面接における採用基準の作り方|手順と注意点を解説

更新:2023/07/28

作成:2023/02/26

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

面接における採用基準の作り方|手順と注意点を解説

日本の採用選考は「面接」偏重型ともいわれます。もちろん顔を合わせて多くの情報量を得られる面接を重視すること自体は問題ありません。

 

しかし、面接は採用基準や実施プロセスが設計されていないと、面接官によって合否基準が異なるということが起こりがちです。

 

数値化できない定性的な要素を見るための面接ですので、完璧に合否基準を一致させることは不可能です。

 

ただ、採用人数が増えて、面接官を複数の人で分担する場合には、しっかりと面接基準を作って、面接官による採用基準の違いが出すぎないようにすることが大切です。

 

本記事では、採用支援サービス提供企業としての知見も踏まえて、面接における採用基準の作り方、また作成するうえでの注意点などを解説します。

<目次>

面接における採用基準とは?

採用基準とは、言葉の通り、「採用選考の応募者が自社にとって必要な人材かどうかを判断するための基準」です。

 

採用基準がない、あるいは曖昧であると、以下のような事態が起こりがちです。

  • 面接官によっては合否の判断が変わる
  • 面接官の好みや価値観によって合否が左右される
  • 見極めの精度が落ちてしまいミスマッチな人材・活躍しない人材を採用してしまう

面接プロセスを常に同じ人が担当するようであれば、採用基準がなくても大きな支障は出にくいかもしれません。

 

ただし、それでも基準がないと、面接の流れや感覚的な盛り上がり状況によって合否判断が左右されやすくはなります。

 

また、採用人数が多くなり、一次面接や二次面接を複数の面接官で担当する場合は採用基準をしっかりと定めないと、ズレが出やすくなるでしょう。

採用基準の作り方

上述の通り、採用人数が多くなり、採用面接を分担するようなケースでは採用基準をつくることを強くお勧めします。

 

本章では、採用基準を作る基本的なステップを紹介します。

 

採用基準の作り方① 必要スキルの棚卸し

まずは募集を検討しているポジションで、入社後に活躍するために必要なスキルを棚卸しします。

 

当然、採用するポジション、また期待レベルによって、必要なスキルは変わってきます。

 

該当ポジションで活躍している社員をしっかりと分析して、何が必要かを決めていきましょう。

 

スキルはいわゆる「能力」や「知識」だけでなく、また「コンピテンシー」や「動機」などの行動習慣や内面の特性要素にも焦点をあてることが大切です。

 

必要スキルを棚卸しする場合には、人事部門だけではなく、採用部門の責任者を交えて行いましょう。

 

責任者を交えることで、現場の採用基準と乖離しないものになります。また、責任者を巻き込むことで、採用に積極的に力を貸してくれるようになるでしょう。

採用意準の作り方② 必須(MUST)と希望(WANT)の区分け

活躍に必要なスキルを棚卸していくと、得てして「理想像」になってしまい、「こんな人はいないかな…」「うちには応募してこないかな」ということになりがちです。

 

棚卸したスキルを踏まえて、今回の採用で「必須(MUST)」にする条件、あればプラス評価という「希望・歓迎(WANT)」の条件に切り分けていきましょう。

 

採用で妥協すると、ほとんどの場合、良い結果にはなりません。従って、必要スキルをしっかりと洗い出して対象者を絞り込むことは重要です。

 

ただし、行き過ぎるとそもそもターゲットがいなくなり、採用がうまくいきません。ある程度の柔軟性をもって対応することが望ましいでしょう。

 

MUSTとWANTの切り分けは、自社の採用力(難易度が高い基準を設定しても応募者が来るか?)、また、採用で求めるレベルに応じて変わってきます。

 

ただし、大まかには「入社後の育成・獲得が難しい要素≒MUST」「入社後の育成・獲得が可能な要素≒WANT」という軸で考えてみるとよいでしょう。

 

もちろん入社後の育成・獲得が可能な要素だとしても「今回の採用は即戦力採用なので、この経験はないと育成にも時間がかかりすぎる」「そもそもこの資格がないと仕事ができない」というものもありますので、それをMUST基準にすることは一切問題ありません。

 

ただし、業務知識やコミュニケーション能力などのスキルに比べて、内面的な要素:達成動機の強さや挑戦心などはある程度幼少のころに定まってくる特性であり、入社後の育成等で変えることが難しいことは知っておくとよいでしょう。

採用基準の作り方③ 面接評価の項目設定

求めるスキルが明確になったら、それを面接評価シートに落とし込んでいきましょう。評価項目は曖昧だと評価が分かれてしまいます。

 

ただし、得てして業務スキルやコンピテンシー、要素というのは抽象的なものです。それ自体はやむをえません。

 

ただし、「コミュニケーション能力」や「主体性」といった抽象的な単語だけを項目として設定すると、「それが何を指すか?」という定義が面接官によって変わってしまい、基準としてあまり機能しなくなってしまいます。

 

採用基準に落とし込む際には、その項目が具体的にどんな行動や素養を指しているのか、また、どうやって評価するのかを補足事項として明確にしていくことが大切です。

 

