少子高齢化による労働人口、特に若年人口の減少が急激に進むなかで、近年の採用市場では、景気変動の波はあれど、中長期トレンドとしては恒久的な売り手市場に向かいつつあります。
中途採用において、優秀人材の獲得競争は激化しています。
また、過去数十年間は、大学進学率の上昇で少子化の影響を受けてこなかった新卒採用も、いよいよ新卒大卒者の人材減少が始まるようになります。
こうした採用市場の状況は、認知度や採用力の低い中小企業は、今まで以上に採用難に陥りやすい時代であることを意味します。
しかし、中小企業における人材採用は、採用人数が少ないからこそ、現状の課題と課題が生じている原因の把握、対策を講じれば、課題の解消が可能です。
本記事では、まず、中小企業における人材採用が難しくなりがちな原因を確認します。原因を踏まえて、中小企業が人材確保するための5つの基本施策を解説しましょう。
<目次>
中小企業の採用難易度は大手の8倍?
中小企業における採用活動の厳しさは、2021年の小規模企業白書(中小企業庁)のデータを見るとよくわかります。
まず、従業員数300人以上の企業では、2021年卒において求人倍率は1倍を下回る状態になっています。
一方で、従業員数299人以下の企業の場合、コロナ禍となった2021年卒の求人倍率は3.4倍だったものの、1年前の2020年卒では、なんと8.6倍でした。
8.6倍という数字は、中小企業への就職希望者数1人に対して、8.6社の求人枠があることを示しています。
極端に言えば、8.6社のうち、採用できるのは1人であり、残りの7.6社の求人枠は充足しないことになります。
中小企業が採用難に陥りがちな原因
中小企業は上述の通り元々求人倍率的に見て採用が難しい構造がありますが、さらに以下の原因で採用難に陥りやすい傾向があります。
採用ノウハウが少ない
母集団形成のノウハウや求職者へのアプローチ方法、面接での見極め方などのノウハウは、それなりの数をこなしながら徐々に身に付けていくものです。
一方で中小企業の場合、採用数がそもそも少なかったり、場合によっては総務が人事の役割も兼務したりするなどの理由で、専任の採用担当がいないこともあります。
また、求人サービスに使えるお金が少なければ、代理店から優遇されることもありません。
結果として、採用ノウハウが少なく、手探りや行きあたりばったりともいえる状態で活動を行なうことで、採用が余計にうまくいかなくなっていることも多々あります。
大企業と同じフィールドで戦っている
たとえば、新卒学生の誰もが知る大手の求人媒体には、当然のことながら、大手企業も求人を出しています。
こうした市場で求職者から注目されやすいのは、認知度の高い大手企業であり、中小企業は求職者の目に留まりにくくなります。
大手企業と同列に戦うフィールドを選んでしまうと、いくら頑張っても大企業ほどの効果は得られません。
中小企業は、認知やブランドに左右されづらい「局地戦」を戦える採用チャネルを選ぶことが大切です。
自社の魅力を明確化していない
自社の魅力の明確化ができていない、あるいはそもそも魅力がわかっていない場合、たとえば、媒体に出向する求人広告やスカウトメッセージの文面も、競合と同じようなもの、魅力に欠ける内容になってしまいます。
認知度の低い中小企業が、競合との差別化などができなければ、求人媒体のなかでますます求職者の目に留まりづらくなるでしょう。
採用難を乗り切って人材確保するための5つの対策
中小企業が採用難を乗り切り、自社に合う優秀な人材を獲得するには、以下5つの対策に関して出来るところから取り組んでいくことがおすすめです。
採用のブルーオーシャンを狙う
たとえば、以下のような目的で若手を求める場合、多くの企業は新卒学生を採用しようとします。
- 組織の若返りを図りたい
- 組織拡大に向けて若手を採用したい
- 職場を活性化したい
一方で、日本の新卒採用は一括採用といわれるとおり、ほとんどの学生が一斉に動き出します。だからこそ、総合型の就職媒体に、ほぼすべての学生が登録するような状況になります。
そうした場所に中小企業が求人広告を出した場合、前述のとおり、大手企業と同じフィールドで戦いを挑むことになります。
中小企業が若手採用の確実性を高めるなら、大手と同じフィールドではなく、既卒、中退者、地方学生、秋採用、第二新卒など採用の競合度が低い場所(ブルーオーシャン)で戦うことも選択肢の一つです。
確実に求職者と会える手段を増やす
先述のように、総合型の媒体に求人広告を出して待っていても、中小企業の場合は認知・応募されづらく、大手のように自社説明会へのエントリーがたくさん集まるとは限りません。
したがって中小企業の採用活動は、広告を出して待つ形ではなく、確実に求職者と会える市場やサービスを積極的に利用するのがおすすめです。
たとえば、HRドクターを運営する株式会社ジェイックが開催する集団面接会「就職カレッジ」や「新卒カレッジ」では、企業研究と研修を終えた学生と総当りで面接を行なえます。
