カルチャーフィットとは?採用における導入と見極め方を解説

更新:2023/07/28

作成:2022/12/16

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

カルチャーフィットとは?採用における導入と見極め方を解説

苦労して採用したのに、ミスマッチによって早期離職してしまう、また、組織風土と合わず周りと馴染めないといったことがあると大きな損失になります。

 

このような事態を防ぐのに大切なのが採用における「カルチャーフィット」の視点です。

 

カルチャーフィットとは、会社の組織風土や価値観と、候補者の特性や価値観とのフィット度合いを指します。

 

採用においてカルチャーフィットをきちんと確認することは、早期離職の防止はもちろん、早期活躍にもつながります。

 

本記事では、カルチャーフィットの考え方や選考の中でカルチャーフィットする人材を見極めるポイントを解説します。

<目次>

カルチャーフィットの意味とは?

採用活動、とくに中途採用のなかで時々使われるカルチャーフィットという単語は何を意味しているでしょうか。

 

本章では、カルチャーフィットの概略や重要性を確認しておきます。

 

カルチャーフィットとは?

カルチャーフィットとは、会社の組織風土や価値観に、候補者の特性や価値観がフィットしている度合いを指します。

 

ここでのカルチャーは、「現状の社風」ということだけではなく、「自社のミッションやビジョンへの共感度」や「バリューと候補者のコンピテンシーの一致度」といった点も含まれます。

 

カルチャーフィットした人材が入社すると、組織に馴染むスピードが早く早期離職等を防げます。

 

また、自社のカルチャーに基づく教育やサービス提供の基準等に対する吸収も早く、スムーズに戦力化、また、管理職や幹部候補へと成長してくれる可能性も高いでしょう。

 

カルチャーとは、組織内で推奨される行動パターン、選択される判断基準です。

 

従って、カルチャーでミスマッチしていると「物事の進め方や意思決定への違和感」が繰り返し生じることになります。

 

入社した本人から職場の同僚や上司の発言や行動への違和感がある、また、受け入れた同僚や上司からも入社した人の発言や行動に違和感が生じます。

 

“居心地”がよくない状況であり、人間関係の構築や指導内容の吸収にも影響を及ぼします。結果的に、早期離職や定着したとしても成長の阻害要因となってきます。

 

カルチャーフィットとスキルフィットの違い

スキルフィットは、カルチャーフィットと対になる考え方で、文字通り候補者が保有するスキルと採用要件の合致度を指します。

 

カルチャーフィットとスキルフィットはいずれかが重要というわけではなく、双方の視点でフィット度をきちんと見極めることが大切です。

 

なお、ポテンシャル採用においては、カルチャーフィットに重きを置いて入社後の伸びしろを見ることが多くなります。

 

一方、キャリア採用では即戦力を重視するため、スキルフィットを重要な判断指標とすることが多くなるでしょう。

 
ただし、スキルフィットのみで採用すると、組織にマッチしない人材が入社することで組織の一体感を乱したり、パフォーマンスの阻害要因となったりする恐れがあります。

 

このように対象者に応じて「どちらかに重きをおく」ことはあっても、どちらかのみで選考すると言うことはありません。両方の視点で選考することが必要です。

 

カルチャーフィット切りとは何?

カルチャーフィット切りとは、スキル要件を満たしているがカルチャーフィットしていない候補者を不採用にすること、また、転じてカルチャーフィット切りする採用方針そのものを指す言葉です。

 

候補者の能力やスキル不足を表す指標ではなく、採用しても能力を活かしてもらいづらい、または活躍してもらいにくいことを考慮した前向きな採用姿勢です。

 

絶対的に正しいカルチャーというものがあるわけではありませんので“合う/合わない”という話です。

カルチャーフィットが注目される背景は?

中途採用におけるカルチャーフィットを重視する会社は徐々に増えています。増加の背景としては、大きくは下記3つがあるでしょう。

 

知識労働の増加

現在、オフィスワーカーの大半は知識労働者(ナレッジワーカー)となっています。

 

知識労働者(ナレッジワーカー)は、ひとりで成果を生み出すわけではなく、上流工程・下流工程のメンバーとコミュニケーションを図り、成果を生み出すことが多くなります。

 

つまり、組織内にチームワークを乱す、阻害するメンバーがいると、チームないしは組織全体の生産性やパフォーマンスを低下させる原因となります。

 

だからこそ、組織におけるカルチャー形成(バリュー浸透)などが重視されるようになっていますし、採用というエントリーマネジメントにおいてもカルチャーフィットをきちんと見られるようになっています。

 

ミスマッチの防止

日本は諸外国と比較しても解雇規制が強く、雇用のミスマッチが生じたとしても、客観的かつ合理的な理由がない限りは、解雇することはできません。

 

そして、少子化が進む中で、労働人口、特に若年層の人口減少は著しく、採用はますます難しくなるでしょう。

 

つまり、全般的な傾向として、解雇も出来ないし、代わりの人を採用することも難しいわけです。

 

だからこそ、採用で妥協してはいけないという感覚が強まってきています。

 