なお、項目が多くなりすぎると評価することに意識が向きすぎてしまい、対象者との会話が不自然になってしまいます。

 

多くても5~6項目程度に抑えたほうがよいでしょう。

採用基準の作り方④ 評価基準の設定

最後に評価基準を設定します。◎〇△×、1~5、A~Eといったイメージです。

 

基準を設定することで、面接官も評価しやすくなりますし、面接結果の比較や引継ぎ等もしやすくなります。

 

なお、3段階評価にすると評価が真ん中に落ち着く傾向にありますので、4段階や5段階にすることをおすすめします。

 

基準を設定したら、それぞれのレベル定義を作ります。たとえば、以下のようなイメージです。

  • ◎ 優秀(社内でもトップ10%レベル)
  • 〇 合格レベル
  • △ 合格基準に満たないが致命的ではない
  • × 1つでもバツがつけば不合格

といった形です。

採用基準を作る際の留意点

採用基準を作る際には、いくつかの留意点がありますので紹介しておきます。

 

作り方のステップで紹介した内容と重複しますが、一種のチェックリストとして、採用基準のたたき台を作った後などに、ぜひ確認してみてください。

 

人事だけで作らない

採用基準を人事だけで作ってしまうと、現場で求めている人材とずれてしまったり、逆に経営陣がイメージする採用基準と違ったりしていることがあります。

 

採用基準を作る場合には、経営陣、また部署の責任者を交えて決めていくことが大切です。

 

経営陣や責任者を巻き込むことで、採用にも積極的に協力してくれるようになる効果もあります。

 

採用は会社の未来を左右しますので、現場と経営層を巻き込んで進めていくことが大切です。

定量的なものにこだわらない

採用基準は具体的なものの方が評価はしやすいものです。

 

しかし、採用基準を具体的、定量的にすることにこだわりすぎると、ぴったりと該当する人はほとんど見つからないことも多くなるでしょう。

 

ある程度の曖昧さを残しておくと、人材選定の幅が広がります。

 

また、技術職や研究職、エンジニアなど、スキルが比較的定量化、具体化しやすい職種ばかりではありません。

 

前述した通り、とくに入社後の育成・変化が難しい価値観や動機などの内面的な要素ほど抽象的・定性的になります。

 

書類選考と面接などで、定量面、定性面をうまく使い分けて、自社にフィットした基準を設定しましょう。

面接官教育の実施

新卒採用などで現場メンバーなどに面接官を依頼する場合は、面接官教育が大切です。教育といっても1時間ぐらいのレクチャーやロールプレイングで大丈夫です。

 

しかし、ここを省いてしまうと、採用基準を間違えて解釈してしまったり、合否判断が心理的なバイアスの影響を受けやすくなってしまったりします。

 

また、抽象的な項目がどんなことを示しているのか、またどうやって見極めるのかを共有することも大切です。

 

面接官になる人には必ず事前の研修やレクチャーを実施しましょう。

 

昨今では、面接官の態度なども大きな問題になります。

 

圧迫面接と思わるような態度をとったり、いわゆる“NG質問”と呼ばれるような質問をしてしまったりすると、それがSNSなどで拡散されるようなリスクもあります。

 

そういった意味でも、面接官の教育をしっかり行い、たとえ自社にフィットしない人材に対しても好印象を持ってもらえるような立ち居振る舞いが必要になります。

PDCAを回す

採用基準を作ったからといって、検証せずに使い続けてはいけません。

 

ある程度の時間軸で、「面接の評価が高かった人が実際に活躍しているのか」「早期退職や活躍が停滞してしまっている人がいる場合、採用選考時の評価はどうなっていたか?」「退職や停滞の原因を選考時に見極められなかったのか」といった形で採用基準と入社後のパフォーマンスを照らし合わせて、定期的に検証、ブラッシュアップしていくことが大切です。

 

また、ビジネスモデルの変化や企業ステージの変化などによっても、求める人材は変わってきます。

 

定期的に検証して、常にアップデートされた基準を使っていくことが大切です。

新卒採用と中途採用における面接基準の違い

新卒採用と中途採用では、求めることが異なります。採用基準を作る際の原則は変わりませんが、ポイントは若干変わってきますので紹介しておきます。

 

新卒の採用基準

新卒の場合、基本的にはポテンシャル採用のウェイトが大きくなります。

 

最近は、新卒でも即戦力採用をしたり、中途でポテンシャル採用をしたりすることもありますが、ポテンシャル採用の場合は「内面」の要素にウェイトを置いてみていくことが大切です。

 

もちろん仕事によってはコミュニケーション能力や地頭など、現時点での発揮能力から推し量れる要素が大切になってくる場合もあるでしょう。

 

ただ、「MUSTとWANTの切り分け」部分で紹介した通り、“伸びしろ(ポテンシャル)”は過去のエピソードなどから内面の要素で見極めることが大切になってきます。

中途の採用基準

中途、特に即戦力を期待するキャリア採用の場合には、現時点での保有スキルや知識などのウェイトが大きくなってきます。

 

