人を動かすポイントとは?デールカーネギーの人を動かす原則を解説

人を動かすポイントとは?|デール・カーネギー『人を動かす』原則を分かりやすく解説

自分が期待するように人を動かすにはどうすればいいのかのポイントを解説しているのが、デール・カーネギーの名著『人を動かす』です。

 

本記事では、『人を動かす』の構成や人を動かすために何が必要かのポイントを『人を動かす3原則』をもとにして分かりやすく紹介します。

 

人を動かすコミュニケーション力があると、ビジネスや学校、私生活など、あらゆる人間関係のなかで成果をあげることができます。
デール・カーネギーの著書『人を動かす』、とくに最初の章である「人を動かす3原則」には人々を動かす上での基本となるポイントが記されています。

 

ポイントの実践を習慣とすれば、きっと人を動かす力を向上させることができるでしょう。

<目次>

書籍『人を動かす』と著者デール・カーネギー

最初に、人を動かすポイントを解説した名著『人を動かす』と著者デール・カーネギーについて簡単に紹介します。

 

デール・カーネギーの生い立ち

デール・カーネギーは、自己啓発やプレゼンテーション、対人スキルなどのコースを開発したアメリカの作家、講演家です。

 

カーネギーは大学卒業後、さまざまな仕事を経た後に、ニューヨークのYMCAが開催する大人向けの話し方教室の講師の仕事に就きます。

 

このクラスで登壇する中で、カーネギーは、受講生たちがさまざまな問題を抱えていることに気づきました。受講生たちの課題とは、単に大勢の前で話すといったことだけではなく、友達の作り方や、自分自身をやる気にさせるといった人間関係に関する様々な悩みだったのです。

 

カーネギーは、対人関係のスキルやコミュニケーションの方法を教えることに重点を置き、独自のカリキュラムで講義に取り組んだ結果、カーネギーの講座は大変な評判となります。

 

カーネギーはその後、YMCAから独立してデール・カーネギー研究所を設立し、対人スキルやセールス、プレゼンテーションなどの講座を展開します。

 

カーネギーが亡くなった後も、彼の名前と理念はデール・カーネギー・トレーニングという研修会社を通じて今もなお世界中で多くの人たちから支持されています。

デール・カーネギーについては以下の記事で解説しているので参考にしてください。

 

書籍『人を動かす』

カーネギーは話し方教室や自分の講座で磨き上げた「人を動かす」ノウハウを一冊の書籍にまとめあげます。それが、デール・カーネギーの代表作、1936年に出版された書籍『人を動かす』です。

 

カーネギーは『人を動かす』の中で、人々が行動する動機や欲求、人間関係構築の原則や理論を元に、私達はどのように他者と関われば好ましい人間関係を築くことができるのか?どうすれば、相手を自分の期待する方向に導いていけるのか?といった人を動かすための実践的な方法とテクニックを伝えています。

 

本書は世に出てから現在まで1500万部の売上を記録するベストセラーとなりました。『人を動かす』は、時代を超えて、また、文化を超えて通じる原則、人を動かすポイントがまとめられた1冊といえます。

 
『人を動かす』について知りたい人は、以下の記事で内容を要約しているので参考にしてください。

『人を動かす』の構成と30の原則

書籍『人を動かす』は、「人を動かす3原則」「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」という4つのパート、合計30の原則から構成されています。

 

次の章で紹介する「人を動かす3原則」が書籍『人を動かす』の根底であり、そこから順番に、人を動かす基盤となる信頼関係を作る、自分の意見を相手に納得してもらう、相手の行動を修正したり成長させたりするという具体的なテーマに入っていく全体像になっています。
本章では、30の原則について簡単に一覧で紹介します。

 