エンゲージメントの強化

この数十年間で、日本における終身雇用は崩壊し、転職が当たり前のものとなりました。

 

とりわけZ世代などの若年層は、入社時から転職を視野に入れてキャリアプランを描いている人も少なくありません。

 

また、政府主導による働き方改革の推進によって、副業や兼業、フリーランスなどさまざまなワークスタイルが台頭しました。

 

さらに、コロナ禍によって急速にリモートワークが普及した結果、組織における“遠心力”が強くなりつつあります。

 

だからこそ、組織の“求心力”を強くするために、ミッション・ビジョン・バリューの浸透による精神的なつながり、チームワークや心理的安全性の強化を通じた人間的なつながりを強くしていく動きが増えています。

 

カルチャーフィットの重視もこのようなエンゲージメント強化につながるものといえます。

カルチャーフィットのメリット

採用活動できちんとカルチャーフィットの視点を取り入れることで、どのようなメリットがあるでしょうか。大きくは下記5つに集約されます。

 

生産性の改善

カルチャーフィットを意識して採用を実施することで、ミッションやビジョンなどに共感する人材、バリューを共有できる人材を採用できます。

 

目標や価値観を共有していれば、組織内におけるコミュニケーションもスムーズとなり、生産性向上につながります。

 

特に、中堅中小企業やスタートアップなど、人数が少ない、役割分担等が固まり切っていない組織であるほど、有効に働くでしょう。

 

早期離職の防止

カルチャーフィットを重視すると、「会社の雰囲気や社風に馴染めずにすぐ離職してしまった」という事態を未然に防げます。

 

早期離職率の低下は採用コストや育成コストの削減にもつながります。

 

組織の一体感維持

じつは組織にとって最も厄介な存在は、「カルチャーフィットしていないが、パフォーマンスが高い従業員」です。

 

パフォーマンスが高い従業員は周囲にも大きな影響力を与えます。

 

その人が、ミッション・ビジョンやバリューに沿わない言動をすれば、組織の一体感は崩れていきます。

 

また、カルチャーフィットしていない人材は、経営サイドから見ると上記のリスクがあるため、給与や賞与などの待遇は提供できても、役職やポジションは与えづらくなります。

 

しかし、昇格させないことで、本人の中に「成果を出しているのに評価されない」という不満が生まれやすくなります。

 

つまり、「カルチャーフィットしていないが、パフォーマンスが高い従業員」は潜在的に組織と対立構造の陥りやすく、じつは組織の開発上のリスク要因となります。

 

エンゲージメント強化やブランド形成

組織内に良いカルチャーが浸透、統一されると、カルチャーを共有する従業員にとって働きやすく、居心地が良い組織となります。

 

従業員エンゲージメントの向上につながりますし、「○○社といえば〇〇というイメージ」といった対外的なブランド形成にも寄与します。

 

採用へのプラス効果

カルチャーが明確になり、前述したような対外的なブランドが形成されると採用にもプラス効果を与えます。

 

そもそもカルチャーフィットした人材が集まりやすくなりますし、リファラル採用や、SNS採用やアルムナイ採用などにも良い効果を及ぼすでしょう。

カルチャーフィットのデメリットや弊害

カルチャーは、現状の社風を表すものではなく、ミッションやビジョン、バリューなどを含めたものです。

 

ここを誤解して捉えていると、デメリットや弊害も出やすくなりますので、注意が必要です。

 

多様性が失われる

「カルチャー=現状の社風」として捉えて、カルチャーフィットを重視していくと、組織が“金太郎あめ化”し、多様性が失われてしまいます。

 

強くなっていくと、異なる意見のメンバーを排除する方向に同調圧力が働くこともあります。

 

意思決定のスピードは早まりますが、イノベーションを起こそうとしたり、前例がないことを実施したりすることも難しくなります。

 

成長や変化を阻害する

大きな変革が求められるステージの組織、急成長ステージの組織においては、現状の価値観や文化を壊していかなければいけない局面もあります。

 

例えば、今まで“物を売る”ことをしていた会社が“サービスを売る”方向に変化しようとするタイミングでは、社内の価値観を大きく変える必要があるでしょう。

 

こうした際に、カルチャーフィットを重視しすぎると、成長や変革を阻害する恐れがあります。

 

採用難易度が上がる

採用基準にカルチャーフィットの視点を入れれば、当然、判断基準が増える分、採用難易度は高くなります。

 

上述したとおり、リファラル採用などはしやすくなる反面、求人媒体や人材紹介会社を経由した採用率は低くなりがちです。

カルチャーフィットする人材を見極めるポイント

候補者のカルチャーフィットを見極めるには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。

 
採用選考においてカルチャーフィットを確認するポイントをいくつかご紹介します。

 

自社で大切にしたい“カルチャー”を言語化する

まず、カルチャーを言語化しましょう。選考基準に加えるべき“カルチャー”は、“現状の社風”という側面もあります。

 

しかし、「現状の社風に合いそうか?」という視点で選考すると、前述したような弊害が出やすくなります。

 

「ミッションやビジョンから落とし込んだ時、どんな“カルチャー”:考え方が必要か?」、バリューと紐づけて「どんな価値観や行動を推奨したいのか?」から選考基準に入れたいカルチャーをきちんと言語化しましょう。

