多くのリーダーシップ研修では、研修プログラム内でグループワークが実施されます。グループワークは、以下のような点で効果的です。
- 自分の癖や傾向を客観視する
- 実践的なリーダーリップを身に付ける
- リーダーシップの発揮に必要な能力やスキルを鍛える
記事では、リーダーシップ研修におけるグループワーク導入のメリットや、グループワークを効果的にするポイント、おススメのワークを紹介します。
<目次>
- リーダーシップ研修とは?
- リーダーシップ研修の注目が高まっている背景
- リーダーシップを発揮するために求められる要素の整理
- リーダーシップ研修にグループワークを取り入れる理由やメリット
- リーダーシップ研修で使えるおススメのグループワーク5選
- グループワークを効果的にするポイント
- まとめ
リーダーシップ研修とは?
ひと口に「リーダーシップ研修」といっても、大きく分けて2種類の研修があります。
若手や全社員を対象としたリーダーシップ研修
一つは、若手や全社員を対象としたリーダーシップ研修です。
全社員などを対象とする場合、リーダーシップは「セルフリーダーシップ」の発揮を指し、「主体性」などの単語とも近いニュアンスとなります。自分に対するリーダーシップを、個人ワークやグループワークなどを通じて身に付けていきます。
管理職および候補者向けのリーダーシップ研修
チームリーダーや課長・係長、現リーダーや新任リーダー、リーダー候補を対象とする研修です。管理職研修と近しいニュアンスともいえるでしょう。
管理職は、一般社員よりも高いセルフリーダーシップを基盤とする必要があり、他者に対するリーダーシップを発揮して、組織の成果を生み出していくことが求められます。
管理職向けのリーダーシップ研修では、セルフリーダーシップの再確認とともに、コミュニケーションや目標達成の技術なども併せて学ぶことが多いでしょう。
研修の対象によって内容の切り分けが必要
両者は「セルフリーダーシップ」という点では重複しますが、似て非なる内容です。どちらの対象向けに実施したいのか、どのようなリーダーシップを伸ばしたいのかによって研修内容の切り分けが必要となります。
なお、本記事では、後者の「管理職および候補者向けのリーダーシップ研修とグループワーク」を解説します。
リーダーシップ研修の注目が高まっている背景
リーダーシップ研修は近年、以下2つの理由で注目されやすくなっています。
トップダウン型経営の限界
過去、いわゆる「工場で大量生産して、それを売りさばいていく」ような時代にも、社員のリーダーシップは必要とされていました。
しかし、リーダーシップよりも、決められた手順やマニュアルに沿ってきっちりと物事を進めていくフォロワーシップのほうが重要であり、リーダーシップの重要性は、現代よりも低かったといえます。
一方で、時代が変化するなかで、産業のサービス化、さらにサービスの個別化、IT等による変化スピードの加速などが進んでいくと、トップダウンですべての物事を決めて、適切に指示することはほぼ不可能になっていきます。
現場のリーダー・管理職の実力が組織の競争力の源
上記の変化を受けて、組織の戦略や大方針は経営サイドで決定したうえで、戦術、顧客対応、また外部環境の変化をくみ取っての変化対応などを現場でどれだけスピーディー、的確に実行していけるかが組織の競争力となる時代に変わっています。
そのため、最近では、メンバー一人ひとりのリーダーシップや、戦略や施策の実践を担うマイクロチーム(90名以下ぐらいの小規模チーム)をまとめられるマイクロリーダー育成が注目されるようになっています。
リーダーシップを発揮するために求められる要素の整理
管理職に必要なリーダーシップは、おもに5つの要素で考えられます。
2つの要素は、マインドや人間性の側面です。また、能力面の要素は、ビジネスパーソンの能力を3つに大別するカッツモデル(テクニカルスキル・ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキル)で考えると理解しやすくなります。
カッツモデルとは、ハーバード大学の経営学者・ロバート・カッツ氏が、組織内の各階層で求められるビジネススキルをわかりやすく分類したものです。カッツ理論と呼ばれることもあります。組織内の階層を3つに分け、それぞれに必要なビジネススキルの割合を以下の図であらわしています。
