顧客の課題やニーズに合わせて自社商品・サービスを提案し、顧客の意思決定を後押しする営業職は、企業活動にとって欠かせない存在です。優秀な営業を十分な人数採用できるかは、企業の成長を左右します。
記事では、営業職の採用を成功させるポイントを詳しく解説します。本文で詳しく触れますが、採用のポイントで重要なのは「自社分析」と「人材の見極め」です。自社の成長に貢献する優秀な営業職を採用するために、ぜひ参考にしてください。
<目次>
営業職の採用が重要な理由
当たり前の話かと思いますが、企業活動において、優秀な営業職の採用は不可欠です。まずは、なぜ営業職の採用が重要なのか、理由を確認しておきましょう。
営業職採用に関するデータ
厚労省が毎月取りまとめている「一般職業紹介状況」によると、職種別の有効求人倍率は次のようになっています。
- 営業・販売:03
- 事務:43
- 生産・製造:47
- 管理職:85
- 全職種計:25
(2020年3月度)
出典:一般職業紹介状況(職業安定業務統計) / 一般職業紹介状況 / ~令和2年3月
他の職種に比べて、営業職は人手不足の度合いが高く、「優秀な営業職を採用したい」一方で、なかなか人材を採れない企業が多いことが上記のデータから分かります。
営業職の採用が重要である理由
採用市場で引く手あまたの営業職は、企業にとってたいへん重要な意味を持つポジションです。なぜなら、最終的に企業の「売上」を作る機能が営業職だからです。
たしかに、「WebマーケティングとEC」の組み合わせ等が進んでいる低額商品の領域では、営業職は減っています。また、BtoBの領域においても、マーケティングとインサイドセールスの組み合わせ等で、商談を創出するのが一般的になってきました。
しかし、高額商品においては、やはり営業スタッフによるソリューションとサービス提案が、最終的な意思決定にキーポイントになってきます。顧客の課題や悩みをくみ取って、商品・サービスを「ソリューション」として提案することが重要です。これをおこなうのが、営業職の存在です。
また、営業職のエースは将来の幹部になることが多いことにも注目しましょう。多くの企業では、営業部門やマーケティング部門といった、「売る」ことを分かっている部門のエースが、マネジメント・経営へと上がっていきます。従って、営業職の採用は、短期的な企業の業績はもちろん、中長期的な企業力を強化するうえでも重要です。
営業の採用に失敗すると経営に支障が生じてしまう
営業職の採用がうまくいかないと、企業はどうなるのでしょうか?
結論を一言でいえば、経営に支障が出るということです。「売上計画が達成できない」「新規拠点を出せない」「新規事業を立ち上げられない」「新規開拓が進まない」「次世代の幹部候補が出てこない」等、営業職の採用に失敗すると、さまざまな問題が発生します。優秀な営業職を採用できるかどうかは、企業の存続にも関わってくるのです。
営業職の採用を成功させるために重要な「自社の分析」
ここからは、営業職の採用を成功させるポイントである「自社分析」をご紹介します。
自社で活躍する営業職を見極めるためには「一人前のスタッフ」を分析する
「営業職」といっても、どの企業で働くかによって、仕事内容は千差万別です。そのため、営業職を採用するうえでは、求職者が「自社の営業として」優れたパフォーマンスを発揮できるかどうかを見極めることが重要です。
自社で活躍できる人材を獲得するためには、まず自社の営業スタッフを分析することが必要です。このとき、トップセールスの分析も大切ですが、同時に「一人前に売れる」ための要素を見出すことがより重要になります。
なぜなら、殆どの会社においてトップセールスは「特別」な才能を持っていることが多いからです。もちろん、トップセールスを採用したい気持ちはやまやまですが、コンスタントに、成果を上げる営業職を採用していくうえでは、自社における「一人前の営業」に必要な特性を分析しましょう。
東京大学の社会科学研究所が、営業マネージャー515名に対しておこなったアンケート調査「営業職の仕事と育成に関する調査票」によると、営業職において未経験者が一人前に到達する期間は「1年以上かかる」と答えた営業マネージャーが62.6%でした。
この結果からも、営業職の育成には時間がかかることが分かります。採用の時点でポテンシャルの有無を見極められなければ、一人前に育つまでに非常に多くの時間と工数を割かれることになり、もし芽が出なければ、育成コストが無駄になります。
売れるスタッフと売れないスタッフとの違いを分析する
自社の営業職を観察し、「売れるスタッフ」と「売れないスタッフ」の違いを見つけてみましょう。「売れるスタッフにだけ存在する要素は何か」「どのような要素が売上を伸ばす要因なのか」という視点で分析するのがポイントです。
まず一般論として、売上を伸ばす優秀な営業スタッフは、以下のような特徴を備えています。
- 自社の商品・サービスに愛着・自信を持っている
- 売上目標を強く意識している
- 顧客の課題や悩みを理解して、提案をおこなう
- クロージング力を持っている
なぜ分析が重要なのか
上記のような共通要素がある中で、どうして改めて自社の営業スタッフを分析する必要があるのでしょうか。それは、各企業において営業職がパフォーマンスを上げるために必要な要素は異なるからです。
例えば、営業の仕事を構成する要素を考えてみると、
- 新規営業/ルート営業
- 有形商品/無形商品
- 法人営業/個人営業
- 高単価/低単価
- サービスの新規性が強い/低い
- プレゼンやコンペが多い/少ない
- 問合せが多い/少ない
等、同じ営業職でも要素の組み合わせによって、活躍するために必要な要素が異なります。従って、営業職の採用に取り組むうえでは、「自社の環境で必要」となる要素を見出す必要があるのです。