第1章「人を動かす3原則」

書籍『人を動かす』の最初の章である「人を動かす3原則」では、続く3つのブロックの基盤となる「人を動かす3つの原則」が書かれています。

  1. 盗人にも五分の理を認める
  2. 重要感を持たせる
  3. 人の立場に身を置く

上記の3つの原則は、他者と信頼関係を作り相手を動かすための基本です。3つの原則については、次の章で詳しく解説します。

第2章「人に好かれる6原則」

「人に好かれる6原則」では、好印象を与えることによって、相手から信頼を勝ち取るために重要な6つの原則が書かれています。

  1. 誠実な関心を寄せる
  2. 笑顔を忘れない
  3. 名前を覚える
  4. 聞き手にまわる
  5. 関心のありかを見抜く
  6. 心からほめる

相手から信頼されている状態であれば、人を動かすことは容易になります。

 

当たり前のことのようですが、次の2つのケースを想像してみてください。

 

1)自分が信頼し尊敬する相手から「これを頼みたいんだ」と言われたとき
2)信頼関係のかけらもなく、自分を嫌っていて警戒している相手から「これを頼みたいんだ」と言われたとき

 

どちらの方が、まずは詳しい話を聞いてみよう、自分に出来ることなら協力してあげたいと思うでしょうか。人は感情の生き物と言われます。「誰から言われるか」は私たちが意思決定するうえで、つまり相手を動かすうえで、大きなウェイトを占める要素なのです。

 
HRドクターでは、「人に好かれる6原則」の詳しい内容や実践のやり方について個別に解説した記事を用意しています。「人に好かれる6原則」について、より詳しく知りたい方は、以下のURLをご覧ください。

第3章「人を説得する12原則」

「人を説得する12原則」は、人を動かす3原則、人に好かれる6原則を踏まえた上で、相手を説得するための具体的な方法が書かれています。

  1. 議論を避ける
  2. 誤りを指摘しない
  3. 誤りを認める
  4. 穏やかに話す
  5. イエスと答えられる問題を選ぶ
  6. しゃべらせる
  7. 思いつかせる
  8. 人の身になる
  9. 同情を寄せる
  10. 美しい心情に呼びかける
  11. 演出を考える
  12. 対抗意識を刺激する

自分の意見や要望を受け入れてもらい、相手を説得するために必要なのは、最初から議論になることは避け、穏やかな物腰で接することです。
その上で、相手の立場・心情に配慮し、相手の興味を惹くような演出を工夫することで、相手はこちらの意見を受け入れやすくなるでしょう。

 

人を説得する12原則を実践することで、こちらが期待する行動へと相手を導いていくこともできるようになるでしょう。

 

HRドクターでは、「人を説得する12原則」の詳しい内容や実践のやり方について個別に解説しています。「人を説得する12原則」について、より詳しく知りたい方は、以下よりご覧ください。

第4章「人を変える9原則」

『人を動かす』の集大成となるのが、「人を変える9原則」です。自分が意図する方向に“人を変える”、ビジネスで部下を動かしたり、成長させたりすることにも役立つ原則がまとめられています。

 

「人を変える~」というと若干の語弊もあるかもしれませんが、一方的な指示や命令で相手を従わせたり、無理やり相手を変えたりするためのテクニックではありません。むしろ、“相手の主体性を引き出す”、“自分の意図する方向に、かつ、モチベートされた状態で動いてもらう”ための原則です。

  1. まず褒める
  2. 遠回しに注意を与える
  3. 自分の過ちを話す
  4. 命令をしない
  5. 顔をつぶさない
  6. わずかなことでも褒める
  7. 期待をかける
  8. 激励する
  9. 喜んで協力させる

HRドクターでは、「人を変える9原則」の詳しい内容や実践のやり方についても個別の解説記事を用意しています。「人を変える9原則」を詳しく知りたい方は、以下のURLよりご覧ください。

人を動かすポイント:「人を動かす3原則」とは?

