原田メソッドは、教育者の原田隆史氏が20年にわたる教師生活のなかで確立した「優れた人格・人間力を土台に、目標達成できる」人を育てる人材育成手法です。
原田メソッドの提唱者である原田隆史氏は、かつて公立中学校の陸上部の監督として、7年間で13回の日本一を達成する偉業を成し遂げました。特待生がいるわけでもない普通の公立中学校で、13回の日本一を成し遂げた目標達成のノウハウを体系化したものが原田メソッドです。
現在、5万社10万人を超えるビジネスパーソン、また、プロスポーツ選手なども実践する原田メソッドの特徴は、実践を支援するツールの存在です。「オープンウィンドウ64」は、原田メソッドの根幹を成すツールの1つであり、目標達成のための具体的行動を洗い出せる効果があります。
<目次>
オープンウィンドウ64を用いて、目標を達成するために必要な行動計画を立てる
目標を達成するためには、目標を達成する施策を考えて、具体的な行動に落とし込む必要があります。しかし、いざ考え始めてみても、なかなか具体的な行動が思いつかないということがよくあります。オープンウィンドウ64を使えば、目標達成のための具体的な行動を導き出すことができます。
オープンウィンドウ64とは?
高い目標を達成するためには、達成するための具体的な施策・行動をしっかりと考えて実行することが不可欠です。とはいえ、思い付きでアイデアを考えるだけでは、目標達成に直結する行動も出てくれば、あまり効果のない行動もあるでしょう。
効果的な行動をしっかりと考えるためには、ある程度体系だって、同時に柔軟な視点で思考することが大切です。しかし、悶々と考えているだけでは、今までと変わらないアイデアしか思いつかなかったり、なかなかアイデアが出てこなかったりと思考を広げるのは大変です。
オープンウィンドウ64は、「思考を柔軟に広げ、行動目標の精度をもっと上げる方法はないだろうか?」と、原田氏が考えて生み出されたツールです。オープンウィンドウ64は全81マスからなるツールで、使うことで名前の通り、目標を達成するための64個のアイデア(目標達成に向けた窓)が出てきます。
後ほど詳しく説明しますが、最初に中央のマスに自分が達成したい目標を書き込み、周りの8マスに目標達成に向けて重要なキーワード、取り組む分野を書き込んでいきます。そして、8つのキーワードやテーマ毎に関連する具体的な行動を検討することで、思考がどんどん広がり、最終的に目標を達成するための64の具体的行動が導き出されます。
マンダラから誕生したオープンウィンドウ64
オープンウィンドウ64は、古代インドを起源とする「マンダラ」をベースに誕生しており、別名マンダラチャート(曼荼羅チャート)やマンダラートとも呼ばれます。
マンダラとは、仏教において修行を通じて到達したいと願う仏の世界を表現したものです。修行僧は瞑想の中でマンダラの世界を考え、日々修行するなかで、順番に悟りを開いて真理に到達すると言われています。
マンダラから着想を得て生まれたオープンウィンドウ64も、自分では気づいていない思考を掘り起こして形にする効果があります。オープンウィンドウ64には、結果や成果をあげるための実践や思考を導き出すノウハウがぎっしり詰まっているのです。
オープンウィンドウ64が目標達成に効果を発揮する3つの理由
オープンウィンドウ64は、1枚のシートに書き込んでいくことで、目標達成に効果的かつ具体的な行動・施策を洗い出すことができるツールです。本章では、オープンウィンドウ64が目標達成に効果を発揮する理由を3つに絞ってお伝えします。
1.目標達成のためのアイデアが引き出される
オープンウィンドウ64が効果的な理由の1つ目は、思考して8分野・テーマ×8個、合計64個のマスを埋める、というプロセスにあります。最初のうちはマスがなかなか埋まらず苦労するかもしれませんが、諦めずに思考し続けることで、自分の中にある優れたアイデアが引き出されます。
オープンウィンドウ64に書き出すことで、思考が展開されて具体化します。目標を達成するための手段が明確になるほど、目標を達成できる確率は高まります。
2.質の高い達成計画を作成できる
オープンウィンドウ64を用いて、目標達成のための具体的な施策や行動を豊富に洗い出すことで質の高い行動計画を作成することが出来ます。思い付きで考えたアイデアを行動計画に落とし込むと、抜け漏れが生じたり、効果性の低い施策やアイデアが入ったりしてしまいます。
オープンウィンドウ64で一度アイデアを数多く出す、というプロセスを経ることで、効果性の高い施策、実行すべき行動だけを計画へと落とし込むことが出来ます。
3.個人の「知」を共有できるようになる
オープンウィンドウ64を作る時、1人でなく複数人や組織で行うと、さらに効果が倍増します。なぜなら、他の人の書き出したシートを見ることでヒントや着想を得ることができるからです。
オープンウィンドウ64のシート上には、作成者の目標に対する施策やアイデアの引き出しが「言葉」として表現されます。つまり、個人の頭の中にある「暗黙知」が、客観的に見ることができる「形式知」になるのです。従って、組織でオープンウィンドウ64の作業に取り組むことで、他の人のアイデアをヒントにしたり、個人の着想や思考を組織で共有したりすることができます。
たとえば、いつも目標達成をしている営業が作ったオープンウィンドウ64には、「コンスタントに成果を上げる」ためのノウハウや打ち手の引き出しが表現されています。新人や若手営業が、トップセールスのオープンウィンドウ64を見て自分の計画へと取り込むことで、新人や若手、そして組織の目標達成力を向上させることができます。
