「求人を出しても応募が来ない」と悩む中小企業の声は非常に多く伺います。中小企業は大手企業に比べて知名度や社会的なステータスで劣るため、求人サイト等で応募を集めることが難しくなっています。とりわけB to Bの事業を行う中小企業になると、一般の人には社名を知られず、事業内容もイメージしにくいため、採用活動がより困難になりがちです。
2019年度版「中小企業白書」に掲載されている求人倍率のデータで見ても、従業員300人以上の大手・中堅企業の求人倍率は0.9倍、299人以下の中小企業は9.9倍という数字になっています。
従業員数300人以上の企業の求人倍率は0.9倍
図表出典元:2019年度版「中小企業白書」
求人倍率は「求人数÷就職希望者数」で計算され、「就職希望者1人あたりに何件の求人があるか?」、逆に言えば、「1人の就職希望者を何社で取り合うか?」という数字です。従業員300人以上の大手中堅企業は0.9倍ということで、ほぼ就職希望者と求人数が釣り合っているぐらいのバランスです。
一方で従業員300人以下の中小企業は9.9倍ということで、およそ10社が1人の人材を奪い合うという苛烈な状況です。数字を見ても、大手中堅企業と中小企業の採用力の格差は歴然です。
また、大手企業は採用予算も潤沢であったり、採用専任のチームを設置していたりと、採用活動の体制が充実しています。一方、中小企業が大手企業ほどの充実した採用体制を築くことは容易ではありません。予算やリソースにも限りがありますし、経営陣や総務部が採用業務を兼任している企業も多いでしょう。
さらに、採用予算を潤沢に使うということは、求人広告の代理店などからも優先されるということです(悔しいですが、大口の優良顧客を優先することは商売としては非常に適切な判断です)。優秀な営業担当やクリエイターの確保がしやすいことも、大手企業と中小企業の採用の格差をさらに大きなものにしています。
また採用人数が多いということは、それだけ社内のノウハウも蓄積されていきます。予算や体制だけでなく、年間数人~10人程度しか採用しない中小企業とは社外・社内で使えるノウハウも差が大きいのです。
しかし、中小企業であってもやり方次第で優秀な人材の確保は十分に可能です。幅広い役割を担って活動できる点、経営に近い距離で仕事に関われる点などから、中小企業で働くことを希望する求職者も少なからず存在します。
では、「優秀な人材の採用に成功する中小企業」と「応募が来ないことに悩む中小企業」の違いはどこにあるのでしょうか。中小企業が採用活動で陥りがちな失敗ポイントと対策を踏まえて、中小企業の採用活動を成功へと導く道筋を見ていきましょう。
<目次>
求人に応募が来ない中小企業でよくある3つの原因
中小企業の採用で、まず苦戦するのが「応募を集める」ことです。根本的には大手企業との求人倍率のギャップが原因ですが、加えて応募を集められていない中小企業では、以下の3つが原因となっているケースが多いです。
情報発信に力を入れていない
応募を集めるためには、求人サイト等を通じて情報発信することが必須です。多くの中小企業は知名度が高くありませんので、大手企業と比べると、求人原稿見られる機会は少なくなります。その中で、求人情報の内容が薄かったり、情報を箇条書きにしてあるだけだったりすると致命的です。
忙しい中で採用活動を行っていたり、ノウハウがなかったりするために、求人票が魅力的になっていないケースは中小企業でよく見られます。
また、今の時代、応募するプロセス内で企業ホームページが必ず見られます。ホームページが古かったり、そもそも採用ページがなかったり、記載されている事業内容や仕事内容の情報が薄く伝わりにくかったりと、情報発信のあり方に課題を抱える中小企業は多く見られます。求人原稿と自社ホームページ、2つの情報発信を充実させることは、応募者を集めるために必須です。
多くの条件やスキルを求めすぎている、待遇が明らかに劣っている
中小企業の採用活動でうまくいっていないケースで、採用経験が少ないために、採用市場にいる人材層や採用の相場観を理解していないことが原因になっている場合もあります。
