新卒採用の場合、内定出し・内定承諾から入社までの期間が長くなります。早期採用に取り組んでいる場合、内定承諾から入社まで1年あることも珍しくはありません。
そのため、採用企業側が、内定辞退を防ぎ、また、入社後の戦力化を促すために、内定者セミナー・研修を実施することが一般的です。
本記事では、内定者セミナーの基本を確認したうえで、内定者セミナーを成功させるためのポイントや実施内容の事例を紹介します。
<目次>
内定者セミナーとは?
まずは内定者セミナーの位置づけや概略を確認しておきましょう。
内定者セミナーとは?
内定者セミナーとは、企業が内定承諾者に対して実施するセミナーのことで、内定者研修や内定者向けフォローイベントと同じ意味です。
なお、一部の企業では、内定者の承諾を目的とした、内定承諾前の内定者に向けて行うセミナーやイベントを内定者セミナーと言っている場合もあります。
本記事では「内定承諾者向けに実施するセミナーや研修」を指して解説していきますのでご了承ください。
内定者セミナーの目的
内定者セミナーの第一の目的は、内定承諾後の辞退を防ぐことです。
売り手市場が続いている状況で、就活生の多くは複数の企業から内定をもらう売り手市場の状況です。
そのため、内定を承諾した後も、「本当にこの会社でよかったのか…」という気持ちがどこかに残りがちです。
また、入社が近づく=選択肢がなくなる瞬間が近づくなかで“内定ブルー”も生じます。
迷いや不安が生じる定者に対して、しっかりと入社まで導いていくことが内定者セミナーの大切な目的です。
また、入社後のキャリアイメージを持たせることや、同期入社の人たちとの親睦を深めたり、入社に向けた準備をすることも内定者セミナーの目的です。
内定者が内定者研修やセミナーに求めること
内定者セミナーに参加する内定者側は、セミナーにどのようなことを求めているのしょうか。
求めるものを知るためには、まずは内定者が抱えがちな不安・悩みを確認しておきましょう。
内定者にとって、就職先の企業は人生の多くの時間を過ごすことになる場所です。
従って、内定者は心のどこかに「この会社を選んだことが正解なのか?」という不安を持ち続けます。
また、不安を具体化していくと、大きくは、
- 上司や先輩、同期と馴染めるだろうか?(人間関係への不安)
- うまく仕事していけるだろうか?(仕事への不安)
という2つに大別できます。内定者セミナーでは、これらの不安を解消することが非常に重要です。
従って、
- 入社後にどのような仕事をするか、現場の雰囲気はどうなのかといった疑問を解消できる
- 同期や既存社員と交流できる
- 入社後の仕事内容を知り、入社後に必要なスキルを学んでいける
といったものが内定者には求められています。
内定者セミナーや内定者研修の内容
内定者セミナーや内定者研修は、具体的にどのような内容で行うことが有効でしょうか。
内定承諾理由の再確認
内定辞退を防ぐためには、自分がなぜこの会社を選んだのかを再確認していくことが有効です。
その際には、改めて会社の魅力を伝え、気持ちを高めるよう導いていきます。
入社後イメージの形成
内定者のイメージを入社後のキャリアやビジョンにフォーカスさせることで、「入社するかどうか」という迷いを取り除いていきます。
セミナーを通して、入社後の自分のポジティブなイメージができてくれば、迷う気持ちも整理されていきます。
不安の解除
新社会人になる内定者にとって、新しい環境での新しい人間関係には大きな不安があります。
先輩社員との座談会や同期となるメンバーとの関係を築いていくことで、仕事や人間関係への不安を解除していきます。
人間関係の構築
内定者セミナーでは、座学だけでなくグループワークを取り入れ、同期入社のメンバーとの相互理解や人間関係の構築を進めていくことも大切です。
社内に自分の仲間ができるということは、入社への意欲につながり、その後の定着促進にも好ましい影響を与えます。
入社への心構え
内定者セミナーでは、入社後の未来について前向きなビジョンを持たせる内容が多く盛り込まれることになります。
しかし、そればかりでは、入社後の現場でギャップを感じさせてしまうかもしれません。
自分たちに求められていることや入社後に大変だと感じるかもしれないことをしっかり認識させて、入社への心構えをしてもらうことも大切な要素の一つです。
ビジネスマナーや業務スキル
基礎的なスキルとなるビジネスマナーや社会人としてのマインド教育を、入社前から少しずつ行い、徐々に身につけていってもらうことも一つです。
業務に関わるスキルの習得について簡単なところから少しずつステップアップするようプログラムを組んでいくことで、成長の手応えを感じるようになり、入社への不安を払拭することもできます。
