ビジネスは組織による目標達成の積み重ねです。組織における目標達成プロセスは一人で進めるものとは限らず、周囲との協働が必要なプロセスも多くなります。
周囲と協働しながら目標達成を目指すうえで有効なのが、目標達成ロードマップの作成です。ロードマップを作成することで目標達成までのプロセスが可視化され、やるべきことが明確になり、周囲ともプロセスを共有できるようになります。
記事ではロードマップの目的や効果、作成方法、作成時のポイント、目標達成のロードマップ作成に有効なフレームワークをご紹介します。
<目次>
目標達成のロードマップとは?目的と効果性
ロードマップとは、目標達成までの計画案を意味するものです。現在地から目標達成までの工程を、時系列やステップ、テキストや表、図などでまとめたものになります。
ロードマップの目的は目標達成のための行動を明確にし、目標達成までの全体像を把握することです。したがって、ロードマップを作成することで以下のような効果が得られます。
目標達成に向けてやるべきことが明確になる
ロードマップには、現時点から目標達成までのプロセスが示されます。
ロードマップを作成することでやるべきことが明確になり、改善すべき課題や問題に気付くことも可能です。実行途中で方向性がズレることもなくなるため、無駄な工程が省け、目標達成に向けて最短距離で進めます。
全員が同じ認識で進められる
ロードマップで目標達成の道筋を可視化することで、メンバーや関係者との認識のズレがなくなり、同じベクトルで取り組むことができます。メンバーや関係者の行動が揃うことで行動の生産性も高まります。
モチベーションが高まる
メンバーがロードマップの作成に携わることは、「自ら計画を作って実行する」「ゴールまでのステップが見えるようになる」ことで、モチベーションが高まる効果があります。
同時に、実行過程においても、目標達成までの道のりや自分がすべきことが明確になることで、迷ったり悩んだりすることが減り、モチベーションを維持しやすくなります。
全体像が把握できる
ロードマップがあることで現状からゴールまでの全体像を把握できるので、新たな関係者やパートナーなどにもスムーズに合流してもらいやすくなります。全体像を把握することで未来の障害になり得るものをいち早く予測して、未然に防ぐこともできるでしょう。
目標達成のロードマップの作成方法と関連するフレームワーク
目標達成のロードマップは、目標達成のコーチングで一般的に利用されるGROWモデルを用いるのがおススメです。GROWモデルは、以下5つのステップで進めていきます。
1)目標達成のロードマップ作成に役立つGROWの全体像
GROWは目標達成のコーチングでよく使われるモデルで、以下の頭文字を取ったものです。
<GROWモデル>
G | Goal | 目標 |
R | Real | 現状 |
Resource | 使える資源 | |
O | Option | 選択肢 |
W | Will | 実行の意思 |
ロードマップの作成をGROWモデルに沿って行なうことで、精度の高い目標達成のロードマップを作成することが可能です。以下が、GROWモデルを使った目標達成のロードマップ作成の実行手順となります。
2)目標を設定する
まず、達成したい目標を設定します。目標設定はSMARTの法則に則って行なうことが効果的です。
SMARTの法則とは効果的な目標設定を行なうための原則で、Specific 、Measurable 、Achievable 、Relevant、Time-boundの5つの要素を満たすように設定していくのがポイントです。
Specific :具体的
Measurable :計測可能
Achievable :達成可能
Relevant :上位目標との関連性
Time-bound :明確な期限
SMARTの法則に従って目標設定すれば、精度の高いロードマップ作成につながります。
目標設定は、人事評価などに活用する現実的な目標にするのか(MBO的な目標設定)、ワクワクするチャレンジングな目標を掲げるのか(OKR的な目標設定)など、状況に応じて使い分けましょう。
また、目標設定ではメンバーや関係者の納得感も重要になるため、メンバーや関係者と「どのくらいの難易度で作成するのか」という共通認識を持つことが重要です。必要であれば目標の意味付けを行なう「目的・目標の4観点」ワークを行ない、目標の意味づけをしっかりと共有しましょう。
3)現状を確認する
目標達成とは、ゴールと現状のギャップを埋めるプロセスです。したがって、ゴールが決まったら、ゴールに対する現状を明確にして、ゴールまでにどのようなギャップや課題があるかを整理します。
現状把握では数字で表せる定量的なものと、数字では表せない定性的なものの2種類があります。どちらか一方だけを把握しても片手落ちになってしまうので、両側面でとらえることが精度の高いロードマップを作るポイントです。ギャップや目標達成に向けた課題もしっかりと洗い出しましょう。
4)具体的な計画作成
目標と現状、ギャップや課題が明確になったところで、具体的な計画作成に入ります。目標達成に向けて使える資源、施策、アイデアなどを洗い出すには、ブレストや目標達成シート(マンダラート)がおすすめです。
