新卒採用におけるリファラル採用のメリットとデメリット、成功させるポイントを解説

更新:2023/07/31

作成:2023/05/27

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

新卒採用におけるリファラル採用のメリットとデメリット、成功させるポイントを解説

リファラル採用は「社員に知り合いを紹介してもらう」採用手法であり、近年ではベンチャー企業から大手企業まで幅広く導入されています。

 

リファラル採用の導入企業が拡がる中で、新卒採用をリファラルで実施する企業も増えています。

 

本記事では、新卒採用におけるリファラル採用をテーマに、メリットとデメリット、リファラル採用を成功させるためのポイントを解説します。

<目次>

リファラル採用とは?

記事では最初に、リファラル採用とは何か?を確認しましょう。本記事は新卒採用におけるリファラル採用を中心に扱っていますが、中途採用の場合も参考として解説します。

リファラル採用とは?

「リファラル採用」とは、自社の社員や内定者から、友人や知人を採用の候補者として紹介してもらう採用手法のことです。

 

似たようなやり方に「縁故採用」がありますが、縁故採用の場合は「採用ありきで紹介してもらう」といったニュアンスがあり、採用基準なども通常の採用とは変えるという印象があります。

 

一方でリファラル採用は、ある意味では母集団形成の手法であり、採用フローを多少変えることはあっても採用基準は変えないことが大きな違いです。

新卒採用におけるリファラル

新卒採用におけるリファラル採用は、主に内定者や入社1~2年目の若手社員に紹介してもらうことが多いでしょう。

 

また、新卒採用では、インターンシップの参加者などから友人・知人を紹介してもらうといったことをリファラル採用の施策として実施することもあります。

 

紹介される人材は、同じ大学やサークルの後輩などが主になり、現在就職活動中またはまだ就職活動を始めていない学生となります。

 

新卒のリファラル採用では、インターンシップや会社説明会などのイベントに誘導してもらうことが多いですが、個別面談や特別座談会などに誘ったりすることもあります。

中途採用におけるリファラル

中途採用におけるリファラルでは、今いる社員が紹介者となります。また、取引先やパートナーによる推薦や紹介を受けるケースもあります。

 

紹介される人材は、紹介者の個人的な友人や知人、以前の職場や勉強会などで知り合った人などが多く、転職活動中または転職を考え始めた社会人がメインです。

 

会社に興味を持ってもらったら、カジュアル面談と呼ばれる選考応募や、その前に行われる個別の面談を実施するケースが一般的です。

新卒採用でリファラル採用をするメリット

本章では、新卒採用でリファラル採用を実施するメリットを5つ解説します。

メリット① 内定辞退率、離職率が低い人材を採用できる

リファラル採用は、他の手法と比べ、マッチング精度が高いことが魅力の一つです。

 

なぜなら、実際に自社で働いている社員、あるいは働いていないにしても選考を通じてさまざまな情報を知っている内定者から、これも自分が知っている人を紹介しますので、社風や価値観などの定性面に関するマッチング精度が担保されやすいからです。

 

そのため、リファラルによる入社後の定着率が高く、早期退職などのリスクも減らせます。

 

また、紹介者と候補者の間に関係性ができているため、入社後のモチベーションや人間関係の点でもプラスに働きます。

メリット② 採用コストを削減できる

リファラル採用は、求人サイトや人材紹介エージェントなどの外部媒体や外部サービスを利用しないため、掲載料や紹介手数料などの費用は基本的にかかりません。

 

また、選考プロセスも簡略化できることが多いため、その分の工数や人件費も削減できます。

 

一般的には、紹介してくれた従業員に対してインセンティブ(金銭や商品券など)を支払うことが多いですが、それでも他の採用手法と比べると圧倒的に低コストとなることが多いでしょう。

メリット③採用市場にいない層に出会える

リファラル採用では、求人サイトや転職エージェントに登録していない、いわゆる潜在層に出会いやすいこともメリットの1つです。

 

潜在層となる人材は、まだ求人企業の情報が少ない状態ですから、福利厚生などの面で比較検討される可能性が低く、知り合いが働いているという安心感や一緒に働けるという魅力で入社を決めてくれる可能性も大いにあります。

 

また、優秀な人材は他社からのオファーが多く、よほどネームバリューのある企業でもない限り、求人広告や採用媒体ではなかなか出会えないケースも多いですが、リファラル採用では、まだ本格的に転職活動を実施していない優秀人材と接点を持つチャンスがあります。

メリット④ 選考プロセスを効率化できる

リファラル採用で、内定者や今いる社員からの推薦を受けた人材であれば、基本的なコミュニケーション能力や最低限求めたい業務スキルはおおむね保有していることが多く、その分選考ステップを簡略化できます。

