チーミング(Teaming)とは?成功のポイントや学習する組織の作り方を紹介

更新:2023/12/18

作成:2023/05/31

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

チーミング(Teaming)とは?成功のポイントや学習する組織の作り方を紹介

チーミングとは、組織や企業において「目標達成に向けて協働する最適なチームを作り続ける」という考え方です。若干の違いはありますが、チームビルディングと似た概念といえます。

 

近年、知識労働が増えるなかで、チームワークの重要性は確実に増しています。チームの生産性を高めるためには、チーミングの考え方を意識しながら「学習する組織」をつくることが有効です。

 

本記事では、チーミングの概要を確認したうえで、チーミングを成功させるポイント、「学習する組織」をつくる際に有効な考え方などを紹介していきます。メンバーそれぞれが主体的、かつ協働して課題解決するチームづくりを考える参考にしてください。

 

<目次>

チーミングの概要と注目される背景

:オフィスのスタッフの集合写真

 

まず、チーミングがどういうものか、また、近年注目が集まる背景を詳しく見ていきましょう。

チーミングとは?

チーミングは、英語の名詞「team(チーム)」と現在進行系をあらわす「ing」からなる言葉です。チーム研究の第一人者であるハーバード大学教授エイミー・C・エドモンドソン氏によって2012年に提唱された概念であり、最適なチームワークの構築に挑み続ける考え方を指す言葉になります。

 

エイミー・C・エドモンドソン氏は、チームのパフォーマンスを高める心理的安全性の概念を提唱したことでも有名です。

なお、チーミングと似た言葉に「チームビルディング」があります。チームビルディングも、チーミングと同様に最適なチームを作るための取り組みの一つです。

 

ただし、チームビルディングは、“最適なチーム”という固定されたゴールに向かうプロセスというイメージになります。一方で、チーミングは外部環境などが変わるなかで“最適なチーム”というゴール状態は常に変わっていく前提で考えられています。

 

したがって、チーミングは、チームビルディングのように1回やって終わるものではなく、「最適なチームを目指して取り組み続ける」という考え方であることが特徴です。

 

チームビルディング研修については以下でも解説しているので参考にしてください。

チーミングが注目される背景

現在は、VUCAの時代ともいわれるとおり、外部環境の変化や技術革新が、予想できないスピードかつ高い影響力を持って生じます。変化のなかで、従来のようにピラミッド型組織をトップダウンで動かすことは、とても難しくなっています。

 

変化のなかで重要になるのが、組織の最小単位であるチームで変化・状況にどう対応していく、主体的に行動して高いパフォーマンスを発揮し続けるチームを作るという視点です。

 

こうした背景から、注目を集めているのが、まさに変化・状況に対応できるチーム、生産性の高いチームをつくり出すための概念である「チーミング」です。

 

また、チーミングが注目される背景には、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが普及したことも大きく関係しています。

 

たとえば、従来のように大半のメンバーが同じオフィスで働いていた頃は、顔を毎日合わせることでお互いの空気感を感じ取り、必要であれば“励ます・声をかける”などの方法で、チームワークの維持や向上を行ないやすい環境でした。

 

一方で、リモートワークの普及後は、ほかのチームメンバーの情熱などは感じ取りづらいですし、上司などから適切なタイミングでのフォローも難しいことから、チームワークが下がりやすくなっています。

 

こうした複数の要因から、最近では、最適なチームワーク構築に挑み続ける「チーミング」への注目度が高まるようになりました。

 

 

チーミングを成功させるポイント

数人で談笑するビジネスパーソン

 

チーミングを成功させるには、以下のポイントを大切にする必要があります。

 

組織の目的、ビジョン、方針を共有する

まず、大切になるのが、チームが目指す目標や、仕事の目的・ビジョンなどの大方針を共有していることです。仕事の目的やプロジェクトのビジョンなどの未来像を共有することで、チームのメンバーが同じ方向を向いて自律的に行動・協働していけるようになります。

安心して発言・挑戦できる場を作る

いわゆる心理的安全性の高い環境づくりも大切です。

 

たとえば、若手や新人が「こんなことをやったら怒られるのではないか?」と萎縮するような環境では、チームワークは向上しません。全メンバーが安心して発信・挑戦できる環境が整うと、チームの目的・目標達成に向けて、思いついたアイデアを提案したり、失敗を恐れず挑戦したりする行動などを起こしやすくなるでしょう。

