派遣社員を採用する際のポイントとは?!基本の流れや注意点を解説

更新:2023/07/28

作成:2022/12/14

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

派遣社員を採用する際のポイントとは?!基本の流れや注意点を解説

短期的な労働力を確保するうえで、派遣社員の採用は一つの選択肢です。

派遣社員の採用では、トラブルを防ぐためにも、基本的なポイントを押さえておかなければなりません。

 

記事は、派遣社員の採用に慣れていない方向けに、派遣社員を採用するメリット、また、派遣社員の採用における流れと3つのステップを確認します。
そのうえで、派遣社員採用における“選考”の基本ポイントと、派遣社員を採用する際に注意すべき4つのポイントを紹介しますので、参考になれば幸いです。

<目次>

派遣社員を採用するメリット

笑顔で人差し指を掲げる女性

 

派遣社員の採用・活用には、以下の効果・メリットがあります。

 

期間を限定して人材確保できる

派遣社員を採用すれば、たとえば、繁忙期の7月~12月、新規事業が軌道に乗るまでの1年間……など、期間限定での人材確保が可能になります。

 

一定の専門性を持った人材も確保できる

派遣社員を採用するときには、人材派遣会社に派遣社員に求める条件を依頼できます。

 

そのため、以下のように一定の専門性を持った人材を期間限定で活用可能です。

  • 決算期の繁忙期に対応するため、経理の経験者か簿記資格の保有者を希望
  • 採用業務の補助をしてもらうため、採用経験や人材業界の経験がある人を希望

 

活用次第でコスト削減できる

派遣社員の場合、中途の正社員を雇い入れるときのように、求人サイトに広告を出稿したり、スカウトメールで口説いたりするなどの工数や採用コストは不要になります。

 

また、派遣社員の場合、各種保険関連(健康保険、雇用保険、労災保険)や給与計算などの事務手続きは、派遣元(人材派遣会社)側が行なってくれることになります。

 

派遣社員は、時間単価で見ると、アルバイトやパート採用など、非正規での直雇用と比べてかなり高くなります。
しかし、上記のように期間限定で派遣してもらえる、採用の費用や手間を省けるといった部分があります。

 

派遣社員をうまく活用すると、トータルコストや費用対効果で考えれば人件費の変動費化やコスト削減にもつなげられるでしょう。

派遣社員採用の流れ3ステップ

3本の指を掲げる男性

 

派遣社員を受け入れるまでには、以下の3ステップの手続きが必要です。

 

1.派遣会社に条件を伝える

まず、人材派遣会社に、派遣社員の希望要件を伝えます。派遣社員とのミスマッチを防ぐためにも、依頼するまでに以下の内容を整理しておくことが大切です。

  • 【派遣社員が必要な理由、背景】決算期で経理部が忙しくなる、新規事業(DX)の開始に向けてチームを立ち上げている
  • 【就業開始時期と派遣期間】4月1日~10月31日まで
  • 【職種、実施業務の内容】経理担当者の補助業務、新規事業のグラフィックデザイン全般 など
  • 【就業条件】週3日のシフト勤務、9時~18時までのオフィス勤務 など
  • 【各種制限】簿記の資格もしくは経理の業務経験あり、◯◯作業で5年以上の実務経験あり など

 

2.派遣会社から紹介された人材と顔合わせを行なう

派遣社員を採用する場合、一般の新卒・中途のような選考はできません。

 

ただ、ミスマッチを防ぐための事業所訪問・職場見学・顔合わせが行なわれることが一般的です。顔合わせは以下のような流れで実施することが一般的です。

  • 自己紹介
  • 仕事内容や勤務時間などの説明・確認
  • 質疑応答
  • 業務開始までのスケジュール確認

顔合わせに関する制度的な背景は、後述します。

 

3.派遣契約を交わして受け入れ準備を進める

顔合わせで問題がなく、お互いに進行を希望するようであれば、派遣元(人材派遣会社)と派遣契約を締結します。

 

派遣社員の受け入れ準備は、労働者派遣法に則った適正なものでなければいけません。

 

具体的には、厚生労働省や各地域の労働局が発行する以下のようなチェックリストを活用して進めていくとよいでしょう。

 

