求人票の募集要項は、どのような求人チャネルを使う場合でも、母集団形成を効果的にするために基礎となる部分です。
自社のターゲット人材から応募を増やすには、募集要項を具体的、また、魅力的に作成することが大切になります。
なお、募集要項には、記載してはいけない条件や項目もあります。
記事では、まず、募集要項の概要と、採用活動で募集要項が重要な理由、募集要項に必要な項目、記載してはいけない項目を確認します。
確認したうえで、採用支援会社としての知見を踏まえて、求職者数が増える募集要項のコツと、募集要項を書くうえでの注意点を解説しましょう。
<目次>
募集要項とは?
募集要項とは、求人票に載っている以下のような内容の総称です。
- 応募条件
- 給与
- 勤務時間
- 業務内容 など
採用活動で募集要項が重要な理由
求人票の募集要項は、求職者と企業の初期接点です。また、求職者が応募するかを決めるポイントにもなりえます。
たとえば、募集要項を見た求職者に、以下のようなポジティブな想いが生まれれば、説明会の参加や応募などの次のステップに進もうとするでしょう。
- 「今の業務内容は、自分が挑戦したいものだ」
- 「今の応募条件は高すぎず、低すぎず、自分の経験にぴったりだ」
- 「今の待遇であれば、自分の希望条件に合いそうだ」 など
求職者に上記のようなポジティブな想いや強い関心を生じさせるには、募集要項のなかで求職者が求める情報を詳しく伝えるとともに、採用ターゲットとなる求職者に“自分にぴったりの求人だ”と伝えることが大切になります。
近年では、求職者が企業の選考や入社・退職などで感じたことをSNS投稿するケースが増えるようになりました。
募集要項と実情に乖離があれば、「募集要項の内容が嘘だった!」といった内容がSNSや口コミサイトに投稿され、自社の評判が悪くなる可能性もあるでしょう。
当然のことながら、募集要項には、虚偽や誇大な内容ではなく、適正な情報を記載する必要があります。
募集要項で必要な項目
募集要項には、法律で決められた必要項目があります。本章では、必要項目の概要を紹介しましょう。
法律で記載が必須とされている項目
2018年1月1日から施行されている職業安定法では、求人広告の掲載、自社ホームページでの募集などをする際に、求人票や募集要項などに以下の項目を明示することを定めています。
- 【業務内容】法人営業
- 【契約期間】期間の定めなし
- 【試用期間】試用期間あり(3ヵ月)
- 【就業場所】東京本社(東京都◯◯区◯◯)
- 【就業時間】9:00~18:00
- 【休憩時間】12:00~13:00
- 【休日】土日祝日
- 【時間外労働】あり(月平均10時間)
- 【賃金】月給25万円(ただし、試用期間中は月給20万円)
- 【加入保険】健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険
- 【募集者の氏名または名称】◯◯株式会社
- 【雇用形態(※派遣労働者として雇用する場合)】派遣労働者
なお、求人票のスペースが足りないなどの理由で全項目が記載できない場合は、「詳細は面接のときにお伝えします」などと書いたうえで、労働条件の一部を別途明示することも可能です。
ただし、上記の場合は、説明会や初回の面接などで、すべての労働条件を明示することが大切になります。詳しくは、厚生労働省の以下資料をチェックしましょう。
競合他社と差別化できる項目
自社の採用サイトや、求人企業が自由に使えるスペースのある求人サイトなどから募集をする場合、以下のような項目・内容を積極的に記載することで、採用ターゲットに向けたメッセージや自社の魅力を伝えやすくなります。
- 求める人物像(採用メッセージ)
- 福利厚生
- 研修制度
- 仕事のやりがい
- 得られる経験やキャリア
- キャリアアップのサポート
- 自社の独自制度 など
求職者ニーズ×自社の魅力にマッチするものを記載するとよいでしょう。
募集要項に記載してはいけない項目・条件
なお、原則として、募集要項で以下を記載することはNGになります。
- 性別の制限(男女雇用機会均等法)
- 年齢の制限(労働施策総合推進法)
- 主観的表現・差別表現(男女雇用機会均等法・障害者雇用促進法 など)】
- 最低賃金を下回る給与(最低賃金法 など)
たとえば、「20代の女性限定」などは、性別・年齢の制限で法律違反になるわけです。
ただし、いくつかのケースでは年齢制限が認められるといったものもありますので、下記の資料を参考にしてもらうとよいでしょう。
出典:男女均等な採用選考ルール(厚生労働省)
出典:募集・採用における年齢制限禁止について(厚生労働省)
出典:雇用分野における障害者に対する差別は禁止されています。(厚生労働省)
出典:最低賃金法とは(厚生労働省)
求職者数が増える募集要項のコツ
自社への求職者数を増やすには、以下のポイントを大切にしながら募集要項をつくる必要があります。
求める人材を明確にする
まず、採用ターゲット「自社でどういう人材が欲しいか?」を以下のように具体的に言語化します。
- IT営業の中途人材
- IT業界での営業経験が3年以上
- 英語力が高い(TOEICスコア〇点以上)
- 将来的に営業部のリーダーを任せられると良い など
なお、「●●の経験3年以上」といった条件は、本当に採用条件であれば記載すべきですが、定量的な応募条件を絞り込みすぎると、上記に該当しない人の応募を妨げることにもなるので注意が必要です。
また、上記のような“採用基準”である経験や能力などだけでなく、なぜ転職するのか、どのようなキャリアを描きたいのか、といった採用ペルソナの側面もしっかりと描いて、そういった側面からのメッセージを記載するとよいでしょう。
他の企業にない強み、求める人材にとっての魅力を書く
上記の採用ターゲットにとっての自社の魅力や強みを書き出します。
- 〇〇商品で業界トップシェア
- キャリアアップ研修も充実