 

たとえば、グループディスカッションや現場メンバーとの1次~2次面接を省略して、責任者クラスによる面接から選考を始めることも可能でしょう。

 

書類選考や複数回面接にかかる工数が削減されることは、結果として、選考プロセスの効率化につながります。

メリット⑤ 自社の強みや特徴を深く理解してもらったうえで入社してもらえる

リファラル採用では、紹介者が候補者に、仕事内容や職場の雰囲気を詳しく話してから選考に進むのが一般的です。

 

これにより、新卒採用サイトや会社説明会だけでは伝えきれない生の情報を伝えやすく、より現状に即した自社の姿を知ってもらえます。

 

ミスマッチを減らせますし、「こんなはずでなかった」「思っていた会社と違う」といった入社後ギャップによる早期退職も殆ど生じないでしょう。

新卒でリファラル採用をするデメリット

前章で解説したメリットに続いて、リファラル採用をするデメリットについてもお伝えします。

デメリット①  社内の人間関係に影響が出る可能性がある

リファラル採用では、社員が自分の知人や友人を紹介することになります。

 

従って、紹介した相手が選考で不合格になったり、入社後に早期離職してしまったり、また、応募者側が入社後に「聞いていた話が違う」などを感じたり、といったことが生じた場合、人間関係に悪影響が出る可能性があります。

 

また、紹介された社員が不採用になる、あるいは入社後に早期離職した場合は、紹介した社員や内定者が責任を感じて、モチベーションを落としてしまう恐れもあります。

 

このように、リファラル採用は社員間の人間関係に影響を及ぼす可能性がありますので、このような事態を招かないよう、慎重に配慮して進める必要があります。

デメリット②人材の偏り、多様性の低下につながりやすい

リファラル採用では、自分の知人を紹介するというやり方ですので、今いる社員と似たようなスキルや性格、価値観を持つ人材が紹介される傾向があります。

 

自社の文化や業務内容にフィットした人材を探すという意味ではメリットですが、一方で、多様性の低下につながる可能性もあります。

 

異なるバックグラウンドや視点を持つ人材が少なくなると、新しいアイデアや問題解決のアプローチが生まれにくくなったり、市場の変化に対応できなくなったりすることも考えられます。

 

そこまで考慮する必要はありませんが、特に社員数が少ない場合などは少し注意が必要かもしれません。

デメリット③社内の不平等感が生じる可能性がある

リファラル採用では、紹介者の推薦が書類選考や一次面接に相当すると考えられます。

 

ただし、いわゆる”縁故採用”とは違って、選考自体は他の採用ルートと同じ基準で実施され、平等に選考することが原則です。

 

しかし、事情を知らない他の社員から見たときに、「○○さんの紹介だから採用されたんだよな」「あのポジションで採用するにはちょっと力不足な気がするけど…。□□さんの推薦だしなぁ」などと思われてしまうと、社内に不平等感や不満が生じたり、採用後に既存社員との間に溝が生まれてしまったりします。

 

リファラル採用を行う場合、紹介した社員は選考に関わらない、採用基準が平等であることをリファラル採用導入時にきちんと告知する等が大切です。

新卒採用でリファラル採用を成功させるポイント

記事の最後では、新卒採用でリファラル採用を成功させるためのポイントを5つ解説します。

①制度の概要や目的を理解してもらう

リファラル採用を行うにあたっては、最初に、社員に対して制度の概要や目的を理解してもらう必要があります。

 

具体的には、募集の背景や目的、選考プロセス、紹介報酬などを明確に定めておくことが重要です。

 

また、紹介してくれた社員や内定者に対しては、選考結果や入社後のフォロー状況などを逐一フィードバックすることで、安心して紹介することができるでしょう。

② 早いタイミングでリファラルの依頼をかける

特に新卒採用でリファラルを促す場合、早いタイミングで依頼をかけることは、非常に重要です。新卒の就職活動では、多くの学生が、大学3年の冬までに志望業界や志望企業を絞ることになります。

 

そのため、早いタイミングでリファラルの依頼をかけることで、候補者学生が業界や企業を絞り切る前に、会社の情報や魅力を伝えられ、候補者学生の関心を自社企業・求人に惹きつけやすくなります。

③ アプローチを工夫する

就職活動早期の学生は、当然仕事をしたこともありませんし、就職活動に慣れていない場合も多いでしょう。

 

そうすると、リファラル採用で「知人に会社を紹介される」といったことがピンとこない、不安を伴うこともあるでしょう。

 

とくに中途のように1対1のカジュアル面談などは警戒されることもあるでしょう。

 

また、紹介する内定者や新人・若手も、リファラル採用というものがいまいちピンと来ていない可能性があるので、なかなか上手に会社や仕事の魅力を伝えられないかもしれません。

 

従って、

  • -リファラル採用で声掛けしてもらうときに、どんな伝え方をしてもらうか?
  • -就活生の心理ハードルや警戒心が少ない受け皿(誘導先)をどうするか?