要素の組み合わせによって、同じ営業でも仕事のスタイルや必要な特性が変わってくることは実例を考えると分かりやすいでしょう。
1つ目は「不動産賃貸で一人前に活躍する営業の要素」です。
<業務の特徴>
- 顧客は明確なニーズを持って来店する
- 個人向けセールス
- 商品は分かりやすく、競合との差別化要素は少ない
- 初接触~決定までの時間は短め
<営業職に必要な要素の一例>
- 顧客と仲良くなること
- 顧客に対するこまめな報連相
2つ目は「SaaS型のWebマーケティングツールの営業で、一人前に活躍するための要素」です。
<業務の特徴>
- 先方に明確なニーズや要望がないことも多い
- 他社ツールと比較検討されることが多い
- 法人営業であり、決済までには先方社内での承認フローが必要
- 商談は3~6か月程度かかることも普通
<営業職に必要な要素の一例>
- 先方の課題をヒアリング・整理する論理性
- 自社サービスで実現できる世界を提案するプレゼン力
- マーケティング分野の全体像に関する知識
このように、同じ営業職でも要素の組み合わせによって、活躍するために必要な要素は異なります。
後で詳しく説明しますが、営業職の採用において「同業界で活躍している人」を採ることは非常に困難です。そのため、採用ハードルを下げるためには、異業種や未経験に幅を拡げることになります。
その際に「自社の営業職で成果を上げるための要素」をしっかりと把握できていれば、「自社の営業として活躍する可能性が高い未経験者、異業種・異職種の経験者」を見極めることができるのです。
営業職の採用で母集団形成を成功させる方法
営業職の採用において、自社分析と並んで重要なのが「母集団形成」です。ここでは、母集団形成の方法について解説します。
母集団形成とは
母集団形成とは「採用候補者となる求職者を集める」プロセスです。自社に求人応募してくれる候補者を集めないことには、採用がうまくいくことはありませんので、当然必要となるプロセスです。
母集団形成のために必要なこと
母集団形成と聞くと、「なるべく多くの人材を集めることが大事」と思うかも知れません。しかし、母集団は多ければ多いほど良いというものではありません。数以上に「自社にマッチした母集団」「自社で採りたい人物を集める」ことが重要です。
ただし、採用は、ある程度確率論であることも事実ですので、「ターゲットになりそうな人」を数多く集めることが必要になります。
しかし、営業職は上述の通り売り手市場です。さらに、優秀な営業スタッフは通常の転職媒体にはなかなか出てこないのが実情です。さらには、「同業界の経験者」となると、優秀な人材が市場に出てくることは本当に稀です。
当然、今いる会社で営業として活躍していれば、待遇も良くなりますので、なかなか転職市場に出てこないわけです。従って、営業職の採用を考えるうえでは、業界経験者や営業経験者に限定する必要があるか否かを見極め、「未経験者」に枠を拡げることが重要です。
それによって母集団を拡げられますし、ポテンシャルの高い人材を採用できる可能性も高まります。“自社の営業として活躍する適性を持っている未経験者”と“前職で活躍できなかった業界経験者”、どちらを採用した方が伸びしろがあるかという問題です。
採用ターゲットに適した募集方法を選択する
採用ターゲットが選定できたら、そのターゲットに効果的にアプローチできる採用方法を選びましょう。やはり営業経験者に拘りたいということで、“潜在的な転職希望者”層にアプローチするには、ダイレクトリクルーティング等のサービスを使うことが効果的です。また、業界や職種に強みを持った転職エージェントを活用するのも良いでしょう。
逆に、未経験者を採用する場合であれば、求人媒体もいいですし、営業職に関しては“特性”での見極めをしてくれる転職エージェントもおすすめです。
採りたい営業人材に自社を選んでもらうポイント
優秀な人材であればあるほど、自社以外にも多くの企業が「採りたい」と思っている可能性が高くなります。本当に採りたいと思える人材に、自社を選んでもらうには、どうすれば良いでしょうか。
自社を選んでもらうための3つのポイント
自社の優位性をアピールできるポイントは、大きく分けて以下の3つです。
- ポイント① 仕事のやりがい
- ポイント② 得られる成長、キャリア
- ポイント③ 成果への評価
まずは、自社におけるこれらのポイントを言語化しましょう。最初の接触から内定承諾まで、一貫性を持って、自社の魅力を伝え続けることが必要です。営業職の場合には、結果が数値として見えるという特徴がありますので、ポイント③「成果への評価」についても、他職種よりもしっかりと伝えることが良いしょう。
営業職に限らず優秀な人材採用をする際には活用できる
記事で説明したことは、営業職に限らず、採用全般においても活かせる考え方です。「自社分析」はターゲット人材の選定・見極めをするうえで広く使える手法であり、「母集団形成」は採用の基本となる考え方です。
比較的難しいとされている営業職の採用に成功すれば、そのノウハウは他職種の採用でも応用することができるでしょう。
まとめ
営業職は、企業の存続にも関わる重要なポジションです。人手不足の状況ですが、優秀な営業職は必ず確保しなければなりません。自社で活躍できる優秀な営業職を採用するには、以下の2点がポイントとなります。
- 自社の営業として一人前に活躍するための特性の分析
- 採用対象を未経験者に拡げることによる母集団形成
特性分析を通じて、自社で活躍するための要素を明確にして、それにより採用対象をポテンシャル層まで拡げる考え方は、営業職だけでなく、他職種の採用においても活かせるものです。ぜひ自社の採用力を上げる参考にしてください。