- 海外への事業拡大も検討中
- リーダーは年収1,500万円以上 など
自社が欲しい人材を、キャリア観など含めた採用ペルソナの側面まで具体化すると、採用ターゲットに向けた定性的な魅力を書き出しやすくなります。
とくに、キャリア観を具体化すると、「自分にぴったりの求人だ」と思ってもらえるメッセージも考えやすくなるでしょう。
業務内容をイメージできるようにする
業務内容は、求職者が働いているイメージができるように具体的に記載します。
たとえば、「ITソフトウェアの営業」とひと言でいっても、どのタイプの売り方をするのかで、業務内容は大きく変わってきます。
たとえば、営業であれば、「どのような商品・サービスを、どのようなお客様に、どのようなスタイルで営業するのか?」を記載することで、求職者が働くイメージ、自分が求める仕事かどうかを具体的にイメージできるようになります。
近年では、“ブラック企業”を選んでしまうことを警戒する人が増えています。
そのため、募集要項で曖昧な表現を使うと、“胡散臭い”と思われやすくなりますので、回避する意味でも、具体的な情報を記載することは大切です。
給与や勤務時間は具体的に示す
給与や勤務時間に関して、募集要項と入社後の相違があると、早期離職の大きな原因になります。
なお、ハローワークが行なった調査「令和3年度 ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数」によると、賃金と就業時間に関する相違の申し出や苦情がトップでした。
- 賃金に関すること:1,043件(27%)
- 就業時間に関すること:728件(19%)
たとえば、「営業職の月給:25万円~70万円」のように幅広い表現をして昇給できる可能性が大きいことを感じさせながら、実際には「基本的に最低額の25万円から始まって数年かかっても30万円程度までしか可能性がない」となれば、入社後の不満は大きくなるでしょう。
こうしたギャップによるリアリティショックを防ぐには、「営業職の初年度は25万円、リーダー手当込みで32万円」などと具体的に書く必要があります。
残業がある場合も、以下のことをきちんと記載する必要があるでしょう。
- 月平均どのくらいなのか
- 繁忙期はどのくらいまで残業時間が増えるのか
- 残業代はどのような計算なのか(固定残業代や一律支給ではない など) など
給与や勤務時間などの待遇面は、定量的なものであるだけに、求職者が思い描いたものとギャップがあるとトラブルになりやすいです。募集要項を記載する際にも、注意が必要です。
出典:令和3年度 ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数
応募のハードルを下げる
極端な例ですが、以下のように厳しい要件を列記すると、応募できる人材はかなり限定されてしまいます。
- IT営業歴7年以上 かつ
- ITコンサルティング経験あり かつ
- 中小企業診断士の合格者 かつ
- TOEIC800点以上
自社の求めるレベルと提示する待遇のバランスが悪ければ、応募はさらに少なくなりますし、実質的にゼロになる可能性が高いでしょう。
したがって、募集要項の段階では、応募条件の必要度に優先順位をつけて、敷居を下げることも大切になります。
たとえば、ITコンサルティングのスキルは自社で教育することにして、以下のように要件を緩和すれば、応募できる人材も増えやすくなるでしょう。
- 法人営業3年以上
- コンサルティング経験のある人歓迎!(ただし、未経験者を採用・育成して活躍している事例もあり、未経験から目指す人も歓迎)
- 海外留学や海外赴任経験のある人も歓迎 など
募集要項を書くうえでの注意点
募集要項を書くときには、以下の点に注意しましょう。
賃金、勤務条件に誤りがないようにする
何度か触れていますが、求職者が重視する賃金や勤務条件などの情報は、正しい内容を具体的に書くことが大切です。
また、入社後に感じるリアリティギャップ(こんなはずじゃなかった!)を防ぐには、自社の労働条件を必要以上に良く見せすぎない配慮も必要となります。
一種の“広告”であることを忘れない
募集要項には、求職者に自社の労働条件などを伝える“情報”であるとともに、「今見ている企業に応募(入社)してみたい!」と思ってもらうための“広告”の側面もあります。
そのため、たとえば、自社の賃金が市場相場と比べてそこまで高くない場合、自社の情報をただ記載するのではなく、競合との差別化に使える以下のような項目を活用し、賃金以外のポイントで魅了付けをする必要があるでしょう。
- 求める人物像(採用メッセージ)
- 福利厚生
- 研修制度
- キャリアアップのサポート
- 独自の福利厚生 など
たとえば、自社の賃金が市場相場よりも低い場合は、以下のような内容を記載することで、ネガティブな印象を緩和できる可能性があります。
- 家賃手当は全額支給
- リーダーに昇格すれば月◯万円支給
- 社員食堂完備、利用料無料
- 令和2年度のボーナス実績:◯万円(市場相場よりも高い場合に有効)
前述のとおり、虚偽の内容を書いたり誇大広告にしてしまったりすることは絶対にNGですが、“広告”として「誰にどのような魅力を伝えるか?」という視点を持つことが非常に大切になります。
まとめ
募集要項とは、求職者に自社の労働条件などの情報を伝えるものです。募集要項は、求職者との最初の接点になり、自社に応募するかを決めるポイントにもなりえます。
募集要項をつくる場合、法律で定められた必須項目・記載してはいけない項目は押さえておく必要があります。また、募集要項には、母集団を集めるための求人“広告”という側面もあります。
したがって、以下のコツを実践して求職者数を増やす工夫も大切です。
- 求める人材を明確にする
- 他の企業にない強み、求める人材にとっての魅力を書く
- 業務内容を具体的にイメージできるようにする
- 給与や勤務時間は具体的に示す
- 応募のハードルを下げる