目標達成シート(マンダラート)は、目標達成に向けた施策やアイデア、具体的な行動案などを洗い出すことができるツールです。なるべく多くの視点から施策やアイデア、使える資源などを洗い出すことで、質の高い計画を作成することができます。
また、行動計画を作成するうえでは、最終的に達成したい目標に加えて、中間目標(ミニゴール)も設定しましょう。中間目標を定めることで途中進捗を振り返りやすくなりますし、ミニゴール達成の達成感を得ることでモチベーションも維持しやすくなります。
5)実行
計画を決めたら、あとは実行あるのみです。計画を実行する際には、定期的に現状把握と振り返りを行なって、目標達成に向けてロードマップの修正・更新を行ないましょう。
実際に進めていくと、計画とのズレやうまくいくこと、いかないことは必ず出てきます。「当初に決めた計画だから」とそのまま進行するのではなく、振り返りの都度修正・更新をすることが大切です。
ロードマップを作成する際のポイントと役立つフレームワークの紹介
ロードマップを作成・実行する際に役立つノウハウやフレームワークをいくつか紹介します。
1)目標達成までの時間軸に応じて、ロードマップの粒度(細かさ)を調整する
ロードマップを作成する際は、どれぐらいの粒度(細かさ)で作るかを調整しましょう。
例えば、3年間での改革プランなどであれば四半期単位、3ヵ月程度の短期プロジェクトであれば一週間単位などに細分化して、工程表やToDoなどの詳細を落とし込みます。粒度を調整することで、期間に適したロードマップを作成しましょう。
2)目標達成のロードマップに関連して役立つスキルとフレームワーク
目標達成のロードマップを作成・実行するうえでは、以下のスキルやフレームワークがとても役立ちます。
・タスクブレイク
目標達成のロードマップで決めた施策などを実行していくときに欠かせないのが、タスクブレイクのスキルです。タスクブレイクとは、施策を実行する段階において具体的に必要なものをタスク(ToDo)レベルまで細かく分解するスキルです。
タスクブレイクのスキルを高めるためには、7W3H1G、それぞれの視点から必要なタスクを考えていくと効果的です。
- Why :何のために
- When :いつ
- Where :どこで
- Who :誰が
- Whom :誰に
- What :何を
- Which :どれから(優先順位)
- How to :どのように
- How much :どのくらいの予算で
- How long :どのくらいの時間をかけて
- Goal :どのような状態にする
タスクブレイクをしっかりと実施して優先順位と納期を決めることができれば、あとは施策に沿って実行するのみです。
・ガントチャート
ガントチャートはプロジェクト管理によく用いられる表で、全体の流れや細かな進捗を可視化するものです。横軸に時間、縦軸にテーマ、作業内容、担当などをタスク別に記載することで、プロジェクト全体を「タスク×時間」に展開します。
すべてのロードマップでガントチャートを運用する必要はありませんが、ガントチャートのイメージが参加者に共有されていたり、時には簡易的なガントチャートを使ったりすると、プロジェクトの進行管理がスムーズです。
・カスタマージャーニー
カスタマージャーニーは、顧客(ユーザー)の行動プロセスを可視化したものです。
顧客の認知や検討、購入、リピートといった動きが見えることで、顧客へのアプローチをより効果的にすることができます。カスタマージャーニーは、ユーザー目線で作られた「購入・ファン化」までのロードマップともいえます。
カスタマージャーニーの考え方を知っていると、マーケティングや販売計画のロードマップを作成する際の精度が上がるでしょう。
<カスタマージャーニーの作成方法>
- ペルソナ(ターゲット)を明確にする
- ゴールを設定する
- フレームを設定する(横軸に購買プロセス、縦軸に施策を設定)
- 情報収集
- フレームに沿ってマッピングをしていく
- 顧客の行動や思考、感情を結び付けていく
まとめ
目標達成のロードマップとは、現状から目標達成までのプロセスを可視化したものです。
ロードマップを作成することでやるべきことが明確になったり、目標達成までの全体像が把握できたりするため、メンバー全員が同じ認識を持って取り組めるようになります。
また、ロードマップの作成に携わること自体がメンバーのモチベーションを高めるので、周囲との協働が必要なプロセスにおいては積極的にロードマップを作成しましょう。
記事で紹介した下記のフレームワークもロードマップ作成において非常に役立つものですので、ロードマップ作成時に活用してみてください。
・目標達成の精度を上げる『GROWモデル』
・目標設定における『SMARTの法則』
・目標の意味付けを行なう『目的・目標の4観点』
・施策をタスクレベルまで分解する『タスクブレイク』
・プロジェクトの進行管理をスムーズにする『ガントチャート』
・顧客(ユーザー)の行動プロセスを可視化した『カスタマージャーニー』
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