原田氏はオープンウィンドウ64を通じて他者の知識やノウハウを自分の思考に活用することを「知の移植」と呼んでいます。知の移植を通じて、個人の強みを組織の強みに展開することで、強力な組織を作ることが可能になりますので、原田メソッドは組織の強化プログラムとしても注目されています。
オープンウィンドウ64の具体的な書き方
オープンウィンドウ64は、1枚のシートに書き込んでいくだけで、目標達成に効果的かつ具体的な行動を洗い出すことができるツールです。しかし、思いついたことをただ書き込めばいいというわけではありません。オープンウィンドウ64のシートを作り、効果的に活用するためには、いくつかのルールに則って進める必要があります。
本章では効果的なオープンウィンドウ64の書き方を4つのステップでお伝えします。
ステップ1:達成したい目標を書き込む
最初に、達成したい目標を設定して、オープンウィンドウ64のシート中央のマスに記入します。数値や期日を盛り込み、できるだけ具体的な行動目標にすることが肝心です。今回は「新規契約を年間で50件成約する」という目標を例にして解説します。
ステップ2:8つの「基礎思考」を書き出す
達成目標を決めたら、次ステップでは「基礎思考」の部分を書き出します。「基礎思考」とは、物事の大枠やテーマのような抽象的な思考を言います。
オープンウィンドウ64で最初に記入した達成目標を記入したマスの周囲8マスに、目標を達成するために必要な要素を8個の基礎思考に展開します。
今回の例で設定した「新規契約を年間で50件成約する」という目標であれば、例えば「顧客接点を増やす」「見込みリストの精査」「営業力の強化」といった基礎思考が挙げられるかも知れません。
基礎思考の枠はシート上では8個ですが、8個以上になってもかまいません。既成概念にとらわれず、思いついた要素をどんどん書き出していきましょう。基礎思考はオープンウィンドウ64を作る上での土台であり、8つの基礎思考をしっかりと作れるかどうかが、次で説明する実践思考の質を左右します。
ステップ3::8つの「基礎思考」それぞれに、8つの「実践思考」を書き出す
書き出した8つの基礎思考を、さらにそれぞれ8つの「実践思考」に落とし込みます。「実践思考」とは、実際の活動場面がイメージできるほど具体化された思考や行動、施策をいいます。
各基礎思考に対して、「具体的に何をするのか?」を自分に問いかけ、行動や施策を導き出していきます。たとえば「顧客接点を増やす」という基礎思考であれば、「1日5件、新規顧客に連絡する」「〇月〇日までに過去客に連絡する」「新商品の紹介チラシを作りDMする」といった具体的な行動が実践思考に該当します。
基礎思考と同じく、実践思考も9つ以上になっても大丈夫です。思い付いた分だけマスの外にどんどん書き出していきましょう。
ステップ4:出来上がったオープンウィンドウ64全体を見て、自分の頭の中を整理する
1つの目標から8つの基礎思考、8つの基礎思考それぞれに8つの実践思考を導き出すと、64個のマスがすべて埋まります。人によっては全部で70個や80個の実践思考が出ているかもしれません。
実践思考をすべて考えるステップが終わったら、オープンウィンドウ64のシート全体を俯瞰しましょう。すると、「ある基礎思考はしっかりと実践思考になっているのに、別の基礎思考からは行動がイマイチ具体化されていない…」など気になる点が見えてくるかもしれません。
自分の中で納得感がなかったり気になったりする点があれば、もう一度そこだけ考えてみる、また周囲にアドバイスをもらったりして、オープンウィンドウ64を完成させましょう。
オープンウィンドウ64が完成したら、重要な行動、目標達成に貢献度が大きい行動などをピックアップして行動計画へと落とし込んでいきます。行動計画に落とし込まなかった施策やアイデアも、二の手三の手を考える参考材料となりますので、作成したオープンウィンドウ64はしっかりと保存しておきましょう。
オープンウィンドウ64で分かる自分の力量を把握する
オープンウィンドウ64を作成することは、自分の力量を把握することにも繋がります。例えば、中央の目標に対して8つの基礎思考を洗い出せない場合、目標分野に関する基礎的な知識やそもそもの目標達成スキルが不足している可能性があります。
また、基礎思考それぞれに対する実践思考の数を見ると、自分の得意な分野と苦手な分野が明確になります。実践思考として具体的に書き出された行動が多いところは、自身が思考しやすい分野であり、ノウハウや経験を持っているテーマです。
逆に具体的な行動に上手く落とし込めていないところは、普段あまり考えていなかったり、苦手としていたりする分野かもしれません。
最初から完成度の高いオープンウィンドウ64を書き出すことのできる人はほとんどいません。むしろ、書けなかったマス、具体的な行動に落とし込めなかった部分は「自分の今後の伸びしろ」ととらえることが重要です。
得意な分野はそのまま長所として活用し、苦手であることが分かった分野は勉強したり他者からアドバイスをもらったりするなどして、目標達成に確実に近づけていくということも、オープンウィンドウ64を実践する上での大切なプロセスです。
まとめ
今回の記事では、目標達成のための行動を具体化する原田メソッドのツール「オープンウィンドウ64」をテーマにお伝えしました。
オープンウィンドウ64の着想の元となったマンダラには、修行僧が日々の修行や瞑想の中で、思考を開いてゆきながら真理へと到達する様が表現されています。オープンウィンドウ64も同様に、基礎思考→実践思考とステップを踏んで思考と格闘しながら、自分では気づいていなかったアイデアや発想を掘り起こし、形にしていきます。
原田氏の試行錯誤の結晶が凝縮されたツールであるオープンウィンドウ64を活用することで、目標達成力を確実に高めることが出来ます。