参考:派遣労働者の適正受け入れ 自主点検チェックリスト(東京労働局)
参考:派遣労働者の適正受け入れ 自主点検チェックリスト(解説資料編)
参考:派遣社員を受け入れるときの主なポイント(厚生労働省 都道府県労働局)

 

派遣の受け入れ企業では、制度に則った準備のほかに、派遣社員が使う備品や環境面の準備も必要となるでしょう。

派遣社員の採用における「選考」の基本ポイント

前述のとおり、派遣労働者を採用する際には、新卒・中途採用やアルバイト採用で実施する「選考」ができません。

 

労働者派遣法第26条6項、また派遣先が講ずべき措置に関する指針第2の3では、派遣先企業が、履歴書や面接で選考することを以下のように禁じています。

【労働者派遣法第26条6項】

  • 労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。

【派遣先が講ずべき措置に関する指針第2の3】

  • 派遣先は、紹介予定派遣の場合を除き、派遣元事業主が当該派遣先の指揮命令の下に就業させようとする労働者について、労働者派遣に先立って面接すること、派遣先に対して当該労働者に係る履歴書を送付させることのほか、若年者に限ることとすること等派遣労働者を特定することを目的とする行為を行なわないこと。

出典:派遣労働者の適正受け入れ 自主点検チェックリスト(解説資料編)

 

禁止されているポイントは、特定目的行為(派遣労働者を特定することを目的とする行為)です。

 

以下では、派遣社員における特定目的行為の意味、また「選考」が何を指すかを具体的に確認しておきます。

 

年齢・性別による選考ができない

特定目的行為の禁止という制度には、派遣先企業が派遣元に登録する人材を特定、属性から指名することを防ぐ意味があります。

 

派遣先が講ずべき措置に関する指針では、「派遣契約の締結に当たって、派遣労働者の性別を記載してはならない」とも定められています。
そのため、派遣社員の採用に際して、「男性(女性)を希望する」「30代が良い」などの年齢・性別に関する希望要件は伝えられません。

 

出典:性別の明記に問題はないですか(厚生労働省)
出典:12-10 派遣労働者の特定行為、性・年齢差別の禁止、個人情報の保護(労務安全情報センター)
出典:9-2 派遣先が派遣労働者を指名することはできるか(広島県雇用労働情報サイト わーくわくネットひろしま)
出典:特定目的行為の禁止について

 

面接による選考ができない

面接も、特定目的行為にあたります。

 

派遣社員を採用する場合、考え方のニュアンスとしては、企業は「労働者を雇用する」わけではなく、「特定業務を実施する工数を確保する」ようなイメージです。

 

したがって、面接は禁止されており、顔合わせと業務内容の説明、質疑の場が設けられているわけです。

 

出典:特定目的行為の禁止について

 

履歴書・職務経歴書による選考ができない

派遣先企業が、派遣元企業に履歴書・職務経歴書を送付させることも、労働者派遣法の第26条6項の特定目的行為として禁じられています。

 

出典:特定目的行為の禁止について

 

適性検査による選考ができない

人物選考を目的とする適性検査も、第26条6項で禁じられている特定目的行為にあたります。

派遣社員を採用する際に理解しておくべき4つのポイント

派遣社員や派遣元とのトラブルを防ぐには、以下4つのポイントを理解したうえで、活用の検討、受け入れ手続きなどを進める必要があります。

 

派遣社員の「3年ルール」

平成27年9月30日以降に締結・更新された労働者派遣契約に基づく労働者派遣を利用する場合、すべての業務において2つの3年ルール(期間制限)が適用されます。

 

詳細は下記のとおりになりますが、最も影響が大きい部分をシンプルに表現すると、「同じ派遣社員を、3年間を超えて受け入れられない」というルールです。

【①派遣先の「事業所単位」の期間制限】

  • 派遣先は、同一の事業所において派遣可能期間(3年)を超えて派遣を受け入れることはできない
  • ただし、派遣先の事業所の過半数労働組合等から意見を聴いたうえであれば、3年を限度として派遣可能期間を延長することが可能

