上司からは評価される立場であるため、意識・無意識問わず「期待されている役割」を演じてしまうからです。
また、その場の空気を読んで、不利になるような自分は見せないようにします。こうして自分の一部分しか見せず、本来の自分の能力や個性に蓋をしてしまいます。
ティール組織の特徴
ティール組織では、経営者や上司が社員の業務を指示・管理することはありません。組織がビラミッド型の構造をしておらず、全員がフラットに協力し合うというのがティール組織の特徴です。
従来の組織構造とは全く異なり、イメージするのが難しいティール組織ですが、これから述べる3つのポイントに着目してみると、組織の未来を示唆する面白い理論であることがわかるでしょう。
組織の存在目的の重視
始めに着目するポイントは、「組織の存在目的」を重視することです。組織の存続を目的とするのではなく、組織の存在目的のためにビジネスをするという考え方です。
例えば、パタゴニアは「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」と明言しています。環境に優しいやり方で利益を上げる、ビジネスで利益を上げて環境保護活動に寄付をするという会社はたくさんあります。
しかし、パタゴニアはビジネス自体ではなく、環境を守ることが目的になっています。組織の存在目的のわかりやすい実例と言えるでしょう。
ティール組織のメンバーは、組織の存在目的に貢献するために行動します。従来型の達成型組織では、組織の存続が目的になりがちですが、ティール組織は存在目的・共通目的が原動力となります。
自主経営
ティール型組織では、「自主経営」つまり「セルフマネジメント」も重要な要素となります。達成型組織では上司が意思決定と指示を行いますが、ティール型組織では1人1人が自分の判断で行動します。アイデアを思いついた人はまずそれを自分で行ってみて、それに対する助言やフィードバックを集めていきます。
その過程でアイデアに参画する人が増え、またアドバイスを受けるということを繰り返し、優秀なアイデアに経営資源が集まることになります。
自分のすべてを組織に持ち込む
ティール組織では、個人のありのままを尊重し受け入れることを重視します。そのため、先述した本来の自分と組織での自分の分断は起こりにくくなります。これは、Googleが社内で実証したことで話題になった「心理的安全性の確保」にもつながる観点です。心理的安全性が確保されている組織の中では、自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できます。
このように、メンバーが自分のすべてを組織に持ち込むことができる組織では、アイデアとイノベーションが生まれやすくなり、本来のスキルと能力のすべてを発揮することができます。