内定者セミナーの注意事項
内定者セミナーを実施していく上で、どのような点に注意しておく必要があるでしょうか。
内定者ニーズの把握
セミナーの実施する前には、セミナーを受講する内定者の状況を見極め、内定者のニーズをしっかりと把握しておく必要があります。
受講者の中に、不安を抱えている人が多いようであれば、前向きなコンテンツを揃えて実施しても刺さりません。
まずは不安を取り除く内容を先にやる必要があります。
一方で入社に向けて前のめりになっている内定者が多いようであれば、不安解消のためのコンテンツが多いと、逆にモチベーションの低下につながってしまうかもしれません。
内定者の状況を把握して、受講者に合ったコンテンツを実施することが大切です。
研修の目的とゴール設定
セミナーを企画する前には、しっかりと目的とゴールを定めることが大切です。
とりあえず“面白そうな企画”を並べて実施するだけでは、十分な効果を得ることができません。求めるゴールから逆算してコンテンツを選ぶことが大切です。
内定者の負担を考慮する
内容を考えるうえでは、企業側であれもこれもと欲張って詰め込みすぎないように注意することも大切です。
内定者の負担にならないよう、実施時期やセミナーの頻度など、内定者の負荷等を考慮することが大切です。
労務視点の考慮
内定者はまだ自社の従業員になったわけではありません。内定者研修は、負担のない範囲で任意の参加とする必要があります。
参加必須とした場合には業務と見なされ、賃金を支払う義務も発生します。
オンラインでの内定者セミナー・研修
かつての内定者セミナーや内定者研修は、皆が集まって行うことが当たり前でしたが、コロナ禍の影響によりオンラインで実施することも増えました。
オンライン研修や座談会
ZoomなどのWeb会議ツールを使えば、オンラインの内定者研修、グループワーク、座談会などが容易に行えます。
対面でのセミナーや研修は、一気に関係を構築したり感情のやり取りを出来たりするメリットがある一方で、移動時間等が必要になり、遠隔地の内定者がいる場合、スケジュール調整なども難しくなります。
日程調整も必要なオンラインセミナーや録画したコンテンツの提供を、対面の内定者セミナーとうまく組み合わせて実施することがおすすめです。
eラーニング
内定者セミナーではありませんが、オンラインで実施するeラーニングは、時間や場所にしばられず、何度も繰り返し学習できるというメリットがあります。
またコストも抑えて実施できます。
内定者向けのeラーニング教材もありますし、新入社員向けの教材が活用できる場合もあるでしょう。
個人別に進捗や定着の度合いがチェックできるものもありますので、うまく活用していくといいでしょう。
SNSの活用
こちらも内定者セミナーではありませんが、SNSを活用した内定者フォローもおすすめです。
セミナーの事前情報や事後フォローをSNS上で実施すれば、内定者セミナーもより効果的になるでしょう。
ユニークな内定者セミナーの事例
一般的な座学やグループワーク、座談会といった形式以外にも、ユニークな内定者セミナーを行っている事例がありますので紹介します。
ゲーム形式
チーム制でゲーム形式の研修を行うと、内定者が主体的に取り組むことができ、チームメイトとなった仲間との親睦を深めることができます。
ゲームのみで懇親やアイスブレイクを目的とする場合と、研修やセミナーの一部としてゲームを通じて学びの効果を高める場合とがあります。
ウォーキング
数名でチームを組んで、長距離のウォーキングやオリエンテーリングを行っていきます。
チームの仲間とリラックスしたコミュニケーションがとれるので、関係を深めることができます。
ただし、アウトドア型で実施する場合は、事故などが発生しないよう、しっかりと運営の準備をしておくことが必要です。
内定者合宿
合宿形式にすることでグループワークやゲーム等を実施するにしても、十分な時間を確保できます。
また、食事や移動時間などを通じて、内定者同士の関係構築もぐっと進みます。
費用や手間はかかりますが、対面で実施するメリットを生かすには、選択肢のひとつとなります。
まとめ
内定~入社までの期間が長い新卒採用において、内定者セミナーは内定辞退を防ぐために大きな役割を果たし、入社までの期間を活用してモチベーションを高め、スキルを身につけるうえでも有効です。
自社にあった内定者セミナーを実施すれば、内定者が早期に会社の一員として定着し、戦力として活躍することを後押しもできるでしょう。
記事で紹介した様々な内定者セミナーの事例などが、自社の内定者セミナーを構築、ブラッシュアップすることに役立てば幸いです。