苦労して採用した新人を受け入れるために、しっかりと準備をして社内の体制を整えておくことが非常に重要です。新人は新たな環境で働くことに期待に胸を膨らませている一方で、不安も抱えています。受け入れの体制が十分に整っていないと、会社に馴染む前に不満を募らせ、離職を選ぶことにもつながりかねません。
記事では、新人が会社に早く馴染み、一人前の社員として定着するための社内の体制づくりについて、有名な「動機づけ・衛生理論」をベースにした3つのポイントを解説していきます。
<目次>
- 新人を受け入れるに際して知っておきたい「動機付け・衛生理論」
- 新人を受け入れる組織づくりのポイント1.「支援する」
- 新人を受け入れる組織づくりのポイント2. 「報酬を与える」
- 新人を受け入れる組織づくりのポイント3. 「成長を促す」
- まとめ
新人を受け入れるに際して知っておきたい「動機付け・衛生理論」
社員が会社に定着する理由の研究としては、フレデリック・ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」が有名です。
ハーズバーグは、明確な会社の方針や給与・福利厚生等の労働条件、管理手法といった「衛生要因」が欠けていることが社員の不満足を招き、離職につながってしまうと指摘しました。従って、これら衛生要因を満たすことで社員の不満を減らすことができます。
しかし、「衛生要因が満たされたとしても不満が減るだけで、積極的にこの会社にとどまろうというモチベーションは高まらない」ともハーズバーグは言っています。たとえば、給与が高いだけでは社員をつなぎとめることはできないのです。
社員が確実にこの会社にとどまり、モチベーション高く働くためには「動機づけ要因」が必要です。動機づけ要因とは、やりがいのある仕事や成長の機会、承認等です。一言でいえば、「自分がこの会社にいることの重要性を仕事の中で感じられること」です。会社の経営方針が明確で、福利厚生等が充実しているといったことだけで満たすことは決してできないでしょう。
人はだれでも、「自分」という存在の価値を感じたいものです。そのためには、周囲の人たちから受け入れられている、承認されている、という実感が必要です。新人を受け入れる体制・環境を考えるうえで、まずこの「動機づけ要因」を踏まえた検討も必要です。
「動機づけ・整理理論」はモチベーションに関する理論として、広く知られていますが、じつは社員の定着に関する研修なのです。新人の受け入れを考えるでは、「衛生要因が欠けていないか」、そして、「動機づけ要因が十分に設計されているか?」、2つの視点で検討すると、抜け漏れが少なくなるでしょう。
新人を受け入れる組織づくりのポイント1.「支援する」
新人がこの会社にいることの重要性を感じている、つまり会社として新人に関心を示し、存在価値を認めているという体制・環境をつくるためのポイントを具体的に見ていきます。
受け入れた新人を支援する「体制・環境の整備」
まず1つ目は、新人を「支援する」体制・環境の整備です。仕事を始めた新人がまず困ることは、「誰に/どこに助けを求めたら良いか?」ということです。新しい仕事で壁にぶつかったときに、「わからない」「できない」と口にすることを躊躇する新人もいることでしょう。適切な支援・サポートをすることで本人が自分の仕事に手ごたえを感じることができれば、仕事に対する自信や責任感が芽生えることが期待できます。
適切な支援・サポートは、以下のような視点で考えるとよいでしょう。
- 能力:仕事をやり遂げ、高いパフォーマンスを発揮させるために必要な知識や情報、スキルを身につけさせるにはどのような支援・サポートができるか
- リソースとプロセス:仕事をやり遂げるために必要なリソースの確保と、業務遂行上のプロセスにおいてどのような支援・サポートができるか
- モチベーション:仕事に対するやる気を引き出し、気分よく仕事を進められるようにするためにはどのような支援・サポートができるか
受け入れた新人に対して上司や先輩がすべきこと
新人を支援するうえで、「能力」「リソースとプロセス」「モチベーション」という3つの視点を持つと、上司やその他周囲の先輩社員が新人に対してすべきことも考えやすくなるでしょう。
- てこずっている仕事を手伝う
- 話をよく聴く
- 仕事を進めるうえで有益な情報を持っている社員を紹介する
- 家庭の事情に配慮して仕事を与える
- サポートをおこなう先輩社員をつける(ブラザー・シスター、メンター等と呼びます)
等が挙げられます。「支援する(支援される)」体験を通じて、新人は「会社は自分に関心を示してくれている」「自分は大切にされている、尊重されている」と感じるようになるでしょう。「自分がこの会社にいて良いのだ」と認識すること(存在の許可)は、仕事に対する高いモチベーションのきっかけとなります。