- 経営幹部 :トップマネジメント層(社長、CEO、取締役 など)
※本来のカッツモデルは上記の通り、管理職内での階層による必要能力の違いを示しています。しかし、ロワーマネジメント層をホワイトカラーのプレイヤー層を含む形で理解しても違和感はなく、本図では経営幹部・管理職・プレイヤーと表現しております。
リーダーとして信頼される人間性やあり方
管理職としてのリーダーには、人を動かして組織の成果を上げることを求められます。マネジメントの世界には、「何をいうかより、誰がいうか」という言葉があります。
メンバーとの信頼関係がなければ、どれだけ正しいことをいっても、メンバーに受け入れたり実行したりしてもらえません。したがって、信頼される人間性やあり方は、リーダーにとって必要不可欠なものです。
リーダーとして意思決定する決断力
リーダーとしての役割を果たすうえでは「意思決定」が必要不可欠です。特に管理職としてのリーダーには、自らの責任で決断しなければならない場面が多々あります。
したがって、リーダーシップ研修では、意思決定することに対する心構えや主体性、意思決定にまつわるスキルも身に付けるとよいでしょう。
テクニカルスキル
管理職としてのリーダーには、組織の成果を上げるために、目標設定、計画作成、進捗管理などの実務能力(テクニカルスキル)が求められます。
ヒューマンスキル
管理職としてのリーダーの場合、自分で動いて成果を上げるプレイヤーと異なり、人を動かして組織の成果を上げることが求められます。そのため、人間性のあり方を基盤として、人材育成やメンバーを動かすためのコミュニケーション力(対人関係力)が重要となります。
コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルとは、成果を上げるための勘所を見抜いたり、ビジョンを描いたりする概念化力です。経営幹部や事業運営に携わるようになると、特に重要性が増していきます。チームマネジメントにおいても、意思決定やメンバーをモチベートするうえでは徐々に必要になってくる力です。
リーダーシップ研修にグループワークを取り入れる理由やメリット
リーダーシップ研修にグループワークを取り入れると、以下のメリットが得られます。
実践的なリーダーリップを身に付けられる
座学中心の研修では、講義を聴くだけという受け身の態勢になりがちです。また、集中力も途切れやすくなります。一方で、グループワークを通じて体感したり議論したりすると、実践に近いリーダーシップを身に付けられるようになります。
リーダーシップの発揮に必要な能力・スキルを鍛えられる
グループワークを研修で用いることは、ファシリテーション能力やコミュニケーション能力などリーダーシップに必要な要素を鍛えることにもつながります。
さらには、グループワークのお題によっては、問題解決の実践、ロジカルシンキングや問題解決に向けたコミュニケーションと意思決定などを学ぶことも可能になります。
ワークスタイルの振り返り
他者と実施するグループワークでは、自分のコミュニケーションや意思決定の習慣や癖が出てきます。グループワーク後にしっかり振り返ったり、フィードバックしたりすると、自分の現状理解につながります。
リーダーシップ研修で使えるおススメのグループワーク5選
リーダーシップ研修の効果性を高めるには、以下のグループワークを取り入れるのがおススメとなります。
ベストチーム
各チームを企業と位置づけ、業績や利益が高い「ベストチーム」を目指すゲームです。ベストチームでは、PM理論というマネジメント理論をベースとした全22種類の青色カード(行動カード)と、青色カードの収集で入手できる赤色カード(得点カード)を使います。青色カードは、以下の2種類に分かれます。
- 業績を上げる行動が書かれたカード(11種類)
- 関係を高める行動が書かれたカード(11種類)
ゲームでは、最初に配布された7枚の行動カードを見ながら、「どのカードをそろえるか?」や「ライバルチームとの交渉にどのカードを使うか?」を考えます。当初はカード枚数も少ないため、どのチームでも明確な戦略立案は難しい状態です。
しかし、メンバーとの情報共有や意見交換、役割分担をうまく行なうことで、獲得ポイントを確実に積み重ねられます。
ベストチームをグループワークに取り入れると、リーダーに求められるPM行動(Perfomance/Maintenance)のバランス、目標達成に向けた計画立案の重要性、Win‐Winの交渉をするために相手チームの要望に耳を傾けるコミュニケーション力や交渉力などが身に付きます。
