一時的な人材不足の解消などに、派遣社員を利用する企業も多くあります。
ただ、派遣社員の活用には、メリットも多い一方で、選考の禁止や“3年ルール”などの制約もあります。
そのため、派遣社員を活用するうえでは、メリット・デメリットを理解したうえで、適切な受け入れや採用を行なうことが大切です。
記事では、派遣社員の採用におけるメリットとデメリット、注意点を解説します。
そのうえで、派遣社員の採用と受け入れで知っておくべき重要ポイントも紹介しますので参考にしてください。
<目次>
派遣社員を採用するメリット
派遣社員の採用には、以下の効果・メリットがあります。
期間限定での採用が可能
派遣社員を活用すると、自社の求める一定のスキルや経験のある人材を期間限定で獲得できます。
たとえば、以下のような期間限定の業務には、派遣活用が特に向いているでしょう。
- 10月末~翌1月15日までのコールセンター業務
- リニューアルイベントを行なう3ヵ月間の接客業務 など
人件費の削減と変動費化
上記のように、繁忙期やイベント開催時だけ期間限定で派遣社員を採用すれば、それ以外の閑散期などに余計な人件費がかからなくなります。
また、正社員に年間通じて払い続ける給料は売上や状況に応じて変えられない「固定費」になる一方で、繁忙期だけ人材派遣会社に払う派遣社員の費用は「変動費」です。
企業経営において、人件費は大きな金額になります。
“給与の3倍稼がないと赤字社員”という表現は少し言い過ぎな感もありますが、人を1人雇えば、支払給与の2~2.5倍ぐらいの費用は発生するのが一般的です。
先行きが見えない時代のなかでは、派遣社員などを上手に活用し、固定費を削減しておくことも大切です。
即戦力人材の確保
派遣社員を利用する場合、以下のような希望要件を派遣会社に伝えると、登録者のなかから自社に合う人材を見つけてもらえます。
- 簿記資格もしくは経理の業務経験がある人材
- コールセンターでITやソフトウェアのサポート経験がある人材 など
このように求めるスキル・経験のある派遣社員を受け入れると、少ない教育期間で自社の業務に入ってもらえるでしょう。
派遣社員には、後述する「選考できない」などの制限もありますが、しかしそれでも、一定の経験を持った人材を確保しやすい魅力があります。
繁閑差の吸収
繁閑差とは、繁忙期と閑散期の差のことです。たとえば、ある営業事務の部門で、以下のスケジュールで毎月の仕事を回していたと仮定します。
【毎月1~20日(閑散期)】
- ・日次の事務処理のみ
- (⇒正社員1人でも、余裕で仕事を回せる)
【毎月20日~月末(繁忙期)】
- ・日次の事務処理+営業マンの請求書発行サポートなどの月次業務が増える
- ・特に25日以降はお客様からの注文も増加
- (⇒正社員1人が毎日残業をしても、仕事が回らない)
こうした場合、毎月20日~月末だけ派遣社員に来てもらえれば、営業事務の繁閑差を吸収できるでしょう。
上記は月内での繁閑差ですから、派遣社員の活用が難しい側面もあります。
しかし、以下のように年間で数ヵ月程度の繁忙期が生じる企業の場合、派遣社員などを活用することで、閑散差を吸収しやすくなるでしょう。
- 出荷が集中する
- キャンペーンを実施する
- 新卒採用のピーク
- 年末調整 など
正社員の生産性UP
正社員が担当する仕事からノンコア業務だけを切り出し、派遣社員に任せれば、正社員はコア業務に専念しやすくなります。
結果として、コア業務の作業品質や正社員の生産性を改善できるでしょう。
派遣社員採用のデメリット(注意点)
派遣社員を採用するうえでは、以下の点を知っておく必要があります。
面接での見極めができない
派遣社員を採用する場合、人材派遣会社から紹介された人材と顔合わせを行ない、お互いに進行を希望するようであれば、人材派遣会社と派遣契約を締結する流れになります。