本章では、『人を動かす』の基礎である「人を動かす3原則」を基に、人を動かすためのポイントをお伝えします。
本章の内容を読んでから、改めて「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」のひとつひとつをお読みいただくと、人を動かすポイントがより詳細に理解できるでしょう。

 

人を動かすポイント①「盗人にも五分の理を認める」

人を動かす3原則のひとつである「盗人にも五分の理を認める」は、相手の立場や考え方を尊重することが人間関係を築き、スムーズなコミュニケーションを実現するうえで最も重要であることを示しています。

 

たとえ、世間では悪人とされる盗人のような人物でも、本人のなかでは「たとえ世間的に糾弾される行為だとしても私は正しい」「正当な、または、やむにやまれぬ事情があり、人から一方的に批判されるような理由は一切ない」と思っているものです。

 

このような性質を持っている人間に対して、たとえ正当だったとしても一方的な批判をすることは無意味であり、相手の心を頑なにするだけです。

 

人は批判されると、自分を守ろうとして反発したり逆ギレしたりするものです。一方で、自分のことを承認されると協力的になったり、自分のことを理解してくれようとするには感謝したり信頼を置いたりもします。

 

だからこそ、「盗人にも五分の理を認める」ことが大事なのです。

相手の主張を正しいものとするかどうかは別として、相手が正しいと思っている理由、相手から見た状況をきちんと聞いて共感する。そうすることが相手に好印象を与えて信頼関係を築くこと、ひいては人を動かすことにつながります。

 

この考え方を基に、人を動かすためのポイントを以下にまとめます。

  • ・相手の立場や気持ちに共感する
  • ⇒ 相手の気持ちや立場を理解し、それに共感することが、相手との信頼関係を築く第一歩です。前述のように、人は皆、自分の言動や考え方には理由があると思っています。それを理解しようとすることで、相手に対する敬意や信頼を示すことができるようになります。
  • ・相手の言い分や考え方に耳を傾ける
  • ⇒ 相手に興味を持ち、積極的に聴くことが、相手との良好なコミュニケーションを築くために重要です。相手が話しやすい雰囲気を作り、相手の話をしっかり聴くことで、相手の心を開かせることができます。
  • ・相手との共通点を見つける
  • ⇒ 相手と自分との間にある共通点を見つけることで、相手とのつながりを深めることができます。相手と共通の趣味や価値観、目標を見つけ、それを話題にすることで、相手との信頼関係を構築しやすくなります。

上記に挙げたポイントを実践することで、相手とのコミュニケーションがスムーズになり、相手を動かすことができる可能性が高まるでしょう。

 

HRドクターでは、「盗人にも五分の理を認める」の原則に関する詳細や実践方法を個別に解説した記事を用意しています。ご興味あれば以下のURLよりご覧にください。

人を動かすポイント②「重要感を持たせる」

人は自分が社会や職場で必要とされていると感じると、やる気や自信が高まり、逆に、無視されたり批判されたりすると、不満や反発を抱きます。

 

「重要感を持たせる」という考え方は、相手に「自分自身は大切な存在である」という実感=自己重要感を持たせることによって、相手が協力的な態度を取ってくれることを示しています。

 

重要感とは、有名なマズローの5段階欲求説でいう「社会的欲求」そして「承認欲求」に該当するものです。人がこうした欲求を持っているということを踏まえて、相手の欲求を満たしてあげることがポイントです。

 

相手の欲求を満たすことによって、相手はあなたを深く信頼し、あなたの言葉に耳を傾けてくれるようになるでしょう。

この考え方を基に、人を動かすためのポイントを以下にまとめます。

  • ・相手の良い点や成功した点を見つけて、率直で誠実な評価を与える
  • ⇒ 相手の優れている点をストレートに伝えることによって、相手に重要感を持たせることができます。その際に大切なのは、本心からの言葉を伝えることです。したがって、取ってつけたようなお世辞は逆効果であり、厳に慎む必要があります。
  • ・相手の貢献を評価する
  • ⇒ 相手が何かしらの貢献をした時、その貢献を評価し、感謝の気持ちを示すことが大切です。相手は他者から自分の貢献を評価されることで、自信がつき、自分自身を高めることができます。
  • ・相手の意見を尊重する
  • ⇒ 相手の意見や考え方を尊重することで、相手が自分自身を重要な存在だと感じることができます。相手に対して否定的な態度をとるのではなく、相手の意見を受け止め、尊重することで、相手との信頼関係を築くことができます。