 

適性検査を導入する

考え方や価値観は面接ではなかなか見抜きにくいもののひとつです。

 

もちろんコンピテンシー面接などを取り入れることで参考になる情報を得られますが、スキルフィットに比べると相対的に難しい側面があります。

 

だからこそ、適性検査を導入して、本人の価値観や特性、動機など内面的な情報を診断することも有効です。

 

適性検査の結果と過去のエピソードや言動などを照らし合わせていくことで、カルチャーフィットの度合いをより正確に見極められるでしょう。

 

面接で候補者のエピソードを聞く

上述した通り、顔を突き合わせて双方向でコミュニケーションする面接もカルチャーフィットを見極める材料になります。

 

過去の行動や意思決定のプロセスなどを「STAR面接」などの手法も使いながら、深掘りしていくとよいでしょう。

 

過去の行動や意思決定プロセスと適性検査の結果が一致しているようであれば、信頼度が高まります。

 

面接で採用候補者の価値観や考え方を質問する

過去のエピソードと合わせて、候補者が大切にしている価値観や考え方をヒアリングすることも有効です。

 

ひとつの質問だけですべて分かるわけではありませんが、上述のようにエピソード、適性検査の結果等と一致しているかを意識しながら答えを見極めましょう。

Q:働くうえで大切にしていることを3つ挙げるとしたら何ですか?
Q:それは、具体的には職場でのどんな行動や考え方につながっていますか?
Q:上記について前職でどんな具体的なエピソードがありますか?
Q:こういう場合には、○○さんならどうしますか?(どちらの選択肢をとりますか?)
Q:それはなぜですか?

カルチャーを浸透させるコツとは

カルチャーフィットを実施する場合、受け入れる組織側でカルチャーをきちんと言語化、また、浸透させることが大切です。

 

受け入れる組織側でカルチャーが浸透していないのに、採用だけカルチャーフィットの視点を取り入れてもあまり意味はありません。

 

本章では社内にカルチャーを浸透させるコツについて、ステップごとに紹介します。

 

経営陣が、カルチャーを発信・体現する

前述した通り、カルチャーを浸透させるためには、まず言語化することが大切です。

 

多くの場合、バリューや行動規範という形になるでしょう。カルチャーは定性的なものだからこそ、きちんと言語化することが必要です。

 

ただし、言語化しただけではカルチャーは浸透・定着しません。

 

まず誰もが他の人に説明できるほどわかりやすい端的な言葉にし、それを繰り返し経営陣が社内に発信する。

 

そのうえで、“壁に貼られた標語”として形骸化しないように、経営陣や管理職などのメンバーがカルチャーの体現者となることが何より大切です。

 

社内制度の見直し

カルチャーを言語化したら、社内制度とも照らし合わせていきましょう。職場には人事にまつわるさまざまな制度があります。

 

評価制度、昇格制度、表彰制度…といったものです。

 

こうした制度の影響力は大きく、こうした人事制度とカルチャーに矛盾や乖離があると、カルチャーの浸透は難しくなります。

 

「口ではカルチャーと言っているけど、結局評価するのは数字なんでしょ」といった状態です。

 

だからこそ、例えば、評価制度であれば、成果主義に基づく業績などの評価項目のほかに、バリューの実践などカルチャーの定着を確認できる評価項目を盛り込むといった形で、社内制度がカルチャーの浸透を後押しするように見直すとよいでしょう。

 

教育研修やマネジメントに盛り込む

まず新卒採用でもキャリア採用でも、入社初期に価値観や実践行動を教える研修をきちんと実施することが大切です。

 

同時に、触れる機会が少なくなると、意識が薄れていくのが人間です。

 

全社員を対象にして、定期的にカルチャー浸透させるための研修やワークショップの実施が重要です。

 

日々の朝礼や、表彰制度などに盛り込むことも有効な手段の1つです。

 

カルチャーの浸透に関しては以下の記事もぜひ参考にしてください。

カルチャーフィットの視点で採用を成功させよう

カルチャーフィットは、組織の価値観や文化と候補者の特性や価値観が合っているか?という採用選考の視点です。

 

仕事で必要する能力と持っているかというスキルフィットの視点と両方の視点で採用選考を行うことが非常に大切です。

 

スキルフィットだけで採用選考を行うと、ミスマッチによる早期離職や成長の阻害要因、また、組織の一体感を壊す要因にもつながります。

 

ただし、カルチャーフィットも“現状の社風に馴染むか?”という視点だけで捉えると、人材の同質化が進み、組織の成長や変革の妨げになります。

 

自社のミッションやビジョン、また、バリューなどをきちんと明確化して、“組織において全社員が共有すべき、価値観や行動規範は何なのか?”を言語化してカルチャーフィットを選考に組み込みましょう。

 

カルチャーフィットを見極める面接や選考のポイントなどは、記事で紹介したものが参考になれば幸いです。

 

なお、カルチャーフィットとスキルフィットを同時に見極められる適性検査にご興味あれば、ぜひ以下の資料をご覧ください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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