これは、あくまで顔合わせであり、求人企業側は選考を実施できません。
選考ができない理由は、「労働者派遣法第26条6項」や「派遣先が講ずべき措置に関する指針第2の3」で選考が禁止されているからです。
派遣社員の場合、面接での見極めに加えて、以下のような選考も行なえません。
- 年齢・性別の指定
- 履歴書・職務経歴書による選考
- 適性検査による選考
出典:派遣先の講ずべき措置は・・・(厚生労働省)
出典:派遣先の講ずべき措置に関する指針
契約範囲以外の業務は依頼できない
派遣社員に依頼できるのは、派遣元企業との契約で定めた業務のみです。
そのため、たとえば、経理補助を担当する派遣社員の仕事がなくなり暇になってしまったとしても、経理補助ではない別部署の仕事などは依頼できません。
なお、労働者派遣法では、そもそも派遣社員に依頼できない適用除外業務が定められています。
一般企業の業務で該当することはほぼありませんが、派遣社員の利用を考える際には、一応目を通しておいたほうがよいでしょう。
出典:派遣労働者の適正受け入れ自主点検チェックリスト(厚生労働省)
出典:派遣契約にない業務に派遣労働者を従事させることができますか。また、専門 26 業務とその他の業務を併せて行う場合の取扱いはどうなっていますか(厚生労働省)
出典:第2 適用除外業務等(厚生労働省)
雇用期間の上限がある
派遣社員には、いわゆる“3年ルール”があります。“3年ルール”を大雑把に書くと「3年間を超えて同じ派遣社員を受け入れることはできない」ということです。
60歳以上の派遣労働者や日数限定業務などの一部例外はありますが、大雑把には、「同じ派遣社員に3年以上、同じ仕事を任せることはできない」と考えておけばよいでしょう。
したがって、経験を積むことで習熟して生産性が上がっていく、戦力化するまでにかなりの時間がかかるといった業務の場合、派遣社員は向きません。
なお、3年間を超えて仕事を依頼する場合には、直接雇用に転換する必要があります。
そして派遣から直接雇用に転換する際には、派遣会社に一時的に費用を支払う必要があることがほとんどです。
出典:派遣先の皆様へ
出典:労働者派遣「3年期間制限」早わかり(厚生労働省)
組織や仕事へのエンゲージメントが高くなりづらい
多くの派遣社員は、派遣契約で定められた期間で、いまの職場を離れるのが前提となります。
また、派遣という雇用形態自体、極端な表現をすれば、時給で働くアルバイトやパートの延長線上にあるものです。
したがって、高いスキルや専門性でプロジェクトに貢献することはあっても、仕事や組織との心理的な結びつきの強さは生じにくいでしょう。
もちろん関係性や組織づくりの取り組み方では変わりますが、一般的に正社員ほどの主体性やエンゲージメントは期待しにくくなります。
時間単価の高騰
近年では、少子化による労働人口の不足や、コロナ禍の収束を見据えた人材確保に乗り出す企業の増加によって、採用事務・製造・ITなどの派遣時給が高騰しています。
派遣社員の時給は、派遣社員がもらう金額に加えて、派遣会社側で発生する費用、また派遣会社のマージンなどが上乗せされています。
したがって、エリアによりますが、事務職でも時給2,000円程度が最低限、少し専門性のある業務であれば2,500~3,000円ぐらいの時給になることが多いでしょう。
出典:採用事務の派遣時給が高騰 「コロナ後」見据え7月1.9%増
出典:派遣料金、製造・IT上昇 今春時点、経済回復にらむ
派遣社員の採用と受け入れで知っておくべき重要ポイント
採用した派遣社員に活躍してもらうには、採用や受け入れ時に以下のポイントを大切にする必要があります。
派遣社員の面接は禁止
前述のとおり、派遣社員の採用では「面接」や「選考」ができません。