これらのポイントを実践することで、相手は自己重要感が満たされ、あなたに協力的な態度をとってくれるようになるでしょう。

 

HRドクターでは、「重要感を持たせる」の原則に関しても詳細に解説していますので、ご興味あればご覧ください。

人を動かすポイント③「人の立場に身を置く」

「人の立場に身を置く」とは、相手の立場や視点に立ち、“相手が何を望んでいるか”“何に困っているか”などを想像し、それを手に入れる、あるいは解決する方法を教えてあげることの重要性を示しています。
カーネギーは、「人の立場に身を置く」ことで、相手に「強い欲求」を起こさせることができるといいます。

 

どれだけ信頼関係を作ったとしても、人は「あなたの欲求を満たす」ことには大きな興味はありません。人が関心を持っているのは自分自身のこと、そして、自分自身の欲求を満たすことなのです。

 

だからこそ、相手の立場に身をおいて、相手が欲しているものは何かを考えることが重要です。

 

その上で、「あなたの依頼を実行することで、自分が欲しているものが手に入る」と相手に気づいてもらうのです。
そうすれば、あなたの依頼を実行することは、相手にとって「自分の欲求を満たすこと」となり、実行に向けた強い欲求、主体性やリーダーシップが生まれます。

この考え方を基に、人を動かすためのポイントを以下にまとめます。

  • ・相手の立場に立って考える
  • ⇒ 相手の立場に立って考えることで、相手だったらどのように考えるのか?相手が何を欲しているのかを理解できるようになるでしょう。
  • ・相手の立場や気持ちを理解する
  • ⇒ 相手がどのような立場にいるか、どのような気持ちでいるかを理解することが大切です。相手の立場や気持ちを理解し、相手に対する共感や理解を示すことで、自分は相手の味方だと印象付けることができます。
  • ・相手の利益を提供する
  • ⇒ 相手が求めるものや必要とするものを提供することが大切です。相手にとって何が有益になるのかを考え、相手が求めるものを提供することで、人を動かす強い力が手に入るでしょう。

HRドクターでは、「人の立場に身を置く」の原則についても詳しく解説しています。ご興味あれば、以下よりご覧ください。

まとめ

記事では、デール・カーネギーの書籍『人を動かす』を踏まえて、自分が期待するように人を動かすにはどうすればいいかのポイントをお伝えしました。

 

「人を非難しないこと」「相手の自己重要感を満たしてあげること」、そして、「相手の立場にたって相手の求める物を与えてあげること」、記事で取り上げた「人を動かす3原則」は、『人を動かす』全体を通して度々登場し、他の原則を実践する上での基礎となる考え方です。

 

3つの原則それぞれのエッセンスについても紹介しましたので、内容を参考にしていただき、人を動かす影響力を高めていただければ幸いです。

 

なお、「人を動かす」の原則は、一見するとどれも当たり前だったり、簡単にできそうなものばかりだったりします。

 

しかし、現実には実践できず、「うまくマネジメントができない…」「もっと影響力を持てれば、成果をあげられるのに…」と悩まれている管理職の方、「リーダー陣がもっと上手く人を動かしてくれれば業績も向上するのに…」と悩まれている経営者の方が多数います。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、米国デールカーネギー・アソシエイツ社と提携して、「人を動かす」力が“身に付く”デール・カーネギー・トレーニングを提供しています。

 

「管理職のマネジメント力を高めたい」「営業職の営業力をあげたい」とお考えの人は、以下のデールカーネギー研修、セミナーの情報を参照してください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
・社長の右腕 ~ナンバー2の上司マネジメント / 部下マネジメント~
・オーナー経営者が知っておきたい!業績があがる人事評価制度と組織づくりのポイント
・社長の右腕 10の職掌 など

関連記事

  • HRドクターについて

    HRドクターについて 採用×教育チャンネル 【採用】と【社員教育】のお役立ち情報と情報を発信します。
  • 運営企業

  • 採用と社員教育のお役立ち資料

  • ジェイックの提供サービス

pagetop