【②派遣労働者の「個人単位」の期間制限】

  • ①において「事業所単位」の派遣可能期間を延長した場合でも、派遣先の事業所における同一の組織単位(いわゆる「課」などを想定)で、3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れることはできない

出典:派遣先の皆様へ(厚生労働省)

 

業務制限の存在

労働者派遣事業では、以下の業務への派遣を禁じています。適用除外業務と呼ばれており、一般企業の業務で該当することはほぼありません。

 

しかし、派遣社員を受け入れる際には、業務制限の存在を知っておく必要はあるでしょう。

  • 【港湾運送業務】港湾における、船内荷役・はしけ運送・沿岸荷役やいかだ運送、船積貨物の鑑定・検量等の業務(港湾労働法第二条第二号に規定する港湾運送の業務)
  • 【建設業務】土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの準備の作業に係る業務
  • 【警備業務】事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等における、または運搬中の現金等に係る盗難等や、雑踏での負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務(警備業法第二条第一項各号に掲げる業務)
  • 【病院・診療所等における医療関連業務】医師、歯科医師、薬剤師の調剤、保健婦、助産婦、看護師・准看護師、栄養士等の業務
  • 【弁護士・社会保険労務士等のいわゆる「士」業務】弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士の業務や、建築士事務所の管理建築士の業務等(公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士等の業務では一部で労働者派遣は可能)

引用:労働者派遣事業では、派遣が禁止されている業務があります(一般社団法人 日本人材派遣協会)

 

差別的な待遇の禁止

待遇は基本的に、同一労働同一賃金の考え方で決める必要があります。

 

また、自社で雇用した正社員などと派遣社員における不合理な待遇差を解消するには、以下いずれかの方式で、待遇差を解消するための意思決定などを行なっていく必要があるでしょう。

  • 派遣先均等・均衡方式
  • 労使協定方式

派遣先均等(均等待遇)とは、派遣社員と派遣先の通常の労働者との間で、①職務内容、②職務の内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、派遣労働者であることを理由とした差別的扱いを禁じることです。

 

一方で均衡待遇とは、派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間で、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して不合理な待遇差を禁じることになります。

 

派遣社員の受け入れ企業は、派遣社員から求めがあれば、待遇差が生じている理由などを説明する必要があります。

 

以下のマニュアルを参考に待遇を決めていくとよいでしょう。

 

参考:不合理な待遇者解消のための点検・検討マニュアル(改正労働者派遣法への対応)

 

業務委託との違い

派遣社員と業務委託の目的には、以下の違いがあります。

  • 派遣社員:人材確保
  • 業務委託:依頼業務の納品

たとえば、ホームページ制作のように明確に業務を切り出せる場合は、派遣社員ではなく業務委託のほうが向いているケースもあります。

 

業務委託の場合、マージン分の費用を人材派遣会社に払う必要もないため、コスト削減の効果も高いでしょう。

 

なお、業務委託の場合でも、準委任契約という形で、明確な成果物がない業務を時給契約などで依頼することも可能です。

 

自社の業務と欲しい人材の属性などから、派遣と業務委託を柔軟に使い分けることも有効です。

まとめ

派遣社員の採用には、以下3つのメリットがあります。

  • 期間を限定して人材確保できる
  • 一定の専門性を持った人材も確保できる
  • 活用次第でコスト削減できる

派遣社員の採用は、以下の流れで行なわれています。

  • 1.派遣会社に条件を伝える
  • 2.派遣会社から紹介された人材と顔合わせを行なう
  • 3.派遣契約を交わして受け入れ準備を進める

なお、派遣先企業が、履歴書や面接で事前に「選考」を実施することは、労働者派遣法第26条6項や、派遣先が講ずべき措置に関する指針第2の3で、禁じられています。
年齢・性別の指定や適性検査による選考もできませんので、注意が必要です。

 

派遣社員の採用を検討するときには、以下の制度的なことを頭も入れたうえで、適正な方法で受け入れ準備などを進めていきましょう。

  • 派遣社員の「3年ルール」
  • 業務制限の存在
  • 差別的な待遇の禁止
  • 業務委託との違い

派遣社員と業務委託の違いは、以下の記事でも解説しています。どちらが良いか迷っている人は、参考にしてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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