類似したマッチングイベントなどは他にもありますし、人材紹介会社の窓口を広げるなどもやり方の一つです。
能動的にアプローチできるダイレクトリクルーティングを活用する
ダイレクトリクルーティングとは、ダイレクトリクルーティング会社が提供する匿名データベースを検索して、自社で採用したい求職者にメッセージを送れる「攻めの採用手法」です。
ダイレクトリクルーティングは、求人広告とは異なり、送信メッセージを工夫すれば、採用ターゲットとなる人に長文のメッセージを読んでもらい、自社の魅力を伝えられるメリットがあります。
したがって、ダイレクトリクルーティングは、以下のような悩みを抱える中小企業におすすめの手法となるでしょう。
- 求人媒体に広告を出しても、埋もれてしまってエントリーが来ない
- 自社が求める優秀な人材からの応募が来ない
ただし、ダイレクトリクルーティングのサービスでは、企業担当者がデータベースを検索して、スカウトメッセージを作成する手間や工数がかかるため、注意が必要です。
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、求人やスカウト文面の作成・配信なども代行可能な新卒ダイレクトリクルーティング「FutureFinder」を提供しています。
スカウトメッセージを作る工数を確保できない場合は、こうした代行付きのダイレクトリクルーティングなどを検討してもよいでしょう。
自社の魅力を洗い出す
中小企業が自社の魅力を洗い出すうえで大切なのは、以下のように大企業と差別化できるポイントを見つけることです。
- 意思決定がスピーディー
- 20代から幅広い仕事を経験できる
- 若いうちから昇格のチャンスがある
- 経営陣と近い距離で働ける
- いい意味で家族的な温かさがある など
なお、経済産業省の近畿経済産業局では、中小企業の魅力発信に関する調査結果を公開しています。
競合と差別化できる魅力が見つからない場合は、以下のような資料も参考にするとよいでしょう。
参考:学生に響く中小企業の魅力発信(近畿経済産業局 地域経済課)
SNSや採用サイトで定性的な魅力を打ち出す
たとえば、大企業の場合、以下のような定量的な情報を用いて、学生などでもわかりやすい魅力を容易くアピールできます。
- 2022年の売上が業界No.1
- グループ連結の従業員数7万人
- 管理職の半数が年収1,000万円以上
一方で中小企業ならではの魅力は、以下のように定性的なものが多くなります。そのため、求職者のほうでは、具体的な魅力をイメージしづらい傾向が高いでしょう。
- 意思決定がスピーディー
- 20代から幅広い仕事を経験できる
- 経営陣と近い距離で働ける など
こうした定性的な魅力の発信には、SNSや自社の採用サイトなどを活用するのがおすすめです。
たとえば、スカウトメッセージ内で自社のSNSやYouTube動画などを紹介すれば、言葉だけでは伝えにくい定性的な魅力も、求職者にイメージしてもらいやすくなるでしょう。
離職を抑えるという視点も不可欠
中小企業の人材難を解消するには、自社に合う優秀な人材の獲得だけでなく、既存社員の離職や新人の早期退職を防ぐことも、不可欠な対策です。
優秀な人材の定着率がアップすれば、同じポジションのために何度も採用活動を行なうコストや手間も解消できます。
また、優秀な人材の離職が抑えられれば、次世代リーダーの育成など、中長期的な人材計画も立てやすくなります。
新人や既存社員の離職には、さまざまな要因が考えられますので、自社の状況を鑑みて、採用活動、また、受け入れや育成体制などを一つずつ見直していくことが大切です。
離職防止については、下記の記事でも詳しく紹介していますので、ご興味あればご覧ください。
まとめ
少子高齢化による労働人口、特に若年人口の減少が急激に進むなかで、採用市場は景気に関わらず中長期的に売り手市場に向かっています。
こうしたなかで、認知度や採用力の低い中小企業は、今まで以上に採用難に陥りやすい時代に入っていきます。
中小企業の場合、元から求人倍率が高くなりがちなことに加えて、以下のような要因で採用難に陥りやすい傾向があります。
- 採用ノウハウが少ない
- 大企業と同じフィールドで戦っている
- 自社の魅力を明確化していない
中小企業が、こうした問題を抱えている場合、以下の対策で人材確保を進めていくとよいでしょう。
- 採用のブルーオーシャンを狙う
- 確実に求職者と会える手段を増やす
- 能動的にアプローチできるダイレクトリクルーティングを活用する
- 自社の魅力を洗い出す
- SNSや採用サイトで定性的な魅力を打ち出す
上記の対策を実践するうえでは、ターゲットが合えば、HRドクターを運営する株式会社ジェイックが実施する「就職カレッジ」や「新卒カレッジ」、代行サービス付きの新卒ダイレクトリクルーティング「FutureFinder」も選択肢に入れて検討してみてださい、詳しい資料を以下からダウンロードできます。