ただし、同業界同職種の場合は別ですが、異業界・異職種での転職の場合、一段スキルの見極めが難しくなってきます。

 

過去のエピソードを通じて、能力、また行動や思考パターンなどのコンピテンシーを深掘りし、自社での再現性を見極めていくことが大切になります。

 

また、キャリア採用の場合には、経験値があるからこそ、価値観や行動パターンが入社後に変わりづらく、スキルだけで採用してしまうと、会社の風土や価値観と合わない人を採用してしまう危険があるので、その点は注意が必要です。

 

中途入社の場合、仕事への価値観や行動パターンなどを変えることは新卒以上に難しいです。

 

可能な限り、スキルと価値観の両方を満たす人材を採用していきましょう。

採用基準の例

最後に採用基準の要素例を紹介します。自社でも使えるものがあれば是非とも試してみてください。

 

論理思考・ロジカルコミュニケーション

因果関係やピラミッド構造などのロジカルシンキングのフレームワークを使って思考できるか、また、実際のコミュニケーションにおいて、こちらの話を論理的に理解できるか、自分の意見や考えなどを、わかりやすく伝えることができるかといった視点です。

 

ソリューション営業などの仕事や内勤職種の多くで不可欠となるでしょう。

 

論理思考やロジカルコミュニケーションは、質疑を通じて判断できるため、面接の中で比較的見極めやすい要素といえるでしょう。

 

なお、論理性は高いに越したことはないですが、論理性だけが高すぎると、感情のやり取りをするようなコミュニケーション、感情に配慮して意思決定やマネジメントが不得意といったことにつながる恐れもあります。

 

次のコミュニケーション能力も同時に見ていくことをおすすめします。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、多くの会社が重視する要素です。ただし、非常に曖昧、抽象的な言葉でもあります。

 

自社の面接官に「コミュニケーション能力とは?」と聞いて、同じ答えが返ってこないと基準にしている意味がありません。

 

自社における、また今回の採用における「コミュニケーション能力」とは具体的に何を指しているのか?「人を巻き込む伝え方」なのか「信頼関係を作り、話を引き出す受信力」なのか「短時間で好印象を与える力」なのか、どんなコミュニケーション能力をどれぐらいのレベルで求めるのかを定義しましょう。

 

仕事は一人で進めることはできません。必ずといっていいほど、誰かと関わりながら進めていきます。

 

そういった意味でコミュニケーション能力は必須なものですが、上記の通り、非常に曖昧な言葉でもあるので、その点だけは注意が必要です。

主体性・積極性

主体性や積極性などは、入社後の伸びしろ、また、成果をあげるうえで非常に大切な要素です。

 

一方で、コミュニケーション能力と同じように非常に曖昧な単語でもあります。

 

コミュニケーション能力のところで紹介したことと同じで、きちんと定義することが大切です。たとえば、以下の定義が一例です。

主体性

⇒自分で思考して、自分で責任を引き受ける覚悟と共に意思決定する能力であり習慣
⇒過去における意思決定のエピソードをヒアリングして見極める

といった形で、言葉が何を意味して、どう見極めるのかを言語化しておくことが大切です。

 

なお、主体性や積極性は高いほうがいいと思われがちですが、たとえば「自分で意思決定する」主体性が高すぎれば組織のコントロールが効かなくなる、保守的な組織に不満を感じて早期退職することも増えます。

 

自社にとって適切な主体性の度合いを見極めることも重要です。

向上心・成長意欲

向上心や成長意欲がなければ入社後の成長を期待できません。

 

しかし、向上心や成長意欲は「言葉」だけであれば何とでもいえるものです。過去や現在の「行動」を聞いて判断することが大切になります。

 

向上心や成長意欲を採用基準にするようであれば、どのようにヒアリング・判断していくかを定義しておくとよいでしょう。

 

協調性・素直さ

協調性や素直さなども多くの組織で求められる要素です。話し方やフィードバックに対する反応、過去のエピソードなどを聞いて判断していきます。

 

なお、とくに内面系の要素は過去のエピソードを深掘りして判断することが多くなります。

 

STAR面接など、エピソードを深掘りするための基本的なテクニックを面接官トレーニングの中で周知していきましょう。

 

また、内面要素は、面接だけで見抜くことは難しい部分もあります。

 

採用基準として内面要素が多くなる、ポテンシャル採用の色合いが強くなる場合には、適性検査を併用することがお勧めです。

まとめ

記事では、採用基準の作り方について解説しました。

 

採用基準が明確であれば、面接官が変わっても採用基準のブレが少なくなり、良い人材を逃したり、ミスマッチな人材を合格させてしまったりすることは少なくなります。

  • ①活躍に必要なスキルの洗い出し
  • ②MUST(必須条件)とWANT(歓迎条件)の切り分け
  • ③採用基準項目への落とし込み
  • ④評価基準の設定

というプロセスを通じて、採用ポジションにフィットした面接基準を構築していきましょう。

 

なお、作った面接基準が適切かは、実は採用時点では判断できません。

 

定期的に「入社後の定着・パフォーマンス」と「採用時の評価」を照らし合わせて、採用基準が適切かを見直していくと良いでしょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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