といった工夫が、中途でのリファラル採用以上に大切です。

 

例えば、候補者学生に対しては、会社の雰囲気や仕事内容をリアルに伝えるためのオンライン交流会やインターンシップなどを企画したり、紹介者以外の社員によるメッセージや動画など見てもらったりすると良いでしょう。

 

また、紹介された学生に対して、会社見学やインターンシップなどを個別に案内することも有効です。

④社内ブランディングを展開する

リファラル採用では、社員が自社の魅力やビジョンを友人や知人に伝えることが重要です。

 

従って、社員自身が自社に誇りや満足感を持っていることが大前提であり、リファラル採用を促進する上では、社内環境の整備と共に社内ブランディングを強化することが有効です。

 

社内ブランディングとは、企業理念や事業構想、顧客の声などを共有・浸透させていくことを通じて、組織に対するエンゲージメントや一体感を高める取り組みのことです。

 

例えば、社内ニュースレターやイベントなどで社員の活躍や成果を紹介したり、経営陣から直接メッセージを伝えたりすることで、社員の自社への愛着や一体感が高まり、友人・知人にも安心して自社の求人を自分の言葉で紹介できるようになるでしょう。

⑤現場社員へ積極的に声かけする

リファラル採用をしていることを知っていても、自分の時間を割いてまで能動的に活動してくれる社員は多くはありません。

 

また、紹介できそうな友人や知人がいたとしても、前例がなければ不安を感じ、なかなか行動を起こせない人もいるでしょう。

 

リファラル採用を促進するためには社員一人ひとりに積極的に、また繰り返し声かけし、具体的な行動を促すことが重要です。

 

声かけする際、「誰か良い人がいたら人事部まで紹介してください」といった漠然とした依頼ではあまり効果は見込めません。以下のようにピンポイントな質問・フォローをすることをお勧めします。

  • ・「同じ業種の知り合いはいますか?」「◯◯のスキルをもつ友人はいますか?」
  • → 知り合いの中から候補者がいないかを具体的に想像させる
  • ・「LINEで◯月◯日のミートアップに参加できないか聞いてもらえますか?」
  • → 社員が行動を起こしやすいよう、具体的に何をしてほしいか伝える
  • ・「以前話していた◯◯さんはどうなりましたか?」
  • → 声かけをしてもらえたか、返答はどうだったか結果を追い続ける

⑥不採用時の配慮をする

「紹介した友人が不採用になったら気まずいから」といった理由で、リファラル採用に対して消極的になってしまう人もいます。

 

そのため、万が一不採用になったとしても、紹介者と被紹介者の関係に不和が生じないよう、配慮することが大切です。

  • 不採用の理由を明確に伝える
  • 応募者に対しては他の求人情報やキャリア相談などのサポートを提供する
  • 紹介者に対しては感謝の気持ちや紹介意欲を下げないような言葉かけをする

⑦インセンティブの制度を整える

リファラル採用は、社内の制度として継続的に採用できるよう設計が必要です。紹介する社員に対して、インセンティブや評価制度などのメリットを明確に示すことで、紹介意欲も高まるでしょう。

 

併せて、インセンティブだけではなく、紹介された候補者が入社後に活躍することで、紹介者の自己実現感や貢献感を得られるようにすることも大切です。

 

そのためには、入社後のフォローアップやキャリア支援などの制度を充実させることが効果的です。

まとめ

記事では、新卒採用におけるリファラル採用のメリットとデメリット、リファラル採用を成功させるポイントについてお伝えしました。

 

リファラル採用は、コストを抑えて、自社にフィットした人材を確保できる手段です。

 

また、リファラル採用だけに頼らず、他の採用手法ともバランスよく組み合わせることで、より多様で優秀な人材を獲得できるでしょう。

 

新卒採用の場合、内定者や新卒・若手など、サークルや研究室の後輩などとつながりを持っているメンバーにうまく声掛けをして、促進していくことが大切です。

 

また、対象が社会人ではないからこそ、声掛けの内容や初期接点をどのようにするか(受け皿となるイベントや面談など)という工夫も重要です。

 

本記事の内容が、少しでも新卒のリファラル採用を促進するヒントになれば幸いです。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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