コンセンサスゲーム
与えられた課題について、4~6名程度のメンバー全員で話し合い、合意形成(コンセンサス)をするゲームです。よく知られた以下のようなゲームも、コンセンサスゲームの一種です。
- 砂漠からの脱出
- 9人のポジション
- NASAゲーム
コンセンサスゲームを行なうと、複数人がいるなかでの合意形成するプロセスを学べます。また、相手からのコンセンサスをえるためにすべきこと、交渉スキル、コミュニケーション力の向上等が期待できます。
また、外部からのフィードバックなどを受けると、自分のコミュニケーションやリーダーシップスタイルを現状確認することもできます。
THE商社
THE商社は、3~6人ほどのチームを組み、ライバルチームと交渉や取引をしながら、自分のチーム(自社)を成長・拡大させていくゲームです。
計画・行動・決算の3つで1ターンとなり、合計4ターンでの最終利益を競い合います。
ゲームを通じて、Win-Winの関係を自発的に作る重要性を実感できます。また、チームの負債を残さないことを心がけることで、メンバー全員の主体性やリーダーシップも育まれやすくなります。
ビズストーム
参加者一人ひとりが社長になって企業を成長させていくビジネスゲームです。ビズストームの最大の特徴は、「顧客に価値を提供し、競合のなかから選んでもらう」というビジネスの原則を起点とし、経営戦略やマーケティングを重視している点です。
ビズストームでは、以下のようなビジネスの基本を理解することができます。
- 利益の仕組み
- 価格設定
- 経営資源の配分
- 価値創造
- 人材活用
など
また、ビズストームは、リーダーシップをとるうえで欠かせない戦略的思考の習慣づけにも効果的です。振り返りやフィードバックを通じて自分の考え方の癖に気付くことで、自律的に動けるようになったり、視野が広がったりするメリットもあります。
トナリノココロ
「承認」を至るところに散りばめた協力型のコミュニケーションゲームです。参加メンバーは、企業の「特命部」社員として全社の課題解決を目指していきます。
ゲームのプロセスを通じて、承認の重要性や「承認する/される」ためのポイントを身に付けられるのが、トナリノココロの最大の特徴です。
ゲーム内では「承認」をルール化しているため、一般的な研修では照れくさい気持ちを伝えるなどの活動で、研修内の人間関係や雰囲気をよくできる利点もあります。
グループワークを効果的にするポイント
研修内のグループワークを効果的にするためには、研修設計や進行において以下の3点に注意するとよいでしょう。
本気で取り組ませる
グループワークをするときに傍観者や評論家が出てしまうと、効果性が落ちてしまいます。ですので、参加者全員にグループワークに全力で取り組んでもらうことが大切です。夢中になれる、ある意味で「楽しめる」雰囲気を作ることなども重要となります。
振り返りやフィードバックを行なう
グループワーク実施後には、必ず振り返りやフィードバックを行ないましょう。グループワークでは、普段のコミュニケーションスタイルや意思決定の癖が出ます。日常の癖、リーダーシップやコミュニケーションで、できていること/できていないことをしっかりと振り返ると、一人ひとりにとって効果的な学びとなります。
職場での実践につなげる
研修は知識を習得する場ではありません。職場で実践して身に付けて、成果につなげることが重要です。グループワークやゲームだけでは、「面白かった」「学びになった」だけで終わってしまいがちになります。振り返りやフィードバックを経て、研修後に仕事や職場で何を実践するのか、しっかりと実践行動へ紐づけましょう。
まとめ
リーダーシップ研修にグループワークを取り入れると、実践的なリーダーリップ能力・スキルの効率的な習得、また、自分のコミュニケーションや意思決定における癖や現状把握、につながります。
リーダーにとって必要となる人間性とあり方、決断力、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルを磨くうえでも、グループワークは効果的です。
記事で紹介した5つのゲームや、効果的に実施するポイントも参考にして、ぜひリーダーシップ研修にグループワークを取り入れてみてください。