例えば、業界経験を必須として募集していたり、給与や休日が市場の相場観とずれていたりすると、応募者を集めることは困難です。
もちろん経験者が必要な場合もあるでしょうが、その場合には求人サイトではない方法、縁故や人材紹介などを使った方がいいかも知れません。
また給与や休日などの待遇面は、好待遇である必要はありませんが、相場観や競合他社に大きく劣っていると、一気に採用は難しくなります。
大手企業と同じフィールドで勝負している
求人広告を出す求人サイトを「登録者数」だけで選ぶなどして、採用活動が上手くいっていないケースもあります。
例えば、主要な採用媒体では、求人の掲載順が、広告枠の大きさ(出稿金額)や上位表示のオプション利用で決まるのは周知の事実です。こうしたフィールドでは予算に限りのある中小企業が不利になりがちです。
大手企業の求人が多数掲載されている求人サイトに、中小企業が一番小さな広告枠で出稿しても、ただでさえ上位表示されないので見られない、しかも大手企業の広告が複数並ぶなかであえて中小企業に応募しようとする求職者はなかなか現れないでしょう。
このように大手企業と同じフィールドで競ってしまうことで、中小企業の採用活動を困難になっている場合もあります。
「求人に応募が来ない」中小企業が採用を成功させるための2つのポイント
中小企業の採用活動を成功させるためのポイントは非常にシンプル、本質的には以下の2つです。
会うことに集中する
採用活動は応募者に会えないことには始まりません。従って、求人倍率9.9倍という中小企業が採用活動を成功させるためには、まず「会う」ことを集中して考えることが必要です。当たり前のことを言っているようですが、採用経験が少ない中小企業ほど「選ぶ」ことに意識が行っているケースが良くあります。
もちろん採用基準を妥協する必要はありません。しかし、「1人の応募者に10社の求人がある」という市場の状態を踏まえて、まずは「自社で活躍する可能性がある応募者にいかに会うか?」を真剣に考える必要があります。
- 大手企業と競合しない応募者層はどこか?
- 彼ら彼女らはどこにいるか?
- 応募者のニーズは何か?
- 応募者が「魅力を感じる」自社の特徴は何か?
- 求人原稿の項目内で魅力をどう伝えられるか?
- 自社の魅力を応募者に伝えられる採用チャネルはどこか?
といった質問を考えることが重要です。
応募者を集めるチャネル選びは後述しますが、ダイレクトリクルーティングのように自社で工夫や努力ができる媒体、対面で会える機会を持てるイベントなどは中小企業の採用活動に適していると言えるでしょう。まだ求人原稿やホームページなどでの情報発信を行う上でも、応募者のニーズや、応募者が興味を持つ自社の魅力を考えることが大事です。
求人サイトは求人「広告」というぐらいで、単に募集要項を載せればいいというものではなく、応募者の募集を集めるための広告なのです。
選ばれることに集中する
求職者のなかには中小企業で働くことを希望する人もいますし、企業規模をさほど気にしていない人もいます。そのような求職者にターゲットを絞ったうえで、しっかりと口説くことが重要です。繰り返しになりますが、採用基準を妥協する必要はありません。
しかし、求人倍率9.9倍というなかで、「選ぶ」ことに意識が行ってしまうと、内定辞退を連発されることになります。10社の中から選ばれて、始めて「採る/採らないの主導権」を企業が握ることができます。
求職者から選ばれる中小企業は、事業の社会性や成長性、企業全体が見渡せる風通しの良さ、幅広い権限をもって取り組めるやりがい、経営者との距離の近さ、成果に対してのスピーディーな評価や待遇などをしっかりと伝えて、魅了付けを行っています。
中小企業で、自社の魅力を一番説得力のある形で伝えられるのは、間違いなく「経営陣」です。中小企業の魅力は、経営者と距離が近い、自分の意見を経営陣に届けられるとことでもあります。中小企業の採用活動を成功させるためには、経営陣が「選ばれる」意識を持ったうえで、応募者との接点に立つことは必須です。
中小企業が求職者に会うための採用チャネル、活用のポイント