職場見学、顔合わせといった形で、業務説明する機会などはありますが、正社員を採用する際のような「選考」はできないことを知っておかないと、派遣社員本人や派遣元企業との間でトラブルになる可能性もあります。
顔合わせ、面談によるコミュニケーションが重要
先述のとおり、派遣社員を採用するときには、派遣先企業と派遣社員のミスマッチを防ぐために、一般的に事業所訪問・職場見学・顔合わせが行なわれます。
顔合わせの際には、仕事内容や勤務時間などの詳しい説明や質疑応答を十分に行ない、お互いが納得したうえで派遣契約に進む状況をつくることが大切です。
社内メンバーへの周知が必要
当然のことですが、現場に派遣社員を入れることを、メンバーにきちんと周知することも大切になります。
派遣社員を最大限に活用するうえでは、業務を上手く切り出すことが大切です。
具体的には、正社員が行なうべきコア業務と派遣にお願いしたいノンコア業務の洗い出しをきちんとしておきましょう。
人間関係と職場メンバーの理解
先述のとおり、派遣社員のエンゲージメントは高まりづらいです。しかし、派遣社員に現場で活躍してもらうには、良好な人間関係を築くことが大切です。
なお、人間関係などに加えて、派遣社員は女性も多く、その場合には、職場環境として、荷物を置ける場所はあるか、昼食はどこで食べれば良いかなど、細かな点にも配慮することがポイントです。
正社員と同等に接する
「あの人は派遣だから……」と態度を変えると、派遣社員のモチベーションは下がり、仕事のパフォーマンス低下や早期離職につながる可能性も出てきます。
同一労働同一賃金の原則で待遇を正社員などと同じにするのはもちろんのこと、派遣社員への不合理な差別を解消する取り組みが大切です。
参考:不合理な待遇者解消のための点検・検討マニュアル(改正労働者派遣法への対応)
受け入れ教育の充実によるトラブルの未然回避
派遣社員を採用する際には、該当業務である程度の経験を持っている人を指定することが多いです。
しかし、たとえば、コールセンターでの業務経験が10年あるベテラン派遣社員であっても、以下のことがわからなければ、自社での活躍は難しいでしょう。
- 社内の共通語
- 業務システムの使い方
- 自社の商材やサービス知識
- 大切にして欲しい価値観やNG対応
- チームメンバーの顔と名前 など
これらのことがわからなければ、メンバーとの円滑なコミュニケーションもできません。
そのため、受け入れた派遣社員にスキルや専門性を発揮してもらうには、自社の共通語や独自ルールを学ぶ教育体制や仕組み、マニュアルの整備などがポイントになります。
やりがいある業務内容の実現
たとえば、下記の業務Aと業務Bなら、派遣社員が高いモチベーションで能力を発揮してくれるのは、業務Bになるはずです。
- 業務A:簡単な仕事ばかりで高い能力を活かせない、毎日が暇、メンバーのやる気もない
- 業務B:自分の高いスキルでチームの役に立てている、いつも感謝される、適度に忙しい
派遣社員に活躍してもらうには、良好な人間関係のなかで、やりがいのある仕事を切り出したり、積極的に声かけをしたりするなどの配慮がポイントです。
まとめ
派遣社員の採用には、以下5つのメリットがあります。
- 期間限定での採用が可能P
- 人件費の削減と変動費化P
- 即戦力人材の確保P
- 繁閑差の吸収P
- 正社員の生産性UP
ただし、派遣社員には、以下のようなデメリットもあります。
- 面接での見極めができないP
- 契約範囲以外の業務は依頼できないP
- 雇用期間の上限があるP
- 組織や仕事へのエンゲージメントが高くなりづらいP
- 時間単価の高騰
派遣採用のメリット・デメリットを把握したうえで、正規雇用がいいのか、派遣採用がいいのか、または業務委託などがいいのか、検討していきましょう。
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