新人を受け入れる組織づくりのポイント2. 「報酬を与える」
新人を受け入れる組織づくり、2つ目のポイントは、「報酬を与える」ことです。
金銭的報酬は「衛生要因」である
報酬と言えば、給与・ボーナスといった金銭的報酬が真っ先に思い浮かぶでしょう。もちろん仕事に対する金銭的報酬を与えることは重要ですが、給与等は「衛生要因」です。モチベーションが高める動機づけ要因ではなく、逆に、理由はどうあれ減ってしまえば、たちまち不満につながりモチベーション低下を引き起こします。
日本でも能力給・成果給を給与制度に取り入れている企業も増えています。能力や成果を正しく評価することは非常に大切ですが、あくまで「衛生要因」であり、「正しく評価されたから上がる」よりも「正しく評価されていないと下がる」側面が強いと認識しておきましょう。
新人の受け入れで大事なのは「望む報酬」を知ること
新人の受け入れにおいて、与えるべき報酬とは「精神的報酬」です。仕事で、「私は良い仕事をした」と社員が感じているときに求めているものは「承認」です。自分の日々の頑張りを何らかの形で認めてもらうことで、仕事に対する充実感や納得感を得られることになります。
なお、手に入れたい承認の「形」は人によって異なります。成長実感や感謝の言葉がやりがいとなる人もいますし、仕事上の自由な裁量権が欲しいという人もいれば、より大きなチャレンジの機会が欲しいという人もいるでしょう。顧客ひいては社会に対する貢献の実感という人もいれば、ワークライフバランスをとるための長期休暇、おいしい食事に連れて行って欲しいという人もいるかもしれません。
大切なことは、新人が仕事の対価として何を求めているのか、言い換えれば、何が手に入ると、いきいきと働くのかを知ることです。新人の頑張りに対して的確な報酬で報いることができれば、新人のモチベーションは高まり、以後、会社に定着し活躍する道を歩むことが期待できます。逆に求めていない報酬を押し付けるようなことになってしまえば、その新人はいつまでも働く意味を見出すことができないかもしれません。
新人一人ひとりが何を求めているのかを知る、やはり、まずは関心を示すことから始めるべきです。採用面接等では、入社動機、なぜこの会社で働きたいのか、あるいは仕事の中で何を実現したいか、といった想いを必ず聞いていると思いますが、入社後、配属時にも改めて聞いてみると良いでしょう。
仕事は人生の一部であり、仕事が充実しているかどうかが、人生そのものの豊かさにつながります。仕事に対してどのような報酬を与えるのかはそれだけ重要なことなのです。
新人を受け入れる組織づくりのポイント3. 「成長を促す」
新人を受け入れる組織づくりのポイント、3つ目は、「成長を促す」ことです。非常に当たり前のことに聞こえるかもしれません。
ビジネスのグローバル化の進展、あるいはテクノロジーの急速な進化等に伴い、自分たちは強烈な競争社会の中にあり、この流れに乗り遅れてはいけないと危機感を募らせている若者たちがいます。彼らは向上心があり、成長意欲も高く、「自己成長の機会があるのかどうか」を会社選びの大きなファクターとしています。上記ほど強い想いは持っていないにしても、子供のころから物理的に満たされた環境の中で育ってきた、いまの若者は「成長欲求」が強いという特徴があります。
「成長欲求」が強い意欲的な新人は、会社にとっては、将来の成長が非常に楽しみな存在になりますが、彼らの求めている環境を用意できなければ、そもそも会社から去ってしまう傾向にあります。また、彼らは「成長欲求」が強い側面がありますが、一方で「失敗を怖がる」側面もあります。
従って、少し矛盾するように感じるかもしれませんが、
- 仕事を通じて成長したポイントを承認する
- 新たな仕事に挑戦させる
- 新たな仕事を任せた際には放置・放任ではなく、伴走する
といったことが必要です。定着し、長く活躍することを新人に期待するならば、新人が「成長実感」を持ち続けられる工夫を考えていきましょう。
まとめ
苦労した使用した新人をうまく受け入れて、定着・活躍させられる組織を作ることは、組織の成長にとって重要なテーマです。記事では、ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」を踏まえて、「支援する」「報酬を与える」「成長を促す」という3つのポイントを紹介しました。
しっかりと対策することで、新人の受け入れ力は確実に高まります。記事で紹介した精神的な側面での受け入れ態勢づくりと並んで、受け入れの準備、教育計画の設計をおこなえば、効果は確実です。是非、下記からダウンロードできるお役立ち資料を活用し、参考にしてみてください。