 

共通言語を持つ

共通言語とは、メンバーが情報交換や報連相をする際に使う“共通認識を持つ言葉”を指します。

 

たとえば、あるチームで、チームメンバーが目指す状態として“主体性”という共通言語があり、主体性の定義が共有されているとします。共有済みのチームでは、“主体性”という共通言語を使うことで、以下のように簡潔なコミュニケーションが可能になります。

  • 「最近、主体性を発揮できるようになってきたね!」
  • 「主体性が下がってきていることが、課題の早期解決ができない理由だと思う!」 など

 

メンバー間の認識のズレを解消し、コミュニケーションを効率化するうえで、共通言語は非常に大切です。特にチーム(組織)のミッション・ビジョン、また、バリューや価値観など、仕事するうえでの判断軸や基準になるものが共通認識になると、チームの一体感が増していきます。

相互理解を促進する

相互理解とは、チーム内の上司やメンバー同士で、お互いの価値観や特性、強みなどの違いを理解し合うことです。

 

相互理解は、チームワーク向上に欠かせない信頼関係の構築や、円滑なコミュニケーションをするうえでも大切になってきます。また、お互いのことをよく理解すれば、「いまの作業は、AさんよりBさんのほうが適任だろう」などのマネジメントもしやすくなるでしょう。

 

パラダイムと相乗効果を理解する

相互理解の促進が大切な理由は、チームの逆境や困難を乗り越え、目標を達成していくうえでは、メンバーの協働・共創による“相乗効果”が必要だからです。

 

たとえば、メンバーA・B・Cのそれぞれが、「100の成果を出せる能力がある」と仮定します。A・B・Cの3人が独立して仕事をしている場合、全部で「100+100+1000⇒300」の成果しか出せません。

 

一方で、A・B・Cの3人がそれぞれのアイデアや発想、強みを発揮し合う“相乗効果”を実現できれば、単なる足し算の結果である300を遥かに超える成果を出せるようになるでしょう。

 

相乗効果を発揮するためには、そもそもお互いが異なる価値観や意見、物の見方などを持っているという理解が大切になります。それぞれが持つ価値観や物の見方などのことを“パラダイム”と呼びます。

 

チームが相乗効果を出すためには、パラダイムの違いを受け入れ、そして、パラダイムの違いをかけ合わせることで相乗効果を生み出せるという原則を知る必要があります。

違いを知り尊重する

お互いの価値観ややり方、意見など、パラダイムの違いを知ると、「いまの考えは間違っている!」や「こんな考えを受け入れる必要があるのか?」などの反発心や違和感が生じることがあるかもしれません。

 

しかし、相手の価値観や意見を拒んでしまうと、相乗効果を生み出すための協働・共創などからは、遠ざかってしまいます。相乗効果を生み出すには、お互いの違いを知ったうえで、受け入れたり尊重したりする姿勢が必要です。

 

やり続ける

メンバーと協働・共創しても、ときには、期待するほどの相乗効果が出ないこともあります。また、相手の価値観を受け入れても失敗することもあるかもしれません。そして、相乗効果が出ない・失敗が続く…

…といった状態が繰り返されると、メンバーとの相互理解や協働・共創をやめたくなることもあるでしょう。

 

しかし、チーミングを成功させるには、「私たちは違いを尊重して相乗効果を生み出せる!」という強い信念を持ち、辛抱強く相互理解や協働をやり続ける姿勢が大切です。

 

相互理解の過程では相手と更なるコミュニケーションを図ったり、合意のうえでやり方を変えたりすることなども必要です。お互いを信じてやり続けることが、チーミングの成功には欠かせないといえるでしょう。

 

 

チーミングで「学習する組織」をつくる

タイピングする手元

 

チーミングをするうえで大事になってくるのが、「学習する組織」をつくることです。本章では、「学習する組織」の概要を確認したうえで、「学習する組織」をつくるうえで有効となる4つの考え方を解説します。

学習する組織とは?