中小企業の採用で応募者を集めるための採用チャネル、活用のポイントをお伝えします。
Web上で採用活動をおこなうのであれば、自社ホームページの充実は必須
どんな求人サイトやSNSを使うにしても、web上で募集活動をおこなうのであれば、ほぼ100%に近い確率で「求職者に自社ホームページを見られる」ことになります。
したがって、Web上で採用活動をおこなうのであれば、自社ホームページの充実が必須となります。
また逆に、自社ホームページに手を入れられないということであれば、後述するようなイベントや紹介企業を使うなど、「リアル」での活動に振り切ったほうが効果的とも言えます。
情報発信を工夫できるダイレクトリクルーティング
ターゲットにもよりますが、登録者数が多いという理由で大手の求人媒体を選ぶよりも、企業側から動ける、工夫できるダイレクトリクルーティングを使うのも有効な手段です。
いかにして埋もれずに応募者に見つけてもらうかという観点からすると、ダイレクトリクルーティングは中小企業の採用活動では積極的に検討すべき手法のひとつです。
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無料媒体を効果的に活用する
有料の求人サイトに加えて、無料で使える採用チャネルもあります。無料のものとして代表的なものは、Indeed、Wantedly、engageなどです。また、FacebookページやInstagramなどのSNSも採用活動で利用することができます。
ただ、無料媒体はしっかり運用しないと効果があがりません。運用に工数を割けるか?割くべきか?は状況によって違います。費用をかけることで時間や工数を圧縮する、「お金で時間を買う」方が生産的であることも多々あります。
エリアやターゲットに応じた媒体選び
例えば、都市部ではハローワークや紙媒体、行政系の広報誌、タウンペーパーなどは、なかなか効果を発揮しづらくなっていますが、地方にいくと、行政系のチャネルや紙媒体が強い場合もあります。
エリアやターゲットに応じて、ネット以外の媒体を考えていくと良いでしょう。
リアルの採用チャネルに振り切って「会う」場を作る
ハローワークのイベントや民間の採用支援サービスが開催しているマッチングイベント等も、中小企業にとって有効な採用手法のひとつです。
中小企業における魅了付けは経営陣による発信がポイントです。経営陣の発信を活かすためには規模やイメージが先行してしまうWebでの情報発信よりも「対面で会う」ことが有効です。
従って、会える場に足を運ぶ、参加するというのは有効な選択肢です。また、同じように、“魅了付け”をアドバイザーが代行して求職者と接触する機会を作ってくれる「人材紹介」の活用も有効な選択肢となりえるでしょう。
活用できる採用チャネルの種類は、以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味あればぜひご確認ください。
まとめ
中小企業は大手企業と比べて、採用難易度が高いことは事実です。しかし、工夫することで自社に必要な人材を採用する方法はいくらでもあります。「会うことに集中する」「選ばれることに集中する」、2つを実践すればいろいろ改善方法が見えてくるでしょう。
また、中小企業の魅力は、経営陣との距離感が最大のポイントです。事業のやりがい、経営陣との距離の近さ、成果に対する迅速な評価などを、最もアツく語れるのは経営者、経営陣です。「大手企業と中小企業」では勝てなくても、「大手企業の人事と中小企業の経営者」という構図に持ち込めば、大手企業との採用競争に打ち勝てる可能性も十分にあります。
中小企業の魅力を十分に発揮して応募者と会うためには、知名度やイメージが先行してしまうネット上でのマス媒体利用よりも、「接近戦」に持ち込むことが大事です。求職者と会う機会があるリアルな採用イベント、アドバイザーが魅了付けを代行してくれる人材紹介、企業が能動的に動けるダイレクトリクルーティング、一覧性(ふと目に留まる可能性)が高い紙媒体、“社員”を媒体としたリファラル採用など「接近戦」に持ち込む採用手法に取り組み、ぜひ採用を成功させてください。