学習する組織とは、「一人ひとりのメンバーが、主体的かつ効果的な変化を創造し続ける組織」ことを指します。学習する組織になるためには、各メンバーに以下のスキルや姿勢が必要となってきます。

  • 環境変化に対応できる「柔軟性・適応性」
  • 自ら学び、創造・デザインする「自発性」
  • 自ら進化しようとする「向上心」 など

 

学習する組織とチーミング

チーミングは、最適なチームワークの構築に挑み続けるという考え方であり、学習する組織の考え方と非常に近しいものがあります。心理的安全性や共通言語に加えて、学習する組織をつくるうえで有効な考え方を組織に導入すると、チーミングにも効果的です。

「学習する組織」に有効な4つの考え方

・有効な考え方(1)システム思考

システム思考とは、お互いに影響し合う要素や構造を“システム”に見立て、システムの内容を“図”に落とし込むことで、全体像を把握し、課題解決につなげる考え方です。

 

平易な言葉を使うと、“一つの物事を変えれば、ほかの物事にも影響を与える”という考え方になります。システム思考を取り入れると、ばらばらの視点で物事をとらえるのではなく、さまざまな要素のつながりを“見える化”できます。

 

つながりを“見える化”することで、どのような意思決定が最適か?なども、共通認識を持って議論しやすくなるでしょう。

 

・有効な考え方(2)個人のミッション

チーミングをするうえでは、メンバーそれぞれの自己実現欲求や目標などを大切にすることも重要です。

 

たとえば、開発チームの課題を解決するために、SE(システムエンジニア)のAさんにプログラマーの仕事を期間限定でお願いすると仮定しましょう。

 

SEのAさんが「一人前のSEになる!」という自己実現を目指してトレーニング中だった場合、プログラマーの仕事に対して“以前の職種に戻される”というイメージを持つ可能性もあります。

 

チームの目標達成や課題解決をするには、メンバーにこうしたお願いをすることもあるでしょう。お願いの際には、別な自己実現欲求や目標を持つ相手から“同意をとること”を忘れないようにしましょう。そうすることで、お願いされた側は、納得して自分の仕事を行なうようになるでしょう。

・有効な考え方(3)チームのビジョン

チーミングを通じてチームワークを最適化するには、チームのビジョンなどを、メンバーとの協議で決めていくことも一つです。チームのビジョンをみんなで決めると、決めたビジョンに対する当事者意識が生まれます。

 

ビジョン決定の意思決定に参加してもらうことで、自分事としてオーナーシップも発揮しやすくなるでしょう。ビジョンなどが明確になると、価値観や意見の相違から衝突などが生じたときにも、原点に立ち返る、議論の土台を確認することが容易になります。

 

・有効な考え方(4)内省

チーミングを成功させるには、各メンバーが内省の習慣を持ったり、日々の仕事のなかで内省ができる仕組みがあったりすることも大切です。内省とは、経験を客観的に振り返り、成長や成功の再現、失敗の回避につなげる技術です。

 

たとえば、Aという意思決定をして、課題解決が成功したと仮定します。解決したときに、振り返りをしなければ、「意思決定Aによる成功なのか?たまたま成功しただけなのか?」などの学びが得られません。学びを得なければ、今回の成功を再現することは難しくなります。

 

内省から学びを得るサイクルは、コルブの経験学習モデルで解説されています。コルブの経験学習モデルは、「経験⇒内省⇒概念化⇒実践」というプロセス繰り返すことで、自分の経験を学びに変え、ほかの状況に応用する仕組みを示したものです。

 

コルブの経験学習モデルを詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。

 

 

まとめ

チーミングとは、最適なチームワークの構築に挑み続ける考え方です。チーミングを成功させるには、以下のようなポイントを押さえながら変化・状況にチームを対応させていくとよいでしょう。

  • 組織の目的、ビジョン、方針を共有する
  • 安心して発言・挑戦できる場を作る
  • 共通言語を持つ
  • 相互理解を促進する
  • パラダイムと相乗効果を理解する
  • 違いを知り尊重する
  • やり続ける

 

また、チーミングは「学習する組織」の考え方とも非常に近い関係があります。そのため、チーミングを成功させるには、「学習する組織」を実現する4つの要素も参考になるでしょう。

  • システム思考
  • 個人のミッション
  • チームのビジョン
  • 内省

 

なお、メンバーの内省を習慣化するには、日誌を活用するのもおすすめです。HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、日誌を通じた内省によって目標達成力と人間力を同時に高める「原田メソッド」研修を提供しています。

 

内省の効果性を高める日誌を求める人は、以下のページから日誌テンプレートをダウンロードしてみてください。

 

 

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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